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2014年7月16日(水)

『ペルソナQ』の音楽は喜多條敦志氏&小西利樹氏からこうして生まれた! 目黒将司氏や土屋憲一氏の話題も飛び出す濃厚インタビューをお届け

文:ミゲル

 アトラスは、音楽CD『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』を本日7月16日に発売した。全54曲を収録したディスク2枚組構成で、価格は2,900円+税。

『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』

 この記事では、3DS用RPG『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス(PQ)』のサウンドコンポーザーを務める喜多條敦志さんと小西利樹さんへのインタビューをお届けする。これからのアトラスサウンドを背負って立つお2人の、オススメ楽曲や制作秘話を試聴動画とともに紹介。また、両人のアトラス入社の裏話、さらに先輩であるアトラスサウンドチーム土屋憲一さんと目黒将司さんの素顔までも紐解いてゆく。

 記事の終わりには、喜多條さんと小西さんへメッセージを送れるフォームも設置しているので、ファンには最後までじっくりとご覧いただきたい。なおこのメッセージ投稿は、クマ&コロマルのメタルチャームが抽選で当たる特典付きだ。


『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』
▲小西利樹さん(左)と喜多條敦志さん(右)。八十神高校の廊下(?)にて。

喜多條敦志さん(以下、敬称略):1980年生まれの33歳。2006年にアトラスに入社。『ペルソナ3 フェス』、『グローランサーIV』などのタイトルに携わった後、『HOSPITAL. 6人の医師』や『東京鬼祓師 鴉乃杜學園奇譚』、『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ(P4U)』などを担当する。

小西利樹さん(以下、敬称略):1978年生まれの35歳。2001年にアトラスへデバッガーとして入社。2005年にプランナーとして再入社した後、2010年にサウンドチームへ移籍した。『デビルサバイバー2』やPSP版『ペルソナ2 罪』、『ペルソナ2 罰』のサウンドにも携わるが、新曲を多く書き下ろした今回の『ペルソナQ』が代表作となる。


■アトラスのサウンドを作りたい! 9年間アタックし続けた小西さん

――アトラスで一番最初に手掛けたタイトルと、入社の経緯を教えてください。

喜多條:僕は最初に、土屋憲一さんの手伝いで、『グローランサーIV』に携わりました。アトラスに入る前は、公務員になるための勉強をしながら花屋の工場でアルバイトをしていました。大学も経済学部ですし、ゲームにも音楽にもまったく関係がないですね(笑)。小西さんも外国語大学ですし。

小西:僕は当初、デバッガーとしてアトラスにアルバイト勤務していたんです。ですので、最初に携わったのは、PS用ソフト『ハローキティのおしゃべりABC』でデバッグを……って知っていますか? マイクを使ってキティちゃんに話し掛けて英語を勉強できるゲームなんです。

――小西さんの経歴は不思議ですよね。

『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』

小西:僕が大学を卒業した時、アトラスはサウンドを募集していなかったんですよ。「とりあえず入ったらなんとかなるかもしれない」とデバッガーの募集に応募しました。僕は飛び抜けた作曲の才能があるわけでもないので、とりあえず中に入れば、どこかでサウンドへの道につながるかもしれないと考えたんです。

 その後、プランナーとして『ペルソナ3(P3)』、『ペルソナ4(P4)』などを担当した後、2010年に縁があってサウンドに移動させてもらいました。

――アトラスのサウンド部はとても狭き門のように見えます。

喜多條:僕がアトラスに入社した当時は、タイトルをたくさん抱えている中、サウンドに目黒さんと土屋さんの2人しかいなかったんです。だから、僕は運がよかったんですね。

小西:その時は僕もプランナーとしてアトラスにいたんですけれど……。目黒さんと土屋さんに「サウンドをやりたいんです」と声をかけ続けている中、気が付いたら喜多條くんが入っていて! 小塚くんの時も!! 僕の危機感たるや(笑)。

(一同、笑い)

※アトラスのサウンドチームは現在5名。入社(配属)順に、土屋憲一さん、目黒将司さん、喜多條敦志さん、小塚良太さん、小西利樹さんとなる。

――どうしてゲームを作ろう、ゲームの音楽を作ろうと思われたのですか?

