2014年8月8日(金)

『GRID』シリーズ最新作『GRID Autosport』はどこが進化した? シリーズ全作品を遊んだライターが過去作と比べて評価する

文:ヒビキタケル

 ストリートカーをはじめフォーミュラマシンやツーリングカーなど、さまざまなタイプのマシンで多彩なレースに挑む『GRID』シリーズ作品をすべてプレイしてきたヒビキタケルが、シリーズ最新作にして8月28日に発売されるPS3/Xbox 360用レースゲーム『GRID Autosport』をレビュー! シリーズの歴史を振り返りつつ、本作の魅力を紹介していきます。

『GRID Autosport』

■シリーズ1作目『RACE DRIVER GRID』の印象は「速い! カッコイイ! そしてギュルギュル!」

『GRID Autosport』

 私と『GRID』シリーズとの出会いは、1作目『RACE DRIVER GRID』から。本作は2008年にイギリスに本社を置くコードマスターズが日本進出第1弾として発売したタイトルで、幸運にも開発中のROMをプレイさせてもらったんですけど、その時の印象が「速い! カッコイイ! ギュルギュル!」です。「ギュルギュルってなんやねん?」と思った皆さん、もうちょっと後で説明するのでお待ちくださいませ。

 ゲームを開始すると、巨大な地球が出現してそこから一気にズームイン! そして、サンフランシスコのストリートのレースに参戦する演出がとてつもなくカッコイイんです。レースゲームを遊んでいて、あそこまでのインパクトを持つ作品は、今でもほとんどない気がします。

『GRID Autosport』 『GRID Autosport』
『GRID Autosport』 『GRID Autosport』 『GRID Autosport』

 そして走り出した時の尋常じゃないまでのスピード感に圧倒され、最初のカーブで見事にクラッシュ(笑)! 私の愛車はゲーム開始後10秒ほどでオシャカになってしまいました……。

 ところが、そこからビデオカメラで見ている映像のように時間を巻き戻せる“フラッシュバック機能”――そう、これがさっき言った“ギュルギュル”です――でギュルギュルっとクラッシュ前に戻り、カーブをうまく曲がることができました! その時の感動というか驚きはかなりのものでした……って、最初のカーブをうまく曲がれただけなんで大げさかもしれませんが(笑)。

 それほど“失敗したところを即座にやり直せる”機能が、とても便利で気持ちよかったんですよ。こういう機能は、それまでにもありそうでなかったんですね。

『GRID Autosport』 『GRID Autosport』
▲カーブなどをうまく曲がれなかった時は、セレクトボタンでフラッシュバックを起動。ボタンを押す数秒前の範囲で、自分の好きなポイントに戻れます。

 フラッシュバック機能は、その後『F1』シリーズや『DiRT』などのレースゲームでも使われ、今ではコードマスターズのレースゲームの代名詞のようになっています。その機能は日本進出第1弾のタイトルから入っていたんです。

 そんなわけで『RACE DRIVER GRID』の第1印象は「カッコイイ! 速い! ギュルギュル!」なんですよ。フラッシュバック機能だけでなく、“ル・マン24時間”のような耐久レースや峠を舞台にしたドリフト勝負など、多彩なマシンと豊富な種類のレースが遊べること、マシンのダメージ表現、オンライン対戦といったシリーズの根幹部分は第1作ですでに完成されていました。

■成長していくモータースポーツの世界を描いた『RACE DRIVER GRID2』

『GRID Autosport』

 第1作の発売から約5年が経過した2013年、多くのレースファンを虜にした『GRID』シリーズの続編『RACE DRIVER GRID2』が発売されました。

 本作のメインとなる“キャリア”モードでは、プレイヤーは新人ドライバーとしてゲームを始めることになります。プレイヤーの草レースでの活躍を眼にした人物、パトリック・キャラハンによって、“ワールド・シリーズ・レーシング(以下、WSR)”のスカウトを受けることに……と、まるで映画のような展開でハンドル、いやコントローラを握るこちらのモチベーションを高めまくってくれます。

 この作品でプレイヤーが挑む大会“WSR”についても触れておきたいと思います。この大会は、さまざまなレースタイプ(競技種目)にわたってレースを行い、総合的なモータースポーツの最高峰を目指すものです。キャラハン氏は、この大会の立ち上げにあたって優秀なドライバーを集めていたわけです。

