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2014年8月11日(月)

中国版『新生FFXIV』は“愛されるゲーム”がキーワード。パッチ2.4の話も出た吉田直樹氏インタビューをお届け【ChinaJoy 2014】

文:電撃オンライン

 7月31日から8月3日まで中国の上海で開催されたChinaJoy 2014。PlayStationやXbox Oneも出展され話題を呼んだが、会場で最も盛り上がっていたのはPCのオンラインゲームのゾーン。Blizzardなどのブースがあるメインのホール、中国でも大手のシャンダゲームズのブースで出展されていたのが『ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア』だった。

『ChinaJoy』 『ChinaJoy』
▲ブースにはオフィシャルのコスプレイヤーも。▲現在クローズドβテスト中だが、会場で中国版『新生FFXIV』を実際にプレイすることができた。
『ChinaJoy』 『ChinaJoy』
▲アルテマウェポンチャレンジが行われた日も。▲4Kテレビでの『新生FFXIV』の展示も。食い入るように見る人も多かった。

 ブースでのイベントでは『FF』シリーズに関するクイズ大会が行われたり、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏がバスケットボールをプレイする一幕も。中国の開発者向けのカンファレンスでは、『新生FFXIV』の制作体制の説明や、MMORPGとしての魅力をアピールするなど、直前に近づいたオープンβテストに向けて吉田氏は精力的に動き続けた。中国での『新生FFXIV』のユーザーの反応や今後の展開、中国版とグローバル版の違いやパッチ2.4の方針など、話が多岐に渡った吉田プロデューサー兼ディレクターへのインタビューを読んでほしい。

■吉田直樹プロデューサー兼ディレクターに聞く中国版『新生FFXIV』の開発状況

『ChinaJoy』
▲ChinaJoy 2014では大活躍だった『新生FFXIV』プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏。

――7月22日から中国で始まったクローズドβテストの状況を教えてください。

 中国でのテストは2回目で、同時接続で最大で5万人までプレイできるようなテストにする方針でした。今回は中国でも珍しいパターンで、アカウントをフリーで配布するのではなく購入していただく形にしました。最終的に約7万まで販売しました。オープンβテストからは従量課金(時間あたりで課金されるシステム)がスタートしますので、そのときに、クローズドβテストで支払った金額に相当する時間が無料でプレイできるようになっています。クライアントソフト購入のために支払っていただくのではなく、先行でプレイ料金をお支払いただく形です。これはシャンダゲームズ(中国で『新生FFXIV』を運営する会社)でも、中国でも異例の形で、どうなるかわからないところがありましたが、ひとまず初動としては良い数字だと思っています。

 こうした形にした趣旨は、シャンダゲームズの戦略として「お金を払ってでも、しっかりゲーム体験をしたい」と願うコアプレイヤーの方を、『新生FFXIV』中国版のコミュニティの中心に据えたい、という狙いがありました。というのも、中国のゲームメディアの言葉を借りると、現在の中国のオンラインゲームマーケットは“ファーストフード文化”になっていると。みんなちょっとだけ遊んでみて、すぐにいなくなってしまう。ほとんどが基本無料のゲームで、有料になりそうになるとやめてしまう。そしてプレイしていたゲームの悪いところだけをフォーラムで書き込んでいく。こうなると各ゲーム会社は、大型で本格的なゲームを作りにくくなってしまうことになります。シャンダさんは『新生FFXIV』もこうならないかと心配されていました。ですので、まずロイヤルユーザーを作って、その後で無料を好むユーザーに入ってきてほしいという流れをイメージしていたようです。

 いろいろなパートナーさんのサイトで、5千、1万と時間と日付を指定して、βのアカウントを販売していったんですが、全サイトがダウンしてしまったぐらいの勢いで、最後にバイドゥ(アジア最大の検索サービスサイト)で販売したときも、販売用のサイトがダウンしてしまったそうです。バイドゥがダウンするというのは異例とのことですので、ひとまずの人気にほっとしています。

――クローズドβテストのユーザーの反応はいかがですか?

