2014年3月1日(土)
カプコンから発売中のニンテンドー3DS用アクションゲーム『モンスターハンター4』。本作を手がけた開発者へのリレーインタビューを掲載する。
『MH4』は、人気のハンティングアクションゲーム『モンスターハンター』の最新作。新たな武器種や新モンスター、カスタマイズ可能なオトモアイルー、これまで以上に多彩な登場キャラクターなどが好評を博し、400万本以上を出荷する大ヒットを記録した。
いまだに人気の『モンハン4』を手がけた開発スタッフに、インタビューを実施。1回目となる今回は、ストーリーやキャラクター設定を手がけたメンバーに登場してもらい、さまざまな質問に答えていただいた。(※インタビュー中は敬称略)
――まず最初に『MH4』での役割と好きな武器を教えてください。
▲『MH4』藤岡要ディレクター。 |
藤岡:『MH4』のディレクターを担当しました。好きな武器はランスです!!
岡村:『MH4』では主にストーリー関連を担当させていただきました。好きな武器は、弓とスラッシュアックスです。弊社の開発スタッフでテストプレイをする時、担当する武器種を決めたんですけど、今までやったことがなかった弓担当になって……すごく練習しました。
――スラッシュアックスには慣れていたんですか?
▲『MH4』でストーリーを担当した岡村志野さん。 |
岡村:『モンスターハンターポータブル 3rd』の時に使い、弓は『モンスターハンター3(トライ)G』から使い始めました。ソフト開発に参加したのは今回の『MH4』が初めてです。
徳田:僕は『MH4』でメインプランナーを担当しました。2005年に発売された『モンスターハンターG』から開発に参加しています。好きな武器は大剣です。
岡村:え! ハンマーじゃないの!?
▲『MH4』メインプランナーの徳田優也さん。 |
徳田:使えないとまずいので、なんでも使いますよ。よく使うのは大剣と太刀ですね。藤岡さんとプレイする時は、あえて太刀を選んでプレイしています。
藤岡:よく巻き込んでくれるよね。巻き込まれてばかりなので、太刀を使う印象しかないですね(笑)。
(一同笑)
――『MH4』が発売されて5カ月以上が経ったということで、プレイヤーからさまざまな意見が届いていると思うのですが、どんな声がありましたか?
藤岡:今回、プレイヤーにシングルプレイを遊んでもらううえで、感情移入をしてもらったり、世界観を広く感じてもらったりしたいと思い、今まで以上にストーリーに力を入れたいと思ったんです。そこで、岡村さんに参加してもらい、ストーリーを専門で見てもらったんです。キャラクターを掘り下げた物語になったので、その部分をどう受け取ってもらえたのか、反応はすごく気になっていました。
結果的に、プレイヤーの方から「進めるとキャラクターの個性が変化していくのがおもしろい」という声をたくさんいただけてうれしかったですね。物語をきっかけにして、『モンスターハンター』の世界に深く入る人が増えてほしいと思っていたので、そういう反応があったのはすごくよかったです。
――実際にストーリーを担当された岡村さんはどうでしたか?
岡村:武器や防具のデザインを担当している後輩から、世間でどんな評価を受けているのかをまとめたテキストがメールで送られてきたんです。それを見た時はうれしさに泣きました。
藤岡:“モンスターハンターフェスタ’13”で、プレイヤーからもらった質問に答えるコーナーがあったんですけど、その中に質問ではなくてストーリーの感想を書いたものがあったんです。
岡村:「ストーリーが終わってしまうのが怖いから、最後のクエストにおもむけない」と書いてあって、本当にうれしかったです! その質問用紙をいただいて、机の上に飾っています。
藤岡:設定とイメージだけを伝えて、細部の描き方はお任せしていたんです。岡村さんが描くキャラクターは、言葉の端々に気になるワードを残していくんですよ。そのテキストも「ああ、コイツだからこういうことを言うんだな」と思うものばかり。プレイヤーがそういうものを見逃さず拾っていることが、手紙やメッセージでわかりました。
先ほどの意見はその中でももっとも印象深かったものです。キャラバンの加工担当が「団長の追うアイテムの謎は謎のままだが、それでもいいと思っている」というようなセリフを発するんですよ。そこにすごく共感してくれて、ゲーム自体を進められないという言葉でした。
――確かに、『MH4』は過去作に比べてそれぞれのキャラクターが立ってましたね。
藤岡:今までのシリーズ作品では、物語やキャラクターについてはあまり多くの意見をいただけなかったんですが、今回はキャラクターに感情移入したという反応がたくさん届きました。
――徳田さんはストーリーについて、どのような印象を持たれましたか?
