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2014年8月11日(月)

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』の聴猫芝居先生を直撃! 最新5巻の見どころはパンツと女子高生のプロレス技!?

文:電撃オンライン

 8月から10月にかけて開催される“進化宣言! 電撃文庫FIGHTINGフェア”。電撃オンラインでは、電撃文庫作家陣のインタビューを4回にわたってお届けしていく。

聴猫芝居先生インタビュー 聴猫芝居先生インタビュー

 この記事でお届けするのは、聴猫芝居(きねこ しばい)先生のインタビュー。聴猫先生は、『あなたの街の都市伝鬼!』で第18回電撃小説大賞《金賞》を受賞し、現在はネットゲームを題材にしたラブコメ『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』シリーズを執筆中。趣味であり作品のテーマでもある“ネトゲ”にかける思いや、作品作りの裏側などを伺った。

■大事なのは、自分の好きなものを書くこと

聴猫芝居先生インタビュー
▲聴猫芝居先生

――デビュー作『あなたの街の都市伝鬼!』と、現在手がけている『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』ではガラリと題材にしているものが変わりましたが、小説を執筆するうえでの変化などはありましたか?

 題材にしているのはそれぞれ“都市伝説”と“ネットゲーム”ですけど、変わった部分ってそんなにないんです。両方とも自分の好きなもので、その好きなものを書いているだけなんですよ。前作が終わって、いざ2作目を書こうとしたら結構時間がかかってしまいました。いろいろと次作のネタを考えては、担当さんに「それが本当に書きたいものなんですか?」と返されて、「せやな」と(笑)。そのやりとりがあって『ネトゲの嫁』が生まれました。

――ボツになったネタには、どんなものがあったのでしょう?

 シリアスな話とか、まじめなバトルとか、ジャンルをまたいでいろいろなものを出してみました。ですが、書いている本人がしっくり来ていないのを、担当さんに見抜かれてしまいました(笑)。それでネトゲを題材にしたものを書きたいんですが……と相談したら、「好きに書いてみたらいいよ」と返事をいただいたんです。

 “都市伝説”については書きたいことをたっぷり書けたので、次に書きたいものを……と考えて生まれたのが『ネトゲの嫁』です。この作品については、最初からどこまで続けようと考えがあったわけじゃないんです。担当さんとは「後のことはとりあえず本を出してから考えよう」なんて話をしていて、博打的なところがありました。もちろん、私自身は面白いものを書こうと最大限努力はしています。

――小説のネタにするほどネトゲが好きな聴猫先生ですが、どのくらい前からプレイされているのでしょうか?

 そうですね……少なくとも10年以上は遊んでいます。ただ、高校3年生の時は受験があるから1年間まったくプレイしなかったんです。あの1年は、これまでのネトゲ生活を振り返ってみても奇跡の1年でしたね(笑)。中学のころからネトゲにはまっていて、そのせいで私立の高校受験に失敗したんですよ。高校受験当日の朝も、起きてからネトゲをやって受験に行って、帰宅してからすぐにまた遊んで……と。よく考えなくても、そりゃ落ちますよね。でも公立には受かったので、ちゃんと高校は卒業しています(笑)。

――受験でいそがしかった高校3年生の時期をのぞいて、なにかしらのネトゲをプレイされてたんですね。

 そうですね。

――では、これまでで一番長くプレイしたネトゲは?

 最初にプレイした『ラグナロクオンライン』です。今は定額課金をしているわけじゃありませんが、時々プレイしています。

――『ネトゲの嫁』には“ネトゲあるある”のようなネタも多いですが、ご自身の経験が生かされているネタもあるのでしょうか?

 作中に登場したネタで、自分が体験したことがないものは1個もないと思います。これは小説の後書きでも書きましたが、前にネトゲ内で結婚したことがあるんですよ。こっちが男性キャラで相手は女性キャラだったんですけど、相手が女性キャラと浮気する……なんてワケのわからないことになりました。しかも自分の指輪には浮気相手の名前を書いてあるという(笑)。あまりに衝撃的すぎて、その事件は忘れられませんね。

――オフ会とかも参加されてたのですか?

 そうですね。オフ会で実際に仲よくなった人もいます。現実でも、作中と同じようにキャラと性別が一致していない人が多くて、オフ会で会うとビックリすることも。「どう見ても男だろう」って感じの男キャラの人が実際は女性で、ゲームで話していた下ネタは大丈夫だったんだろうかって心配になったこともあります(笑)。

 それと、ネトゲをやっているとついついロールプレイをしてしまうことがあるんです。男の背面ばかり見ながらゲームをしたくないな、と思って女性キャラを使った時でも、「見た目が女性キャラだし」とていねいな口調で話したり。そうしたら、出会いを求めているプレイヤーに狙われたり、「『○○』って作品の□□ってキャラに似てるから、このセリフしゃべって」と言われたり……。あの時は怖かったですよ。

――聴猫先生のプレイスタイルは、どういうものが多いですか?