 プレイヤーの皆さんのβアカウントアクティブ率が98%を超えているということで、購入していただいた方はほぼ全員プレイしていただいているという凄い状況になっています。MMORPGはクライアントを購入したとしても80%ぐらいが一般的なので驚いています。シャンダゲームズのほうでも、これまで運営してきたゲームの中で、いちばんの数字ということで、喜んでいらっしゃいました。さらにオープンβ時のサーバを増強したようです。ゲームについてのフィードバックも良好だそうです。

 最近の中国のオンラインゲームでは、クエストアイコンをクリックすると、目的地まで自動ワープしてくれるようなものもあるのですが、『新生FFXIV』は、そこまでのオートマチックなシステムは意図的に実装しないようにしています。RPGは冒険することに面白さがありますし、ストーリーを楽しんでもらうときに感情移入するためにも、なぜそこへ行かなければならないのかといったことが重要になります。自動で移動すると地名をいっさい覚えなくなってしまいますし……。たしかに遊びやすさと、とっつきやすさは、とても大事だと思っているのですが、これ以上の便利さはゲームという遊びや、『FF』を逸脱してしまうと考えているのです。シャンダさんにもこの点を以前からお話ししていて、理解していただけたのは、とてもありがたかったです。その点について、プレイヤーの方からいただいたコメントのなかのひとつに、「ゲームは本来こうして一生懸命やるものだということを思い出した」というものがあったそうで、シャンダさんも凄く嬉しかったというお話をされていました。

――オープンβテストの開始はいつになりますか?

 8月4日にβテストのゲーム内で、8月25日と発表しました。中国は実質、オープンβテスト=正式サービスになります。じつは大々的な発表会も行う予定で、従量課金の金額などもそこで発表する予定となっています。

――中国のプレイヤーの特徴は、日本のプレイヤーとやはり違いますか? 例えばキャラクターの比率などは?

 作成されたキャラクターの種族は、1位がヒューランで、2位がミコッテ、1位と2位はほとんど差がありませんでした。3位がララフェル、4位がエレゼン、5位がルガディンだったのですが、ルガディン全体で12%。グローバル版だと初期は3%くらいでしたので、ルガディンの使用率は結構高かったですね。うまくばらけていると思います。

――改めて、グローバル版と中国版の違いを教えてください。

 基本的に特に違いはありません。もともとシャンダさんとの取り組みというのは、僕が『旧FFXIV』を引き継ぐ前から進んでいたので、自分が引き継いでからも中国でローンチするというのは、契約もありましたしマストなことでした。『新生FFXIV』の“グローバル水準”のなかには、中国も含まれていたので、ゲーム性としては中国だけ別になっている、ということはほとんどありません。ただし、ツールチェックなどの処理は、グローバル版に比べると厳しい処理が入っていたりはします。これは逆に中国でうまく動作すればグローバル版にも導入したいと思います。

 違いがあるとすれば、アラガントームストーン関連の数値くらいでしょうか。グローバル版はパッチ2.0からスタートし、パッチが進んでアラガントームストーンの値が変わっていっています。中国版はパッチ2.16の状態から正式スタートしますが、グローバル版のパッチ2.16のアラガントームストーンの状態にしてしまうと、コンテンツバランスが悪くなります。その点はグローバル版のスタートと同じ値を適応しています。違いがあるとしたらそこぐらいですね。また、グローバル版パッチ2.16リリース直後は、サーバの安定性がよくなかったので、直後に入れたホットフィックスをほぼ巻き込んでの中国版パッチ2.16になっています。違いはそのくらいでしょうか。

――ゲームとしては疲労度というものが入るとお聞きしましたが?

 それは中国政府が法律で決めている、未成年者がプレイしすぎないための“中毒防止”というシステムで、中国でオンラインゲームを運営する場合、そのシステムを実装していないと認可が下りないのです。中国と韓国では国民番号を入力しないと、オンラインゲームがプレイできないので年齢詐称もできません。中国では未成年者が継続プレイ3時間以上になると得られる経験値が半分になり、5時間以上で0になります。パブリックフィールドのPvPゾーンに入るときも警告を出すという政府レギュレーションがありますが、『新生FFXIV』のPvPはコンテンツ方式で、この対応は必要なかったので入れていません。といったように、その国独自の法律対応はしっかりしています。

――コンテンツファインダーやサーバのグループ化というのは行うんでしょうか?