徳田:作っている時から、ストーリーの広がりやキャラクターが立っているのを感じていました。ものすごく手ごたえがあり、プレイヤーの方の反応も手ごたえ通りに返ってきたと思います。
藤岡:ストーリーをチェックしている時に、今までの『モンスターハンター』にはなかった結果を出せそうだという手ごたえを感じました。
――何がきっかけとなり、ストーリーを重視することになったのでしょう。
藤岡:もともと、時間が許せば絶対にやりたいと思っていました。今までの『モンスターハンター』の作りのように、1つの村を基点としてそこで延々とストーリーを展開していくのは広がりが出しにくいし、クエストだけでモチベーションを維持していくのはなかなか難しいところがあると思っていたんです。
物語の広がりに限界があったので、今まで楽しんでもらっているものを基準にストーリーを広げて、もっと楽しんでもらいたかった。まあ、実は初期の作品のころから物語をより深く掘り下げたいという思いはあったんですよね。
徳田:『モンスターハンター』シリーズのプレイヤー層はすごく広くて、いろんな方に遊んでもらっています。シリーズユーザーはもとより、初めて遊ぶ人を引っ張っていく要素が欲しいと思っていました。当たり前ですが、せっかく作ったので全員に最後まで遊んでもらいたいので、ストーリーでプレイヤーを引っ張っていくというコンセプトを藤岡さんから聞いた時に、同意しました。
藤岡:『MH4』開発メンバーの中にも、アクションゲームは得意ではないけどキャラやストーリーが好きという人がいるんです。開発にかかわっているのでプレイはするんですが、一向にクリアできないんですね(笑)。それもあって、そういったメンバーでもクリアさせてやろうという意気込みもありました。
そんなメンバーに『MH4』をプレイさせた時、岡村さんの物語にまんまとハマり、世界観に没頭してクリアさせることができました! 『MH4』は、ゲームとしては決して簡単に作っていなくて、歯応えのある難易度になっています。それにもかかわらず、アクションゲームを苦手とする人がクリアしたと聞いて、「これはイケるんじゃないか」と思いました。
――確かに今作は旅団クエストはテンポがよくて、飽きない印象がありました。
藤岡:テキストの量が膨大な量になることはわかっていました。そのうえで、読んでいて飽きないものにしなければいけないし、テンポもいいものにする必要があります。そのため、物語のテキストをうまい具合にゲーム内に散らばらせる調整にはすごく気を使いました。もともと、伝えなければいけないことがたくさんあるゲームなのに、そこへさらに物語という要素が入るわけです。打ち合わせを重ねながらバランスを調整したことを覚えています。
――以前のインタビューで、「拠点を移動していくことで冒険している感じを演出している」とコメントしていたのですが、拠点移動以外に“冒険”を感じさせるために用意したものはありますか?
藤岡:拠点を転々と移動しながらメインモンスターのゴア・マガラを追っていく物語になることは決まっていました。どうやってそこを膨らませるかを岡村さんに相談したところ、主人公たちとは別で動くキャラクターを登場させたいという話があがってきたんです。そこで生まれたのが筆頭ハンターでした。主人公と違うベクトルで動くメンバーが生まれたことで、物語を膨らませることに成功しました。
――開発陣の中で、人気の筆頭ハンターは誰ですか?