 スカウトされたプレイヤーはWSRのスター選手となって、さまざまなレースに参加。勝利していくことでファンを増やしていきます。ファンを獲得していくことで、新しいレースへの招待が届きます。中には、勝利すると新しいマシンを入手できるレースがあり、これまたやる気を刺激してくれるんですよね。簡単に言うと、レースに参加しながら徐々に新しいマシンを手に入れて、どんどんグレードの高いレースに挑戦していくモードですね。

 獲得した賞金などで自分のガレージが豪華にしていく要素は1作目にもありましたが、グラフィックの質や演出面が向上したことで、より成長したと感じられるモードに進化しています。

『GRID Autosport』
▲『F1』シリーズにも採用された当時最新のEGOエンジンを使用。道路に入ったひびなどの細部はもちろん、峠に漂う霧までリアルに再現しています。
『GRID Autosport』 『GRID Autosport』
▲最初は、いかにもストリートレースが好きそうな趣味人のガレージなのですが、成長すると高級ディーラーのショップのようにゴージャスに。後者はマシンがピカピカでうれしいのですが、前者の雰囲気もグッドです。

 さらにコースレイアウトがリアルタイムで変わる“LiveRoutes”もポイント。これは市街地コースのあちこちにいくつかの分岐が用意されていて、走るたびにどちらに行くかを直前で指示される仕組みになっています。まるで生き物のようにコースレイアウトが変わっていくし、ミニマップなども表示されないので緊張感のあるレースが楽しめました。

『GRID Autosport』
▲普段のレースでは画面左下のマップが見えていますが“LiveRoutes”のレースでは看板などの表示を見て進んでいきます。猛烈なスピードで運転する中、一瞬の判断力が重要になるわけです。

 多数のマシンがシンプルにスピードを競うタイプのレースだけでなく、1対1で先にゴールしたドライバーが勝者になる“フェイスオフ”や、所定時間内に最後尾になったマシンが1台ずつ失格となる“エリミネーター”など、レースの種類自体が1作目より増えていた点もうれしいところでした。

 特に“フェイスオフ”に出てくる相手は、走る時のクセがそれぞれ異なるので、同じコースを走る場合でも抜きどころが違ってきます。プレイしてみるとわかるのですが、多数のマシンで競うレースとは、求められる走り方が明らかに変わります。何よりも、前作以上に相手のドライバーとの駆け引きが感じられるところが好きでした。

『GRID Autosport』
▲“フェイスオフ”は1vs1の勝負なので、相手に離されないようにしつつ一瞬のスキを突いて抜くのが最高に気持ちいいんですよ! 抜いたからと言って、油断してはいけません。ゴールするまでがっちりとガードです。

 第1作が発売された当時よりも、ネットワークとの親和性が増している点が『GRID2』の特徴。レース終了後に、自分のプレイ動画をYouTubeにボタン1つでアップロードしたり、オンラインサービス“RaceNet”でコミュニティイベントや世界ランキングに挑戦するなんて新しい遊びもできるようになりました。

■最新作『GRID Autosport』はよりディープに、かつレースゲーム初心者でも遊べる工夫がステキ!

 シリーズ最新作『GRID Autosport』は、シリーズのテーマである“レースのすべてを詰め込む”はそのままに、イギリスでもっとも売れているモータースポーツ誌『オートスポーツ』が監修を担当し、今まで以上に深くモータースポーツの世界が味わえる作品に昇華されています。

 ドリフトカーはもちろん、フォーミュラカーや耐久レースマシンなど、100を超えるマシンを収録。さらにバルセロナやサンフランシスコの街並みを再現したコースや、ホッケンハイムリンクなどの有名サーキットなど、27ロケーション159コースにもおよぶ大ボリュームです。

『GRID Autosport』 『GRID Autosport』
▲GTカーやドリフトカーはもちろん、フォーミュラカーにまで乗れちゃいます。テーマである“レースのすべてを詰め込む”はダテじゃないですね! ▲第1作で印象的なだったサンフランシスコの街並みを再現したコースも登場。懐かしさとともに、やはりグラフィック面での進化も見どころの1つになっています。

