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2014年6月6日(金)

編集部が選ぶPSP名作選。本体出荷完了前にプレイしたいおすすめゲームを一挙紹介

文:ごえモン

PSP

 2004年12月12日に発売され、今年10周年を迎えようとしていた携帯ゲーム機PSP。6月3日にSCEは、2014年6月をもってPSPの出荷を完了するという情報を発表し、多くのゲームユーザーに衝撃を与えました。

 実は、密かにPSP10周年記念企画を温めていた電撃オンライン編集部(具体的には筆者)。出荷が完了してからでは意味がない! と、急きょ、PSP10周年企画として“編集部が選ぶPSP名作選”を2回に分けて掲載することにいたしました。

 2014年6月現在でも決して色褪せない名作の数々から、編集部スタッフ1人1人がオススメしたいゲームを独断と偏見でピックアップ。当時の思い出も絡めつつ、名作を振り返っていきたいと思います。(※並びはタイトル名五十音順)

→PSP名作選の後編では10本をチョイス!


■いろいろな意味で、一皮むけた作品です

はるべぇ:『AKIBA’S TRIP(アキバズトリップ)』
●メーカー:アクワイア ●発売日:2011年5月19日

『AKIBA’S TRIP(アキバズトリップ)』
▲新要素も加わり遊びやすくなった『AKIBA’S TRIP PLUS』がお買い得です。

 皆さん、こんにちは。電撃オンラインの新人編集・はるべぇです。子どものころは、弟の影響もあって対戦格闘ゲームや王道RPGをがっつりプレイするゲーマーでした。ところが、大人になってからはカワイイキャラクターが登場する動物ゲームやパズルゲームをプレイするようになっていました。そんな私のゲーマー魂を再び目覚めさせたのが、PSPで発売された『アキバズトリップ』です! パッケージにも描かれているのですが、“秋葉原”の街並みをリアルに再現しているマップが特徴的なゲームです。私は当時、秋葉原によく出没していたので、何となく気になってプレイしたのがきっかけでした。

 このゲームで一番の衝撃は、相手の服を脱がして倒す“ストリップアクション”という戦闘システムです。主人公の敵となる吸血鬼・通称“カゲヤシ”は、肌を日光にさらすことで倒すことができます。だから主人公は仕方なく(!?)相手の服を脱がすんです、決してヘンな趣味じゃありませんよ。ただの脱がしゲーではなくて、理由がちゃんと用意されているのです。女子としては、服を脱がす行為に抵抗がありましたが、いつの間にかカワイイ服を集めることに夢中になっていました!

『AKIBA’S TRIP(アキバズトリップ)』 『AKIBA’S TRIP(アキバズトリップ)』

 最初は自宅でコッソリプレイしていた私ですが、衣装をフルコンボするころには、電車で移動中も人目を気にせずアナログパッドをグルグル回し、あらゆるキャラクターの服を脱がしまくっていました。カゲヤシを倒すだけでは飽き足らず、メイドさんを襲撃したり、止めに入った警察の身ぐるみもはぐという……。服を集めるのが目的のゲームですから、仕方がなかったんです、うん。

 そんな言いわけを覚えた私は、今まで手が出せなかったゲームに飛び込んでいくようになりました。気付いたらアケコンを買うほどゲームにハマっていました! こうやってゲーム熱が再燃して、現在、電撃オンラインでお仕事しているのも、すべては『アキバズトリップ』に、そしてPSPに出会えたからだと思います。ちょっと大げさかもしれませんが、PSPに感謝の気持ちを込めて……、10年間ありがとうございました!

『AKIBA’S TRIP(アキバズトリップ)』 『AKIBA’S TRIP(アキバズトリップ)』

(C)2011 ACQUIRE Corp. All Rights Reserved.