喜多條:中学生の始めごろに親がパソコンを買ったのですが、当時から好きだった小室哲哉さんがコンピュータを使っていると知って、打ち込みを始めたのがきっかけでした。そこから、楽譜を買って来て打ち込んでみたり、当時からゲームは大好きでしたので、ゲームBGMをコピーしたりしていくうちに、興味を持っていきましたね。

小西:僕は、音楽に興味を持ち始めたきっかけがゲームだったんです。『ファイナルファンタジー』シリーズや『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽をよく聴いていましたが、その中に『女神転生』シリーズもあって。自分は何がやりたいのかと考えた時に、“普通の音楽を作るよりもゲームの音楽を作りたい”という気持ちが強くあったんです。

 実は僕が歌の入っている曲を聞き始めたのは、高校、大学時代からなんですよ。それまではインスト曲ばかり聞いていました。いろいろな曲を聴くようになったのは、ここ最近の話なんです。

■ゲーム音楽が好きだ! そんな2人に影響を与えた作品とは?

――お2人とも、音楽を習っていた経験はありますか?

小西:ただ音楽が好きなだけで、習ったことはないですね。ただ僕は大学在籍中の4年間、バンドをやっていました。中学生の時はベースを弾いていましたね。

喜多條:そのベースって、ギターと間違えて始めたんでしたよね(笑)。僕は、大きくなってからピアノ教室に通ったりもしていましたが、打ち込みを始めてから独学で少しずつ覚えました。1人で自主制作的なことはしていましたけれど、バンド活動はしていませんでした。

――ゲーム原体験といいますか、過去に音楽が好きだったゲームはありますか?

『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』

喜多條:ゲームでいうと、僕はテクモさん(現・コーエーテクモゲームス)の『キャプテン翼』ですね! あとは『飛龍の拳』!!

小西:渋いね(笑)。

喜多條:テレビの前にラジカセを置いて録音して、自分だけのサントラテープをよく作っていました。ファルコムさんの『イース』シリーズも好きでしたね。

――『イース』を手掛けた古代祐三さんは、『世界樹の迷宮』シリーズはもちろん、『PQ』にも参加されていますね。

喜多條:古代さんは自分がまだ小さいころから活躍されており、業界の後輩としても1ファンとしても、ご一緒できてとても光栄でした。制作していただいた楽曲はとてもかっこよくて、ある戦闘でしか聴けませんが、ぜひゲーム内で聴いていただきたいですね。

――小西さんの曲は、アトラス作品というゲームの原体験が生きているように個人的に感じます。

小西:アトラスが好きで入社したのもあるので、よく現れているのだと思います。『PQ』の時も何曲かデモを提出した時に、そんなつもりはないんですが「メガテンっぽい」と言われましたね。僕は明るい曲調を作るのが苦手なんですよ。ちょっと暗めのシンプルな曲を書くのが得意なんです。

 古代さんももちろんですが、僕は増子司さんと青木秀仁さんの曲に影響を受けています。今改めて考えると、僕の音楽の芯は昔の『メガテン』シリーズの音楽でできているんだと思いますね。

※増子司:SFC版『真・女神転生』や『真・女神転生if...』、『真・女神転生デビルサマナー』など、アトラスの音楽を支えたサウンドクリエイター。独特の音色を駆使したダークな曲調は、1980年代から現在まで根強いファンを多く持つ。現在は、増子津可燦の名義でも活動している。

※青木秀仁:『魔神転生』、『魔神転生II SPIRAL NEMESIS』、『女神異聞録ペルソナ』の楽曲を数多く手掛ける。有名な『女神異聞録ペルソナ』の楽曲『サトミタダシ薬局店のうた』は、沖辺美佐紀さんが作曲し、青木さんが歌ったもの。2002年、32歳で他界。

■アトラスサウンドチームの先輩・土屋憲一さん、目黒将司さんから学ぶこと

――大先輩である土屋憲一さんと目黒将司さんは、内側から見てどんな方なのですか?

