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2014年8月26日(火)

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』の設定は黒歴史ノートを読んでいる感覚!? 『魔法科LZ』プロデューサー×三木一馬編集長の対談を掲載

文:まり蔵

 スクウェア・エニックスから今秋配信されるスマートフォン用ゲーム『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO(ロストゼロ)』。本作のプロデューサーであるスクウェア・エニックスの椎名崇徳氏と、原作小説の編集を担当する三木一馬電撃文庫MAGAZINE編集長の対談をお届けする。

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』
『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』

 『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』は、佐島勤先生が執筆する電撃文庫『魔法科高校の劣等生』(イラスト:石田可奈先生)を題材にした魔法バトルRPG。メインシナリオは佐島先生監修のオリジナルストーリーで、国立魔法大学付属第一高校に転入した主人公(プレイヤー)と妹の“零乃まやか”が、原作でおなじみの第一高校のキャラクターたちとともに零家の因果によって課せられた任務を遂行するという物語が展開する。

 対談では、本作が制作されることになった経緯や制作秘話などが語られた。ゲームの内容や設定にも細かく触れているので、『魔法科高校の劣等生』のファンはぜひご覧あれ。なお、『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』に寄せた佐島先生のコメントも掲載するので、あわせてチェックしてほしい。

■『魔法科高校の劣等生』原作者・佐島勤先生のコメント

 ライバル出現!

 『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』の印象を一言で申し上げれば、これでしょうか。

 このゲームは、ジャンルで言えばカードバトルRPGに分類されると思いますが、私がテストプレイさせていただいた印象ではアドベンチャーゲーム的なおもしろさもあると感じました。

 ただし、恋愛ADVとは言えないところがミソです、多分。そこが「ライバル出現!」の所以なのですが……なんのライバルなのかはぜひ、実際にプレーしてお確かめください。なんと申しますか、結構強烈ですよ? 私もオリジナルキャラのとあるセリフが頭の片隅でリピートし続けていましたから。

 もちろん、カードバトルとしての戦略性もあります。各キャラクターの性格付けが結構はっきりしていて、勝つ為にはお気に入りのキャラを使えない……というケースも出てくると思います。そこをぐっと我慢して勝つことを優先するか、焦らず辛抱してお気に入りのキャラクターを育てるか、それを決めるのは貴方次第。そこで悩むのもきっとこのゲームの魅力です。

 『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』。ゲーム機派の私は、スマホアプリだけで終わるのがもったいないと思いました。

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』
▲三木一馬電撃文庫MAGAZINE編集長(写真左)と椎名崇徳プロデューサー(写真右)。

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●原作以上に“中二心”があふれている設定とは?

――まずこのアプリを作ることになった経緯を教えていただけますか?

椎名:スクウェア・エニックスの同じ部署に岩野(※『拡散性ミリオンアーサー』プロデューサーの岩野弘明氏)という者がいまして、その岩野と仕事の合間に『ソードアート・オンライン』や『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』などのライトノベルについていろいろと話すのですが、TVアニメが始まる前から『魔法科高校の劣等生』がおもしろいと2人で言っていたんですね。そんな中、岩野から「もしかしたら『魔法科高校の劣等生』のゲームを作れるかもしれない。それをやってみないか?」という話を受けたのがキッカケです。今思うと、岩野とラノベの話をしてきて本当によかったなと思いました(笑)。逆に三木さんに伺いたいのですが、本作のゲーム化の話ってどういう経緯でスクウェア・エニックスにきたのでしょうか?

三木:『魔法科高校の劣等生』が電撃文庫で発売された時、たくさんコミカライズのお話をいただいたのですが、その時『月刊Gファンタジー』(スクウェア・エニックス刊)の編集の方が『魔法科高校の劣等生』がおもしろいと話していたのを思い出しまして。そこでその方に「コミックをやってくださいよ」とお願いしたんです。その方は「えぇ!? あれをうまくやる人なんていないよ!」とおっしゃっていたんですけど、「いるじゃないですか、目の前に」と。それでやっていただきました。おかげさまでコミックがトントン拍子で進んだ後にアニメ化の話も進みまして、『とある魔術の禁書目録(インデックス)』の時もスクエニさんがコミカライズもアニメプロジェクトも一緒にやってくださったので、今回もそのようなプロジェクトになるといいなと話していたんですね。でも、『とある』で唯一成し遂げられなかったものがあったんです。

椎名:えっ、なんですか?