■『ヴァルキリープロファイル -レナス-』が、名実ともに“神ゲー”となった理由

TDB:『ヴァルキリープロファイル -レナス-』
●メーカー:スクウェア・エニックス ●発売日:2006年3月2日

『ヴァルキリープロファイル -レナス-』

 ゲームというエンターテイメントにおいて、僕がもっとも重要視するのは“インタラクティブ性”と“カタルシス”である。

 ……ってこう書くと、なんだかカッコいい英単語を並べたいだけのように思われますかね(笑)。つまるところ、僕は“プレイヤーが物語に介入できる双方向性”と、“さまざまな縛り・抑圧された状態から解き放たれる時の爽快感”が好きなんです。理由は明快。どちらの要素も、ゲームというメディアがもっとも得意とする部分だと(あくまで個人的に)思っているから。映画や小説などでは、これを両立することはまだできませんからね。

 さて、そんな僕の趣味嗜好にピッタリとハマった作品が、ここで紹介する『ヴァルキリープロファイル -レナス-』です。スクウェア・エニックスの誇る、後世に残すべき“神ゲー”の1つ。PS版が発売された学生時代、そして社会人になって発売されたPSP版の『レナス』ともに、心からドップリとハマってしまった作品です。

『ヴァルキリープロファイル -レナス-』 『ヴァルキリープロファイル -レナス-』

 本作は、とりわけその練り込まれたストーリーが素晴らしいです。チープな表現でごめんなさい。思い出補正による美化もあるかもしれません。でも、本当に、本当に素晴らしいんだから、やっぱりそう書くしかないわけで。

 エンディングまでの道のりで、主人公を介してプレイヤーが目にする“さまざまな人間の生と死”。神と人間の両方に接し、課せられた任務と心の声の狭間で揺れる、主人公や仲間たちの心情描写。そしてトゥルーエンドで描かれる、予想を遥かに超えた超展開の数々……。これらは今なお色あせることなく、僕の胸に焼き付いています。

 その物語展開を、おそれ多くもできるだけわかりやすく列挙してみると……。

■『ヴァルキリープロファイル -レナス-』ってこんな物語

・物語は北欧神話がモチーフ。

・この世界ではオーディン率いるアース神族と、スルト率いるヴァン神族が勢力争いを繰り広げている。その結果、世界の終末の日とされる“神々の黄昏(ラグナロク)”が迫りつつある。

・プレイヤーは“運命の三女神”の1人である戦乙女レナス・ヴァルキュリアを操作し、オーディンの命令を受けてミッドガルド(人間界)に降臨。来たるラグナロクに向けて、アース神族の戦力となる英雄の魂(エインフェリア)を探すため、さまざまな人間の死に立ち会い、その魂を選定するための戦いに赴く。

 ……というのが、ものっすごいざっくりしたストーリーライン。

 つまり、戦乙女レナスは人間界に降臨して人間と交流を持ちつつ、アース神族(というか主神であるオーディン)のために、多くの人間の死を看取っていくことになるわけです。

 魂を選定するためにその人間の生きざまに触れ、最後には必ずその死を見届けるレナス。最初は任務として受け入れている彼女ですが、エインフェリアたちと交流を深めていくうちに少しずつその任務に懐疑的になるなど、心境が変化していくことになります。そして、特定の条件を満たしていくことで、彼女はいつしか自らの存在そのものにすら疑問を抱き、最終的には世界の行く末すら変えるほどの、ある大きな結論を出すに至るわけです。

 ……うーん、ネタバレを考慮して書くと、歯切れが悪すぎて何がなんだかわかりませんね。ただ、その結末に至るまでのレナスや仲間たちの葛藤が、目の離せないドラマを生みます。苦心の末にたどり着く真のエンディングのストーリーラインは、それまでの苦労など簡単に吹き飛ばすほどの感動を持って、プレイヤーに強烈なインパクトを与えてくれるのです。これこそがカタルシス! そして、そこに至るまでの道のりはプレイヤー自身が選択していかなければならない(=何も考えず、普通に進めていくだけではまずたどり着けない)という、ゲームならではのインタラクティブ性! 「これを神ゲーと呼ばずしてなんと呼べばいいのか!!」と、暑苦しくまくし立ててしまうほど、僕はこの作品に魅了されっぱなしなのです。