喜多條:目黒さんは、飄々とした見た目の中にとてもしっかりとした芯を持った人です。事前準備もきっちりと行っている人なので、「全然テスト勉強してないよ~」と言いながらも、きっと裏で猛勉強しているタイプです(笑)。とてもストイックな人なので、厳しいことを言われることもありますよ。

小西:目黒さんは、1つの事柄への突き詰め方が半端ではないんです。知りたいと思ったことに対する激しい情熱を持っていて、気になったことはなんでも自分でやってみる行動派ですね。

喜多條:初心者だったのが、次に会った時には専門家になっているんですよ。

小西:自分でギターのエフェクターを作ってみたり、釣りに一緒に行った時には、ルアーを自作して来たり……。あまり“目黒さんはこういう人”と周囲に言うと「そっとしておいて」と怒られてしまいますが(笑)。

喜多條:土屋さんも、ゲーム制作やサウンドに対してすごく真剣に向き合う人なので、昔は人とぶつかることもあったと聞きます。今では、ご意見番として若い人を立ててくれるような、面倒見のいい人ですね。質問にも気さくに答えてくれるし、相談に乗ってくれることも多いです。

 ただ面倒見がよすぎて、いろいろなタイトルでサウンドが困った時の駆け込み寺のようになっています。それでいつも、大忙しになってしまっているのが土屋さんなんです(笑)。

――土屋さんは、“常にゲーム作りの現場にいたい”と以前のインタビューでおっしゃっていましたね。

小西:土屋さんも凝り性ですよね。音楽だけではなく、カメラしかり、猫しかり……。技術面においてアドバイスをもらうことはありますが、「こうしなさい」とカッチリ型にはまった指示をされることは、まずないですね。

 自分で考える部分を残しておいてくれているというか、きっかけを与えてくれて、“後は自分で考えて個性にしてほしい”というところがあるんだと思います。ただ、「カメラは買いなさい」「猫は飼いなさい」とは言われますね(笑)。

(一同、笑い)

――お2人から、何か学んだ、教わったことはありますか?

喜多條:何かを指示されて教わるといったものではなくて、2人の背中から仕事ぶりや考え方を教わっている感じがします。

 目黒さんからは、作曲はもちろん、スケジュールや予算といった仕事の考え方を。土屋さんからはそのタイトルにおける曲やSE、ボイスなど、総合的なサウンドによるアプローチの仕方を学ばせてもらっています。

小西:逆に細かく指示されない分、全部の責任が自分に掛かってくるんですよ。サウンドチーム全員、この緊張感をもって仕事をしていると思います。

喜多條:しかし、2人とも偉大ですよね。

小西:そうですね……。“継続は力なり”と“好きこそものの上手なれ”を地で行く人たちです。同じ会社で、あれだけずっとタイトルを作り続けていくというのはすごいことだと思います。目黒さんは、「俺はサラリーマンだ!」と言っていますからね。

■サウンドチームの中でも、『真・女神転生IV』を手掛けた小塚さんは異色な存在?

――先輩方の曲をアレンジされることが多いと思いますが、プレッシャーを感じることはありますか?

喜多條:プレッシャーは特に感じませんね。目黒さんと僕は、曲の方向性が近い部分があると思っているので、自己流にアレンジしやすいです。土屋さんの曲も原曲がしっかりしているので、アレンジの幅を広げやすいと思います。

小西:僕はありますよ! 目黒さんの曲はもちろん、喜多條くんの曲をアレンジする時も、自分が持っていない要素がたくさん詰まっている中に分け入って行くわけですから、プレッシャーをすごく感じますね……。

