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2014年11月5日(水)

『FFXIV』吉田氏&祖堅氏&権代氏インタビュー。拡張ディスク『蒼天のイシュガルド』からは“新生”を卒業?

文:おしょう

 アメリカ・ラスベガスにて、現地時間2014年10月18日~19日(日本時間19日~20日)の2日間開催された“FINAL FANTASY XIV  FAN FESTIVAL 2014 Las Vegas”。その1日目の夜、会場のステージに登壇したプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏、サウンドディレクターの祖堅正慶氏、バトルディレクターの権代光俊氏の3名に、お話をうかがうことができた。

 1日目最初のプログラムである基調講演で発表された拡張パック『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド(バージョン3.0)』について、さっそくいろいろと聞いてみたので注目してほしい。今回はいつもとちょっと雰囲気の違う座談会形式でお届けする。

『新生FFXIV』
▲左からバトルディレクターの権代光俊氏、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏、サウンドディレクターの祖堅正慶氏。

■公開されたトレーラーは完成版の一部にすぎない

――まず、冒頭の基調講演で、いきなり『蒼天のイシュガルド』のトレーラーが公開されたのは驚きました。トレーラーにあったように新たなバトルコンテンツなどは、竜騎士が活躍するようなものになったりするんでしょうか。

吉田氏(以下敬称略):まず『新生FFXIV』のポリシーの話なのですが、「このジョブをやっていないと遊べない」ということはありません。(竜騎士にスポットを当てているのは)世界設定的な理由です。竜騎士のジョブクエストでは、「その時代に”蒼の竜騎士”と呼ばれる者は1人しかいない」と言われていたのが、まさかの2人同時期に出現……という展開になっていますが、そのことがイシュガルドのなかで蒼の竜騎士が生まれた歴史と絡んでいるんです。

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▲吉田直樹氏。

 だからシナリオ上も、イシュガルドのなかの特別な竜騎士という存在が、かなりフィーチャーされていくことになる予定です。主人公=光の戦士も「竜を倒すなら竜騎士!」ということで、トレーラーでは光の戦士がジョブチェンジをしているわけです。一瞬、戦士のままドラゴンと戦うのですが、そのあと何かしらがありつつ、宿屋に着いて鎧を脱ぎすて、みんなが逃げていくなか、覚悟を決めて竜騎士で参戦していくという。とにかく“男の子が見てかっこいいトレーラー”にしたかったのが今回のテーマです。

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▲冒頭の基調講演で拡張ディスク『蒼天のイシュガルド』が発表された。

――公開された映像はまさにそうですよね。

吉田:今回の動画はティザー(予告編)ですが、完成版ではパッチ2.5のラストシーンなども全部入れつつ、1本のトレーラーになります。パッチ2.5を公開していない今は、まだ出せないシーンも多く、現時点では少しずつシーンをかいつまんで、お話しの流れだけなんとなくわかるようにしています。いずれ“時代の終焉”トレーラーのときと似たような形で、少しずつパーツがはまっていって……。

●『ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド』トレーラームービー

――最後にロングバージョンになると。

吉田:フルの尺だとかなりの長さになります。

――この『蒼天のイシュガルド』で描かれる“竜詩戦争”というのはどのような戦いなのでしょうか?

吉田:千年間というあまりにも長い戦いの中で、ドラゴン族のなかでもその戦争が詩として歌われていて……といったイメージです。戦いをドラゴン側から見た“竜詩戦争”のイメージと、人間側から見たイメージの2つがある感じですね。

――ということは、ドラゴン族側から物語が語られるということもあるのですか?

吉田:あります。

祖堅氏(以下、敬称略):そんなこともあって、トレーラーの前半が英語で、後半はドラゴン語なんですって。

吉田:ですってって(笑)。

祖堅:だって俺、ドラゴン語わかんないから(笑)。文法とか全部作ったらしいからですからね。

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▲祖堅正慶氏。

――まったく架空の言語として設定しているのでしょうか。

吉田:『新生FF14』は全部そうです。シルフ語も、古代シルフ語を作ってからラムウの曲に書き起こしているので。

祖堅:アホみたいにこだわってるでしょ?

