2014年9月10日(水)

『魔法科高校の劣等生』作者・佐島勤先生に商業デビューして変わったことや、今後の目標を聞いてみた!

文:電撃オンライン

 現在開催中の“進化宣言! 電撃文庫FIGHTINGフェア”。電撃オンラインでは、電撃文庫作家陣のインタビューを4回にわたってお届け。第3回は、佐島勤先生のインタビューをお届けしていく。

佐島勤先生インタビュー 佐島勤先生インタビュー
▲佐島先生が執筆する『魔法科高校の劣等生』と『ドウルマスターズ』。

 今回お届けするのは、アニメも現在放映中の『魔法科高校の劣等生』や、超能力とロボットを組み合わせたSFロボットアクション『ドウルマスターズ』を手がける佐島勤先生のインタビュー。佐島先生ならではの作品作りに対するこだわりや、デビューのきっかけなどを伺った!

■メディアワークス文庫賞を狙って作品を投稿

――電撃大賞に応募したきっかけを教えてください。

佐島先生電撃大賞に応募したのは、Webで発表するだけではなく、本職の方に評価していただこうという力試しのような意味合いが、もっとも強い動機でした。それで、Webで書いていたものとは別に、新しい作品を書いて応募したんです。電撃大賞を選んだ理由は、いろんなジャンルの作品が受け入れられている土壌が電撃大賞にあり、それが自分にあっているのではと思ったことがひとつです。

 それと、電撃大賞にはメディアワークス文庫賞がありますよね。ライトノベルは中高生がターゲットと言われていますが、私の小説は内容を考えると、対象年齢がライトノベルレーベルの読者層より上になるのではないかと思いました。正直なことを言うと、メディアワークス文庫賞を狙って投稿したんです(笑)。でも、それは考えすぎ……と言うよりも考え違いで、今はこうして電撃文庫として作品を世に出しています。

――新シリーズ『ドウルマスターズ』は、この時の応募原稿がベースになっているとのことですが、どのくらい改稿されたのでしょうか。

佐島勤先生インタビュー

佐島先生ほとんど原形を留めていない、と言っていいレベルで改稿しています。タイトルが変わっているのは言うまでもなく、“ドウル”の名称も“タイタニック・ドウル”ではなく“ジャイガンティック・ドウル”でしたし、略称も“ギガドール”でした。マユリの性別は男でしたし、ヒロインの名前も“玲音”ではありませんでした。

 ストーリーも最初から組み直しました。応募原稿は“朧月”が脱走部隊を一蹴するシーンから始まっていましたし、蒼生と朱理と龍一の戦闘は簡単に触れられているだけでした。メインイベントはもっと直接的に、人工天体アイランドの港が襲われる展開でした。変わっていないのはポリスとか太陽系連盟とか、ドウルの構造とかサイクロニクスの設定とか、そういった本当に骨組みになる部分の設定だけですね。

――新シリーズを始めたきっかけを教えてください。

佐島先生『魔法科高校の劣等生』の刊行スケジュールに空きが出たので、新シリーズを始めたいと編集さんにお願いしたことがきっかけです。『魔法科高校の劣等生』のアニメも放映中ですし、新しいシリーズを始めるにはこのタイミングがチャンスだと考えたことも理由です。私はデビュー作をアニメ化までしていただける幸運に恵まれましたが、持ち札が単一のシリーズのみである現状に不安もありました。

――2シリーズを並行して書くことは大変そうに思えるのですが、いかがでしょうか?

佐島先生頭の切り替えなどは苦になりませんが、純粋に作業量が増える点で大変ですね(笑)。

――新シリーズを始めるにあたって、『ドウルマスターズ』以外の候補もあったと伺いましたが、その作品はどんなものだったのでしょう?