喜多條:僕も、小西さんの曲をアレンジすることになったら難しく感じると思います。原曲とまったく違う曲になってしまうかも(笑)。

 ただ、自分が持っていない要素だからこそ、原曲とは違うアレンジができますし、その人らしさが出せるのではないかなと思います。

『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』

――個人的な意見ですが、小西さんは土屋さんの曲調に、喜多條さんは目黒さんの曲調に通じるものを感じます。

喜多條:そうですね。土屋さんも小西さんも、やはり同じ“メガテン好き”として通じるものがあるのだと思います。

 その中で、小塚くんはいい意味でちょっと違うところにいる気がします。なので、小塚くんの曲はいつも新鮮に感じますね。でも、僕らとは異なる色を持ちつつも、アトラスらしい色がきちんとあるんです。

小西:目黒さんも、「小塚だけはどうやって曲を作っているのかわからない……」と言っていましたね(笑)。

喜多條:僕も、どうすればああいった曲を作れるのかわからないです。小塚くんは音の使い方も色鮮やかで、自分らしくアウトプットするのがとても上手ですね。

――お2人はどのように作曲されているのでしょうか。

喜多條:この限りではありませんが、僕は最初に伴奏(コード進行)を作って、曲のイメージを固めたところで、メロディやリズムを加えて仕上げていくことが多いです。

小西:僕は、まず音を出してみるところからスタートします。曲全体が頭に浮かぶといったことは、まぁ……まずないので、とにかく考えて考えて、最初の音を鳴らすところからですね。『PQ』に関しては、鍵盤を使って作った曲が多いです。

 今までの僕の曲は、大体の曲にギターの音が入っているんです。でも今回は、ギターの音を使わない、新しい曲作りにも挑戦しました。そのタイトルに合った、いろいろな手法が大切ですから。

■『P3』だけでも『P4』だけでもない、新しい『PQ』の世界

――『PQ』の作曲にあたり、『P3』らしさ、『P4』らしさを心掛けた点はありますか?

喜多條:『ペルソナ』シリーズらしさというのは一概には言えず、なかなか難しいものですよね。ただ今回は、「自分なりの『ペルソナ』シリーズらしさが出せる曲を作るように」とは目黒さんから言われていました。

 それを踏まえたうえで、『P3』と『P4』のどちらの雰囲気も感じられるように気を付けましたが、なかなか難しかったです。最初はアレンジ曲で構成しようという意見もあったのですが、それよりも新曲にしたほうが両作どちらにも傾倒しない、『PQ』らしいものができあがると思ったんです。

小西:僕は今回、『P3』『P4』らしさというものは全部喜多條くんに任せてしまおうと(笑)。ただ曲を作るうえで、橋野さん(橋野桂チーフプロデューサー)や金田さん(金田大輔ディレクター)から「『ペルソナ』は“オカルト”なんだ」というアドバイスを何度も受けました。

 そういったオカルト的な怖さや不穏さといった、シリーズらしい要素を自分なりに出してくことに注力しましたね。ですので、“『P3』と『P4』の曲を踏襲した”という曲はあまりないかもしれません。

喜多條:結局、目黒さんの曲を真似しても、“自分っぽい目黒さんの曲”にしかなりませんしね。

小西:そう言いつつも、上がってくる喜多條くんの曲を聴いて、「めっちゃ『ペルソナ』やん……」と青くなりましたよ(笑)。この中にどうやって入って行こうかな……と。

(一同、笑い)

――試行錯誤が多かったとのことですが、転換のきっかけとなった曲はありますか?

小西:一番最初にゲーム上に流し込んだのが、『ごーこんきっさ』の曲だったんです。何も気にせず、『PQ』という作品、そしてシーンへの合致にだけに焦点を定めて作ったものでしたが、この曲から視界が開けた気がします。

●『ごーこんきっさ』/作曲:小西利樹

※2014年7月16日発売『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』(Mastard Records)

喜多條:僕は、『P3』バージョンの戦闘曲『Light the Fire Up in the Night “KAGEJIKAN”』ですね。戦闘曲は、タイトルの方向性を示すものになりえるので、僕は比較的早い段階に完成させるようにしています。

小西:これを聞いた時は、「ヤバイ」と思いましたね。いろんな意味で!