――このこだわりは重要ですよ! 以前、吉田さんのインタビューでうかがったときに、「2.0ナンバーと一緒に、3.0を平行して作っている」というお話だったのですが、3.0の開発スタート時期はいつごろだったのでしょうか?

吉田:いつごろだったっけ?

権代氏(以下、敬称略):いつでしょうね?

吉田:2.1を作っているあたりで、ひとまず3.0の話をし始めているよね……。その時に、僕から「最初の拡張パックは絶対にイシュガルドじゃないと」っていう話はしていて……。どこだろうな……たぶん2.1の途中ですね。2.0をリリースして1カ月半経って、サーバーの大混雑がちょっとすいたあたりで、全体計画を立てて、そのぐらいから、ヴィジュワルワークスと話を詰めて、トレーラーなどのスタート地点はその頃です。

――開発スタッフの内部的な作業に関しては、だいぶ進行している感じなのでしょうか?

権代:どこまで言うべきなのかが、わからないですけど……。まぁジョブは……ねー? という感じで。ダンジョンも……ねー? と(笑)。

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▲権代光俊氏。

吉田:もう正直言うと、2.0シリーズのダンジョンはほぼ作り終わっているというか、レベルデザインなども全部終わっています。あとはグラフィックを待って、コンテンツプログラマーが実際にダンジョンのプログラムをするのみです。

権代:3.0の前に、2.5ではまたクリスタルタワーがあるんですけど、それはもうプログラムを組んでいる状態ですね。だいぶ前から手を付けています。

吉田:春ぐらいから一部のエースとレベルデザインチームは3.0の作業に入っていました。ジョブはけっこう進んでいるよね。

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■1つ目の新ジョブ・暗黒騎士は両手剣使いのタンク!

――まだ新ジョブの総数や詳細が不明なので、あまり具体的なことを聞きづらいのですが……。新ジョブについて教えていただけますか?

権代:なにか言った瞬間にポロっと出ちゃいそうで……。

吉田:実は本来、あれロンドンで発表する予定だったんです(笑)。

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▲ロンドンのファンフェスティバルで正式発表となった新ジョブ・暗黒騎士。

――前倒ししちゃったということですか?

吉田:前倒しというか、ポロリのつもりが……ポロリじゃなくてわかりやすかったというか。ヨーロッパサイドのPRスタッフは怒ってるかもですね。

権代:北米ではコレを、欧州ではコレを……というように発表内容を約束をしたはずなのに、やらかしていますからね。

吉田:そうなると、日本で出す予定だったものを前倒しで……とか(笑)。せっかくのファンフェスですし、期待をもっていただくのに出し惜しみしてもね……(と、宣伝チームメンバーをちらりと見る)。

――今日、会場でアンケートを取らせていただいたんですけど、「期待する新ジョブはなんですか?」という項目に、暗黒騎士、赤魔道士と答えた人が多かったですね。

吉田:赤魔道士の人気はすごいですね。今日も赤魔道士のコスプレをした来場者が、自分の帽子を指さして「(赤魔道士を)入れてくれーー!」って。

――具体的なジョブはロンドン以降の発表になるとは思うのですけど、新しいジョブのロール的には、先行してDPSの忍者が入るぶん、今度はタンク&ヒーラーが入ると考えてよろしいでしょうか?

吉田:みなさんが満足できるようにはがんばりますとしか言えないですよね。

権代:自分は、本当に言っちゃうんでこれ以上話しません!

吉田:タンクは確定なので、あとはお楽しみにということで。皆さんのご期待には応えたいと思っています。

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▲現時点での暗黒騎士の情報まとめ。

――新たな種族については、最初パネルが出たときに衝撃を受けました(笑)。「これが新種族か!」と思ったら×マークが入って。

吉田:あれがホントに実装されたら、僕はアカウントキャンセルします(笑)。

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▲基調講演でネタとして公開された新種族。エイプリルフールネタ。

――あれは前に一度、ネットで公開されたものですよね(※2012年のエイプリルフールにネタとして公開された、『FFXII』のヴィエラ+バンガを合体させた新種族「ヴィアンガ」)。

吉田:エイプリルフールネタです(笑)。会場の人も「Oh No!!」って言ってましたね(笑)。

――本当の新種族のヒントとしては、やはりユウギリの種族ということになるのでしょうか。

吉田:ええ、それは確定です。

――ということは、ユウギリの故郷の話も3.0では関わってくるのですか?