佐島先生ええ。ただ、その作品はボーイ・ミーツ・ガール、いえ、ヤングマン・ミーツ・ボーイとでも言いますか……。正直に申しまして、『ドウルマスターズ』よりもそちらのほうがライトノベルらしい企画だったと思います。しかし、編集さんから「ありきたりで佐島勤らしくない」と評価をいただきまして……。それに、売れるかどうかを別にすれば私も『ドウルマスターズ』のほうが書きたい作品でしたので、『ドウルマスターズ』を出させていただくことになりました。

――『魔法科高校の劣等生』と『ドウルマスターズ』のどちらも未来を舞台にした作品ですが、これは佐島先生のこだわりだったりするのでしょうか?

佐島先生こだわりではないかもしれませんが、過去を舞台にした物語を書く時は、時代考証をしっかりしなければなりませんよね? 未来の世界を書くには、つじつまをしっかり合わせる作業は大変ですけど、それは自分の頭の中で行えることですので。サラリーマンと作家の二足わらじを履いている間は、調べものに多くの時間を割り当てることが難しいことが理由です。専業作家になるようなことがありましたら、歴史的な事実を元に、しっかりと調べた作品を書くことはあるかもしれません。

――あとがきでも触れられていましたが、ロボットものを執筆されてみて、いかがですか?

佐島先生楽しく書かせていただいております。ロボットものと言っても書き手にとってそれほど特殊なことはなく、基本的にはアクション小説と違いはないと思います。特に『ドウルマスターズ』では射撃の要素を減らしていまして、白兵戦が主軸になっているんです。ですから剣豪小説や伝奇小説に近いものがあるのではないかと。

 むしろ宇宙空間で動き回る際の制約事項をどこまで設定にとりいれて、どこから無視するか、その取捨選択が特殊といえば特殊だったと思います。宇宙空間なので空気がありませんから、翼で動くことはできませんし、一歩進もうにもブースターを噴かせなきゃいけません。読者に受け容れられているかどうかは、12月刊行の第2巻の売れ行きを見ないと判断できないですね。

――アニメなどでは、止まる際に逆噴射する描写などが描かれることは少ないように感じますが、『ドウルマスターズ』ではそういうところも描写されていますよね。

佐島先生そういう部分も意識するのが、私のこだわりでしょうね。

――『ドウルマスターズ』は、シリーズとしてはどのくらいの長さの物語を想定しているのでしょう?

佐島先生どのくらいになるのかは、売れ行き次第だと思いますが、コンパクトにまとめるつもりです。

――まだ『ドウルマスターズ』を読まれていない方に向けて、本作の魅力や読みどころをお願いします。

佐島先生戦闘ロボットものですから、まずは地上と宇宙を股に掛けて矛を交える大型ロボット同士の戦闘を想像しながら読んでいただければ。想像力を助ける描写も入れていますし、身長が5階建てビルと同程度の全身甲冑兵が槍や長刀でぶつかり合う映像を思い浮かべながら読んでいただければと楽しさ倍増だと思います。

 ドウルマスターズには4人のメインキャラクターがいて、それぞれ別々の理由でタイタニック・ドウルに乗っています。自分のプライドのために他のすべてを切り捨てる者、今の自分を受け容れて責任を貫き通す者、過去に囚われ敵を倒すべき相手としか認識できない者、何よりも力を渇望する者。彼ら、彼女たちの中には自分がなぜドウルに乗っているのか分かっている者もいればそうでない者もいます。迷いながらも立ち止まることが許されない境遇が作り出す迷走と愛憎劇、そういうシリアスな部分もお楽しみいただけると思います。この作品はロマンスもシリアス寄りになっていきます。

 後、お約束の部分ですが、この作品は女の子同士のそういうシーンが結構多いです。もちろん、全年齢の範囲ですが。

■キャラクターたちが思い切り動ける物語を描きたい

――続いて『魔法科高校の劣等生』について伺っていきます。すでにWeb媒体で発表していた本作を、電撃文庫で出版することになった経緯を教えてください。

佐島先生当時投稿していたサイトを通じて、今の編集さん――三木さんに声をかけていただいたのが始まりですね。そのころはアマチュアとして続けていくことに、精神的にも肉体的にも限界を感じておりました。でも出版という形で少しでもそれが収入として得られるのであれば、この作品を完結させることができるのではないかと思い、お願いしました。このあたりの詳しい経緯は『魔法科高校の劣等生』第1巻のあとがきに書いたとおりです。