喜多條:そんな! 最初に聴いてもらった時は、まだ仮メロだったじゃないですか(笑)。

小西:いやいやいやいや……。「完成形は、これがLotusさんのラップと川村さんの歌になりますよ」と聞いた時には、もうね……!

(一同、笑い)

●『Light the Fire Up in the Night “KAGEJIKAN”』/作曲:喜多條敦志

※2014年7月16日発売『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』(Mastard Records)

――ボーカル曲と言えば、階層ボス戦の『Laser Beam』もカッコイイですよね。

喜多條:ラップと作詞を担当してくださったLotus Juiceさんが素晴らしくて、どんな曲でもかっこよくなってしまうんですよ(笑)。もちろんこの曲以外でも、川村ゆみさん、平田志穂子さん、皆さんそれぞれが素晴らしくて。Lotusさんをはじめ、歌詞を書いてくださった方々にも助けられた部分がとても大きいです。

 オープニングの作詞をしてくださったベンさん(Benjaminさん)も、シナリオプロットを渡しただけで深いところまで読み取ってくれて、いつもタイトルに合った素晴らしい歌詞を書いてくださいますね。

※Lotus Juice(ロータス・ジュース):『ペルソナ3』関連作品や、『PERSONA3 THE MOVIE』関連作品など、『ペルソナ』シリーズ関連作品に多く参加するヒップホップアーティスト。『ペルソナQ』の『Light the Fire Up in the Night “KAGEJIKAN”』や『Light the Fire Up in the Night “MAYONAKA”』、『Laser Beam』では作詞も手掛ける。

※川村ゆみ:数々のメジャーアーティストのコーラスを手掛ける一方、CMソングやアニメ、ゲーム作品など、さまざまなジャンルの楽曲に参加するボーカリスト。『ペルソナ3』関連作品の楽曲に多く参加する中、エンディングテーマ『キミの記憶』では高い歌唱力を披露した。

※平田志穂子:『ペルソナ4』関連作品でボーカルを務めるアーティスト。『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』やTVアニメ『ペルソナ4』でもテーマ曲を担当し、平田氏の歌声=『ペルソナ4』という印象を根強いものにした。

●『Laser Beam』/作曲:喜多條敦志

※2014年7月16日発売『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』(Mastard Records)

――ボーカル曲を作る時とインスト曲を作る時とで、何か作曲に違いはありますか?

『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』

喜多條:僕はあまり変わりませんね。メロディやコード、ベースラインなど、その時によって違いはありますが、まずフックになるものを作って、そこから曲を発展させていきます。

 作曲する時は、目黒さんから言われた「魂のこもったメロディを作りなさい」という言葉を意識しています。メロディやサビにメリハリがある曲作りを心掛けていますが、そればかり気にして独りよがりになってもいけないので、タイトルのイメージやシーンとのバランスにも注意しています。

――目黒さんの新曲を改めて聴いた時、無駄な音が一切ないことに驚きました。それが“魂のこもったメロディ”の体言なんでしょうか。

喜多條:うーん、どうでしょう(笑)。ただ目黒さんの曲は、昔に比べるととてもソリッドに削ぎ落とされている印象がありますよね。フレーズ1つ1つがよく考えられていて、しっかりと練られた曲になっていますし。それが“魂がこもったメロディ”なのかなと思っています。

――「曲のここに注目してほしい!」という部分はありますか?

小西:普通に静かな曲でも、その中にある不穏さを感じてもらいたいです。曲の中に隠したオカルトテイスト、いわゆるちょっと怖い部分を気にして聴いてもらえたらうれしいですね。

 例えば、『憧憬と本能』は、普通に終わっていくのではなくて、最後にSEチックな音を入れて怖~い感じにしてあるんですよ。

●『憧憬と本能』/作曲:小西利樹

※2014年7月16日発売『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』(Mastard Records)

喜多條:僕は、『P3』と『P4』の両方の要素を感じられるようには作りましたが、逆にそこをさらっと聴き流してもらえたなら成功したなと思います。「違和感がなければOK!」ですね!