三木:もちろん、スクエニさんでゲーム化ですよ! そこで「ゲーム化はどうなんでしょうか」とスクエニさんの映像を担当されているクロスメディア事業部の方とか、出版部門の方とかに相談していった結果、おそらくそれが椎名さんのもとにいったという流れだと思います。

椎名:『拡散性ミリオンアーサー』で一度三木さんとお仕事をご一緒させていただいた経緯もあったので、まず岩野にスクエニの社内から話があって、その岩野から「お前、この作品好きだろう?」って話が下りてきたという形ですね。

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』

――そのお話を聞いた時の感想は?

椎名:弊社がこういうアプローチでゲームを出すって本当に珍しいことなので、もう「やっていいんですか!?」と感極まって諸手を挙げてやります状態でした。弊社内の動きとしても、「あぁ、こういう動き方もできるんだなぁ」と改めて驚きました。

三木:スクエニさんって基本的にオリジナルコンテンツでバリバリ勝負するっていうゲーム業界の雄みたいなイメージがあったのに、“原作もの”をやっていただけるというのは原作冥利に尽きると思いましたね。

――ゲームの世界観や時間軸は原作のどのあたりなんでしょうか?

椎名:僕らが元々設定として考えていたのは、原作で当てはめると司波達也や深雪といった今の主役の一年生が入学して間もない7月あたりですね。生徒会の役員メンバーと達也や深雪が知り合ったりとか、吉田幹比古との出会いがあったりとか、そういった諸々の関係性が構築できた頃に、ゲームの主人公がひょっこり転入してくるというイメージです。

――では原作との違いはあまりないのでしょうか?

椎名:原作自体がおもしろいので、ゲームはそこにどう相関させたストーリーにするのかという感じですね。校内だけでなく校外に出て達也が孤軍奮闘したり、チームメイトとともにゲリラと対立したりということがある中で、彼らは高校生活も送っていますよね。そんな学校生活の中で、裏話として実はこんな話があったというイメージで作っています。

――キャラクターは誰が登場するのでしょうか?

椎名:まず主役である達也と深雪、あとは西城レオンハルト、千葉エリカ、柴田美月がいて、幹比古も出ますし光井ほのかと北山雫。生徒会のメンバーは七草真由美、渡辺摩利、中条あずさ、十文字克人と、原作からは12名が登場します。

――たくさんのキャラクターが出るというよりも、12名を中心に話を絞り込んで作られたのでしょうか?

椎名:そうです。これらのキャラクターに対してオリジナルキャラクターが相関して話を広げていく形です。

――では、サブタイトルになっている“ロストゼロ”にはどういった意味が込められているのでしょうか?

椎名:これ……ネタバレになるんですよね(笑)。まずは“忘れ去られた零”と言葉通りにとらえていただければと思います。タイトルを付けるにあたって『魔法科高校の劣等生』を好きでいてくれるファンにちょっとした引っかかりを作りたいと思い、数字を付けたかったんです。“ナンバーズ”という名家が設定上あるじゃないですか。あそこの引っかかりをどうにかしておもしろくできないかなということで“零”と。ここから先を話すとストーリーの核心をついてしまうので、いろいろと妄想していただければと思います。

三木:この辺の設定は、最初に椎名さんサイドからプロットでいただきました。その時からすでに、原作以上に“中二心”があふれていまして……。だって“零”ですよ!? キャラクターの設定も緻密にズラーっと書いてあって、黒歴史ノートを読んでいるかのような感覚でした(笑)。佐島さんからも「問題ない」と言っていただきました。だいぶ前から3Dモデリングやキャラクターデザインは見せていただいていて、あまりのクオリティの高さに感動していたのですが、シナリオも“魔法科イズム”を備えつつチャレンジングなことをやってくれていたので、その時からずっと楽しみにしています。

椎名:そう言ってもらえてなによりです。最初に“零”というワードを使おうと思った時、これは後々原作のほうでも出てくるんじゃないかと思っていたのですが、これくらいでいかないと僕たちが作る意味がないと言ってもちかけてみたら、意外に通ってしまったんです(笑)。

――この設定は椎名さんが考えられたんでしょうか?