 あとがきに書いていない裏話的なエピソードを付け加えますと、実は他社からもうひとつ、お誘いがありました。ただ別会社さんのご連絡は、アスキー・メディアワークスより1日遅いものでした。やはり先に誘っていただいたほうを優先すべきと考えて、今の編集さんにお目に掛かることにしたのですが、もし『魔法科高校の劣等生』が芳しくない結果で打ち切りになっていたら『ドウルマスターズ』でないほうの企画書をそちらに売り込んでいたかと思います。相手をしてもらえるかどうかは分かりませんが。

――応募作を読んでいたから声をかけた、ということなのですね。

佐島先生そのようですね。作品を投稿した名前と、Webで公開していた名前は別のものですので、本当ならその2つがつながるはずはないんですが、よく編集さんはお気付きになられたなと(笑)。

――『魔法科高校の劣等生』で佐島先生が描きたいものとは?

佐島先生かっこいいキャラクターたちの、胸がすくような活躍を描きたかったんです。『魔法科高校の劣等生』を書き始めた当時は、どちらかと言えば優しい主人公が登場し、少しワガママだけど優しいヒロインがいて、彼らが悩みながら物語が進行していく……。そんなタイプの作品が、ライトノベルに限らず多かったように思います。たまたまそのころ、小学校の低学年の子に読ませる本を探していたのですが、私が子どものころに読んでいたような冒険活劇的なものが本屋にはなかったんです。作品のよし悪しではなく、行儀のよい絵本しかなくて、そういうところに不満を感じました。

 多少ハチャメチャでもスカッとするような、言い方はよくないかもしれませんが、それこそ人を殺しても平然としているキャラがいてもいいような……。そういうキャラクターたちが思い切り動ける物語を描きたかったんです。

 それから“劣等生”をテーマにした理由は、組織の評価と本人の価値は別物で、学生は学生だけの存在ではなく学生以外の顔も持っていることを書きたかったからです。主人公たちを高校生にしたのは、高校生ではまだ“高校生としての自分”を自分そのものと錯覚してしまう傾向があると思ったからです。「でも本当はそれだけではありませんよ」と言いたかったわけです。

 作中の世界情勢については、一歩間違えればやってくるかもしれない時代を考えて書きました。生活技術はせめて交通渋滞などというムダはなくなってほしいという願望が反映されています。魔法については昔から“魔法や超能力が実際にあるとしたら、どうやって作用しているのか?”という思考遊戯を文章化したものです。そういう自分の中にあるいろいろな部品を組み合わせて作ったのが『魔法科高校の劣等生』です。それは『ドウルマスターズ』も同じですね。

――現在発表されているエピソードから、先生がお気に入りのエピソードや、お気に入りのキャラクターを教えてください。

佐島先生自分がおもしろいと思って書いているものですから、基本的にすべてお気に入りのエピソードなのですが、その中でも特にお気に入りのシーンが多いのは第4巻でしょうか。新人戦モノリス・コードの一高対三高の試合風景と、試合終了後に深雪が涙を流すシーン。高層ビルから達也が魔法で狙撃するシーン。そして、ラストの達也と深雪のダンスシーンが特にお気に入りです。

 それから第7巻の達也覚醒シーン、第8巻で達也が深雪に“再成”を使うシーン。ここは達也と深雪が初めて、本当の意味でお互いに触れ合うシーンですね。ここは自分でも印象深いシーンでした。他にも第11巻のラストで達也と深雪が協力して魔法を放つ、ある意味で”合体攻撃”のシーンが特に見どころだと思います。

 お気に入りのキャラクターは、七草真由美と渡辺摩利の先輩コンビと、独立魔装大隊の藤林響子です。彼女たちは見ていてあきないと思うんですよ。それと藤林響子は、頭の回転が早くて、いろいろとわかってくれそうなところがあるじゃないですか。それに距離感を測らなくても、あっちが取ってくれそうな大人の女性ですよね。

――サブキャラクターたちのエピソードを自由に書けるとしたら、誰にスポットを当ててみたいですか?