 怖さと言えば、3つ目の迷宮は小西さんのサウンドが秀逸で、よりオカルト要素が引き立っていました。小西さんは、自分でSEを付けながら怖がっていましたよね(笑)。

小西:SEを入れたら自分で確認するんですけれど、わかっていながら毎回ビビるんですよ(笑)。

(一同、笑い)

――『P3』、『P4』のダンジョン曲は、アップテンポでキャッチーな印象でしたが、『PQ』の迷宮の曲は全体的にゆったりとしていますよね。

喜多條:『P3』や『P4』のダンジョンは俯瞰視点で主人公が走っているので、ある程度テンポが速いほうがリズミカルに攻略していくことができると思います。『PQ』は、迷宮内が1人称視点で、一歩一歩じっくり攻略していくゲームなので、テンポ感には気をつけています。

小西:テンポの速い曲や、ただ楽しそうな曲など、いろいろと50曲くらい作りましたね……。なくなってしまった曲がたくさんあります。

■喜多條さん&小西さんの「この曲を聴いてほしい!」

――お互いの作品の中で、それぞれ好きな曲はありますか?

小西:喜多條の曲の中では、『key to a mystery』ですね。さらっとした曲なんですが、何か惹かれる不思議な魅力があります。どこが好きかと言われると困ってしまうんですが(笑)。

●『key to a mystery』/作曲:喜多條敦志

※2014年7月16日発売『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』(Mastard Records)

喜多條:僕は小西さんの『おともだち』が好きです! サビに入る前のピアノがグッと来ていいんですよ。とても小西さんらしい曲ですよね。

小西:作りやすい曲となると、こういう曲調になりますね。

 どうでもいい情報なんですけれど、この曲のイントロのシンセの部分は、某ファーストフード店でポテトが揚がった時に流れる「♪テッテレレ、テレレ」の音からインスピレーションを得ています。

――もう、それにしか聞こえなくなってしまうじゃないですか(笑)。

(一同、笑い)

●『おともだち』/作曲:小西利樹

※2014年7月16日発売『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』(Mastard Records)

喜多條:小西さんの曲では、『時計塔』もとてもいいです。すごくいい意味で、小西さんっぽくない感じがします。

小西:プロモーション動画で自分の曲を聴くと、「自分の曲、暗いな……」と思います(笑)。約8分と長い曲ですが、苦労した覚えはないですね。サラサラサラっと比較的スムーズに書きあげた記憶があります。

●『時計塔』/作曲:小西利樹

※2014年7月16日発売『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』(Mastard Records)

――自分自身の曲目の中で、思い入れのある曲はありますか?

小西:僕は『It’s ショウ Time』ですね。こういった曲は、なかなか作ろうと意気込んで作れるものではないので、いい感じに気の抜けた状態で、「こんな曲もどうかなぁ」と作ったものです。

 思い入れのある曲ですが、今こういった曲調のものを作ろうと狙っても作れないですね……。勇気がないんですよ。元は、ごーこんきっさの迷宮で流そうと思っていた曲なんです。

喜多條:シナリオができあがってきて、さて“例の”イベントにどんな曲を当てはめようとなった時に、「あ! あの曲があるじゃないか」と(笑)。それがマッチしました。

小西:デモの段階からアレンジもほぼ施していません。変に飾ってしまうと、この独特な感じがなくなってしまうので……。

喜多條:でも、これでよかったと思います。いい感じに気が抜けていてね(笑)。

●『It’s ショウ Time』/作曲:小西利樹

※2014年7月16日発売『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』(Mastard Records)

喜多條:僕は『changing me』ですね。シナリオを読みながら、寂しいけれど明るい曲にしようと作った曲なんです。本作でシナリオを手掛けた木戸さん(木戸梓さん)が初作詞を手掛けた曲でもあります。詞も相まって、非常に『PQ』のエンディングにふさわしい曲になっていると満足しています。まずはぜひ、ゲーム内で聴いてもらいたいですね。

 僕は全然弾けないんですけれど、後学のためにとヴァイオリンを習っているんです。曲中のヴァイオリンパートは、その先生に弾いてもらっています。

■次へ次へと挑戦し続けていく姿勢

――これから、音楽でチャレンジしてみたいことがありますか?

