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2015年1月20日(火)

『ブレイブ フロンティア』『ログレス』開発者が明かす500万DL達成までの広告運用の秘訣

文:そみん

 1月15日に東京・ベルサール新宿グランドで“Native Gaming Summit 2015 January ~TOPデベロッパーが語る2015年のネイティブ市場~”が行われました。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

 本イベントはメタップスの主催で行われたアプリディベロッパー向けのセミナーで、さまざまなアプリ開発者や経営者が登壇し、非常に興味深い講演が行われました。この記事では“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~”のプログラムをクローズアップしてレポートしていきます。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

 登壇したのは人気アプリ『ブレイブ フロンティア』と『剣と魔法のログレス いにしえの女神』の開発・運営者の方々。Alim(エイリム)の代表取締役COOを務める高橋英士氏、Aiming(エイミング)の取締役COOを務める萩原和之氏、マーベラスのデジタルコンテンツ事業本部 マーケティング本部長を務める三枝明大氏から、最近の自社ゲームの動向や3桁万DLを超えたアプリがどのような展開をしているのかが語られました。

■ともに国内500万ダウンロードを突破した『ブレフロ』&『ログレス』の今

――まずは簡単な自己紹介とタイトルの現状について教えてください。

高橋:2013年7月からスタートした『ブレイブ フロンティア』ですが、ちょうど本日1月15日に国内500万ダウンロードを突破したリリースを出させていただきました。

 世界的にはアジア圏を中心に世界67か国、14言語ほどで展開をしており、全世界でのダウンロード数は2,000万を突破しました。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

萩原:私どもAimingは2011年に設立された比較的新しい会社で、『ログレス』を代表としたゲーム開発を行っているディベロッパー会社です。社長によると今年は8本の新作ゲームを出すそうですが、まだ2015年も始まったばかりなので、具体的なゲーム内容についてはもう少々お待ちください。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

 『ログレス』のサービスは国内のみで、今は500万ダウンロードを突破しました。我々は1日だけプレイして継続して遊ばないユーザーさんを除いた形で計測するRDAU(Real Daily Active User)を指標としていますが、いまだによい形で上昇している状況です。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

三枝:マーベラスはご存知のように総合エンターテイメント企業といった形で、オンラインゲーム、コンシューマゲーム、アミューズメント、オーディオ&ビジュアルなど、幅広い分野で展開をしています。中でもゲーム事業が主体となっており、約500人の社員中7~8割がゲーム事業に携わっている形です。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~ “「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

■200万DLの壁を突破する方法とは? タイアップやコラボへの考え方も激白!

――ここからはパネルトークを進めていきたいと思います。最初のテーマは、なぜそこまでDL数が伸びているのかです。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

三枝:『ログレス』については、正直なところ、100万DLまでは渋かったです。2~3カ月以上はかかりましたね。その理由はスマホアプリでは珍しい本格的なMMORPGというジャンルがユーザーさんに伝わりにくく、興味本位で遊び始めるお客さんが少なかったからだと思います。

 状況が変わり始めたのはサービス開始から数カ月後で、PCなどでMMORPGに慣れているお客さんを中心にしたゲーム内のコミュニティができ上がっていき、そこから外に広がっていった印象があります。『ログレス』はユーザーさんのリテラシーが高く、ユーザー間で初心者の方に教えあうような流れができたこともよかったと思います。

 その後、大きく数を増やしたターニングポイントはテレビCMですね。そこまではメタップスさんにご協力いただいて、アドネットワークを中心に順調にお客さんを増やしていたのですが、他の会社の動きを見ていると200~300万DLのタイミングでテレビCMを打つことが多かったので、我々もそこを逃さないようにしたいと思いました。そのテレビCMにより、それまでグラフ的に20~30度くらいだったユーザーさんの上昇率が直角に近い伸び方に変わりました。

――ちなみにMMORPGというジャンルをかんがみて、特殊な考え方などはあったのでしょうか。

三枝:『パズドラ』や『モンスト』のように遊んですぐにおもしろさがわかるものと比べて、MMORPGのおもしろさを伝えるためには時間がかかるとは思っていました。スピード勝負ではなく、じっくりと遊び続けるとどんどんおもしろくなって、奥深さがわかっていくという、スルメのようなゲームだと考えて展開をしていきました。

萩原:『ログレス』を遊び始めたきっかけは、MMORPGだからというよりも、知人やCMを通じてゲームを知って、なんとなく楽しそうだという理由で遊び始めている人が多い印象です。

 知り合いと一緒にゲームを遊ぶことって、本当に楽しいですよね。例えば『モンスト』の場合、協力プレイをするとガチャ用のチケットをもらえるなど、そこに誘導するためにうまくバズりやすい仕組みを採用していて、ああいうところはとても参考になりましたね。