佐島先生自由に書けるとしたら……と言っても私自身の生産性の問題がありますが、それも含めて度外視していいのでしたら、達也の再従兄弟である、黒羽姉弟の第四高校版『魔法科高校の双生児』を書いてみたいですね。達也たちの活躍とはまったく違う形になると思うので、そういうったところも対比的な形でやってみたいですね。

 少し現実的な話をするのであれば、レオとエリカに焦点を当てたサイドストーリーや幹比古の過去エピソードです。

佐島勤先生インタビュー 佐島勤先生インタビュー
▲第13巻では、表紙を飾った黒羽亜夜子と黒羽文弥の姉弟。この2人のエピソードを読んでみたい人も多いのでは? ▲こちらはエリカとレオが表紙を飾る第3巻。幹比古の過去話も、同時にさまざまなキャラクターの過去を知ることができそうで、興味が尽きないところ。

――『魔法科高校の劣等生』はいわゆる“ご都合主義”があまりありませんが、この要素を排除した理由について教えてください。

佐島先生ただ分量を抑えているだけで、『魔法科高校の劣等生』にも都合のいい展開はあります。抑えている理由は“そういう話にしたくなかったから”です。運の要素を否定するつもりはありません。おそらく我々が実際に暮らす現実世界も運・不運で溢れていて、都合のいい巡り合わせの重なりが成功者と失敗者を分けるということも確実にあると思います。

 ただ、物語が成り立っている世界の構造を無視した都合のいい展開ですとか、既出の設定では説明のつかない都合のいい新設定は、1回や2回ならともかく3回も4回も使うべきではないと思っています。それは小説の舞台を壊してしまうリスクの高い手法ですので。それまで築き上げてきた世界観を壊すことで読者を新たな興奮に引き込む作品もありますが、自分にそういうテクニックを使いこなすのは難しいと思っています。

 そのような偶然の積み重ねなどを必要としないキャラクターとして、主人公に強い力を与えていますので、本作にはそもそもご都合主義がいらないとも言えますね。主人公が強くて、敵がそれをどう対処しようと、ずる賢く立ちまわる。それを主人公が力の差で押し切る流れにしようとしているので、そういう点でもご都合主義は抑えられているのではないかと思います。

――アニメは現在佳境を迎えてますが、ご自身の作品がアニメ化されると聞いた時の感想は?

佐島勤先生インタビュー
▲こちらはアニメのキービジュアルのひとつ。

佐島先生うれしい、と同時に「本当にやるんだ」という意外感を覚えていました。九校戦編の後半や横浜騒乱編はともかく、入学編はアニメに向いているとは言い難いと思っていましたし、だからと言って入学編を飛ばしていきなり九校戦編からアニメ化しても、小説未読者には何がどうなっているのかよく分からないでしょう。その点は難しそうだと思っていましたが、アニメ化を決断していただいて、本当にうれしく思いました。

――アニメをご覧になっていかがでしたか?

佐島先生ひいき目はあるかもしれませんが、2度3度と観て楽しめる作品になったなと思います。あまり細々と説明するのはアニメではないと思いますし、私からもアニメならではの表現を追求してほしいとお願いしました。小説は小説、アニメはアニメとしてのよさは、十分にあると思います。

――小説とアニメの違いというのは?

佐島先生アニメは動いている。それが最大の違いですね。アニメには音があり、キャラクターが動いて、セリフがあって……と見ている人にダイレクトに伝わっていきます。アニメの優れたところはそこだと思います。それと文章を書くことと映像を作ることの違いを改めて実感しました。小説ならば“見えない”で片付けられる部分も、アニメだとそうはいきません。そういう部分が何カ所もあって、いろいろと考えさせられました。この経験は新シリーズに随分役立っていると思います。

 ただ、アニメでは“動き”があるわけですから、あまり立ち止まって説明してはいられないですよね。その点、小説はじっくりと書くことができますから、小説の優位性はそこにあるんじゃないかと。

――アニメの放送開始後、執筆されるうえで影響された部分などはありますか?