 はい、テストも十分行えています。安定性が非常に高く、コンテンツ周りの不具合で一度サーバダウンしましたが、負荷でのダウンは発生しなかったので、現在設置できているデータセンターは非常に安定しています。

――チャイナジョイの会場で見た『新生FFXIV』のプレイ画面では言語が簡体字になっていたんですが、ボイスはどうなっているんですか?

 全部中国語ボイスになっています。声優も中国の方に担当してもらっています。僕はそのへんは詳しくないんですが(笑)。テキストボイスも中文になっています。

――繁体字には対応しているんですか?

 していません。繁体字については、台湾でのサービスをどうするのかにもよってくるので、そこと一緒に考えていきます。

――シャンダゲームズとの関係について改めて教えてください。

 シャンダさんには運営すべてをお願いしており、開発はすべてスクウェア・エニックスで行います。インゲームでのGMサポートだったり、アカウント管理、サポート、ライブイベントなど、運営にまつわるものはすべてお任せしています。

――『新生FFXIV』の開発チームに中国だけを見るチームも存在するんですか?

 中国専門のチームにはしていませんが、中国版専任のマネージメントスタッフはいます。中国語のローカライズチームも複数人数いますし、UIとレベルデザインには中国人のスタッフもいるので、グローバル版の仕様作成の際に、中国で一般的なUI要素なども検討してくれています。中国のフォーラムも彼らが個人的にもチェックしていて、僕にレポートをくれたりもしますね。

――グローバル版も五言語に対応されますが、中文が選べるようになりますか?

 それはできません。グローバル版と中国版はクライアントもバージョンも違いますので。

――中国版はグローバル版とサーバが違うということで、例えば中国でのニーズがグローバル版と違うところで高まってきた場合、中国版ならではの調整をするということはありえるのですか?

 ここはとても慎重にお話する必要があると思いますが、コンテンツの違いというのはそもそも作るつもりはありません。それは一貫してお話しているとおり、ゲーム体験の差というのは生みたくないのです。ただ、2つほどポイントはあると思っていて、まず季節イベント、シーズナルイベントに関しては、中国の旧正月や、労働節を考えてもグローバルと比べてまったく違うので、実施する時期が異なったり、専用のものが中国版に入る可能性は高いです。あともうひとつはゲームバランスですが、正式サービス時のパッチのバージョンが違うということで、スタート地点がグローバル版と異なります。その点の数値調整は、中国版用に調整してあります。「中国ならではのニーズがありますよね?」といったことを中国のメディアの方にも聞かれるんですが、中国のプレイヤーの皆さんと交流してみても、あまりニーズの違いを感じたことはありません。1回のプレイ時間についていえば、中国の方がいちばん長いとは思いますが……。ゲームが好き嫌いか、楽しいか、楽しくないかという感性の部分は、世界中のゲーマー共通だと思います。中国や韓国の方はPvPを好み、日本はPvPをあまり好まないとか、そういった“マスの好み”はあります。ですが、日本にいらっしゃるPvPゲーマーのフィードバックと、中国のプレイヤーのPvPに関するフィードバックに違いがあるかというと、そんなことはないです。僕たち以上にメディアさんの方が、地域による差があることを前提にお話しされている気がします(笑)。

――中国のユーザーさんから、「中国なんだからこういうことを入れてくれ」というような要望はないんですか?

 今まで中国数都市を回って、多くのプレイヤーの方と交流させていただいていますが、中国なんだから、と言われたことは一度もないですね。むしろアートマの出現確率を上げてほしいとか……何も変わらないですね。

――それは中国版が出たときには、ということですか?

 いや、グローバル版の要望としてです(笑)。IP制限をかけているので、中国からグローバル版には接続できないのですが、VPNという特殊な方法を使ってつないで遊んでいる方たちですね。熱心にプレイしてくださっている方たちで、ほんとにマジメにプレイしていて、グローバル版のプレイヤーの皆さんとなんら変わらないです。

――『ファイナルファンタジー』というタイトルの名前は中国では知られているんでしょうか?