吉田:いえ、それほど深くは関わってきません。あくまで、3.0シリーズは“竜詩戦争”がメインなので。そこに和風の世界観を入れ始めちゃうとブレちゃうと思うのです。日本が知っている”和”と、欧米が望む”和”は微妙に異なりますし、今の時点で大きく踏み込むのは違うのかなと。今回はダークファンタジーな世界観を直球で描くつもりです。『FF』シリーズの次のアプローチとして、そこをきちんとやりたいですね。

――2.4のトレーラーの忍者がかなり和風だったので、この路線も平行して続いていくのかなと思ったのですが、そんなことはないのでしょうか?

吉田:ちょっと目指す方向が変わっちゃいますからね。

――和風な世界観を描くとしたら、その先のパッチになると?

吉田:まだわからないですね。メインストリームでやるとすれば、かなり先だと思います。惑星ハイデリンを舞台にした物語ですので、またドマがクローズアップされる瞬間はあると思いますが。

――具体的には、ジョブとして侍を期待している人もかなり多いかと思います。

権代:“Samurai”フォルダが話題になっていましたしね(※祖堅氏のセッション中、画面に映し出されたフォルダ群の中に「Samurai」と名付けられたものがあったこと)。

祖堅:なんか見えたらしいですけど、実はあれはまったくなんにも関係ないフォルダなんです。申し訳ないです(笑)。

吉田:ついさっき聞いたんですよ。「Samuraiフォルダが偶然あってさ~」って。「もう、侍が実装確定になってるよ」って。「誰の情報だよ!」と思ってたら……(笑)。

祖堅:俺だよ!って(笑)。

――よくユーザーさんも見つけましたよね、あんなに細かいフォルダの名前から。

祖堅:会場に来ていたお客さんに、「ねぇねぇ、これはどういうことなの?」って聞かれましたね。「そういえばそう……いや、関係ないよ?」って言いましたが(笑)。

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■フィールドはより広く、じっくり冒険する形に

――レベルキャップが60に引き上げられますけど、単純に10上がるだけではなくて、いろいろできることが増えていく感じでしょうか? 例えばこれまでのIL(アイテムレベル)にはなかった要素としてまず想像できるのは、新アクションの可能性ですよね。

権代:もちろん、アクションは新しいものが増えていきます。また、レベルを上げていく過程で、ステータスがパッチ2.5における最上級のILに追いつく形になって、それ以降はさらにILを上げてもらうという形になるかと。

吉田:普通に想像していただいているとおりに、レベリングがあって、新しいアクションを覚えていって、戦い方や手札が1段階増えていく感じですね。

――今までのレベリング、とくに2ジョブ目以降は、これまで非常にスムーズに進んでいたので、50→60のレベル上げのスピード感というものが、今までの流れの延長線上にあるのか、それとはちょっと異なる傾向になるのかも気になるところです。

権代:傾向的にはあまり変えるつもりはなく、2.0でレベル1~50までにかかった時間と50~60にかかる時間は同じくらいにしようかと思っています。

吉田:レベル1~50までは、開発サイドとしてはだいたい57時間程度と想定しています。実際、序盤の上昇速度は速いですが、レベル49から50にかかる時間はけっこう長いですよね。当然、その延長として50から51、51から52と増えていくので、そういう意味では、レベル1~50までと50~60までは、同じかそれ以上くらいを想定しています。

 ですので相対的には遅く感じるかもしれません。そのフィールドにあるシナリオやF.A.T.E.、ダンジョンなどを駆け巡って、1レベル上がったから次のフィールド行くか、みたいなイメージだと思ってもらえれば。今までは1つのレベルで複数のフィールドをガーッ駆け巡っていたと思うのですが、わりと1レベルの間に、該当するフィールドをじっくりプレイしてもらうという感じをイメージしています。