椎名:いや、これ自体は開発(ビサイド)にいるシナリオライターと一緒に考えました。どうやったら『魔法科高校の劣等生』ファンにウケるような新しいゲームの設定になるのかは開発が中心となって考え、僕の方では『魔法科高校の劣等生』のエッセンスをどう生かすかというアプローチで、最終的に開発とともに構築しました。

●主人公の妹・まやかの口癖は「零(ぜろ)れ」!?

――ゲームの主人公はどのようなキャラクターなんでしょう?

椎名:主人公はプレイヤーさん自身になるので、明確なキャラクター設定は苗字が“零乃”というだけで、プレイヤーそれぞれによってキャラクター性は変わると思っています。“変わる”というのはどういった意味を指すのかというと、実際に原作で登場するキャラクターと会話をするシーンがあるんですけど、そこに選択肢が出るんです。つまり、選択肢の選び方によって達也や深雪が思うプレイヤーっていうのが変わってくるんです。ですから、プレイしている人の数だけキャラクター性は出てくると思います。

――それによってストーリーも変化するんでしょうか?

椎名:そうですね。選択肢によってやキャラクターとのコミュニケーションの取り方で変わってきます。

――次に主人公が使う“マギカ・ブースター”について教えてください。

椎名:ここも“魔法科イズム”をどう生かした設定にするかというところです。ざっくりと説明すると、これは“魔法師の魔法力を増幅させる魔法”というものです。名前の通りですね。これ自体は“零家”のみが使える、魔法科でいうところの“系統外魔法”の立ち位置で考えています。バトルに参加するのは達也たちで、それに対してサポートをするのがプレイヤーの役割となり、自チームの力を増幅するのが今回の零の能力となっています。

 プレイヤーの立ち位置を想像した時に、プレイヤー自身が達也たちとともに戦うのか? その場合どうしようか? などいろいろと思案しました。その中で、やはり『魔法科高校の劣等生』を好きな人はあのキャラクターたちがどんな風に戦うのかが一番の楽しみであって、それを補佐する役割としてプレイヤーがどう絡むのかという点におもしろさを見出せればと思って制作しています。

――主人公の妹“まやか”についてお聞かせください。

椎名:ストーリーの導入を軽く説明すると、まやかは零家の生まれなんですが、魔法力を持たない子として生まれてきました。その中で、先ほど“忘れ去られた零”という話があったと思うんですけど、零家は元々ナンバーズということで名家なんですね。そこにまやかが絡んできます。零家は過去にそういった魔法能力を持たない人を使って魔法の実験を行っていた。その禁忌の研究に触れたがために零家は抹消されてしまったわけなんですが、それが本作のストーリーにも大きく絡んでくると。

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』
▲『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』オリジナルキャラクター・零乃まやか(声優:内田真礼)。

――……という設定を考えて送ったと(笑)。

椎名:そうです! だいぶ込み入っていましたね。三木さんは、最初にまやかのビジュアルをご覧になられた時どうでしたか?

三木:『魔法科高校の劣等生』の中にいたとしておかしくない範囲内に収まりつつ、他にいないキャラバリエーションになっているので、いい感じのキャラクターだなと思いました。若干この子って“ビッチ営業”的キャラなんですけど、そこが僕は好きです。

――ビ、ビッチ営業……?

椎名:そうなんですよねぇ。なかなかの“ビッチ営業”でございます。

三木:いや! 誤解しないでください!(汗) “ビッチ営業”っていうのは営業でしているだけであって、本当にビッチなわけではないです。そういう雰囲気があるというだけで、むしろそこがカワイイんですよっ!

椎名:ここって結構難しくて、原作では深雪が妹キャラクターとして立っている中で、本作でも妹という存在をプレイヤーにも楽しんでもらいたかったんです。まやかはゲームの中ではガイド役なんですけど、深雪と差別化を図りながら妹役に徹する場合どういう方向に振るかというところで、結果三木さんのいう“ビッチ営業”化したという。

三木:まやかには「零(ぜろ)れ!」っていう口癖があるんですよね。これだけは原作の世界にはなかった(笑)。

椎名:キャッチーなものがほしくて、原作キャラクターがしっかりと立っている中にオリジナルキャラクターをポンと投入しても『魔法科高校の劣等生』のキャラクターには負けちゃうんですよ。ビジュアルでもたぶん勝負はできたと思うんですけど、それでも何かないかなと思案している中で、やっぱり零家だから零を主張したほうがいいんじゃないかと。結果、口癖が「ぜろれ!」になりました。

三木:「バカなの? ぜろるの?」みたいな。『魔法科高校の劣等生』の世界に“ラノベらしいキャラ”が入ってきたんですよ!