 FFシリーズを中国で正式に発売したことは今までなかったので、みなさん知らないはずなのですが……(笑)、みなさんお詳しいですよ。チャイナジョイのステージで、『新生FFXIV』と『FF』シリーズに関するクイズを出したのですが、「モーグリが初登場した作品は?」というクイズに即答されましたからね(笑)。

――プロデューサーレターライブみたいなことはやったりしますか?

 中国のメディアの方も『FF』シリーズのファンの方がすごく多いので、そういう方たちから、ぜひ一緒にレターライブみたいなのをやりたいです、コラボできませんか、といったお話はいただいています。時期を見てやってみたいとは思っています。プレイヤーの皆さんと直接コミュニケーションをとる開発上層部の人は、中国でも珍しいとのことで、特に自分でもしっかりゲームをプレイしていて、仕様の話をきちんとするところなどは、中国の方にも評価していただいているそうです。

――チャイナジョイでのユーザーのプレイを見たり、反応を見たりして、どういう印象でしたか?

 昨日、アルテマウェポンチャレンジをやっていたんですが、ゲームパッドは用意してありますか? と聞かれました。『新生FFXIV』は専用のゲームパッドUIを実装していますが、中国のオンラインゲーマーはほぼ100%マウス+キーボードです。が、今回のエピソードで、そのあたりもこれから変わっていくのかな?と思いました。これからプレイされる方も、パッドで遊ぶ人が増えるのかもしれませんね。

――コンテンツの消費スピードが中国はやはり早いのではないかと言われていますが、そのあたりはいかがですか?

 みなさんそうおっしゃるんですよね。実際にどうなるのかをきちんと見たいと思っているのと、いわゆるファーミング系のゲームの消費速度は違うと思っています。アラガントームストーンや、クリスタルタワーのアイテム確保のフラグ、大迷宮バハムートのエンドコンテンツのフラグ制御など、『新生FFXIV』には確実にアイテムを得られる代わりに、時間だけでは解決できない仕様が存在します。この点は第一世代MMORPGに見られる、確率と試行回数が支配するゲームとは異なるので、仮に中国の方が24時間4日間プレイしたとしても、上昇可能なアイテムレベルにはキャップがかかります。モブハントのように、時間をかけただけ、というコンテンツが中国版に実装される際には、その時点の中国版プレイヤーの皆さんの平均アイテムレベルを見て、同盟記章の交換品も調整するつもりです。トップと離れすぎても萎えるのがMMORPGなので、コンテンツやバランスではなく、運営の範疇として数値を調整するという考え方です。ただ、先行するグローバル版のコンテンツ攻略動画を見ることは可能なので、コンテンツ攻略は、後発だからこそ楽な面はあります。ですので、“超える力”の実装時期もグローバル版のパッチと同じタイミングではなく、中国版運営の状況を見て、適用時期を調整するつもりです。

 今の『新生FFXIV』をパッチ2.3から始めると、いろいろなコンテンツをショートカット可能です。イフリート、ガルーダ、タイタンの3つの極蛮神はクリア必須ではなくなっていますし。グローバル版は皆さんすでに体験されているので、それでOKなのですが、中国の方はこれからですので、プレイしてもらってから緩和、という流れになります。

――シャンダゲームズという中国の企業と一緒にやっていくことのメリットはどんなことになりますか?

 我々は日本の企業ですので、本当の意味で中国文化というものが正確にはわかりません。中国の方に向けてPRしたり、お客様に対してコメントを出していくという意味では、中国がわかっている会社さんにやってもらったほうが間違いなくいいと思っていますので、まずそれが絶対的なメリットです。あとはシャンダさん自体がオンラインゲームで成長してきた会社なので、運営、データ分析、サポートなどの対応がしっかりしているのと、シャンダさん自身がお持ちのゲームコミュニティが強力なので、そこに『新生FFXIV』を訴求していけるというのは、計り知れないメリットです。

――シャンダゲームズのスタイルや経験が、グローバル版運営に活かされるということもありそうですか?