 もちろん、秀逸なのはストーリーだけにあらず。“晶石”と呼ばれる神の力を駆使してダンジョンを踏破していく、パズルとアクションが融合したゲーム性。タイミングよくボタンを押して連続コンボを繰り出し、ド派手な必殺技へと繋げる爽快感バツグンのバトルシステム。自らが選抜したエインフェリアたちの長所を伸ばし、短所を補う“人物特性”という育成要素。2Dドットの最高峰だと断言できる、神々しいほどに美しいグラフィック(そこにあるはずのない空気感や風の匂いすら感じられそう!)。すべてが洗練されており、プレイヤーを惹きつけてやまない魅力にあふれています。

『ヴァルキリープロファイル -レナス-』 『ヴァルキリープロファイル -レナス-』

 結びの文章としてはありきたり過ぎて、自分でもほとほと嫌になるのですが、この記事を読んで少しでも興味を抱いた人はぜひ遊んでみてほしい名作です。だって、それでファンが少しでも増えてくれれば、それだけ続編の可能性にも繋がるってものではないですか!!(安直過ぎ?)

 以上、かつての記事担当ライターとして、何よりイチ『ヴァルキリー』ファンとして、『ヴァルキリープロファイル3 -アーリィ-』に出会える日をずっと待ち続けているTDBでした。きっとたくさんのファンが、いまだ僕と同様の心境であると信じて。とにかく今は、少しでも多くの人にこの神ゲーに触れてもらえればうれしいなと思います!

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■10年経っても色あせないやり応え抜群の育成・恋愛SLG

●やままや:『金色のコルダ』
●メーカー:コーエーテクモゲームス ●発売日:2005年11月10日

『金色のコルダ』

 ある日突然、音楽の妖精である“リリ”を見てしまった普通科の主人公が、リリからもらった魔法のヴァイオリンを手に学内音楽コンクールに出場することになるが……という、クラシック音楽を題材にした育成・恋愛シミュレーションゲームの『金色のコルダ』。

 一応“恋愛”シミュレーションなはずなんだけど、育成部分=楽譜や解釈のベルを集めて練習して1つの曲を作り上げていく楽しさに夢中になりすぎて「恋愛忘れてた!」ということも高確率で起こるゲームです。

 だからといって恋愛面が薄いわけではまったくなく、恋愛対象キャラクターたちと音楽を通して絆を深めていくやり取りに悶えてしまうこともしばしば。キャラクターのセリフ回しは自然かつ等身大なのに、ヘタにベタベタな甘いセリフを言われるよりよっぽど好かれていると思えてしまう。そんな言葉の妙も楽しめるのではないでしょうか。

『金色のコルダ』 『金色のコルダ』

 このタイトル自体は当初PC版がリリースされ、PS2を経てPSPに移植されました。移植の際におまけモードがものすごく充実。元々攻略しがいのあるゲームでしたが、やりこみ度がさらにアップしています。

 さまざまな条件をクリアしていくとおまけイベントが見られるようになる“想い出のひととき”が39種類も収録。さらにゲーム中に体験したイベントを自由に見ることのできる“想い出の時間”のイベント総数はなんと541! “1/541”と表示されたからには“541/541”まで全部埋めたくなるのが人情というものでしょう。おかげで発売日から毎日プレイし続けて1カ月半かかってコンプリートした時の充実感は半端じゃありませんでしたよ。

『金色のコルダ』 『金色のコルダ』

 ちなみに、PSP版『金色のコルダ』が出たのは2005年11月ですが、その約2カ月前に『セラミック・ホワイト』のPSP本体が発売されました。まだPSPを持っていなかった私は白いボディに惹かれ「『コルダ』発売を控えた今しかない!」とPSP本体を買いに走った記憶があります。

 それから8年以上経った今ではPSP本体も3代目になり、ソフトも何十本と積み重なっていますが、私の中で“PSPといえば『金色のコルダ』”と連想されるタイトルになっています。

 そして、最近“UMDパスポート”を利用してPS Vitaで久しぶりにプレイしてみたのですが、やっぱりいいものはいい! 私は本当に『金色のコルダ』が大好きだと再認識してしまいました。『2』以降の便利なシステムを経験してると少し攻略が大変かも知れませんが、気軽に始められる価格の廉価版が出ているのでぜひ一度プレイしてみてくださいね。