佐島先生脳内でしゃべるキャラクターたちの声が声優さんの声になりました(笑)。小説を書く時は、映像を頭の中で思い浮かべながら書いていくタイプなので、この影響は大きいと思っています。

――『魔法科高校の劣等生』『ドウルマスターズ』と佐島先生の作品といえば重厚な設定もポイントですが、設定は執筆前にすべて考えられているのでしょうか。それとも、執筆しつつ書き足していくのでしょうか?

佐島先生執筆前にすべて考えておくのが理想ですが、現実的にはそうもいきません。事前に可能な限り設定を固めていても、書いている最中に修正したほうがクオリティが上がると感じることが結構あります。そういう時は、既に発表済みのものと矛盾しない範囲で設定の追加や修正を行っています。ただ、執筆開始時に“できないこと”と決めていることについては、それを変えないようにしています。

――例えば『魔法科高校の劣等生』でできないこととは?

佐島先生まず瞬間移動ができないことと、変身ができないことです。それと永続的な魔法ですね。それと、主人公の使える魔法に制限があること。強い魔法は使えないなどがあります。

――本日9月10日に発売された『魔法科高校の劣等生』14巻の“古都内乱編”ですが、こちらについても少しお話を聞かせてください。

佐島勤先生インタビュー
▲こちらは第14巻の表紙イラスト。

佐島先生物語が始まった時点では、ブランシュや無頭竜、外国の工作員やパラサイトを影で手引きしていた黒幕の代理人・周公瑾が横浜から逃亡して京都、奈良を地盤とする古式魔法師集団“伝統派”に匿われている状況です。

 周公瑾の処分に協力するよう亡き母の実家から依頼された達也は、スティープルチェース編で敵対関係にあった九島家に協力を求めます。九島家を訪れた達也と深雪は、2人の行く末に重い影を落とす禁忌の魔法師・九島光宣に出会います。光宣の協力を得て達也は“伝統派”の拠点探索に乗り出しますが、相手も達也たちの動きを察知して攻撃を仕掛けてくる……という展開です。

■エンターテインメント作家として、楽しい小説を

――小説を書かれている以外に、普段はどのようなことをされているのでしょうか?

佐島先生作家業を始める前は、バッティングセンターやドライビングレンジに行ってひたすらかっ飛ばすことでストレスを発散していました。そうでなければ図書館で興味の赴くままに調べ物をして過ごしていました。

 しかし今では、昼に仕事をして夜に執筆して……と、余暇の時間がほぼゼロになってしまいましたので、部屋の中で筋トレをするくらいです。

――よく読まれる小説、好きな作家などについて教えてください。

佐島先生翻訳物のSFとファンタジーが好きです。もちろんライトノベルもよく読んでいました。作家になる少し前までは和製SFや伝奇物、現代アクション物もよく読んでいました。菊地秀行先生や夢枕獏先生、田中芳樹先生、今野敏先生の作品が特に好きですね。海外の作品ですと、スペースオペラでもっとも影響を受けたのは『ペリー・ローダン』シリーズ、ファンタジーで影響を受けた作家は、『エルリック・サーガ』シリーズを書かれたマイケル・ムアコックだと思います。

 翻訳もののスペースオペラと翻訳もののファンタジーの影響が根っ子の部分にあって、その上に伝奇小説の影響が積み重ねられていると思います。また、これは言っておかなければならないでしょうが、『魔法科高校の劣等生』の魔法の大元のアイデアは菊地秀行先生の『エイリアン黙示録』に出て来る”アカシックレコードの書換による歴史の改変”という壮大な“奇跡”です。

――小説を書き始めたのはいつごろなのでしょうか?