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▲ロンドンのファンフェスにあわせて公開されたゲーム内スクリーンショット。フライングマウントに乗って広大なフィールドを冒険していく。

――今日発表された新フィールドは、おおよそ3つぐらいに分けられられると思うのですが、あそこでお話された部分以上にお聞きできる部分はありますか? 浮遊大陸へどう行くのかというのはまだ言えないかとは思いますが……。

吉田:詳細は今後をお待ちください。今の段階で言えるとすれば、フィールドはひとまず、3国エオルゼアの1フィールド単位よりは広くしています。拠点間の距離もかなり開けてあります。

 権代のほうから、バトルチーム側でコンテンツをフィールドに配置するときに、拠点間が近すぎるという意見があったんです。2.0はよくできたマップではあると思いますが、拠点間が近いしマウントを使うのが前提なので、すごくセーフティなイメージがあると思います。

 その中に詰め込んだ結果、例えば巨大なF.A.T.E.を作ろうとしたときにスペースが足らなくなってしまう。ですので3.0では反省点として、拠点間の距離を相対的に広くしている感じですね。

――例えばクルザス中央高地で言えば、ドラゴンヘッドとホワイトブリムの距離よりも広い感じですか?

吉田:あれよりも遠いですね。あとはこれからの作業になりますが、モンスターの強さのデザインをどうするかで、今みたいにスイスイと進めるようにするか、2~3体に絡まれてギャーってなるので慎重に冒険してもらうかが変わってくると思います。自分たちでもプレイしながら調整していく形になりますね。

――となると、2.0シリーズよりも“フィールドでの冒険感”が出てくるイメージなんでしょうか?

吉田:誤解を受けたくないので今の時点では明言しません。ただ、どうしても経験者にとっては『FFXI』や他のMMOのイメージを連想されてしまいますし、極端にするつもりはあまりありません。

 フィールドだけでなく、ダンジョンもほどよく挑戦してほしいですし、クエストだって遊んでもらいたいし、デイリーもやってほしいと思っています。“基本なんでもあり”が『新生FFXIV』ですので、偏らせるということはないかと思います。

――フィールドのグラフィックイメージ的には、雪国的なイメージが全面に出るのかなと思っていたのですが、公開されたフィールドはむしろ幻想的な山や森でしたね。

吉田:3国エオルゼア側で見えているイシュガルド地方は、第七霊災の影響が強い地域が寒冷化したというだけなので、イシュガルドより向こう側の土地はあまり影響を受けていません。さすがに、新フィールドが全部雪景色だとやってられないですしね(笑)。イシュガルド近郊の低地にはまだ雪景色の場所もありますが、その先は全然違った景色になると思います。

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■“旧”から“新生”を経て『ファイナルファンタジーXIV』へ

――曲作りに関しても、もう着手し始めている感じですか? 例えば、吉田さんからこんなリクエストがあった、とか。

祖堅:一応着手はしていますね、どこかとは言えませんけど。とあるところを皮切りに、けっこう前から着手しています。

――それって『THE PRIMALS』のアルバム収録と並行してですよね。

祖堅:そうですね。それと並行して2.4の曲作りもですね。

――さらに言えばそのあいだに2.5もありますね。

祖堅:もうムチャクチャですよ(笑)。

――ちなみに『蒼天のイシュガルド』のトレーラーの歌はかなりカッコイイですね。

祖堅:たまたま、ですかね。

吉田:謙遜するねー。

祖堅:たまたまだと思います(笑)。

――“蛮神シヴァ討滅戦”の曲もカッコイイですよね。

祖堅:シヴァはいいですよ!

――ちなみに2.0シリーズとダークファンタジーな世界観である3.0シリーズの曲のイメージは、祖堅さんのなかでも完全に切り分けて作られているのでしょうか?