 今までもシャンダさんを見学させていただいて、日本側で採り入れているものもあります。例えばデータ分析は、中国に一日の長があるなと感じもしましたし、運営ツールの豊富さや便利さもそうですね。また、グローバルで運営されているどの国のMMORPGよりも、中国ではGMによるインゲームライブイベントが多いですね。人件費の違いというのが最も大きいのですが、もの凄い人数のGMを使って全ワールドでイベントをやったり。日本だと同時に全60ワールドでイベントやろうとした場合、尋常じゃないコストがかかってしまうので、なかなかに難しいのですが。

――中国で10年ぶりに家庭用ゲーム機が解禁になりますが、それがもたらす影響についてはどうお考えですか? 何か『新生FFXIV』に影響を与えることはありますか?

 中国はオンラインゲーム市場なので、少なくともPS4やXbox Oneは、コンソールハードとして考えるのではなく、オンラインゲームハードという意識でいるべきかと思っています。そのためには、中国の各ゲーム企業さんと、ハードメーカーさんが、しっかりとパートナーシップを結ぶことが必要不可欠です。グローバルでのハードメーカーさんは、ライセンスでビジネスをされていますが、そのまま中国に適用するのは、なかなか難しいと考えます。我々デベロッパーは、そのハードの普及の恩恵に与るという意味でライセンスフィーをお支払いしますが、中国ではまだハードが普及しておらず、そこにお客様はまだいない状態です。むしろ、中国のゲーム企業さんの方が、インフラもお客様もたくさん抱えていらっしゃるので、PS4やXbox Oneに対して「なぜ我々がライセンスフィーを払う必要があるのか?」という反応が予測されます。ですので、パートナーシップと相互理解が、まずはいちばん大切かなと思っています。

――中国でもPS4で『新生FFXIV』を出すかどうかは……

 パートナーシップ次第だと思います。また『新生FFXIV』の場合、PS4版のサーバ費用を誰が負担するのか、という協議も必要になります。中国でもPS4版『新生FFXIV』を出せるのであれば出したいですが、越えなければいけないビジネス上の壁がまだ高いと感じています。中国でもPS4版をリリースする場合、やはりクロスプラットフォームにしたいので、そうなるとシャンダさんとSCEさんの協業というのも考えていただかないといけないですよね。ですので、やりたいのは山々ですが、そんなに焦ってはいないです。

――中国は物理的に非常に広いわけですが、吉田さんから見て、極タイタンをクリアできるようなレイテンシーは確保できたのでしょうか?

 データセンターは、中国全土の地域ごとに設置されています。ですので、広い中国をカバーできるようになっており、プレイヤーの皆さんは、お住まいの近くか、最もレイテンシーが高いデータセンターを選択可能です。ですので、タイタンももちろん大丈夫です。

――新疆ウイグル地区やチベットだとか、いわゆる辺境でも『新生FFXIV』はプレイできるんですか?

 実測テストが行われていて、数値上は非常に快適にプレイ可能です。ただし、本当にプレイ可能にするかどうかは、シャンダさん次第です(笑)。

――まずは一級都市、二級都市に?

 そうですね。会場でアルテマウェポンチャレンジを行いましたが、超快適でしたよ。

――中国での目標ユーザー数を教えてください。

 そうですね……100万人はまずクリアしたいです。ただ、今回の戦略は、先ほども説明したとおり、ロイヤルユーザーさんをまず作ってから、マスユーザーを伸ばしていこうという戦略です。最近、中国で『ブレイド&ソウル』がサービスを開始されましたが、あちらは“クライアントフリーでとにかくプレイしてもうらう戦略”です。『ブレイド&ソウル』は初速同接の数値が素晴らしかったのですが、やはり数週間でガクッと落ちました。なかなか今の中国は難しいですね……。

――昔の韓国でもそういう時期がありましたよね。

 そうですね、最近いろいろな地域のオンラインゲーム会社の方とお話をしますが、韓国でも中国でも大型のMMORPGなどは、転換を図るべきなのかどうか、悩ましい時期ですね。

――中国版ではパッケージ版の特別バージョンなども発売しますか?