岡村:女性スタッフからは筆頭リーダーと筆頭ランサーの人気が高いです。
▲開発陣女性スタッフに人気の筆頭リーダー(左)と筆頭ランサー(右)。 |
――男性スタッフはどうでしょう?
藤岡&徳田:ガンナーは人気がありますよ!
▲筆頭ハンターの紅一点であるガンナー。 |
藤岡:ただ……裏方すぎて出てこないんですよ(笑)。いいことを言ってくれるんですけどね。
徳田:本当に前に出てこないんです(笑)。
藤岡:キャラの立ち位置と設定は、本当に好きです。今後も何かに生かしたいですね。
――確かに登場機会の少ないキャラでした。個人的に片手剣を使っているので、筆頭ルーキーに思い入れがありました。物語を騒がしてくれるという部分もいいキャラだなと。
藤岡:他の筆頭ハンターたちは大事なことしか言わないので、賑やかにしてくれるのはよかったですね。
岡村:実は、筆頭ハンターにはそれぞれ役目を与えているんです。筆頭リーダーはストーリーにかかわる重要なことを言う役目……物語を進める役ですね。筆頭ガンナーは裏設定に近いんですが、見えないところでは実はこんなことが起きているという、メインストーリーとは別のストーリー展開を伝える役目。筆頭ランサーは“我らの団”とゴア・マガラを結びつける役目。そして、筆頭ルーキーは楽しくする役(笑)。
(一同爆笑)
▲彼に与えられた重要な任務は……賑やかし! |
岡村:楽しくする役がいないと、堅苦しくなってしまうので……(笑)。あと、筆頭ルーキーにはプレイヤーに一番近い立ち位置のキャラというコンセプトもあります。装備している武具もプレイヤーより少しだけ先を行っているんですね。例えばナグリ村に着いた時にはバサルシリーズを着けていますし、チコ村に着いた時にはフルフルシリーズを装備している。「こんな装備があるの? 自分も着てみたい」って思ってもらう役目があります。
――なるほど。そこはわかりませんでした。
岡村:他にも、今回初めて登場した武器種“操虫棍”と乗り状態を、ストーリー上のどこかで活やくさせたかったという意図があります。あるデモで筆頭ルーキーが猟虫を飛ばしたり、プレイヤーであるハンターがゴア・マガラに乗って活躍したりするシーンがあるんです。そのためにも、筆頭ルーキーには操虫棍を持ってもらいました。
藤岡:こんな装備があるということを、チラチラ見せていきたかったんです。まあ、「筆頭ハンターの一員なのにルーキー?」という、ちょっとネタみたいな設定もあるキャラなんですが(笑)。
岡村:筆頭ハンターを出そうとした経緯をもう少し詳しく話しても大丈夫ですか? 藤岡さん。
藤岡:どうぞどうぞ。
岡村:これは徳田君にもかかわる大事な話なんですけど(笑)、筆頭ハンターを私が出そうと思ったのは、ある日、徳田君から「ゴア・マガラの存在をラストにつなげたい」という話を聞いた時だったんです。その瞬間に、ストーリーの根幹を成すテーマが決まりました。ゴア・マガラという存在は、ある過程を経てシャガルマガラというモンスターに生まれ変わり、プレイヤーであるハンターと天空山で再び会う……そこから“廻って戻る”や“次の世代に託す”というテーマを思いつきました。これをストーリーの随所にちりばめています。
私の役目はストーリー性を強くすることなんですが、『モンスターハンター』の主役はモンスターで、本作ならメインモンスターのゴア・マガラだと思っています。そこで、開発の皆が一生懸命作っているモンスターを、どうやってストーリーサイドから盛り上げていくかを考えたんです。
徳田:ありがとうございます(笑)。
岡村:今回は、ゴア・マガラがいないと成り立たないストーリーをやってみようと思ったんです。ゴア・マガラが登場し、その存在はシャガルマガラに生まれ変わる。同じタイミングで、プレイヤーであるハンターに何かを託す存在が必要だと考えました。そのために生まれたのが筆頭ハンターだったんです。ゴア・マガラを追っていた筆頭ハンターが任務に失敗して、プレイヤーにその想いを託すことに“次の世代への移り変わり”を込めました。
