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2014年8月24日(日)

『ガンダム Gのレコンギスタ』の制作で富野由悠季総監督が痛感したこととは? 特別先行版舞台挨拶をレポート

文:ゴロー

 8月23日より全国の上映館にて、特別先行版(第1話~第3話)のイベント上映が実施されているTVアニメ『ガンダム Gのレコンギスタ』。その舞台挨拶が、8月24日に都内の新宿ピカデリーで行われた。

『ガンダム Gのレコンギスタ』
▲こちらは舞台挨拶の様子。昨日、今日とイベント上映の様子をうかがったキャスト陣は、盛況ぶりから作品に対する期待の大きさを実感したとのこと。ファンの期待に応えるよう自分たちも気を引き締めていくと、収録への意気込みを表していた。

 ●『ガンダム Gのレコンギスタ』とは

 1979年に放送された『機動戦士ガンダム』から35年、1999年の『∀ガンダム』から15年の時を経て、シリーズの原作者・富野由悠季による待望のTV新シリーズ。“レコンギスタ”とは、スペイン語の“レコンキスタ(Reconquista)”が語源。“G”にはガンダム以外の意味も込められており、物語の進行とともに明らかとなっていく。“劇場でのイベント上映”、“dアニメストアでの配信”、“TV放送”とメディアミックスしていく本作は、ガンダム誕生35周年にふさわしいスケール感で展開するという。

 舞台は、これまで富野総監督が描いてきた宇宙世紀(ユニバーサル・センチュリー)のその後の時代である“リギルド・センチュリー”。富野総監督の好む“ボーイミーツロボット”の展開をさらに進めた“ボーイミーツガール&ロボット”の本作は、主人公ベルリが海賊部隊の少女アイーダと謎の少女ラライヤ、そして“G-セルフ”と出会うことで物語が動き始める。

 主人公の愛機となる“G-セルフ”は、未知のテクノロジーで作られたガンダムで、選ばれた者しか起動させることのできないモビルスーツ。軍の作った最新兵器としてではなく、謎めいたその設定はリアルロボットというよりも、スーパーロボットの香りをただよわせ、熱いロマンすら感じさせる。

『ガンダム Gのレコンギスタ』 『ガンダム Gのレコンギスタ』
『ガンダム Gのレコンギスタ』 『ガンダム Gのレコンギスタ』 『ガンダム Gのレコンギスタ』

 舞台挨拶では、総監督を務める富野由悠季さんに加えて、石井マークさん(ベルリ・ゼナム役)、嶋村侑さん(アイーダ・スルガン役)、佐藤拓也さん(ルイン・リー役)が登壇。作品にかける想いや見どころなどが語られた。

『ガンダム Gのレコンギスタ』 『ガンダム Gのレコンギスタ』
▲富野由悠季総監督▲石井マークさん
『ガンダム Gのレコンギスタ』 『ガンダム Gのレコンギスタ』
▲嶋村侑さん▲佐藤拓也さん

 富野総監督は「この作品を制作できたのは、今まで『ガンダム』を応援してくださったファンがいらしたからこそで、とてもうれしいことだと思います」と、ファンに感謝を述べ、「同時に35年の『ガンダム』の歴史の中で、アニメが大人のものになってきてしまいました。大人のものになったアニメを子ども戻りさせる。新しい世代にこういうアニメがあることを知らしめたい」と、本作の企画趣旨を改めて紹介。自分に孫ができた60という年齢を迎えた時にそういった考えに至り、想いを形にしたのが『ガンダム Gのレコンギスタ』だという。

 さらに「自分1人の考えでは絶対に新しいものを作ることはできないと実感していました。宇宙エレベーターというものは、僕にとって絶対に許すことができない存在ですが、そういうものに触れることで教えてもらえるものがあるのでは? と思いました」と続けて、実際に宇宙エレベーターを作っている人たちに話を聞き、作品のヒントを見つけたと話していた。

 子どもに向けた作品を作ることについて富野総監督は「子どもにわかってもらえる作品を作るには、自分の思考回路や好みだけで作ってはいけないと改めて感じさせられています。作りなれた手業を見せるのではなく、おじいちゃんの立場で言えば、孫たちに喜んでもらえるよう“配慮”をする必要があります」とコメント。