佐島先生最初に書いた小説が『魔法科高校の劣等生』です。それまでは単なる読者でした。

――『魔法科高校の劣等生』を書いたきっかけはなんですか?

佐島先生小説の投稿サイトで作品をよく読んでいて「じゃあ自分もここに小説を載せてみようか」と思ったのがきっかけでした。

――Web小説の魅力はなんですか?

佐島先生単純な話で、本を買うお金がどんどんなくなっていったんです(笑)。それで、他になにか読み物はないかと思い、Web小説を読み始めました。Web小説と本になっている小説の違いって、完成度だけだと思うんですよ。本になっている小説のほうが完成度は高いですし、読み物としてもしっかりしています。でも、Web小説にもおもしろいものがあります。『ソードアート・オンライン』も、もとはWebで書かれていた小説ですし、さまざまな作品があるのが、Web小説の魅力ですよね。

――佐島先生は、毎日執筆するタイプでしょうか? それともある程度まとめて執筆するタイプでしょうか?

佐島先生アイデアが固まってから執筆します。書き始めるまで毎日アイデアを練りますから、そういう意味では毎日執筆していると言えますし、実際に小説の形で書くという意味ではある程度まとめて執筆します。

――Webと紙媒体では、小説を執筆するうえで注意していることなどはありますか?

佐島先生Webと紙媒体というより、アマチュア作家から商業作家になって、言葉選びに苦しむようになりました。それから、より詳細なカレンダーを作るようにもなりましたね。

――言葉選びですか。

佐島先生はい。Webで書いていたころは、こんな感じだろうと感覚に任せて書いていた部分があったんですが、ひとつひとつの言葉の意味を調べるなど、正確な日本語を心掛けるようになりました。

――カレンダーとは、どういうものでしょうか?

佐島先生話がどういう順番でつながっていくか、このタイミングで他の場所ではどんなことが起こっているのか。そういう作中での出来事についてのカレンダーですね。これらをカレンダーでまとめてから、実際に書き始めるようにしています。

――『ドウルマスターズ』も先日刊行がスタートしたばかりですが、今後はどのようなスケジュールで『魔法科高校の劣等生』と『ドウルマスターズ』を刊行していくかは決まっていますか?

佐島先生はっきりとは決まっていませんが、両方のシリーズを交互に刊行していく形になると思います。『魔法科高校の劣等生』の短編が入る時は、『魔法科高校の劣等生』が連続するでしょう。今の見込みからすると、両シリーズが同時に終わるか、『ドウルマスターズ』が少し早く完結するくらいだと思います。

――もし好きなジャンルで新しい作品を書いていいと言われたら、どんな作品に挑戦してみたいですか?

佐島先生今回ボツになった企画に再チャレンジしたいです。それと、昔から暖めている『かぐや姫・現代版』のアイデアを形にしたいですね。ただ、これは『魔法科高校の劣等生』よりも長い話になると思いますので、実現できるかどうか(笑)。

――現在、“進化宣言! 電撃文庫FIGHTINGフェア”が開催されていますが、進化したいこと、戦っていきたいことなどはありますか?

佐島先生先ほど、言葉を選ぶのに時間をかけるようになったと話しましたが、しゃべるよりも早く、思っていることをスムーズに書けるようになりたいですね。表現を選ぶのに考えが止まってしまうのがもったいないので、その部分が進化できれば、生産性がもっとあがるのではないかと思います。

――最後に、読者にむけてメッセージをお願いします。

佐島先生私は今後もずっとエンターテインメント作家として、楽しい小説を目指していくつもりです。ですが、その“楽しさ”は変則的で時に大暴投となるかもしれません。それでも、いろいろな意味でおもしろさをお届けしたいと思いますので、今後もよろしくお付き合い願います。

データ

▼『魔法科高校の劣等生14 古都内乱編<上>』
■著:佐島勤 イラスト:石田可奈
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2014年9月10日
■定価:本体570円+税
 
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