▲シナリオを担当した岡村さんからは、キャラクターたちへの愛情があふれていた。 |
藤岡:最初に、基本的にシンプルなストーリーがいいと伝えていました。というのも、あまり複雑になると何をやっているのかわからなくなってしまう危険性があるので。ただし、シンプルながらもテーマ性に深く絡みあい、ストーリーを進行してくれるキャラがいないとやっぱり盛り上がらないんですね。岡村さんから筆頭ハンターの提案をもらった時に「腑に落ちる!」と思い、そのキャラクターを採用することになりました。
岡村:「こういうテーマになっている」と言葉で説明をするのではなく、ゲーム全体を通してプレイした時に、なんとなく雰囲気が伝わる。シャガルマガラを討伐した時にプレイヤーの皆さんが、「ああ! よかった!!」と感じられる瞬間への空気作りのために、彼らが生まれました。
――筆頭ハンターは強すぎないんですよね。主張もしてませんでしたし。
藤岡:あまりしゃべりませんしね(笑)。特にメインストーリーが進行している間は、筆頭ハンターたちをキャラクターとして立たせすぎるのはよくないと相談していたんです。
岡村:ユーザーの皆さんにテーマを感じさせる役割として出したかったんです。
――役割というキーワードが出てきましたが、“我らの団”のメンバーにも役割があるんですか?
藤岡:“我らの団”はキャラバンなので、当然いろいろな村を転々とします。そのため、今までの作品のように村長がストーリーを進ませることができなくなったんです。そこで、ストーリー全体を引っ張る役割として団長を作りました。理屈とか関係なしにグッと引っ張っていく人がいいなと。
岡村:団長に話しかければ少し強引でもストーリーが進行するよう、勢いのあるキャラクターとして描かせてもらいました。
藤岡:加工担当はそんな団長の女房役っぽいキャラですね。一番長く団長と過ごし、彼を一番よく知っている。団長は“思い立ったら即行動”という人なので、そこをフォローしながらサポートする役割ですね。
――団長は秘密があるキャラだと思うんですが、裏設定があれば聞かせていただけますか?
岡村:逆説的になってしまうのですが、筆頭ランサーの役割から紐づけて生まれたのが団長の設定です。ストーリーは、団長が追っているのがシャガルマガラで、筆頭ハンターたちが追っているのがゴア・マガラという二重構成になっています。“我らの団”とゴア・マガラを結びつけるのが筆頭ハンター。中でも筆頭ランサーがその役目を担っています。
でも、筆頭ランサーはゴア・マガラの調査任務を受けるほどスゴイ人なのに、なぜ“我らの団”と関係していたのか。これは、団長にモンスターの知識が豊富だったり、いろいろな地方に行っているので顔が広かったりするという設定を設けることで、つなげることができました。
藤岡:団長はただ好き勝手に動くだけのキャラにはしたくなかった。なので、ギルドとつながりを持たせ、もともと高い地位にいた人という設定を加えています。そういう顔を持たせることで、筆頭ハンターたちとのかかわりや、筆頭リーダーの団長への言葉遣いが発生してキャラに深みを与えられました。
――筆頭ランサーに「君に託してよかった」と言われたり、看板娘から「団長があなたのことを楽しそうに話してましたよ」と言われたりすると、思わずうれしくなりましたね。
藤岡:筆頭リーダーが初めてプレイヤーに会った時、すごく怒るじゃないですか。「許さーん!」って(笑)。それは、団長が偉い人だということを知っているからなんですけど、初対面のプレイヤーは「何でこの人は怒っているの?」と思いますよね。何か特別な感情でもあるんじゃないかと(笑)。
岡村:筆頭リーダーには負い目があるんです。もともと団長の警護を担当していた筆頭ランサーが“我らの団”を抜けて自分のサポートに来てしまったという、申し訳ないという気持ちが。なので、プレイヤーであるハンターに「君だけが頼みの綱なんだよ! 頼む!」って言いたいんです。でも、彼は言い方がヘタなので「許さーん!」というひと言になってしまう(笑)。