『ガンダム Gのレコンギスタ』

 さらに「『ガンダム Gのレコンギスタ』は、一番のターゲット層である10歳~17、8歳の立ち位置を意識し、10年後、20年後の新作への突破口になる意気込みで制作しています。それを見た子どもたちの喜ぶ顔が次への活力になるんです」と、その難しさと楽しさを、時折笑顔を見せつつ話していた。「今の大人たちは、自分が死ぬまでのことしか考えないから無責任な発言ばかりしている。そういう大人たちにとっては“痛い”作品になっているかもしれません」と、逆説的に大人にも見るべき部分がある作品だとコメントした。制作についてはもう1つ、富野総監督自身は、『ガンダム』ワールド的な進化ではない作り方を宿題にしていると明かしていた。

 そんな真面目な話から一転して「問題なのは10年、20年先に僕がいるかどうか」、「90過ぎまで仕事をさせるな!」、「キャラクターやMSの数があまりに膨大でスタッフがパンク寸前ですが、頑張ります!」といったジョークも飛び出し、会場の笑いを誘う一幕も。

 主題歌の歌詞については「職権乱用で自由にやらせていただきました。そういうところでキャリアはありがたいな、と思っています(笑)」とうれしそうにコメント。主題歌の歌詞には、作品タイトルでもある“Gのレコンギスタ”が入っており、佐藤さんが「とても耳に残る曲なんですよ」と言うと、石井さんが実際に主題歌を歌いだす一幕も。

 キャスト陣からは、特別先行版の見どころが語られた。石井さんと嶋村さんは作中における主人公とヒロインの関係ということもあり、第2話後半の“あるシーン”は特に注目してほしいと口をそろえていた。

 嶋村さんは「オーディションの時からこのシーンに対して、ああでもないこうでもないと考えていました、アフレコまでに溜めてきたものをやっと吐き出せたシーンなので、何かを感じていただければ」と、そのシーンについての思いを聞かせてくれた。佐藤さんはこの作品を通じて、学校帰りに急いで家に帰って夕方にアニメを見ていた、あのころの気持ちを今の子どもにも感じてほしいとのことだ。

 最後は特別先行版を観に来た来場者に向かって登壇者がひと言ずつメッセージを贈り、舞台挨拶は締めくくられた。

■富野総監督のメッセージ
 年寄り仕事にしていないつもりですが、本人が思っているだけかもしれません。気付いたら教えてください。それが次の活力になると思っています。とりあえずの3話分ですが、楽しんでいただきたいと思います。今日は、ご来場いただきありがとうございます!

『ガンダム Gのレコンギスタ』

■『ガンダム Gのレコンギスタ 特別先行版』イベント上映&dアニメストア配信概要
【上映期間】2014年8月23日~9月5日
【内容】TVシリーズ第1話から第3話をまとめた特別先行版のイベント上映
【配給】東宝映像事業部
【上映館】
TOHOシネマズ日本橋、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズららぽーと横浜、TOHOシネマズ川崎、MOVIXさいたま、TOHOシネマズららぽーと船橋、TOHOシネマズ宇都宮、TOHOシネマズ名古屋ベイシティ、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ天神、札幌シネマフロンティア

【dアニメストアでの配信期間】2014年9月8日~9月30日
【内容】劇場でイベント上映される『ガンダム Gのレコンギスタ 特別先行版』を独占配信

■TVアニメ『ガンダム Gのレコンギスタ』
【スタッフ】(※敬称略)
 総監督:富野由悠季
 キャラクターデザイン:吉田健一
 メカニカルデザイン:安田朗、形部一平、山根公利
 デザインワークス:コヤマシゲト、西村キヌ、剛田チーズ、内田パブロ、沙倉拓実、倉島亜由美
 色彩設計:水田信子
 美術:岡田有章
 音楽:菅野祐悟
 音響監督:木村絵理子
 企画・製作:サンライズ
 配給:東宝映像事業部

【出演声優】(※敬称略)
 ベルリ・ゼナム:石井マーク
 アイーダ・スルガン:嶋村侑
 ノレド・ナグ:寿美菜子
 クリム・ニック:逢坂良太
 ルイン・リー:佐藤拓也
 マニィ・アンバサダ:高垣彩陽
 ラライヤ・マンディ:福井裕佳梨

『ガンダム Gのレコンギスタ』

(C)創通・サンライズ・MBS

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