祖堅:そこまで完全にセパレートはしていません。でも、音楽はゲーム体験に合わせるべきだと思っているので、ゲーム体験がそうであるならばそっちに振っていくでしょうね。なにせ、今日ステージで吉田が言っていたように「こういうふうにしたいんだよ!」っていう参考資料が、常に「ダークナイト」なんで(笑)。

吉田:ライブオーケストラの王道な音楽もだいぶやってきたので、3.0ではもうちょっと荘厳にしていきたいですね。怖い場所は怖く、安心できる場所は安心できるといったように。メリハリや感情の上下感を強く出したいです。絵作りももっとガラっと変えたいですね。

 とにかく、2.0シリーズは、初めてMMORPGをやる人でも極端に迷わないように、意図的にかなり明るくしている部分もあります。今のテクノロジーで絵グラフィックスがリアルになっているため、そのままリアルに作ってしまうと、夜のシーンは真っ暗で何も見えなくなってしまいます。ですが、3.0ではもっとメリハリの利いた絵作りをしたいというのが、今の方向性です。

――2.0は万人に受け入れられることを意識していた感じですか?

吉田:万人というよりも、これまでの『FF』ファンの皆さんがまず受け入れやすいハイファンタジーにしたつもりです。『FF』のナンバリングタイトルである以上、さまざまな『FF』のお客様がスッと入ってこれなければならないと思っているからです。だから2.0のリローンチが達成できた今、3.0ではもう一段『FFの』的な新しい挑戦をしたいと思うところではありますね。

――それは3.0のテーマでもあるのでしょうか?

吉田:『FF』テイスト全開でというのは変わらずで、もっと大人向けというか……。これは若い人たちにやってほしくないということではなくて、以前『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』を手がけたときも、『ボンバーマン』の制作に携わっていたときも感じたんですが、子どもたちに向けて本気でゲームを作ると、絶対に伝わると思っています。

 僕がユーザーとして1作目の『ファイナルファンタジー』をプレイしたときに感じたようにです。子供はものすごく正直ですので、“子供向け”という意識で作ったりすれば、すぐにそれを見抜いてしまいます。ですので、かっこよいものを作る、それは大人も子供もかっこよい! と思えるものにしたいという感じです。

――基調講演でイシュガルドの街の映像を見た時に、光の感じが違うなと思いました。

吉田:あれでもメリハリをまだまだ付けたいなと思っているぐらいです。フィールドによっても変えていくつもりでいます。それが曲にも影響すると思います。

――飛空艇関連のサウンドも気になりますね。おそらくいろいろなサウンドが出てくるとは思いますが?

祖堅:まぁ……どうなんですかね? すでにいろいろな発注はきてますけど。俺の口からは言いづらいですね。サウンド屋さんなので(笑)。

吉田:大丈夫。『新生FFXIV』でレベル15になってほかの都市へ飛び立つシーンを、あれだけ『FF』にしてくれる祖堅ですから。

祖堅:あれは、最初クエスト班といっしょに作ってカットシーン見たときに、なんでかみんな泣いちゃったんですよね。みんな涙を隠しながら「いいねー」とか言ったあと泣いてるのを隠す為に黙っちゃって。

吉田:『旧FFXIV』が『FF』らしくないって言われたタイトルで、そのリベンジでもあったので……あのシーンができたときには「あぁ自分たちが思う『FF』ってこうだよね」と手ごたえがありました。あそこがたぶん、ひとつ目の山だった気がします。

祖堅:ひと山でしたね。

吉田:あの当時、和田(和田洋一。スクウェア・エニックス取締役会長)があれを見て「これぞ『FF』だと思った!」ってメールを送ってきてくれて、……でも僕は「え?まだレベル15なんですか?」って返した覚えがありますね(笑)。

――旧版でロゴに使われていた各ジョブのイラストをつけたまま、『新生エオルゼア』のロゴに突入して、今回『蒼天のイシュガルド』でまた新たなロゴを発表したのは、そのリローンチからの決別という意味合いも強いのでしょうか?

吉田:決別とかではなくて、どちらかと言えば、新作という感じをとにかく出したいという意図ですね。『FF』の場合は、ナンバーが多くなったためにローマ数字を見ても一瞬どれが新作かわかり難くなってしまいました。やはり新しいロゴをバーンと打ち出すのが一番わかりやすいのかなと。エクスパンションごとにロゴを変えていこうという話はしていました。

――その点で一点気になることがあります。今まで『FFXIV』は『新生エオルゼア』という言葉がついていて、略称的には『新生FFXIV』と呼ばれていましたが、今回名称的には『FFXIV: ヘブンズワード』になるのでしょうか?