 完全にファンアイテムとしてのコレクターズエディションを予定しています。内容はサントラや、アートブック、それ以外にも中国専用のグッズなどが入る予定です。発売はオープンβテスト後の予定です。ゲーム流通の無い中国ならではだなあ、と思います。

――そのほかにはキャンペーンやイベントは予定していますか?

 オープンβテストが発表になってから、いろいろな企業コラボだったり、ネット上でのPR展開というのが一気に始まります。ここも僕たちとシャンダさんで、考え方をすり合わせるのに時間がかかった部分なのですが、僕たちが考える一般的なゲームのPRでは、発売から逆算して2回前のE3でタイトルを発表、その次のE3でプレイアブル出展、その年のホリデーシーズンに発売……だいたいそんなイメージです。しかし、中国の場合にはパッケージや流通といったものがなく、クライアントをDLするか、ネットでクライアントを購入するか、いずれにしてもオンライン前提です。

 ですので、すべてはプレイが可能になるオープンβテストがカギです。ですので、コアコミュニティを作るための活動は、長く薄くやりますが、マスへのPRはすべてオープンβテストに合わせるんだそうです。『ブレイド&ソウル』も約1年クローズドβテストを行い、調整をかけて、その間はマスPRをせずに、オープンβテスト日の発表と同時にPR開始。少女時代を起用して大量に素材を投下、バイドゥ指数が上がって一気に話題となる……というパターンでした。『新生FFXIV』も中国銀行のデビッドカードとコラボがあったり、数千万本の飲料銘柄とコラボしたり、中国のnVIDIAさんや、アライアンスメーカーさんとの協業も進んでいます。それらはすべてオープンβテストあわせという感じで進んでいます。

――日本にはあるワンタイムパスワードやスマホアプリはこちらでも実装しますか?

 それはシャンダさんにお任せしています。中国版をプレイする方は、シャンダゲームズのアカウントを作ってログインをします。僕たちは『新生FFXIV』のロビーサーバとシャンダアカウントの繋ぎ込みを対応し、アカウントの運営はシャンダさん。ですので、ワンタイムパスワードもシャンダアカウント用ということになります。ランチャーもシャンダさんが開発しています。PRの素材を貼ったりするため、ラウンチャーは現地制作の方が、融通が利くというメリットもあります。スマホアプリを作るかどうかも、シャンダさんにお任せしており、開発に必要なAPIをスクエニからお渡しする、という感じになっています。

――中国版のアップデートスケジュールはどんな感じになりますか?

 まだ協議している最中です。パッチは出そうと思えばすぐに出せますが、プレイヤーの皆さんのアイテムレベルの上昇率を見て判断したいというのが基本スタンスです。矢継ぎ早にアップデートしたほうが安心感があるのは間違いないので、3か月空けずに、もう少し前倒しに中国版パッチ2.2をリリースするかもしれません。ただし、これは運営マターのお話でもあるので、できるだけシャンダさんの考えを尊重したいとも思っています。シャンダさんとしては、イケイケで早くパッチを出したほうがPRの山を作れるので、恐らくはそうしたいと思うんですが……。しかし、それでゲームの本質を崩してしまってはいけないので、僕はどちらかというと焦らないようにブレーキをかける側ですね(笑)。

――いずれはグローバル版に追いつくようなイメージですか?

 なかなかに難しいご質問だと思います。お客様にとって最悪なのはサーバダウンですので、サーバダウンにはできうる限り注意を払うのが当然ではありますが、中国版の場合はビジネスモデルが従量課金制でもあり、ビジネスの面でもかなり致命的になります。シャンダさんの本音からいえば、パッチはグローバル版で安定してから、中国にリリースしたいのではないかと……。ですが、プレイヤーの皆さんは、できるだけグローバル版と近いほうがいいに決まっています。この点は、シャンダさんが我々にどうご提案されるか次第という感じです。

――従量課金での運営に関して吉田さんはどう思われますか?