椎名:開発チームも電撃文庫さんのライトノベルが好きでこの作品のスタッフとして携わっていることもあり、こういうアプローチの仕方になりました。

三木:すごくよかったです。「ラノベキャラきた!」って思いました(笑)。

椎名:いい感じに溶け込んだのかなと。本当に溶け込めているのかはわかりませんが(笑)。

三木:オリジナルキャラクターである以上、原作キャラクターに認知度で負けてしまうのを、瞬発力というか“ワッと出す”という点では成功していると思います。

――ちなみに「ぜろれ」という言葉の意味は……?

椎名:意味というよりワードの響きで理解してもらいたい感じです。

――“考えるな、感じろ”のような?

椎名:ですね。もう「ぜろれ」って言われたら「はい」っていう感じで。

三木:文句を言うな、ってニュアンスでいいのかな?(笑)

椎名:そんな感じです。僕でも言語化できませんでした(笑)。

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』

●“俺TUEEEEEE!!”をユーザーさんに感じてもらいたい

――先ほどお話いただいたところでもあるんですが、ナンバーズの零家の因縁っていうのはあるんですか?

椎名:因縁っていうほどではないと思いますが、元名家である零家の能力が“マギカ・ブースター”という魔法力を増幅させる力なので、扱いづらいというか、例えばどこかの名家と零家が手を組んだ場合、増幅能力を使って『魔法科高校の劣等生』の世界の中のバランスを崩せちゃうんです。なのでどの名家も手が出せず、どっちかっていうと腫れ物扱いって感じですね。因縁はないんだけど、扱いづらいなぁという立ち位置で考えています。

――ストーリーとかかわってくるところだと思うのですが、主人公やまやかは達也たちとどのように出会い、関係を構築していくのでしょうか?

椎名:ストーリーは、“零家”というものが絡みながら進行していきます。まず1つのキーになる部分は、そもそもプレイヤーが第一高校に転入してきたというところですね。十師族である十文字や真由美は「なんでこのタイミングで転入なんだろう?」と敏感に反応しますし、達也も深雪に危害が及ぶことがあるかもしれないと考える。そういった中でキャラクターたちがプレイヤーに対してアプローチを仕掛けてくると。ただ彼らも一介の高校生なので、当然学校では授業や休み時間がありますし、そういう高校生活の中でのコミュニケーションで関係性が深まっていく楽しさも用意しています。

――意外と普通の高校生のような距離の縮まり方をするのかな、とお話を伺って感じました。

椎名:原作でも当然、学校内での生活におけるキャラクター同士の掛け合いは楽しめますけど、校外に出た達也の動きなど高校生の動きの範疇を超えた物語性を多く語っているので、ゲーム側は校内をメインにして、彼らが高校生活の中でどう関係性を築いていくのかを見せられたらいいなと思っています。

――本作のストーリーで、こだわりというか一番見せたかったところはありますか?

椎名:原作には、佐島先生と三木さんのこだわりと設定がかなり組み込まれていて、この小説は他のライトノベルと比べても違う立ち位置にあると思っています。設定がものすごく重厚でおもしろいので、僕たちはそれを使わせてもらう身である以上、それらをどう生かしてドライブさせるかという点にこだわりました。結果、設定を忠実に相関させながら監修に出しました。

――監修する際、原作サイドとして注意してほしい部分などはありましたか?

三木:それでいくとまず、まやかのキャラクター性にインパクトがあってビックリしました(笑)。話が少しそれますが、『魔法科高校の劣等生』って他にもゲームが出ていて、当然ながらそれぞれのシナリオがあって拝見させてもらっているんですけど、スクエニさんのシナリオはオリジナルエピソードとしてとても野心があり、しかも修正が少ないんですよ。僕としても公式のサイドストーリーを読むような感覚だったので、ほとんど直しを入れていません。

――設定のインパクトはすごいですよね。

椎名:開発からシナリオの第一稿をもらった時、『魔法科高校の劣等生』は僕自身が散々読んできた作品なので要望をたくさん出したんです。それも相まって今の形に落ち着いたんじゃないかなと。今の三木さんのお話を聞いて安心しました。

――『魔法科高校の劣等生』をゲーム化にするにあたり、一番大事にしなければいけないと思ったことはなんでしょうか?