■英雄三代論“アンジール、ザックス、クラウド”という系譜

野村一真(電撃オンライン編集長):『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』
●メーカー:スクウェア・エニックス ●発売日:2007年9月13日

『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』

 『ファイナルファンタジーVII(FF7)』の主人公といえば、かの有名なクラウド。彼のキャラクター性や活躍は、『FF7』本編をはじめ、コンピレーション・オブ・ファイナルファンタジーVIIプロジェクトの1作品である『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』などによって、広く知られているところだが、このたび私がピックアップするPSPタイトル『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-(CCFF7)』の主人公であるザックスは、クラウドに比べると今ひとつ知名度が低い印象を受ける。

 だが、ザックスは『FF7』シリーズにおいて非常に重要な存在である。クラウドに多大な影響を与えた存在がザックスであり、『FF7』においては、クラウドが模倣する人格のベースとなるキーパーソンの1人として描かれていたりする。言い換えれば、ザックスがいなければ『FF7』におけるクラウドは成立しない。

『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』 『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』

 こうした観点のもと、クラウドに対するザックスの影響という視点で『CCFF7』のストーリーを追っていくと、物語の深部が見えてくる。

 “強くて有名”という、単純な英雄になることを夢見ていたザックスが、“本当の英雄像”を模索していく姿が描かれる『CCFF7』。このザックスの人格形成に大きく影響を与えたのが、先輩ソルジャー(1st)のアンジールである。

 弱者のために剣を振るい、世を苦しめるものすべてと戦う。これを理想とし、その想いを「夢と誇りを持つこと」という言葉で繰り返し表現するアンジール。この言葉はやがて遺志となり、ザックスへと受けつがれていく。

 『CCFF7』と『FF7』にて、アンジール→ザックス→クラウドという系譜を見ていくと、英雄三代論(三代にして英雄は成る、または家系が大成するという説。自説の可能性あり)にも結びつく。例えば戦国時代の場合、奥州の伊達家(晴宗、輝宗、政宗)がそれに該当し、江戸時代であれば徳川家(家康、秀忠、家光)に通じるだろう。これら歴史上の人物すべてを英雄としてくくるのは極論でもあるが、『CCFF7』をプレイし、ストーリーを紐解いていくと、こうした事象を思い浮かべずにはいられない。

 クラウドが振るう、あの巨大なバスタードソードは、アンジール、ザックスと続いた英雄の系譜の証であり、引き継がれた遺志の象徴ともいえる。そしてクラウドは、『FF7』にて、星の命を救う者となる。

『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』 『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』

(C)2007 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA


■おしおきが恥ずかしいって? RPG好きならプレイしないと損ですよ!

りえぽん:『クリミナルガールズ』
●メーカー:日本一ソフトウェア ●発売日:2010年11月18日

『クリミナルガールズ』

 PSPのような携帯ゲーム機は、いつでもどこでもちょっとした時間でちまちまとゲームを進めることができるので、RPGやADVなどじっくりプレイするゲームをよくプレイしていたりえぽんです。いろいろなPSPのRPGをプレイしましたが、自信を持ってオススメできるRPGは、日本一ソフトウェアさんから発売された『クリミナルガールズ』です!

 地獄に落ちた少女たちを更生させるため、教官として一緒に“地獄の塔”を攻略していくRPGなのですが、この“主人公(=自分)が教官”というのがポイント。塔にはモンスターが出現し、もちろんバトルすることになりますが、アルバイトで教官になった主人公には戦う能力がありません。敵と直接戦うのは7人の少女たち。彼女たちが、自分がやりたい行動を“提案”してくるので、その中から1つだけを選ぶことで戦闘が進みます。このシステムが本当におもしろい! 自分ですべて命令するのとも、完全なAI戦闘とも違う絶妙なバランスで戦闘が楽しめます。自分が思っている提案が出なくてやきもきすることもありますが、そこを含めてとてもよくできた戦闘システムだと思っています。同じようなシステムのRPGがいまだにないのも、『クリミナルガールズ』がオススメできる理由ですね。

『クリミナルガールズ』 『クリミナルガールズ』

 そして、もう1つのポイントがちょっとHな少女たちへのおしおき! RPGとしてのシステムよりもおしおきのほうがこのゲームのイメージとして強すぎるので、プレイしていないという人もいるかと思うのですが……。おしおきすることで戦闘での提案の種類が増えるので、おしおきはとっても大事なんです。「おしおきなんて恥ずかしい!」と思っている人も、きっとプレイすればおしおきの大切さがわかってくれるはず……!