 フリートゥプレイも、月額課金も、従量課金もビジネスモデルの選択肢ですので、どう、という意見はありません。それでも、古くから始まった中国のオンラインゲームで、同時接続者数200万人以上を記録したゲームの大多数は従量課金制でした。それらのゲームは今でも運営されていますし、、今でも同時接続で30万、40万人ということがふつうにあります。この辺りは日本と同じように、世代によっても好みが分かれるようです。

 弊社も『クロスゲート』を10年前に展開していて、今回スマホ版を中国でサービス開始しました。懐かしい! とたくさんの方がプレイしてくださっています。確かに今の中国オンラインゲーム市場 の”ファーストフード化”に、フリートゥプレイのモデルは、さらなるファーストフード化に拍車をかけるような気がしなくもないです。ですが、売り上げの山は初動このモデルの方が立てやすいのは間違いがなく、やはり選択次第だと思います。

 その中で『新生FFXIV』は、ゲームそのものを長く楽しんでいただく、というグローバル版の方針を、シャンダさんが汲み取ってくださっての従量課金制だと思います。だからこそ『新生FFXIV』は、先ほどのクロスゲートの例のように、きちんとゲームをプレイしてくださる人を大切にしたい、そのための従量課金制でもあるのかなと思っています。

――ちゃんとゲームを愛してほしいという感じですね。

 僕たちもお客様をとても大切に思っていますし、長く運営していくためには、とても大切なことだと思うのです。それでもこの風潮の中で、シャンダ上層部の皆さんには、非常に大きな決断をしていただいたと思います。

――中国はPvPが大好きで『新生FFXIV』ではフロントラインが最近始まったばかりですが、早くに実装されることはありますか?

 パッチの特定コンテンツを切り出して、そのコンテンツだけ先行実装、というのは不可能なのです。そのコンテンツを導入するために開発されているシステムがたくさんあり、複雑に絡んでいるので、コンテンツを抜き出したつもりが、入れるシステムを間違えたなど、かなりリスクが高いと考えています。そのためのデバッグと調整を行っているうちに、結局パッチ2.3を普通に出したほうが早かった……ということになりかねません。ですので、順番どおりにリリースしていくつもりです。中国版のスタートとなるパッチ2.16には、ウルブズジェイルがありますし、それ以前にまずPvEでプレイすることが非常に多く存在します。ですので、あまり焦ってはいません。

――今後のワールドワイドの展開について教えてください。

 近々何か発表できるかなとは思います!

――どのぐらいの近さですか?(笑)

 今月中には……。次のリージョン展開のお話になるかと思います。

――楽しみですね!

 ちょっと、やることが多すぎではあるのですが(苦笑)。ですが、皆さんに支えられてここまで来た『新生FFXIV』ですので、やれるところまでは、とことんやってみようと思っています。グローバル版、中国版といったように、分割運営の目処も立ちましたので。

――考えられるのはあそこかあそこですよね……?

 いや……いきなり南米で……とか言うかもしれませんし(笑)。

――グローバル版のことも少し聞かせてください。パッチ2.4が今後ありますが、基本方針はどんな感じになりますか?

 2.4は何をおいても双剣士と忍者の実装が最大のポイントです。また新たに“育成”という楽しみができるところが、やはり大きいと思っています。それと同時に、大迷宮バハムートの完結編が実装され、エンドコンテンツの山がまた一段上がります。アイテムレベルが上がることで、ゲーム内経済も一変すると思いますし、当然新しいアイテムも山盛りで入りますので、遊ぶものに迷っていただけるかなと。忍者装備を育てたいんだけど、バハも行かなきゃいけないし、さてどうしよう……。超えるために力がかかるコンテンツも増えますので、カジュアル層の方はそろそろ侵攻編をと思っていただけると嬉しいです。

――アイテムレベルはどこまで上がりますか? ストーリーはどのように?

 アイテムレベルはこれまでの上昇過程をイメージしていただければ、大きくズレないと思います。物語的にはパッチ2.0シリーズがだいぶ佳境に入ってくるので、拡張版に向かってのヒントや、ストーリー後半戦に向かってさまざまな展開があります。ストーリーは、ぜひ楽しみにしていただきたいです。

――実装時期のイメージは?

 今までのペースを維持したいと思っています。楽しみにお待ちください。

――なるほど! 本日はありがとうございました。

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