椎名:魔法戦闘における“俺TUEEEEEE!!”という雰囲気をこのゲームを通してユーザーさんにいかに感じてもらうか、というところですね。魔法を発動する時や敵を一気に倒したあとの爽快感、それでいて魔法がカッコいいなど、スマートフォンというデバイスの中でどう表現するかという部分にはこだわりました。

――ゲーム中に魔法はどのくらい出るのでしょうか?

椎名:数でいうと50以上はあります。代表的なところでいうと“ニブルヘイム”とか、戦略級魔法でいうと“マテリアル・バースト”とか、ものすごくカッコいい魔法があるじゃないですか。これはどっちかというと制作秘話なんですが、アニメ放映前の製作委員会設立時点からゲームの制作も並行してスタートしたんです。だから、絵作りをする際、魔法を動かした時にどう映像化したらいいのかわからない。だったら自分たちで絵コンテからやろうということになり、すぐに三木さんやアニメの関係者さんたちに見ていただきました。

 やっぱりゲームで表現する方法とアニメで表現する方法、原作の文字として表現する方法で手法が違うと思うんですよ。ゲームならエフェクトを派手にしなければならないとか、そういった見せ方の違いってあるじゃないですか。三木さんやアニメサイドの方々はそういう部分を寛容に受け入れてくださって、「ゲームだったらこれくらい派手にしてもいいですよ」と言っていただいたので、思いっきりやらせていただきました。

――さっき少し話に出ましたが、戦略級魔法も登場するのでしょうか?

椎名:はい、戦略級魔法は普通に撃てます(笑)。

三木:外側から見ていると、このゲームってすごいリッチなんですよ。普通のスマホゲームと思うととんでもないしっぺ返しをくらうコンテンツと言いますか、魔法発動時の3Dカットインやシナリオがものすごくしっかりしていて、コンシューマゲームレベルなんですよね。

椎名:恐縮です!

三木:映像やモデリングのクオリティはものすごく高いですよ。

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』

●エリカはギャップ萌え? 雫は原作よりも小悪魔度が上昇!

――それではここで、『魔法科高校の劣等生』の中で好きなキャラクターとその理由を教えてください!

椎名:僕、千葉エリカがめちゃくちゃ好きなんですよ。

三木:意外とマイノリティ……かもしれない(笑)。

椎名:なぜかというと、元々男勝りでわりとサバサバしてて、スポーティな感じのキャラクターでたくましい女性に見えやすいじゃないですか。しかも『魔法科高校の劣等生』ってあまり露出が多くない中で、急に体操服でブルマをはいてきたりとか、一見女性らしからぬあっさりした一面があるじゃないですか。そんな中でですよ! 部活の勧誘でエリカを取り巻く連中がいるわけですよ。達也がそこから救出した時に、乱れた服装を見られて急に女性として切り替わるギャップに僕はグサリとささりました。で、そのあと摩利とエリカの兄貴が付き合っているという状況で、摩利に対する相当な嫉妬がまた女じゃないですか。この子はどれだけギャップを持っているんだと(笑)。その揺れ動く感じにやられてしまって、僕はエリカのことが大好きになっちゃいましたね。これがマイノリティな見方なんですかね?(笑)

三木:この話、今までで一番声量が大きかったですね(笑)。

椎名:いろんな一面を持っている女性って幅広くて魅力的じゃないですか。ちなみに三木さんはどうなんでしょう?

三木:ゲームのシナリオを読ませていただいて思ったんですが、僕は雫がいいなと。理由は、ゲームだと原作より小悪魔度が上がっているんです! どこまで話していいかわらかないですけど、メインシナリオ以外でも各キャラと頻繁に会話できるんです。会話のパターンもめっちゃくちゃあって、そこで雫の返しにたまにドキッとするものがあって、彼女はそれを無表情にクールフェイスで言うんです。お世辞にも大人びた風貌ではないのにもかかわらず、お姉さんみたいなことを言うわけです(笑)。真由美が言うのはわかるんですけど、雫が言うからこそ『背伸び萌え』を感じてしまいました。

――三木さんが考える『ロストゼロ』の楽しみ方とは?