 ストーリーもすごくオススメ! Hなおしおき目当てでプレイしたのにストーリーで感動した! というプレイヤーも多い本作。特に、彼女たちが地獄に落ちてしまった理由が明らかになる中盤の展開が必見です。戦闘システムとストーリーのおかげで、キャラクターへの愛着がかなり高くなります。誰もがお気に入りのキャラクターができると思いますよ! ちなみにりえぽんはシンが大好きです。プレイした方ならわかると思いますが、ネットスラング満載なおもしろいセリフが多いことと、PTメンバーに指示できるOPR(オペレーション)系スキル提案の残念っぷりがたまらないです(笑)。キャラクター重視のRPGが好きな人に、ぜひプレイしてみてほしいタイトルです! なお、PS Vitaで本作のパワーアップ版となる『クリミナルガールズ INVITATION』が発売されていますので、今からプレイする方はこちらもオススメですよ!

『クリミナルガールズ』 『クリミナルガールズ』

(C)2010 Nippon Ichi Software, Inc.


■大山のぶ代さんが演じる破天荒キャラクターに出会えて本当によかった

まり蔵:『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』
●メーカー:スパイク・チュンソフト(当時はスパイク)
●発売日:2010年11月25日

『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』

 “PSPの傑作”と言われて最初に思い浮かぶのが、スパイク・チュンソフト(当時はスパイクでした)の推理アクションゲーム『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』です。昔からミステリー系のゲームが好きでいろいろなタイトルをプレイしてきましたが、近年はいい意味でも悪い意味でも安定したジャンルになったなと思っていました。『ダンガンロンパ』は、そんな私に「あぁ、推理ゲームはまだこんな可能性を秘めていたんだなぁ」と思わせてくれたタイトルです。

 『ダンガンロンパ』のおもしろい点を挙げていくと、それこそキリがありません。個性豊かな超高校級キャラクター15人による閉鎖空間でのコロシアイ、意表を突かれる殺人トリック、真相が紐解かれていくたびにゾクゾクするシナリオに加えて、血液をピンクで表現するサイコポップなグラフィック、スタイリッシュで残酷なオシオキシーン、そして疾走感あふれる推理アクションなど、ユーザーを楽しませる要素がぎっしり詰まっています。キャラクターボイスを緒方恵美さん、石田彰さん、櫻井孝宏さん、日笠陽子さん、鳥海浩輔さん、斎藤千和さんといった人気声優陣が担当しているところも注目ポイントの1つでしょう。

『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』 『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』

 でも私が一番オススメしたいのは、本作の舞台である希望ヶ峰学園の学園長にして黒幕の“モノクマ(CV:大山のぶ代さん)”です。白と黒のツートンカラーが印象的で、一見かわいく見えるこのクマのキャラクターが、なかなか突き抜けた性格をしていましてね。黒幕と言われるだけあって、とにかく言動が破天荒……というかすべてが酷い。国民的有名声優の大山のぶ代さんが演じるキャラクターに、「殺しちゃえばいいじゃーん!」とか「オマエラ、ゆとり世代の割りにはガッツあるんだね……」とか、さらには下ネタまで言わせちゃうのは、なんかもう本当にすごい。モノクマに出会えただけで、このゲームをプレイしてよかったと思いましたね。

 ちなみに現在、PS Vita向けに『ダンガンロンパ 1・2 Reload』が発売されています。これは、PSP用ソフト『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』と続編の『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』が1つになって、さらに新要素が加わったソフトです。続編では、『サザエさん』のタラちゃん役などでおなじみ貴家堂子さんが声を担当する、“モノミ”というキャラクターも出てきます。これだけでちょっとやりたくなりますよね? 『ダンガンロンパ』は、アニメやコミック、ノベル、舞台とさまざまなメディアで展開される人気コンテンツですが、個人的にやはり原点のゲームが一番好きです。まだ未プレイの方は、ぜひPS Vitaの美しいグラフィックで最高の推理ゲームを堪能していただければと思います。

『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』 『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』

(C)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.


