2015年6月19日(金)

E3総括&注目ゲーム5選。『FFVII』リメイクや『シェンムー3』など日本タイトルが話題に【E3 2015】

文:イトヤン

E3 2015

 “E3 2015”も最終日を迎えて、今年も現地からのレポートやプレイ動画が多数届いている。

 筆者はこれまでマイクロソフトSCE任天堂のプレゼンテーションをもとにして、各社の戦略を分析してきた。ここでは今年のE3全体を通して見えてきた、ゲーム業界の今後の傾向について語ってみたい。

 それと合わせて、今年のE3で筆者が気になるゲームタイトルを5作品ピックアップしてみたので、そちらもぜひ参考にしてほしい。

■据え置きゲーム機やVRが注目される一方で、携帯ゲーム機の存在感は薄い

E3 2015

 今年のE3は、ゲームハードに関する発表がほとんど見られなかった。海外ではE3に合わせて、HDDが1TBに増設されたXbox Oneの新モデルが発売されたものの、マイクロソフトのカンファレンスではそれについて特に触れることはなかった。

 昨年のE3あたりから、各社ともゲームそのものを押し出していく傾向が感じられるようになったが、今年はよりいっそう徹底されていたようだ。

 またE3の開催前には、Oculus Rift(オキュラス リフト)やProject Morpheus(プロジェクト モーフィアス)などのVRヘッドセットが話題の中心となるのではとの声もあったが、各社のカンファレンスでは軽く触れられただけにとどまった。

 ただし、E3の会場にはVRヘッドセットの試遊台が多数用意されており、多くの人を集めていたようだ。筆者も昨年の東京ゲームショウで試遊したのでよくわかるが、VRは自分で体験してみることで初めてその真価が理解できる、まさに“百聞は一見に如かず”という言葉がピッタリくるものなので、カンファレンスの場ではあえて説明が省略されたのだろう。

E3 2015

 ゲームハードに関してもう1つ明らかになったのは、PS Vitaや3DSといった携帯ゲーム機の存在感が非常に薄くなっている点だ。それでも3DSに関しては、『ゼルダ』『メトロイド』の新作が発表されるなど、それなりにアピールの場が用意されていた。

 だがPS Vitaは、SCEのカンファレンスでも短い映像が上映されただけで、PS4の絶好調ぶりとはかなり差がある印象を受けた。

 海外、特に車社会の米国では、携帯ゲーム機の人気はもともと据え置きゲーム機に及ばないところがあった。ここ数年スマートフォンが爆発的に普及したことで、その傾向はさらに強くなっているのだろう。

 一方で日本では、据え置きゲーム機よりも携帯ゲーム機のほうが家庭用ゲームの主役といった状況が続いている。この内外の食い違いに対して、SCEや任天堂がいったいどのように対処するのか、今後の動きを注意深く見守っていきたい。

■日本生まれのゲームが、大きな話題の中心に

E3 2015

 今年のE3は昨年に続いて、ゲームソフトに関する話題がじつに豊富だった。特に海外ではPS4/Xbox Oneへの移行が急速に進んだためか、良質なゲームが次々と登場してきている。ハードの発売から3年目を迎えて、早くも収穫期に入った印象さえある。

 だが昨年のE3と今年とでは、大きく違うところが1つある。昨年は日本のゲームの存在感が薄かったのに対して、今年は日本のゲームメーカーや日本人クリエイターのゲームが話題の中心になっている点だ。

 今年のE3で最大のサプライズとなった『ファイナルファンタジーVII』のフルリメイク決定『シェンムー』の復活はもちろん、久々に新情報が公開された『人喰いの大鷲トリコ』、そして『ダークソウル3』『NieR New Project(仮称)』といった新作が発表されるなど、現地はもちろん日本でも大きな話題となるニュースが相次いだ。

E3 2015

 このような発表が相次いだ理由としては、日本でもようやくハードの世代交代が進みつつあることや、モバイルゲーム市場と家庭用ゲーム機市場の立ち位置の違いが整理されてきて、それぞれにふさわしいゲームの棲み分けが行われるようになってきたことなどが考えられる。

 いずれにしても、日本のゲームがE3という場で発表されて、それに対して世界中のゲームファンが歓喜の声を挙げる光景が見られたのは、日本のゲームファンの1人として本当にうれしく思う。

 その一方で、海外ゲームメーカーのタイトルに目を向けても、今年のE3は非常に充実したタイトルがそろっていた印象だ。

 ベセスダ・ソフトワークスの『Fallout 4』は、前作をプレイしたファンから大きな期待を寄せられていたが、拠点となる建物を思いのままに建築できるなど、オープンワールドRPGの自由さをさらに拡張するような要素が次々に明かされて、事前の期待を軽く凌駕する発表となっていた。