藤岡:「なんでこんなに怒ってるんだろう……」というところから、ユーザー間でリーダーは団長のことが好きなんじゃないかとか、いろいろな憶測を呼んだりしてるんですよ。
岡村:そ……そんな馬鹿な。
(一同笑)
――愛と言えば、今回の看板娘はモンスターをすごく愛していましたね。特徴的な設定だと思いました。
藤岡:『MH3(tri-)』の看板娘のアイシャは天然な子だったので、同じような子にしたくないと思ったんです。でも、プレイヤーと一番しゃべるキャラクターなので、事務的なしゃべりにしたくなかった。そこで、会話の中でいろんな話に展開して、少しずつ内面が見えてきたらプレイヤーも感情移入してくれるのではないかと考えました。
ただ、個性をどうやって付けていくかはなかなか定まらなかったんです。「お姉さんっぽくしよう」とか「カワイイ系にしよう」とか頭を悩ましているうちに、話をしていると本性がだんだんと見えてくるような子にしようとなったんです。その時、デザイナーから上がってきたイラストにカエルのポーチが描かれていて、メモで“このポーチはモンスター素材を使って自分で作った”とあったんです。それを見て、このキャラクター性で押せればおもしろくなりそうだと感じました。
徳田:モンスター好きなキャラ性はゲーム進行にも役立ちました。知らないモンスターの名前を突然言われてもプレイヤーのテンションは上がらないと思うのですが、この子が「すごいんですよ!!」と言うことで、「なるほど、すごいのか」という納得力を持たせられたと思います。
岡村:ストーリーの盛り上げにもすごく役立ってくれました。先ほどもお話しましたが、『モンスターハンター』はモンスターが主役だと思っています。なので、プレイヤーがモンスターに出会った瞬間にワクワク度がマックスになる感じにしたかったんです。
▲ラフ段階での看板娘。腰には自作のカエルポーチが見える。 |
例えば、船で別の村に行くために「ネルスキュラを狩猟するぞ」とプレイヤーの方がワクワクすると、彼女もネルスキュラにワクワクしている。飛空船を作るためにグラビモスの狩猟に向けワクワクすると、彼女はもっとワクワクしている。看板娘はプレイヤーの方が次に狩るモンスターとどう向かいあってほしいか、どういう気持ちになってほしいかを代弁し、さらに盛りあげるためにすごく頑張ってくれました。
――なるほど。
岡村:看板娘のテンションは、ティガレックスまですごく上がっていくんですが、シャガルマガラが現れると、気持ちが“なぎ”になります。そういう彼女の変化の演出を含め、プレイヤーの方が、シャガルマガラと出会った瞬間にどう感じてくれるかという部分は精一杯作りました。
藤岡:最初、彼女はモンスターが好きでついてきただけだったんですが、いろんなモンスターと出会うことで、彼女自身もちょっとずつ変化を見せてくれました。先ほども言いましたが、キャラの個性が強すぎると物語全体がぼやけてしまうので、シャガルマガラを討伐するまではキャラクターにグッと我慢をしてもらったんですよ。なので、クリアした後に彼らの個性を存分に出すようにしました。そういった段階を踏むことで“遊び”を含ませたかったので、各キャラのエピソードクエストには高難易度のものを組み込んだんです。
徳田:過去作でも、「メインモンスターを討伐したらすぐに終わってしまうのが寂しい」や「もっとボリュームが欲しい」という意見をたくさんいただいていたんです。僕自身ももっと余韻(よいん)に浸らせてあげたいという気持ちがあったので、本作は今までにないほどメインモンスター後の展開や高難易度のクエストを作り込みました(笑)。
藤岡:集会所だけでなく、1人で上位素材を集めることもあると思うんです。なので、シングルプレイを充実させることでそういう部分をフォローできたらいいなと。あとは、プレイヤーのチャレンジしたいという欲求を満たす意味合いですね。