三木:まやかが『魔法科高校の劣等生』の世界をすごくかき回すんですよ。メインシナリオでも大きくかかわってきますが、日常パートでも既存のキャラクターたちと会話する時に、まやかが“ラノベキャラ”なもんだからみんな調子が狂ってしまい、ものすごく新鮮な会話をしているんです。

――確かに、先ほどの「ぜろれ!」みたいなことを言われた時のリアクションが想像つきませんね。

三木:まやかに「こうやればお兄ちゃんを落とせるわよ」とそそのかされる深雪がいたり、逆にまやかもお兄ちゃん大好きっこなので、うまく言いくるめられて急に恥ずかしがったりと。そういう会話がたくさんあるのが一番の魅力だと思います。

――では、椎名さんが考える『魔法科高校の劣等生』の魅力とは?

椎名:2つありまして、1つは“俺TUEEEEEE!!”という表現方法。僕はゲームを作っている側なので主人公に着目しがちなんですけど、達也の主人公像っていうのが他に類を見ない立ち位置なんですね。基本的に青春マンガでいえば成長曲線があり、下のほうからレベルが上がっていくと思うんです。でも、達也って原作1巻の段階で最強じゃないですか。なのに魔法社会では彼のパーソナリティーの一箇所だけを見られて「劣等生」と呼ばれている。そんな社会に対して妹を守るために立ち向かう姿の主人公って、どのゲームやアニメ、小説にもなく、この作品でしか見られないのが魅力です。

 2つ目もゲーム的視点なんですけど、新しい魔法の見せ方がこの作品で見られます。炎や氷、雷といったものはいろんな作品で出ていますけど、技術体系化されているという通り、計算式や起動式といったものがある中で魔法をどういうロジックで発生させるのかという部分にまでこだわりがあるんですよね。そういう部分はゲームを作っている側にもない視点でしたし、他の魔法を取り扱った作品にもないと思うんです。

――ゲームでも達也は強いんでしょうか?

椎名:強いですよ。強いんですが、達也を最強の座に置き続けたゲーム性をシミュレーションをした時、どうあがいても破綻するんです(笑)。なので、一方で達也が苦手とする部分も楽しみの1つとして出せないかなと考えて、それをゲームの仕組みに混ぜて、他のキャラクターと複合的に達也を使うことで強く感じていただけるようにしています。

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』

――本作の育成要素についてお聞かせねがえますか?

椎名:キャラクターとコミュニケーションを取って、プレイヤー自身を育てていくという要素が1つの軸となります。先ほど挙げた12人のキャラクターとコミュニケーションを取っていくと、そのキャラクターのレベルが上がっていって成長していくという流れです。また、もう1つの軸としてキャラクターに装備させる“魔法カード”というものを用意しています。この魔法カードは、カード同士を合成することで強くなっていきます。魔法カードには5つの要素があり、まず属性、次にスピード、戦闘力、必殺技、通常技といったものがカード側に備わっています。達也にマテリアルバーストを使えるカードをさしこんだり、グラム・デモリッションのカードをさしこんだりと、幅広く魔法カードを取りそろえて強化していく感じですね。

――学校生活らしいイベントはあるのでしょうか?

椎名:“九校戦”って学校のオリンピックみたいなイベントじゃないですか。僕自身が『魔法科高校の劣等生』の世界に入ったら“バトル・ボード”をすごくやりたいんですが、一方でこのゲーム内でそういうものを表現しようとするとまったく違うゲームになってしまいます。でも、“アイス・ピラーズ・ブレイク”という種目はゲームに落とし込めると思い、実際に組み込みましたよ! 任務では人対人でバトルを繰り広げるのですが、九校戦イベントでは制限時間内にターゲットを何体倒せるか――それをユーザーさんで競い合っていただければと。

――それは対人戦的のようなシステムになるのでしょうか?