 また エレクトロニック・アーツの『スター・ウォーズ バトルフロント』は、ある意味オリジナルの映画をも超えるような圧巻のグラフィックで名場面が再現されており、熱狂的な『スター・ウォーズ』ファンの多い海外はもちろんのこと、日本のゲーマーにとっても見逃せない作品となっている。

E3 2015

 だが、そうした超大作やシリーズ作品以外にも、今年のE3ではインパクトのある内容のゲームが多数発表されている。ここからは完全新作を中心に、筆者が特に興味を惹かれたタイトルを紹介したい。

■人気シリーズだけじゃない! E3 2015の新規注目作5タイトルをセレクション

『HORIZON ZERO DAWN』(SCE)

 日本製ゲームをはじめ、話題作がめじろ押しだったSCEのプレスカンファレンスの中で、この作品は新規IPながら非常に強く印象に残るものとなった。

 文明が退化して人々が原始時代のような生活を送っている未来世界で、“野生化”した動物型巨大ロボットを狩るという設定がじつに秀逸だ。

 戦闘中にロボットの部位を破壊することで新たな武器が得られたりと、公開された映像からさまざまなゲームプレイが想像できる点も、こちらの期待をかき立ててくれる。

『FOR HONOR』(ユービーアイソフト)

 ユービーアイソフトがE3で新発表したタイトルでは、『ゴーストリコン』の新作がオープンワールドACTに変貌した『GHOST RECON WILDLANDS』にも驚いたが、個人的には新規IPとなるこの作品のほうに、より大きな衝撃を受けた。

 重厚な鎧と大ぶりの剣で武装した中世の戦士が、NPCの兵士たちを引き連れて4vs4のオンラインバトルを繰り広げるというシチュエーションがとにかく熱い。

 一撃の威力が重い剣戟戦らしく、プレイヤー同士が対峙すると抜き差しならない緊張感の攻防になる様子が、現時点の映像からもよく伝わってくる。

『TRANSFORMERS: DEVASTATION』(アクティビジョン)

 『ベヨネッタ』などの開発で知られるプラチナゲームズが『スターフォックス ゼロ』と『NieR』新作の開発を手がけることが発表されたが、じつはもう1作、アクティビジョンから発売される『トランスフォーマー』シリーズ最新作の開発を担当することも明らかになっている。

 初期のテレビアニメの雰囲気を見事に再現したグラフィックで、プラチナゲームズならではのアクションが繰り広げられるというだけに、『トランスフォーマー』ファンはもちろんのこと、アクションゲームファンにとってもかなり期待の高まる作品だ。

 それだけに、プラチナゲームズの公式サイトに“日本での発売はありません”と書かれているのが非常に残念だ。ぜひ日本でも発売してほしいところだが……。

『UNRAVEL』(エレクトロニック・アーツ)

 大作ソフトが次々に発表されたEAのプレスカンファレンスの中で、ひときわ異彩を放っていたのが横スクロールACTの本作だ。スウェーデンの小さなディベロッパーが、どのような考えに基づいて本作を制作しているのかは、公式サイト(日本語)で紹介されている。

 とにもかくにも、赤い毛糸で作られた不思議なキャラクター“ヤーニー”の愛らしい姿と動きに、思わず目と心を奪われてしまう。まるで実写のようにリアルな大自然の背景の中を、毛糸を使って巧みな動きで進んでいくアクション性にも要注目だ。

『Runbow』(任天堂)

 本作はWii U独占のインディーズゲームながら、『スターフォックス ゼロ』や『ファイアーエムブレムif』と肩を並べて、E3会場から生中継される“NINTENNDO TREEHOUSE LIVE”で紹介されていたタイトルだ。

 内容としては、最大9人の同時プレイで横スクロールACTをプレイして、最初にゴールした人が勝ちというシンプルなもの。1ステージが2分程度とテンポよく進んでいくのを逆手に取って、ときには9人のプレイヤーが全滅するような豪快なトラップが炸裂するなど、いろんな意味でテンションの高い内容になっているのが楽しい。

 じつは米国任天堂は、インディーズ・ディベロッパーの支援に対して積極的に取り組んでおり、今回のE3に合わせてインディーズタイトルの体験版配信や予約購入価格の割引を行う“Nindies@Home”という施策を展開している。

 このように海外ではPCだけでなく、家庭用ゲーム機にもインディーズゲームの波が押し寄せてきているのだが、こうしたタイトルが日本でリリースされる割合はまだまだ少ない。Wii Uに限らずPS4やXbox Oneでも、個性的なインディーズゲームが海外とさほど変わらないタイミングで日本でも遊べるようになることを期待したい。

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