■愛する嫁さんとクロスレンゲキ! 自分の人生を変えた運命の一作

そみん:『.hack//Link』
●メーカー:バンダイナムコゲームス ●発売日:2010年3月4日

『.hack//Link』

 28歳の時にPSPと出会い、10年の間に出会った名作や傑作の数々。PSPというハードには本当にお世話になりましたが、あえて一番の思い出を選ぶとすると、嫁さんをくどく時に使ったアクションRPG『.hack//Link』となります。

 知り合ってから数カ月。歩くような速さで仲を深めて、ゲーセンや猫喫茶でまったりしながらも、あと一歩が踏み出せない。そんなもどかしい時期に彼女が何気なくこぼしたのが「『.hack』ってゲーム、おもしろいんだよね」というひと言。「じゃあ、当然最新作の『.hack//Link』も遊ぶんでしょ?」と返したところ、「でも、PSP持ってないの」とのこと。

 次に会った時にはPSP本体をプレゼントして、『.hack//Link』の発売後には協力プレイを楽しみながら絆を育んでいきましたとさ。めでたし、めでたし。『.hack//Link』を例に例えると、リンクジャッジ(仲間からの提案に対する返事で、仲間との絆が増減するシステム)でバッチリ正解を選べた感じですね。

『.hack//Link』 『.hack//Link』

 なんてのろけ話はさておき、アニメやコミック、ゲームなど、さまざまなメディアで展開した『.hack』シリーズすべてを遊び直したり読み直したりしようとすると時間がかかります。が、『.hack//Link』はシリーズの最終章であると同時に全作品を包括する総集編であり、さらに時代を超えてキャラクターたちが集結する夢の競演作としての意味合いも備えているので、比較的短時間でどっぷりと『.hack』の世界にひたれるんですよね。

 ちなみに自分のお気に入りのキャラは、ぴろしさんと揺光様。過去作でもさんざん一緒に冒険をしたパートナーですが、『.hack//Link』では新たなエピソードが用意されていてうれしかったです。冒険中の雑談や、バトル中のセリフの掛け合い、クロスレンゲキ(主人公と仲間のド派手なツープラトン攻撃)など、とにかくキャラクター性を大事にした演出が多いところもポイントかと。

『.hack//Link』 『.hack//Link』

 たまに『.hack』シリーズのファンなのに『.hack//Link』を遊びそびれている人に会いますが、もったいないと断言できます。逆に『.hack//SIGN』とか『うででん(.hack//黄昏の腕輪伝説))』とか、シリーズ作品のうちどれか1つでも好きなだけでも、『.hack//Link』を遊べば複数作品との密接なリンクが見えて、より『.hack』シリーズを好きになれると思います!

 そんなこんなで2012年1月の劇場アニメ『ドットハック セカイの向こうに』を見に行くころには結婚していた僕と嫁さんは、今はスマホアプリ『ギルティドラゴン 罪竜と八つの呪い』を遊んでいます。我が家の絆をつないでくれた『.hack//Link』は、いつか子どもにも遊ばせて、ぴろしさんのテーマ曲を歌わせたいと思います。

『.hack//Link』 『.hack//Link』

(C)BANDAI NAMCO Games Inc.