椎名:実際に戦うわけではないですが、ポイントを競い合うという意味ではそうなります。本当はバトル・ボードを入れたいんですけどね。九校戦の要素はいずれ時間をかけてでも全部入れたいですね。

三木:“モノリス・コード”なんて、それこそオンライン対戦みたいになりそうですね。

椎名:もう1つ別のゲームを作れそうですね(笑)。

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』

――では最後に『魔法科高校の劣等生』のファンへメッセージをお願いします!

三木:マンガも小説もお金を払って買っていただくものです。でも、デバイスさえあれば基本無料でプレイできる『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』は、『魔法科高校の劣等生』に興味を持った人が最初に一番ライトに楽しめる作品かもしれません。『魔法科高校の劣等生』らしさを内包したゲームになっていますので、それで興味を持ったら原作を購入し、そして課金していただければと(笑)。誰でも楽しめるものになっていると思うので、興味のある方はやっていただければ幸いです。コアなファンの人たちもプレイしていただけると、より一層『魔法科高校の劣等生』を楽しめるんじゃないかと思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。

椎名:僕らがこのゲームを出すにあたって1つ思っているのは、TVアニメには節目があり、原作は当然これからも続いていきますが、すぐに次巻が出るわけではない。そういった合間に、『魔法科高校の劣等生』のコミュニケーションツールとしてこのゲームを使っていただきたいと思っていますし、このゲームを通してファン同士で交流してほしいです。もちろん、ゲーム自体も楽しめるように作っていますので、「『魔法科高校の劣等生』ってなんだろう?」という人たちにもこのゲームをプレイしてもらいたいですね。『魔法科高校の劣等生』の魅力をお伝えできる内容になっていますので、そこから原作を好きになってもらえればと思います。

三木:ガチャシステムも『魔法科高校の劣等生』の世界観になるべくあわせるようにしていましたよね。

椎名:ガチャって普通にアルファベットで書くと“GACHA”になるじゃないですか。例えば『魔法科高校の劣等生』において“CAD”が“キャスティング・アシスタント・デバイス”の略称であるように、ガチャも実はちゃんとした略称になっています。元の名称は、“Gathering Character(ギャザリング キャラクター)”で、“個性蒐集魔法”という意になります。ちなみに、魔法カードの正式名称は“C.A.R.D”と書いて“Casting amplify Recapture Deck(キャスティング アンプリファイ リキャプチャー デック)”です(笑)。

三木:だから「課金する!」じゃなく「起動式を展開する!」なんですよね。あれはすごいと思いましたね(笑)。

椎名:とことん『魔法科高校の劣等生』の世界に入ってくれという気持ちをこめて提供しています。

――今から配信がすごく楽しみです! 本日はありがとうございました。

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 現在、『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』公式サイトにて事前登録が受付中。登録した人全員に、SRカード“司波深雪”(アイス・ピラーズ・ブレイク衣装)が手に入る事前登録特典コードが贈られる。さらに、事前登録をしてゲーム配信後から2週間以内にゲームをインストールした人の中から抽選で1名に、『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』の出演声優13名による直筆寄せ書きサイン色紙がプレゼントされるので、忘れずに登録しておこう。

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』
▲事前登録特典のSRカード“司波深雪”。
『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』
▲中村悠一さん、早見沙織さん、内山夕実さん、寺島拓篤さん、佐藤聡美さん、田丸篤志さん、雨宮天さん、巽悠衣子さん、井上麻里奈さん、諏訪部順一さん、花澤香菜さん、小笠原早紀さん、内田真礼さんのサインが書かれた色紙。額縁のサイズは675mm×600mm。

 また、『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』の配信決定を記念して、8月27日20時よりニコ生番組が放送される。椎名プロデューサーに加えて、TVアニメおよび本作で千葉エリカを演じる内山夕実さんと北山雫を演じる巽悠衣子さんが出演するので、ファンはぜひチェックしてほしい。

『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO』

(C)2013 佐島 勤/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/魔法科高校製作委員会
(C)2014 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. Developed by BeXide,Inc.

データ

▼『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO(ロストゼロ)』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応端末:iOS
■ジャンル:魔法バトルRPG
■サービス開始日:2014年秋
■料金:基本無料/アイテム課金
▼『魔法科高校の劣等生 LOST ZERO(ロストゼロ)』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応端末:Android
■ジャンル:魔法バトルRPG
■サービス開始日:2014年秋
■料金:基本無料/アイテム課金

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