高橋:『ブレイブ フロンティア』のDL数が伸びたのは、お世辞ではなくメタップスさんのおかげだと思っています。500万DLのうち、Androidが270万くらいなのですが、そのうちの150万DLくらいはメタップスさんの協力によるものだと思っています。

 Google Playのリワード広告は非常に効果的ですが、そのタイミングがとても重要です。その時期に検索順位を上げる施策も行い、ファーストビューに表示されるようにすることはリワード広告とセットで行うべきで、マストで考えるべきだと思います。

 数についてですが、100万DLぐらいまでは通常のプロモーションでももっていけると思います。そして、100万DLを突破できるコンテンツはなんらかの長所があるわけで、うまく展開をすればもっと伸びると思います。

 ただ、自分の実感としては500万から先は未知の領域ですね。『ブレフロ』で言えば、400万を超えたあたりからがしんどかったです。通常時とプロモーションを行った時期とで、新規ユーザーさんの動きが目に見えて違うようになりました。特に去年の後半は新規ユーザーの流入が減っている実感がありました。

 それもあり、この年末年始にはアントニオ猪木さんなどを起用したのですが、これが大成功でした。テレビCMはこれまで何回か行ってきたのですが、この1月頭に過去最多の流入記録を更新することができました。

――次のテーマは、リリースから1年以上たって累計DL数も伸びてきた状態でも新規ユーザーが入ってくるのかどうかです。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

三枝:当然ながらDL数が増えると新規ユーザーさんの数は減りますが、『ログレス』は順調に推移してきた実感があります。とはいえ、最近はさすがに息切れしてきた感じがしますね。放っておいても伸びたのは200~300万DLくらいまでで、そこから先は何かしないときついです。テレビCMも、2カ月続けて行うと、2カ月目の効果はかなり低くなりますし。

 これからの課題は、あまり積極的に情報を収集しないユーザーさんに向けてどう『ログレス』をアピールしていくかです。そこについては、まだまだやり方があると思いますね。

――続いて、タイアップやコラボの効果はどれくらいあるのか教えてください。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

萩原:少し前に『ブレフロ』と『ログレス』でコラボを行ったのですが、思いのほか両作品のユーザーさんが重なっていなかったようで、お互いに新規ユーザー数がしっかりと伸びるWin-Winの展開ができたと思います。

高橋:タイアップやコラボは、会社や作品のポリシーなどとも関係してくると思っています。例えば僕らは、そういったコラボをビジネス的にやったことがほとんどないんです。とにかくユーザーサービスとしてしか考えていなかったので、コラボをやることで利益が下がるなんてこともあったくらいです(笑)。

 ただ、今回の『ログレス』とのコラボではインセンティブを意識して、RPG好きのユーザーさんの流入を考えて行ったところ、非常に新規のユーザーさんが増えました。やっぱりやり方しだいでコラボ先とのお客さんの交換はできるんだなと感じました。

三枝:ちょっと不適切な話かもしれませんが、なじみのキャバクラで『ログレス』を広めていたんですよ(笑)。そんな中で『ブレフロ』とのコラボが行われた際、『ログレス』は自分にはちょっと重いゲームで『ブレフロ』のほうがちょうどよかったという話を聞きました。その逆に『ログレス』がちょうどいいと感じてくれる方もいて、こういったコラボでより自分好みのゲームに触れる機会を増やせることは、意味があることなのかなと感じました。

 コラボについてはいろいろと考えていますが、いつかはゲーム系の実写CMでおなじみのTOYOTAさんとのコラボも実現してみたいですね。

■テレビCMで“ちょっとだけやる”は厳禁! そして、よりCM効果を高める“集中”理論とは?

――ここまでの話でも出てきましたが、テレビCMや交通広告など、Web以外での広告展開についてどう思いますか。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

萩原:テレビCMや交通広告の効果はKPIなどで数値化できるものではないので、覚悟を決めるかどうかだと思いますね。そして、重ねていくことが大事です。分散するのはダメで、集中することが必要ですね。

 『ログレス』の500万DLという母数の問題もあるかもしれませんが、うまくいけば効果は高く、新規のユーザーさんの獲得はもちろん、遊ぶのをやめていたユーザーさんの復帰も見込めます。既存のユーザーさんに対するリテンション効果(維持・囲い込み)も大きいです。

 テレビCMについては前々からマーベラスさんと話をしていて、目標のユーザー数や売上金額を超えたら、広告にお金をつっこんでみようと決めていました。

高橋:萩原さんとかぶりますが、僕も覚悟が大事だと思います。テレビCMや交通広告は金額がケタはずれで、ヘタをするとゼロが2個違うくらいの規模感になります。でも、やっちゃまずいと思うのは、ちょっとだけやることです。そういう考えだと、すぐ2~3億をすります。なら、5億をつっこむべきです。そして予算があるなら、スポットではなく継続的にずっとやるべきです。