 ゲームによって違うんですけど、火力重視のスタイルが多めでしょうか。必要な防御力を用意しつつ、残りは火力に全振り! といった感じのキャラクターです。でも一番好きなのは、ネタ至上主義のスタイルだったりします。高いお金を払ってネタでしかない装備を買って、ひと笑いしてもらったら満足とか、例えばLuckに全部のポイントを割り振ったキャラを使って、素手でクリティカルを連続しながら突き進んで行ったり。そういうネタに走るのも楽しみのひとつです。

――ネトゲの体験を小説に落としこむうえで大変だったところとかはありますか?

 海外のゲーム――特に日本語版が無いゲームは、作中ではあまり触れないようにしています。自分自身はプレイしているんですけど、それをネタにしても多くの人には伝わらないんじゃないかと思って。結構好き勝手書いているように見えて、実はセーブしているところも多いんですよ。誰も信じてくれないんですけど(笑)。

――打ち合わせの時とかにネタの説明をされたりするんですか?

 担当さんが、読んだ時の驚きがほしいから、ネタの解説は打ち合わせではいらないって言うんです。ネトゲをやらない担当さんなので、先にネタの解説をされてから読むのじゃなく、ネタを知らなくとも楽しめる作品になってるのかを見極めてるみたいで……。

■最新5巻の見どころは……パンツと女子高生のプロレス技!?

――作中では会長が課金プレイヤーですけど、聴猫先生はネトゲの課金はよくされますか?

 ゲームによりますけど、課金は結構するほうですね。ゲームを始める時はとりあえず課金してみたり。

――ある程度遊んでみて……というよりもまずは課金してから遊ぶタイプなんですね。

 そうですね。お布施的にさっくりと。新しいネトゲが出る時にはオープンβテストなどをよく実施するじゃないですか。それを遊んでみてサービスインした時に、これからゲームをプレイするかは別として「オープンβで楽しませてもらったし、少しだけでも課金しておこうかな」といった感じですね。今はオープンβテスト中に課金するなんて不思議なこともあったりしますけど(笑)。

――作中の『LA』のモチーフとなったゲームは、やはり『ラグナロクオンライン』なのでしょう?

 ステータスやスキル振りが自由なところなどは、『ラグナロクオンライン』っぽいですよね。でもそれだけじゃなく、服装の自由度や戦闘のアクション要素、生産要素などあちこちのゲームから要素を持ってきているという感じですね。1つのゲームを元にしたというよりは、読者の中でネトゲをプレイされている皆さんに共感できるようなゲームにできればと思って書いています。簡単に言ってしまうと、私が“一番やってみたいゲーム”が『LA』なんです。

――読者はネトゲユーザーが多いのでしょうか?

 私自身のTwitterにいただく感想では、思ったよりもネトゲをプレイしていない人が多くて、困惑したこともあります。「ネトゲはよくわからないけれど、作品の雰囲気が楽しい」とおっしゃってくれる読者もいらっしゃいますね。ただ、ネトゲユーザーの読者さんも潜在的にはかなりいるのではと思っています。

――これまでにもさまざまなネトゲのネタを作中で扱っていますが、いつかやってみたいネタはありますか?

 いつかボス戦をやってみたいですね。自分たちのパーティだけで挑む展開もいいですし、レイドボス戦も楽しそうですよね。作中だとモンスターと戦う描写が少ないので、みんなで準備をして、仲間を集めて強敵に挑むエピソードを書いてみたいです。まぁ、ボス戦だとヒロインが足を引っ張りそうで不安ですが(笑)。

――8月9日に発売されたばかりの『ネトゲの嫁』第5巻の読みどころは?

聴猫芝居先生インタビュー

 お待ちかねのパンツを見ることができたり、女の子にプロレス技をかけられたりします!(笑) あとこれまでルシアンたちは、自分たちだけのたまり場というのを持っていなかったので、“ハウジング(ゲーム内で家を持つこと)”に着手するところが今回のポイントですね。ネトゲをプレイされている方は、いろんな手段でゲーム内のお金を稼いでいると思います。彼らも自分たちなりの最高の手段でお金を稼ごうとしますので、そこを楽しんでいただけるとうれしいです。

――第6巻以降の展開については……?