吉田:『ファイナルファンタジーXIV』でよいと思っています。新も旧もなくして。

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――『新生』じゃなくて、本来の『FFXIV』になると。

吉田:その次はもしかしたら『XIV』もなくなって『ファイナルファンタジーオンライン』になるかもしれません。『FFXV』が発売されれば、『FFXIV』はひとつ前のFFになってしまいますので(笑)。

 例えば友だちに「一緒にプレイしよう!」と誘われたときに、ナンバーが付いていると「この前『FFXV』が出たんでしょ?なぜ古いゲームを遊ぶの?」という感じになると思うのです。マンガを14巻から読む人はいないと思いますし……。そう考えると、14という数字は、しっかりナンバー最新作の役目を果たした頃、外してしまってもよいのかなという気持ちはあります。

 もちろん、これだけ色々な出来事があり、世界中のプレイヤーの皆さんに支えていただいたタイトルですので、思い入れがある方もたくさんいらっしゃると思います。もし本当にこれを実施します! という場合、最初のうちは「え~っ!」と言われるかもしれないですが……。

 これだけ皆さんにお世話になったタイトルですし、一人でも多くの方に遊んでいただくことが、皆さんに対する恩返しだと思っているのです。新規プレイヤーの方を増やすためにこの“ナンバリング”がわかりづらいのであれば、それすら外す覚悟があると、今のところはそんな風に思っていただけるとうれしいです。

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■ファンフェス会場で初公開となった“蛮神オーディン討滅戦”

――話は変わりますが、今回のファンフェスでは実装を控えた蛮神シヴァのバトルトライアルではなく、蛮神オーディンのトライアルが実施されましたが、なぜオーディンを公開したのでしょうか。

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吉田:それはやはりファンフェスだからです。会場に来ていただいたみなさんに、誰もやったことがないものを体験してほしいなと。ファンフェスは3都市で開催されるので、途中でパッチ2.4が出てしまう関係上、東京のタイミングでは「シヴァなんてさんざん遊び倒して飽きたわー」というタイミングになってしまいます。

 かといって東京だけオーディンにしてしまうと、不公平になってしまいます。スペシャルな場所にお金を払って来ていただいているので、我々からの精いっぱいのおもてなしとして、まだ誰もプレイしていないコンテンツを、いち早く体験してもらいたいというのが意図です。

――東京のファンフェスではもう動画を見て徹底研究してくる人もいるかもですね。

吉田:と思ったら「アレ!? 極になってる!?」みたいな(笑)。

権代:ギミック変えておきますか、みたいな(笑)。 

――実際のゲーム内に“蛮神オーディン討滅戦”が実装されるタイミングはいつになりますか?

吉田:まだもう少し先です。いずれにせよ、ファンフェスだけで終わらせるつもりはなくて、シナリオもつけてキチンと遊んでもらえるようにはします。

――2.0シリーズの蛮神としてはシヴァやオーディンで一区切りというイメージでしょうか。

吉田:まだ2.4をリリースしていないので、2.5については詳しくお話しできません。しばらくはシヴァが重要なキーを握ることになるので、2.4のシナリオをぜひご覧いただけたらと思います。

祖堅:ストーリーは2.4から動きますよね。

吉田:かなり……。言えないことが多いね。

――3.0ナンバーの蛮神は、今までのテーマ性とは変わってくるのですか? オリジナルの蛮神も登場するとのことですが。

吉田:そうですね。オリジナルもそうですし、「そうきたか!」という蛮神もあると思います。3.0のテーマから推測して「あぁ、たしかにこいつがきてもおかしくないな」というのをいろいろ妄想してもらえればうれしいです。バトルをあとで作るのが大変ですが(笑)。

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■ファンフェスはロンドン、そして東京へ

――最後に今回のラスベガスの感想をお聞きできればと思います。ひとまずイベントの1日目を終えた感想と、アメリカのファンの方々を間近にしての感想をいただけますか?