■“通勤途中にプレイじゃもったいない”じっくり浸りたくなる一本

さささ:『ファイナルファンタジー零式』
●メーカー:スクウェア・エニックス ●発売日:2011年10月27日

『ファイナルファンタジー零式』

 僕が選ぶPSPの傑作ゲームは『ファイナルファンタジー零式』です。選んでおいてなんですが、購入当時の心境は、携帯機だし通勤途中とかに遊べばいいや程度のものでした。

 そんな考えを抱きつつゲームをスタート。『FF』シリーズおなじみの美麗なオープニングムービーが流れていきます。「相変わらず映像綺麗だな……ん? いきなり雰囲気重くないか!? しかも結構グロい!」

 プレイした方なら当然ご存じでしょうが、この『ファイナルファンタジー零式』は全体的にストーリーが重く、世界観も複雑です。僕が想像していたような“若者たちが青春しながら世界を救う”なんて単純な話ではありません。

 舞台となる“オリエンス”は“死者の記憶”が失われる世界。家族だろうが恋人だろうが、死んでしまったらすべて忘れ、思い出などは残らないのです。

 物語は、“アギト(救世主)”を目指し、朱雀魔道院で日々訓練する“候補生”の主人公と、その中のエリートだけで構成された“クラス0(ゼロ)”の面々が“クリスタル”をめぐる熾烈な戦争に投入されるところから始まります。

 この“重たさ”に一気に引き込まれてしまった僕は、そのまま10時間程プレイし、寝ずに出勤したのを覚えています。その際、もちろんPSPは自宅に置いていきました。これは通勤途中にやるにはもったいないゲームだなと(笑)。

『ファイナルファンタジー零式』 『ファイナルファンタジー零式』

 さらにストーリーを進めていき、操作キャラクター1人1人について知れば知るほど深く感情移入し、ますます『ファイナルファンタジー零式』の世界にのめり込んでいきました。ラストバトル~エンディングの流れは、“BUMP OF CHICKEN”が歌うテーマソング『ゼロ』とのマッチングも完璧で、本当に感動したものです。

 クリア後の周回要素も豊富で、能力値や装備の引継ぎ、2周目以降限定のサブイベントやミッションなど、『ファイナルファンタジー零式』には繰り返し遊べる要素がふんだんに盛り込まれているため、周回プレイを楽しみつつ、さらに深く物語を理解することができます。

『ファイナルファンタジー零式』 『ファイナルファンタジー零式』

 と、ほぼ思い出だけを書いてきましたが、当時の僕のように“暇つぶしの手段”としてゲームをプレイすることが増えている方に、特にオススメしたいと思います。

(C)2011 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA


■15年間思い続けるデジャヴの少年

ミゲル:『ペルソナ2 罪』/『ペルソナ2 罰』
●メーカー:アトラス ●発売日:2011年4月14日/2012年5月17日

 1999年、2000年に発売されたPS用ソフト『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』は、当時高校生だった私の青春のほぼすべてだった。それから12年が経ち、PSP用ソフトとして同名作品が発売されるにあたり、“モードの追加”、“ブラッシュアップ”などの新要素にもちろん胸が弾んだが、携帯機でまた『ペルソナ2』――特に『罪』をプレイできるという純粋な喜びが何よりも大きかった。『ペルソナ』シリーズに一貫するスタイリッシュなデザインは、いつプレイしても今の時代の一歩先を感じさせる。

『ペルソナ2 罪』 『ペルソナ2 罰』

 初めて『罪』のパッケージを見た人は、ちょっとしたおどろおどろしさを感じるかもしれない。けれども作中……特に序盤はユーモアに富んでおり、青春の甘酸っぱさを味わえる物語が展開する。学園一のイケメン、底辺高校の番長、恋するカンフー女の子などなど、魅力的なキャラクターたちが画面の中をチョコチョコと動きまわり、ポップな会話を繰り広げる。しかしその甘いデコレーションの中には、アトラス作品ならではの“狂気”や“歪み”が姿を隠している。

『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』 『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』
『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』 『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』

※画面は『ペルソナ2 罪』のもの。

 “噂が現実になる”というコンセプトが何よりも斬新だった。街の人々の噂によって、時代劇好きが誇張されたハンバーガーショップの店員が「ござる」口調になってしまったり、路上販売を行う外国人がマフィアの関係者になってしまったり(笑)。しかしそんな他人の噂話は、無遠慮で自分本位で、無自覚の悪意に満ちている。このコンセプトは、ユーザーへ“歪み”をゆるやかに示唆していた。