 展開は考えていますが、まずは「本を読んでね♪」と(笑)。物語としては年末にクリスマスがあったり、年が明けてバレンタインがあったりとイベントが盛りだくさんですし、何より彼らが2年生になったらどうなるのかを考えるのも楽しみですよね。留年しそうな人もメンバーにはいますが……。

■“本当のヤンデレ”も書いてみたいものの1つ!

――最初に小説を執筆されたのはいつごろだったのでしょうか。

 それは……2006年の11月9日ですね。

――はっきりと日付を覚えていらっしゃるんですね。

 記録が残っていたので(笑)。どういった経緯だったのかは覚えていませんが、その日が最初に小説を書き上げた日なんですよ。で、最初に書いたものが自分としてはおもしろくて、さらに小説を書きあげたことにも満足しちゃって、それからは少しずつしか書いていなかったんですよ。

――最初に書いた小説というのは?

 ある作品の二次創作でした。

――もともと小説を書きたいと思っていたのでしょうか?

 はい。願望はあったんですけど、書くきっかけがなかったんだと思います。元となった作品が好きで、でも「ここのエピソードは書いてくれないんですか?」と思ったんですよ。どうしてもそのエピソードが読みたくて、自分で書いて読んで満足していました。

――読書遍歴もお聞かせいただけますか?

 子どものころからなんでも読んでいました。『エルマーのぼうけん』や『ホビットの冒険』などのファンタジーや『火星年代記』などのSF、『ぼくらの』シリーズや『ズッコケ三人組』シリーズとか、学校の図書館にあったおもしろそうな作品をとにかく読んでいました。

――電撃小説大賞に応募したきっかけは?

 友人にリクエストされて書いた小説を、おもしろいって言われたことですね。でもそれをお世辞だと思っていた私は「お前がおもしろいというこの小説が本当におもしろいか試してみようじゃないか」と。それで電撃小説大賞に応募したんです。その時は一次や二次選考まで残ったらスゴいんじゃないかと思っていたんですけど、それがどんどん残っていって……。

――そのご友人の反応はいかがでしたか?

 やっぱりっていう感じの顔をして「俺がお世辞を言うわけないだろ?」とカッコイイことも言ってました(笑)。

――趣味のネトゲがお仕事にもなっていますが、今はどのような感じで1日を過ごしているのでしょうか?

 ずいぶんと不定期な生活をしていますが、日が昇る前には寝るようにしています。当然のことですが、ネトゲはプレイする人によってスタイルが違うんですよ。実は、ガッツリとプレイしたい人は、夜に寝て朝起きてからプレイするほうが効率がいいんです。

――そうなんですか?

 ええ。朝や昼間は人が少ないので、狩りなどが効率よく回せるんです。でも夜のほうが人が多いので、カジュアルに遊びたい人は夜にプレイすることが多くなります。今ですと、私は夜のほうがプレイしていることが多いです。

――そうしてネトゲをプレイするかたわらで、どれくらいのペースで執筆しているのでしょうか?

 頭の中でプロットからテキストまで組み立てていて、それができあがったら出力として執筆していきます。ネトゲしながらでも考えていて、何かおもしろいネタが浮かんだら、そこから一気に物語がでしょうか。毎日書いているわけではないですが、ネトゲしている時もただ遊んでるわけではなく、ちゃんとお仕事をしているんです(笑)。

――好きなジャンルで新しい作品を書いていいと言われたら、どんな作品に挑戦してみたいですか?

 私の書く小説は、ヒロインがヤンデレだと言われるんです。でも私にはそんなつもりはなくて、でもそこまで言うんだったら、私の思う“本当のヤンデレ”を書いてみたいです。でもどんな作品かと言われると、やっぱりラブコメを書くと思います。楽しい話を書きたいですし、楽しい話は書いているこちらも楽しくなれますから。

――今年は“進化宣言! 電撃文庫FIGHTINGフェア”というフェアが開催されていますが、進化したいこと、戦っていきたいことなどは?

 読者の皆さんにもっと楽しんでもらえるように進化したい……んですけど、書いている自分が一番楽しんでいるんですよね。なので、“もっと自分が楽しめるように進化したい”ということで(笑)。

――最後に、読者にむけてメッセージをお願いします。

 いつも作品を読んでいただき、本当にありがとうございます。これからも自分も楽しみつつ、皆さんに楽しんでいけるような作品を執筆していこうと思いますので、「コンゴトモヨロシク」。

(C)聴猫芝居/KADOKAWA CORPORATION 2014
イラスト:Hisasi、うらび

データ

▼『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.5』
■著:聴猫芝居 イラスト:Hisasi
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2014年8月9日
■定価:本体570円+税
 
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