――確かに今作では旅団クエストでも上位クエストが多かったですね。「シングルプレイだから……」と思ってクエストを始めるとやたら強いモンスターが登場しているという。
藤岡:しれっと難易度が上位になってますよね(笑)。徳田はモンスター愛が非常に強いので、モンスターをどのタイミングで、どういう演出で登場させるのかをずっと考えていました。その中でも、特にお気に入りのラージャンはかなり悩んでいましたね(笑)。結果的にストーリーだけでなく、クエスト群もおもしろくないと「『MH4』はおもしろくないゲーム」と感じられてしまいます。そのため、ストーリーとクエストの足並みを揃えながら作り込んでいきました。
岡村:徳田君が一生懸命クエストを考えてくれているので、私も気合いを入れてストーリー部分を考えました(笑)。キャラのプライベートが見えるストーリーは作り込みましたね。
――主なキャラだけではなく、サブキャラにも細かな設定がありましたね。臆病なオトモアイルーとか……終盤に依頼されるクエストでは「何をお願いしてくるんだ、お前は!」と思いました。
(一同笑)
藤岡:「お前のために何でこんな大変なクエストをやらなきゃいけないんだ!」みたいな(笑)。
――一番長いチェーンクエストでした。どんどん敷居が上がっていくし。でも、苦労した分、オトモアイルーに加わったら強かったです。
岡村:臆病を克服し、何度倒れても立ち上がるというイメージで“七転八起の術”の【攻】と【防】を持っています。重宝しますね。
藤岡:今回は、オトモアイルーにもやり込みをしっかり付けたいと思っていたんです。なので、臆病なオトモアイルーのチェーンクエストは長いんですけど、クリアするとそういったご褒美的なものを用意しました。
――サブクエストで言うと、“卵シンジケート”もおもしろかったです。
(一同爆笑)
岡村:あれはゴメンナサイ(笑)。ストーリーと呼ぶには恥ずかしいのですが、気の向くままに私が書いていたんです。後で藤岡さんから「卵シンジケートについていろいろなところで質問されるんだけど……」と伝えられました。
徳田:だいぶ初期の段階から、黒幕がいるって決めていましたよね。
岡村:意図としては、卵の運搬は苦手意識のある方も多いので、気分を変えてもらえるように楽しくしようとしたんです(笑)。本当に気の向くままに書いて、ある意外な人物に大ボスになってもらいました。
藤岡:歌がまた笑えるんですよね(笑)。もともと『モンスターハンター』は、普通に生きているモンスターに対して、人間はどのようにかかわっていくかという描き方をするので、重くなる瞬間があるんですね。ずっと重い話が続くのはやっぱり嫌なので、登場人物はやや能天気な感じで描き、シリアスすぎない世界にしてほしいと岡村さんにはお願いしたんです。
――確かに、ストーリー全般を通して見るとシビアな描き方は少なかったですね。先ほど最後に“なぎ”が入ると岡村さんがおっしゃられていましたが、そこで空気がドンっと変わり終わりを感じました。
岡村:今回、村のありとあらゆる人たちのセリフで意識したのは“一期一会”。主人公たちはキャラバンで移動するので、「もう二度と会えないかもしれないけど、元気でね」という気持ちを持っている人たちを描きたかったんです。“我らの団”とベタベタせず、なおかつ突き放すわけでもない距離感は意識しました。
藤岡:キャラバンが去っていく際、二度と会えないかもしれないという感情もありながら、それを悲壮感にしない感じです。
岡村:村人たちにとっては、別れは普通のことなんです。
藤岡:ストーリーの展開としては盛り上がるように、すごく贅沢な作りにしました。一場面のためだけに作ったものがたくさんありますから。最後へ向けて盛り上がるための仕込みは、すごく丁寧に作っています。