 あとはタイミングですね。効果が大きいタイミングは3回あって、年末年始と5月の連休、そして夏休みの時期。夏休みは特にお盆の時期ですね。

 大規模な広告については、途中で細かくどうこう議論するよりも、「いろいろと大変だったけど、結果が出てよかったね」という形で割り切ることも大事だと思いますね。もちろん、どの番組にどんなCMを投入するかを考えることは大事ですが、極論を言うとテレビCMや交通広告の正確な効果を数値化することは難しいので。

 個人的な感覚ですが、予算として4~5億以上をかければ効果を感じることができるはずです。そして、そのタイミングでWebでの施策などもちゃんと重ねることが大事です。どうせなら予算を5,000万円追加して同時期にリワード広告をつけるほうが、効果が大きくなると感じています。

 Webでの広告の場合、500万円と300万円のプランがあったら、まずは300万円で試してみて、それで効果があったら次は500万円という試し方ができます。でも、テレビCMや交通広告は低額で試すことができません。とにかく覚悟が必要だと思いますね。

――次の質問です。アプリのリリース前に戻れるなら、何かしたいことはありますか?

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

萩原:うちはありませんね。お客さんといっしょにゲームを育てていけるのが『ログレス』の強みですから。

 ただ、小さなところではリリース後1年を経過してプッシュ通知がようやく入ったのだけれども、リリース時から入れておけばよかった。さすがに今の時代、プッシュ通知は当たり前になっていますからね(笑)。

三枝:アプローチの仕方はもっとあった気がします。例えば、つい先日の会議で判明したのですが、タイトル内の“ログレス”は実は造語で、別の言葉でも置き換えができたんですよ。

萩原:日本人に親しみやすいものにしようと“剣と魔法の~”という文言を入れることにこだわりがあったけれども、“ログレス”は後からなんとなく決まりました。

三枝:例えばもっと直感的にわかりやすい言葉にする、逆に“ログレス”という造語をもっと強く押し出すなど、いろいろなアプローチができた気がします。テレビCMで「倒れるだけで腹筋ワンダーコア!」というフレーズが頭に入ってくるように、とにかく復唱させて印象付けることもできますよね。そういう狙いも含めて、最近のテレビCMでは女子高生に“ログレス”という言葉を何度も言わせています。

高橋:未来が見えるならいろいろとしたいと思いますが、それができるなら苦労しません。パッと思いつくのは、正式サービスを始める前に長期休暇を取っておけばよかったということぐらいですね。運営の問題もあり、長く休むことができなくなりましたので(苦笑)。

 あとは、ユーザーさんからの問い合わせに関する仕様やヘルプ機能の充実などについては、開発段階で仕組みを作っておいたほうがのちのち苦労せずにすんだような気がします。

――ここからは会場の方からの質疑応答を行いたいと思います。最初の質問はエイリムの高橋さんへのもので、ゲーム開発会社であるエイリムは誰が主導となってどのようにプロモーションを考えていったのかを教えてください。

“「ブレフロ」×「ログレス」~3桁万DLを超えた後のアプリ展開~

高橋:我々はゲーム開発会社ということもあり、プロモーション担当は1人しかいません。女性広報のかおりんご1人で、『ブレフロ』の展開は私自身もチェックしています。また、親会社のgumiのプロモーションチームともいっしょにやっているのですが、そこも数人しかいません。今でも人数は変わらず、少人数でやっていますね。

 ただ、プロモーションについてはゲーム内容とシンクロさせたほうが効果が高いですし、そこがちぐはぐだとお客さんに不信感を持たせてしまうかもしれません。なので、開発スタッフがある程度プロモーションにもかかわるのがよいと思っています。ディレクターなどがからむと、話も早いですしね。

――次は萩原さんへの質問です。『ログレス』のパブリッシャーとしてマーベラスさんを選んだ理由はなんですか?

萩原:『ログレス』については、もともとWeb版を運営していたころからマーベラスさんと組んでいたので、その流れですね。どれだけよいゲームを作っても、ちゃんと告知をして遊んでくれる人を増やさないといけないとはずっと思っており、老舗のマーベラスさんと組むことになりました。お互いのメリットを生かした形ですね。

――続いて、大規模なプロモーションを行うことを決めたきっかけはなんですか?

高橋:うちは参考にならないかもしれませんが、親会社であるgumiの社長の國光の「やるんやで!」というトップの判断です(笑)。

三枝:我々は以前に『コインサーガ』のプロモーションに失敗をした反省を生かして、『ログレス』では自分がテレビCMを提案しました。企業秘密なので詳しくは言えませんが、100万ユーザーくらいを超えると、データからいろいろと見えてくるんですよ。

高橋:その企業秘密が聞きたいですね! 基準としては、100万ユーザーで利益率10%、売上10億ぐらいのラインですか?

三枝:企業秘密です(笑)。

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