祖堅:お客さんの反応がすごくダイレクトでわかりやすい、というのが印象ですね。心で思っていることを口に出したり体で表現したりしてくれるので、何考えているかわかるんですよね。あと、ツイッターに一緒に撮った写真をアップするときに、自分を隠さないですね。

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▲特製の吉田プロデューサーTシャツを着た方々も。

――そこはアメリカの方はオープンですよね。

祖堅:海外の方は、あけっぴろげなんですよね。ミコッテの白魔道士キャラの絵を持ってきて、それを「コレ、俺だぜ~! かわいいだろ!」みたいな。なんにも隠さないんですよね。

吉田:自分の娘さんみたいに紹介してくれるよね(笑)。

祖堅:たぶんそういうことだと思います。わかりやすい。

――初日のサイン会でも、自分のキャラをドーンとプリントした自作のTシャツを持ってきた方もいましたよね。

祖堅:あとコスプレの方たちも印象深いですね。もちろん、日本の方もすごい熱意があるんですけど、アメリカも負けてないですね。造形物のデキのよさがスゴイっす。そこにサインしろと言われても、こっちとしてはやりにくくて仕方がないですよね。こんなんの汚していいのかみたいな。

――今日のステージ(ミュージックパネル)はいかがでしたか? 日本で見ていた方からも「基本英語なのにおもしろかった」という意見が多かったです。

祖堅:英語わかんないんだけどね、俺(笑)。あとはフィナーレのライブをドッカンといきたいなと。

――権代さんはいかがでしたか?

権代:自分はこれまで人前に出るのがすごくイヤだったので、日本の各地でF.A.T.E.があったときに、毎回「出ないです。まだ○○さんが出てないじゃないですか」って避け続けていたんです。そしたらこの前の14時間生放送で、とうとう最後のコアメンバーである春日さん(リードプログラマーの春日秀之)が出ちゃって、「次、お前な」って。

 そこで「北米と欧州どっちがいい?」と言われて。自分はそもそも欧州に行ったことがなかったので、「じゃぁ北米に行きます」って言ったら、北米が一番会場がデカくて、しかも2日間あったという(笑)。しかも、その時点では「いくぜ」って言われていただけなので、インタビューに一緒に答えたり……最悪、ステージに出てもプロデューサーレターLIVEだけだと思って行ったら、専用のパネルが用意されていて……。全部あとから言われたことですからね。ひどい話ですよ(笑)。

吉田:いやぁ、それはわかってるかな~と。

権代: 絶対にわかりません(笑)。

祖堅:毎回そうだから! 中身はまだよくわからないけどとりあえず出ろ! みたいな。

権代:こんなことなら、もうちょっと小規模なイベントにさっさと出ておけばよかった(笑)。

――今日のセッションでは、さまざまなバトルコンテンツの担当スタッフとしてA、B、C、Dの略称でスタッフが紹介されていましたが、あの中に権代さんは含まれてないんですか?

吉田:含まれてないですね。システム担当なので。

権代:システムを担当する3人のなかの1人であり、さらに根幹のシステムを自分が作っているという感じです。

吉田:だから、根幹のシステム、計算式、ジョブデザイン担当みたいなイメージです。いわばバトルシステム全般を1人で持っている感じですかね。少数精鋭すぎる(苦笑)。

祖堅:本当に開発をやっていると「この人ぶっ倒れたらどうするんだこのチーム」みたいに思うことがありますね。(各セクションに)いろいろとそういう人がいます。

――ちなみに、このタイミングで権代さんがファンの前に登壇したというのは、吉田さん的には何らかの考えがあったのでしょうか?