 コンセプトは“噂システム”としてゲームならではの要素にも生かされており、ラーメン屋や洋品店で装備品を購入できるようになるというロー・ファンタジーの説得力を強固にしている。主人公たちが利用したい噂は、3,000円を払うと街の探偵事務所が世間に広めてくれて現実化するが、そのカジュアルさが逆に不穏だった。

『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』 『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』

※画面は『ペルソナ2 罪』のもの。

 主要キャラクターだけでなく、街で生活するあらゆるNPCに圧倒的な個性が存在する点も、私が本作へのめり込む要素の1つになってくれた。彼らは架空の人物ではなく、デフォルメされただけの実在する“誰か”なのではという錯覚すら覚えるほどだ(実際、当時の開発スタッフをモチーフにしたキャラクターも登場する)。

 特に『罪』では、メインストーリーとともに街の人々の群像劇が進行することで、彼らへの興味が強くなっていく。人の噂が現実となり、世間の都合のいいほうへと性格が変化していく人々。それをおもしろ半分で見守っている自分に気付いた時、自分も無自覚の悪意にまみれているのだと自覚する。

『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』 『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』

※画面は『ペルソナ2 罪』のもの。

 初代PS版をプレイした当時の私は、歳が近かったためか『罪』の主要メンバーへの共感が大きかった。子どもならではの全能感をもって、世界を救おうと達哉たちと舞台である珠閒瑠(すまる)市を駆け抜けた。誰しもが一度は思い悩んだことがあるだろうコンプレックスや、消してしまいたい過去と対峙する彼らを全力で応援していたし、その戦いの末にあるハッピーエンドを信じていた。

 しかし、思いもよらないエンディングがプレイヤーと達哉たちを待ち受けている。この世の中には心の奥を素手で無遠慮にかき回されるような、やるせなさと“理不尽”があるということを、私は『罪』の世界で教えられたと言っても過言ではない。もちろん、「それでも、それでも……!」と立ち向かう大切さも。

『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』 『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』

※画面は『ペルソナ2 罪』のもの。

 「忘れられるよりも哀しい女は、人を縛る女」だという舞耶さんの言葉を、15年前の自分は理解できなかった。けれどPSP版で改めてプレイした時、当時はただ「そんなに悲しいことを言わないで……」と否定するしかなかったその言葉に、妙な納得が生まれていた。

 15年前、私にとって舞耶さんは圧倒的なお姉さんだった。PSP版が発売された時、私は舞耶さんの年齢を越えていた。それから3年経った今、『罰』の主要キャラクターの中では最年長のパオフゥに近づいていることに気付く。

 歳を重ねてプレイするたびに、私は新しい発見や理解を得ているように思う。特に『罰』は大人組の話であったため、当時とはまったく異なる感想が生まれている。それは“自分が成長しているから”というわけではなくて、何かを諦めることを覚えたり、臆病になったりしているからこその気がする。

『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』 『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』

※画面は『ペルソナ2 罰』のもの。

 『罰』のエンディングのその後、『罪』の達哉は幸せだったろうか。その答えにたどり着けないまま、15年が経ってしまった。妄想癖が激しくて恥ずかしい話だけれど、5年前の『ペルソナ2』発売10周年の時、私は達哉に「それでも俺はあの世界が好きだ」と告白される夢を見た。自分で作り出した妄想の産物とはいえ、その夢の達哉の笑顔にとても救われたのを覚えている。15年の間、私は変化を繰り返し、考えも大きく変わっていると思う。けれども15年前と変わらず、今もずっとずっとデジャヴの少年を思い続けている。

(C)ATLUS (C)SEGA All rights reserved.


【名作選その1 紹介タイトル一覧】

スタッフ

タイトル

はるべぇ

『AKIBA’S TRIP(アキバズトリップ)』

TDB

『ヴァルキリープロファイル -レナス-』

やままや

『金色のコルダ』

野村一真(電撃オンライン編集長)

『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』

りえぽん

『クリミナルガールズ』

まり蔵

『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』

そみん

『.hack//Link』

さささ

『ファイナルファンタジー零式』

ミゲル

『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』

→PSP名作選の後編では10本をチョイス!