喜多條:ユーザーの皆さんには、アトラスといえばRPGというイメージがあるかもしれません。僕は格闘ゲームの『P4U』、『P4U2』にも携わっていますが、RPG以外のジャンルのゲームにもかかわっていきたいですね。

 もちろん本業のゲームが最優先ではありますが、もしも機会があるならば、目黒さんのようにゲームの枠を越えたチャレンジなどもしてみたいですね。

小西:ジャンル問わずよりマニアックなゲームのサウンドも担当してみたいです。もともと自分がそういうゲームが好きだというのもありますが、ハズすギリギリのところというか、そういう際どい性格を持ったゲームを担当したいですね。

――最後に、『PQ』プレイヤーの皆さんに一言お願いします!

『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』
▲出席簿に興味津々の喜多條さん。誰の名前が書かれているの?

喜多條:『ペルソナ』シリーズや『世界樹の迷宮』シリーズのファンの皆さんはもちろんですけれど、関連作品を知らない方も『PQ』を楽しんでいただければいいな、という願いがあります。デザインや音など、細かいところまでこだわって作り込んでいる作品ですので、いろいろなところに注目していただきたいですね。

 あとは、『PQ』のサントラを聴く前にまず本編をクリアしてほしいです! クリアしてから聴いたほうが、曲に込めた思いを何倍も味わっていただけるんじゃないかなと思っています。

小西:ファンの方には、「ありがとうございます」の言葉しかないですね……。『ペルソナ』シリーズにかかわるということはプレッシャーがすごくありますが、『ペルソナ』という名前に守ってもらっている部分もあると思います。

喜多條:『ペルソナ』シリーズのファンは、皆さんとても優しいですよね。『ペルソナ』というコンテンツと、応援してくださる皆さんに甘えてしまわないようにしなければと常々思っています。

小西:形がある程度決まってしまっているので、冒険しなくなってしまうんですよね。気を付けないとそこに乗っかってしまうというか……。

喜多條:ただ、サントラが発売されないことが多い今、世にCDを出させていただけるだけで本当にありがたいことです。

小西:皆さんのおかげですよね……。本当に感謝でいっぱいです。これからもいいものをお届けできるように、皆さんの期待を上回ることができるように、甘えることなく精進してタイトルを作っていきますので、どうぞよろしくお願いします!

――ありがとうございました!


■特別ふろく! メタルチャームが当たるメッセージを投稿しよう!!

メッセージを送ってプレゼントに応募する!

『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』

 アトラスさんより、クマ&コロマルのメタルチャームをご提供いただきましたので、抽選で1名様にプレゼント! ご希望の方は、上のボタンから応募フォームページに移動し、必要事項と喜多條さん&小西さんへのメッセージを明記のうえ、ご応募ください。なお、応募の締め切りは7月30日23:59までとなります。

(C)ATLUS (C)SEGA All rights reserved.

データ

▼『ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス オリジナル・サウンドトラック』
■発売・販売元:Mastard Records
■品番:LNCM-1053~4
■発売日:2014年7月16日
■希望小売価格:2,900円+税
 
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▼『ペルソナQ クッション』
■価格:3,500円+税
■サイズ:約45cm×45cm
■素材:スエード 中材:綿
■予約締切日:2014年7月27日(日)
■発売日:2014年9月10日(木)
 
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Amazon.co.jp
▼『ペルソナQ Tシャツ』
■価格:3,000円+税
■サイズ:フリーサイズ(L:着丈72×身幅55cm)
■素材:綿
■カラー:ブラック
■予約締切日:2014年7月27日(日)
■発売日:2014年9月10日(木)
 
■『ペルソナQ Tシャツ』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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