 メインとなる“キャリア”モードでは、プロのドライバーとしてスポンサーのオファーをこなしつつ、オートスポーツ界のトップを目指していきます。本作ではチームメイトと2人で5つのマシンカテゴリでのチャンピオンシップに参戦することが特徴になっています。

 実際にPS3版をプレイしてみたのですが、チームメイトにL1とR1でチームオーダーを出せるようになっていたことに驚きました。自分が追いつくまでその順位をキープさせたり、自分のマシンがボロボロになっていた場合は先に行かせるなど、チームとしての戦略が行えるようになっています。

 また、クルーたちにラジオ(無線)で現在順位やライバルマシンの情報を聞くこともできます。もちろん、ボイスは日本語ですので、レースに集中しながら現状把握ができちゃいます。この“レーシングチームのエースになりきれる”感が、過去作品よりグンと進化している印象ですね。

 そして、“ギュルギュル”でおなじみ(?)のフラッシュバック機能も健在。今回も最初のレースからバシバシ使ってコースを攻略しましたよ(笑)! いつもお世話になっています! 最初のレースではフラッシュバック機能が使い放題なところもうれしいです。ちなみに、難易度を変更して“ベリーイージー”にすれば、最初のレースでなくてもフラッシュバック機能を無制限で使えますので、カジュアルに楽しみたい人も安心してくださいね。

 また、“ベリーイージー”の場合は、アクセルとブレーキの調整やハンドリングアシスト機能などもあり、カーブの直前で自動的にスピードを落としてくれるので、レースゲーム初心者でも他のマシンとの熱い駆け引きに集中できます。これって、慣れたプレイヤーにとっては、いたれりつくせり過ぎに思えるかもしれませんが、レースゲームの初心者が走り方のイロハを覚えるにはうってつけなんじゃないかと思うのですよ。

 この他、難易度を高めにしてフラッシュバック機能だけ無制限にするなど、自分自身で細かい調整をすることもできるので、ゲームに慣れてきたら徐々に難易度を上げていき、上達していくことも可能です。

『GRID Autosport』
▲カーブを曲がりきれなくてコースアウトしたり、敵のマシンとクラッシュしてしまった時にフラッシュバック機能はとても便利。難易度を調整すれば、小さなお子様でも十分楽しめるようになります。

 “キャリア”モードでは、“ツーリングカー”、“耐久レース”、“チューン(タイムアタックやドリフトイベントなど)”、“オープンホイール(いわゆるフォーミュラカーでのレース)、“ストリートレース”の5つのカテゴリから自分がプレイしたいものを選べます。

 いろいろなカテゴリに挑戦してもいいですし、好きなカテゴリをトコトン遊んでみるのもアリ。個人的には全部のカテゴリをとりあえずプレイしてみて、気に入ったものをガッツリと挑戦していくのがオススメです。

『GRID Autosport』 『GRID Autosport』
▲“ツーリングカー”ではサーキットで多数のマシンと周回しながらレースを行います。コーナリングでの駆け引きやチームメイトとの連携が重要になりそうです。 ▲“耐久レース”では多くの周回を重ねることになるので、タイヤの摩耗もレースの勝敗を左右する要素の1つに。
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▲チューニングカーを使ったレースでは、スピードだけでなくドリフトのテクニックを競うレース形式もあります。 ▲“オープンホイール”では、世界最高峰のスピードとスリルを味わうことができます。

 また、実際にプレイしてみてうれしかったポイントは、ドライバー視点が復活したことですね。ドライバーが実際にハンドルを操作している様子が見えるのはやはりカッコイイです。マシンの内部が再現されているところも、クルマ好きにはたまりません!

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▲ドライバー視点では、実車を操作しているかのような感覚でプレイできるのが魅力。衝突で窓ガラスが割れるなどの演出もあり、臨場感のあるレース体験が楽しめます。フォーミュラカーは、TV中継でおなじみの車載カメラの視点も用意。

 というわけで『GRID』シリーズの魅力を振り返りつつ、最新作の見どころを紹介してきました。『GRID Autosport』はイギリスの専門誌が監修しているだけあり、これまで以上に深くモータースポーツの楽しさを味わうことができるように感じました。それでいて充実した機能で初心者への間口も広がっています。レースゲーム好きはもちろん、初心者でも楽しく遊べるように工夫を凝らしている点が印象に残りました。

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