――人物と言えば、クエストには“わがままな第三王女”や“地獄から来た兄弟”など、シリーズファンから見ると「お、またきたか!」と思う人物も登場しますね。
藤岡:シリーズを通して脈々と受け継がれているんです(笑)。意外に皆さんが気にしているようなので、これはしっかり出そうと。実は過去作でクエストの依頼文を少しシンプルにしたことがあるんです。その当時は、クエストの依頼文を書き込んでもプレイヤーは読んでいないだろうと思ったからなんですね。
ところがファンの人から「なぜテキストを削ったんだ」という声を多数いただきました。その時に「こんな細かいところまで大事にしてもらってるんだな」ということに気付かせてもらいました。
岡村:依頼文の中だけでストーリーが展開しているものもあるんですよ。
藤岡:それ、初耳なんですけど(笑)。
岡村:大地主の五男坊が兄たちの家督争いを見て、どうやったらこの争いを止めることができるんだろうと悩んだり、進展があったりとか。
藤岡:本当に知らなかったわ(笑)。
――この依頼文ですが、過去作品からのゆるいつながりを感じました。
藤岡:少しつながっているくらいに留めることで、世界の広がりを感じてもらえればいいかなとは思っています。「今回の世界は過去のシリーズとどうつながっているの?」とよく聞かれるんですが、あえて答えていません。それくらいで、世界の広がりを感じてもらえるのがいいんだと思っています。
今作『モンハン4』では“ぽかぽか島”があるんですが、そこで「どっかで見たことがあるな」という剣を登場させ、世界観の広がりを感じていただければと思います。
――シナリオやキャラクターについて、今だから話せるエピソードはありますか?
藤岡:キャラバンの“屋台の料理長”は、最初はアイルーではなくて“巨漢の料理人”の予定だったんです。
――え! 巨漢ですか!?
藤岡:キッチンアイルーというこれまでの設定もあり、最終的にはアイルーに決まったんですが、キャラバンの“おかん”役を作りたいと思ったので、大らかな巨漢というイメージが当初あったんです。デザインはアイルーに変わりましたけど、最初に設定したおかんキャラは残っていますよ……まあ、見た目はおかんではないですけど(笑)。
――ですよね(笑)。でも、そういった細かい役割もテキストで細かに表現されているんですね。
藤岡:ゲームの進行度によって、読めなくなってしまうテキストがあるので、実はテキストも一期一会なんですよ。そのため、読み飛ばしてしまうと設定の深い部分が掴めなくなるかもしれません。でも、それもいいと思っています。というのも、遊んでくれている人たちが会話をしている時に「あんなこと言ってたよね」「え? それ知らない」っていうシチュエーションが生まれ、また物語に興味を持ってくれるんじゃないかなと思ったからです。
ただ、メインストーリーでそれをやってしまうと危険なので、それはやっていません。筆頭リーダーや筆頭ランサーとの会話には、読み飛ばすと二度と読めないテキストがチョコチョコ入っています。
徳田:テキストと言えば、最初に藤岡さんから「今回は拠点となる村を4つ登場させたい」と言われた時には「え!?」ってなりましたね。
岡村:そう、とんでもないことを言い出したんですよ! どこの村からクエスト出発してもいいようにテキストを書かなきゃいけないし、すごく大変だったんです。
徳田:各村の特徴を出す必要があるうえに、不便じゃないようにする必要もあるんです。
藤岡:テキストを読んでいて、「ああ、大変だったんだ」って思いました(笑)。
――プレイヤーからするとわかりにくいですが、見えないところの苦労ですよね。
藤岡:自然に遊んでくれているのであれば、それでいいんですよね。気ままにいろんな村で遊べるのが楽しいんです……まあ開発中はいろいろな不具合を起こしましたが(笑)。でも、RPGを作るというのはそういうことなんで。
――その他に、何か知られていない話やエピソードなどはありますか?