吉田:僕は、日本のオンラインゲームの歴史の中で、『FFXI』はとても大きな存在であると思っています。ですが、人々にMMORPGという存在を広められたのと同時に、「開発スタッフはプレイヤーの敵」という雰囲気もできてしまったような気がしています。

 僕はいろいろな国のプレイヤーと直接会って話をしてきましたが、実際にはそんなことはないと思います。でも、ネット上では人格否定に近いことも書かれてしまう場合もありますし、だから表に出たくなくなる開発者の気持ちもすごくよくわかります。ですので、そろそろそういうイメージは、きちんと改めておきたいと思ったのが、今の『FFXIV』にある“開発者はできるだけ皆さんと対話する”という方針の根幹でもあります。

『新生FFXIV』

 権代にはこれからも、『新生FFXIV』だけでなく、ほかのオリジナルタイトルでもディレクターを担当してほしいと願っています。そしていずれ、権代はおそらく「自分のゲームのディレクター」としてプレイヤーの方々と「どう向き合うのか」という部分を真剣に考える時期を迎えます。ですので、権代には「余計なお世話だ!」と言われるかもしれませんが、勝手な親心的な?(笑)

権代:実際にファンフェスに出てみるとすごく楽しいんですけど、ステージに出る前はすごく緊張してました。あと「凄い人数だ!」というのが会場に来てみての率直な感想でした。

吉田:明日から“Mr.G”で呼ばれていくんじゃないですかね。

権代:さっきも呼ばれましたね(笑)。

吉田:僕の感想としては、ここのところ本当に世界中を飛び回らせてもらっている中で、さすがに規模は4,000人規模というのは初めてですが、どこの国に行っても変わらない声援をいただけるのは、とてつもなくありがたいですね。ただ、昨日会場を歩いているとき(会場のホテル内で大勢のファンに名前をコールされたこと)は死ぬほど恥ずかしかったです……。

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▲ファンフェス前日にファンとハイタッチをかわす吉田プロデューサー。

権代:ロックスターが歩いているみたいでしたね。

吉田:カジノに来ている他のお客様の「なんだあれ?」っていう視線が恥ずかしくて恥ずかしくて……(苦笑)。あと、ゲームの開発は僕ひとりじゃなく、みんなの力でやっていることなので、こういう機会にスタッフを少しずつでも紹介して行ければと思っています。とくに今日の権代のセッションのように、少数精鋭だけど、みんなで作っているんだよっていうところを少しずつでもお伝えできればと思っています。

――東京のファンフェスでは、登壇する開発スタッフの方の人数も増えたりしますか?

吉田:権代しだいじゃないかな(笑)。

権代:自分以外のコアメンバーは行くんじゃないですかね(笑)。

吉田:いや、日本にくる前には絶対に行かないって言っていたのに、「両日出て泊まってもいいならアリかもなぁ」みたいなこと言っていたので、宿は用意しとくから(笑)。

――あとは、東京のファンフェスと、その前に福岡のF.A.T.E.がありますね。福岡はどなたがゲストにいらっしゃるのですか?

吉田:福岡はレベルファイブの日野さんに来ていただこうかなと……。プレイヤー代表として(笑)。

――その福岡のF.A.T.E.で、ほぼ日本の主要都市をまわったことになりますが、今後の開催予定は?

吉田:日本を一周グルっと回れましたので、今後どういった形で続けていくかは、これから話をしていこうかと思います。ファンフェスはさすがに年1回はキツイかと思いますが……2年に1回ぐらいはぜひやりたいなぁと思います。毎年、あの規模のネタを持ってこいと言われてムリなので……。

――期待されますよね。

吉田:「次はもう4.0かよ!」みたいな。

祖堅:ムリムリムリ。今でもほんとキツイんですから!

――仕事量がハンパないのは本当に理解できます。

祖堅:仕事量がハンパないうえに、作業期間がめちゃくちゃタイトなんですよ。ありえないぐらいですよ。

――パネルでおっしゃっていた数字も全部本物の数字ですもんね。2日で作曲、とか。

祖堅:毎回ありえないスケジュールですよ……。

吉田:さらに露出系のイベントが多いので、そっちの準備にけっこう時間とられたり。

祖堅:まぁそれも大事な仕事ですしね。作ったものを発信しないでいてもしかたがないので、全力でやります。

吉田:日本のファンフェスが終わったら、ニコニコ超会議の準備にまた入るだろうし。

――それが終わったら、E3 2015もありますしね。

吉田:『蒼天のイシュガルド』については、さまざまな場でアピールして、もう一回『FF』の新作がきたぞと知っていただいて、さらなる発展をしていきたいと思います。

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