2014年3月19日(水)
SCEAは、現地時間3月18日にGDC 2014のセッションにおいて、PS4の魅力を高めるバーチャルリアリティシステム『Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)』を開発中であることを明らかにした。
▲プレゼンターを務めたのはSCEワールドワイドスタジオのプレジデント・吉田修平氏。『Morpheus』が登場した瞬間、会場からは割れんばかりの歓声が上がった。 |
セッションでは、吉田修平氏に加えて『Morpheus』の開発に携わるRICHARD MARKS博士とANTON MIKHAILOV氏が登壇。『Morpheus』のコンセプトや技術的側面、今後の構想などが語られた。ここでは、セッションで語られた要旨をまとめていく。
吉田氏の次に登壇したMARKS氏は、この『Morpheus』はゲームに限らず、例えば観光などの体験にも利用できるようになる。ほかにもホテルに宿泊する際、事前にどこに泊まるかをシミュレートすることも可能になる。ただし、ゲームが最も適した使用法であることに違いはない。
▲セッションでは、NASAの協力のもと、誰もが火星へ降り立てるという話も飛び出した。 |
もちろん、実際にそこに至るまでにクリアしなければならないハードルは多い。セッションでは、以下の6つの項目がVR普及のために重要な課題だと語られた。
高解像度、高フレームレートは基本中の基本。高度な光学テクロジーが必要だが、ソニーがこれまで積み重ねてきた技術の蓄積で、最も適したものを作り出せるとのこと。
VRにとって3Dサウンドは必要不可欠で、それなくしてはVRが本当の世界だと感じることはできない。先々には後方からの物音に反応させて振り返らせるなど、サウンドそのものをゲーム性に組み込むことも検討しているようだ。
VRをVRたらしめる要素。これまでにPS Moveなどでトラッキングの技術を培ってきており、それをさらに進化させたものがVR。体の動きに応じて同じように世界が動くのはもちろん、3D酔いが起こらないような構造が必要になる。
VRにとって大きな課題。DUALSHOCK4やPS Moveで基礎はできているので、これから困難があったとしても、乗り越えていけると語る。
VRの普及には不可欠。お店で購入後開封してすぐ使えるような状態であることが必要。また、ワンプレイだけ装着してすぐにはずすといったようなお手軽さも重要に。
VRの専用コンテンツをこれから準備予定。開発キットを提供して、各デベロッパーの協力のもと、業界全体で取り組んでいく、VRはこれからの新しいメディアで、決められたルールもなく、今から作っていくものが主流になる。
次に登壇したMIKHAILOV氏は「VRは周辺機器ではなく、新しいメディア。これによって、新しいゲームジャンルや新しいゲームの楽しみ方が生まれる」と語る。ただし、視点が自分中心になることで、解決しなければならない問題も多い。
例えば、VRを現実の世界とマッチさせるために、視点は使用者の身長に合わせなければならない。そして、これまでのゲームでは普通だったカットシーンの挿入も、VRでは話が違ってくるだろう。さらに、VR内と現実での空間の相違についても言及した。
腕を伸ばしたときにゲーム内では壁があっても、現実にはない場合がある。VR内では壁で腕が止まる場合、現実で腕を伸ばした分がゲーム内では反映されていないことになる。壁の向こう側まで手が伸ばせ、それが視認可能という方法もあるが、これも違和感がある。壁に埋まった分は視認できないようにするのが一番自然だ。
▲処理遅延を限りなく0にして、フレームレートを高く保つなど、VRのバランスを保つうえで絶対に必要な項目を列挙した。 |
▲VRの中の環境を実際に現実でも作ること(例:車のシートやハンドルをリアルでも用意する)で、さらなる没入感を得られると指摘する。 |
話は変わり、『Morpheus』を装着することでよりエモーショナルなゲーム体験が可能になるという。従来のゲームでは丘の上に立ってそこから落ちたとしても、リアルとはかけ離れた感覚だったが、VRでは丘の上に立って下をのぞき込んだ時のすくむような恐怖感が再現される。
▲何かしらの恐怖症を持つ人は、プレイする前に十分注意する必要がある。 |
▲オンラインマルチプレイ、ローカルマルチプレイは両方とも可能になる。ミラーシステム(※VR装着者の見ている映像をモニターに投影する)も搭載している。 |
最後に、『Morpheus』の使いやすさについて言及した。装着する際に頬や鼻にはかからず、ほぼ頭だけで支えることになる。眼鏡をかけていてもOK。オーディオジャックが付属しており、ヘッドホンの装着も可能。熱がこもることもなく、レンズは曇らない。
▲『Morpheus』専用の開発キットも着々と準備が進められている。 |
セッションの最後は3人への質疑応答で締められた。その主な内容は以下のとおり。
Q.VRは単体で稼動できるのか?
A.ワイヤレス化を目指しているが、現状では有線を想定している
Q.発売タイミングは?
A.なるべく早く出すために準備を進めている
Q.PCとの接続は可能か?
A.PS4との接続をメインに考えている
Q.PS4 1台につき何機接続が可能か?
A.1機のみ
Q.美術館や博物館、学校などで使用する計画があるか?
A.ゲーム業界の外でも可能な限り普及させていきたい
Q.子どもへの対象年齢制限は?
A.まだ答える段階にないが、若い人にはぜひ遊んでほしい
▲「『Morpheus』のコードネームが決まったのはいつか?」の問いに、吉田修平氏が「つい先週」と答え、会場が笑いに包まれる一幕も。 |