岡村:クエストを受注した際に看板娘が「いってらっしゃい」というセリフを発するんですけど、実はクエストによって反応が違うんです(笑)。捕獲や狩猟クエストの時はすごくテンションが高くて、訓練場や採取クエストだとローテンションなんです。「いってらっしゃ~い」みたいな(笑)。
――採取クエストにはあまり興味がないけど、狩猟クエストにはやたら食いついてくると。本当にモンスターが好きなんですね(笑)。
岡村:採取クエストの時は「気を付けてくださいね」くらいなのに、狩猟の際には「素材の一部を私にください!」とか(笑)。
藤岡:ボツになったネタですが、ナグリ村でトロッコに乗れるという設定を考えていたんです。奥にあるトロッコに乗ったらクエスト出発口まで行けるように考えていたんですが、実装を見送りました。その名残でナグリ村にはトロッコだけあるんです。
徳田:途中から、トロッコに乗るのがボツになりそうな空気を感じたので、移動が不便にならないよう道幅を広く変更しましたよ。
藤岡:アハハハハ。
▲ナグリ村のイメージ画像。トロッコには当初は乗れる予定だった! |
――武器や防具の解説文はどのような体制で書かれているのですか?
藤岡:何人かの担当者にお願いしています。武器や防具のテキストには“濃いリビドー”がないと出てこないものが多いので、若いメンバーの勢いに任せています。
――その“濃いテキスト”は、毎回すごく凝っていると思っていました。
藤岡:ずっと同じことをやっていると出てこなくなってしまうので、なるべくいろいろな人にやってもらいバランスを取るようにしています。
徳田:順番としては、まずモンスターのイメージにあった武具の名前を決めて、そこに合った説明文を書いていく流れですね。
藤岡:なので、早くモンスターの名前を決めろと毎回せっつかれます(笑)。
――モンスターの名前が決まらなければ、武具のネーミングと説明テキストが遅れていくのですね。
藤岡:はい。なので、モンスター名が遅れてもいいようにテイストだけは早めに共有するようにしてます(笑)。
(一同笑)
藤岡:モンスター名に関しては僕がこだわってしまうので、僕のところで止まってしまうんです。それによる弊害ですね、考え直します。
――プレイヤーからの声を受けて、もう少しこうすればよかったという点はありましたか?
藤岡:一瞬しか会えない人たちともう少し絡みたかったという声は聞きました。
徳田:筆頭ガンナーとかね。
▲開発内部だけでなく、ユーザーからの人気も高かった筆頭ハンター。 |
藤岡:『モンハン4』で広げきれなかった部分の声をいただいてるので、今後も広げられるところは広げていきたいです。ぜひ『モンハン4G』を楽しみにしていただきたいです。
――それでは最後に、まだプレイされてない方、すでにプレイされている方にメッセージをいただければと思います。
藤岡:まだ遊ばれてない方には、今までの『モンスターハンター』に比べてストーリーを楽しむという遊びが純粋に楽しめるタイトルになっています。キャラクターや世界観が好きな人にはぜひ一度遊んでいただいて、『モンスターハンター』を好きになっていただければうれしいです。
徳田:プレイされている方で、最後の旅団クエストをクリアしていない方もいると思うんですが、ぜひ! ぜひクリアしてください!! クリア後に起こる出来事は本当に壮観です! 僕は、鳥肌が立ちました。ぜひクリアしてください……あんなに難しくしておいてなんですが(笑)。
岡村:プレイヤーの皆さんには、シャガルマガラを討伐するまでの冒険感と孤独感と自由感を楽しんでもらい、シャガルマガラと向かい合った時に何かを感じてもらえたらと思います。
藤岡:やり尽くしたという方も、セカンドキャラを作ってもう一度巡ってもらえれば新たな発見があると思うので、ぜひやっていただければと思います。
――今日はありがとうございました。
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