2015年6月22日(月)

『プラスティック・メモリーズ』原作・脚本担当の林直孝氏が語る、クライマックスへ向けての心構え

文:電撃オンライン、マグロ

 心を持ったアンドロイド“ギフティア”の少女・アイラと18歳の少年・水柿ツカサのピュアな恋模様を描き、人気を博するTVアニメ『プラスティック・メモリーズ』。クライマックスへ向けて加速していく恋模様の行方を占うべく、原作・脚本担当の林直孝氏にお話を伺った。

●林 直孝(はやし なおたか)

 MAGES.所属のシナリオライター。代表作は『STEINS;GATE』などの科学ADVシリーズ、『メモリーズオフ~それから~』など。10年前より温めていた企画をブラッシュアップし、本作で初のTVアニメ全話脚本に挑んだ。


【#12までのあらすじ】

 舞台は現代より少し科学が進んだ世界――。

 18歳の少年・水柿ツカサが就職したのは、心を持ったアンドロイド、通称“ギフティア”を製造・管理する企業の一部署“ターミナルサービス”。新人のツカサはギフティアの少女・アイラとパートナーを組んで、寿命を迎えるギフティアを回収している。

 そしてアイラもまた、寿命が迫るギフティアの1人だった。夜になると自分がまだ存在しているか不安になり涙するアイラ。それでも昼間は気丈に振る舞うアイラとツカサに、ターミナルサービスの皆から映画のチケットやレストランの招待券など二人で楽しめる様々なプレゼントが贈られる。仲間たちの好意を受け取り、休みを取って出かけることにしたツカサとアイラだったが──。

『プラスティック・メモリーズ』

――『プラスティック・メモリーズ』の今後の見どころを教えてください。

 幸せなひと時を過ごすツカサとアイラが、近づく別れに対しどう向き合うのか、それを周囲のみんながどう見守るのか、そういったところを観ていただければと思います。

 この作品は「出会いと別れの物語」であるというのが、企画当初からの一貫したコンセプトです。たぶん一般的な恋愛モノや美少女ゲームの脚本だったら、#10の告白が成功したところで最終回なんですよ。両想いになって、幸せな雰囲気で終わるのが一番きれいですから……。

 でも、そこで終わらずに、アイラとツカサが恋人になってからの残り時間をどう描いていくか、というのが『プラスティック・メモリーズ』ならではの見どころかなと。

――これまでに登場した、寿命を迎えたギフティアたちにまつわるエピソードが“奇跡は起きない”という雰囲気を匂わせてますよね……。

 奇跡を起こすべきか起こさないべきかは、藤原監督ともかなり議論しました。たとえば#08で描いていますが、外見が同じで心(OS)を入れ替えたという状態は、はたして同じ存在、同じ魂といえるのか。そこで仮に奇跡が起きても、結局それは以前までの相手とは別人なんじゃないか……というような考えが監督にはあったみたいですね。

 そういったところも踏まえて、奇跡は起きるのか、起きないのか。ツカサとアイラの行く末を見守ってほしいなと思います。

『プラスティック・メモリーズ』
▲#08より。回収後にOS入れ替えをしたギフティアのアンディ。しかし、かつてエルの親友であるオリヴィアだった頃の記憶が戻ることはなかった。

――以前、ツカサ役の内匠靖明さんへインタビューした際、ツカサ自身のプロフィールが謎だと話題になりました。#03で服を脱いだ時はマッチョでしたが、彼の生い立ちに関してなにか裏設定などあるのですか?

 あの筋肉はすごかったですね、僕も驚きました(笑)。ツカサってこんなにムキムキなんだ、って……。真相は藤原監督が知っていますよ、きっと! ぜひ監督にこの質問をぶつけてみてください。

 ツカサのバックボーンはあえて出さないようにしているので、想像がふくらみますよね。実は後半の話数で、アイラと恋人同士になったあとでツカサの実家に挨拶へ行くエピソードを入れようかという案もありました。でも、ツカサの“今”とアイラの“過去”という対比で物語を進めていきたい意図があったので、最終的には彼の過去もバックボーンも伏せる形に落ち着きました。

 ツカサは過去に葛藤がある人間ではなく、今、アイラと向き合うことで直面した困難に立ち向かっています。一方、アイラは過去からずっと続く葛藤を抱えていて、それが彼女をすごく人間くさくもしているんですよ。そうやって対照的に描かれている2人のドラマを楽しんでいただきたいです。

――では続いて、初のTVアニメ全話脚本を担当された感想を教えてください。TVアニメを作る作業は、林さんにとってどのような体験でしたか?

 アニメ制作ならではの体験が新鮮で、非常に楽しかったです。たとえばゲームの場合、実際にテキストを書く段階に入ると基本的に会議もなくて、1人での孤独な作業がひたすら続くんです。

 逆にアニメは毎週のように会議があって、執筆した脚本を持って動画工房さんまで行き、藤原監督やプロデューサー陣といっしょに議論していました。みんなで1つの作品を作っていくという雰囲気が心地よかったですね。

――今回、OPテーマ『Ring of Fortune』で初めて作詞も担当されたんですよね? 

 僕も人生の中で作詞を頼まれる日が来るとは想像していませんでした。最初は「絶対に無理です!」って断ったんですが、藤原監督がニヤニヤしながらも「がんばってください!」と応援してくれたり、スタッフのみなさんも「大丈夫ですよ」といってくれたりして、その言葉を支えにがんばりました。

 僕は自宅では遊んでしまって作業できないタイプなので、お正月にこっそり会社へ行って誰もないオフィスで歌詞を書きました。そのほうが誰に気兼ねすることなく、口ずさみながら書けるので(笑)。

『プラスティック・メモリーズ』
▲林氏が初めて作詞を担当し、新進気鋭のシンガー・佐々木恵梨さんが歌うOPテーマ『Ring of Fortune』は好評発売中。ボーナストラックとして、林氏がOPの世界観を綴ったモノローグドラマ『To You.』(CV:雨宮天)も収録されている。

――以前、鳥羽プロデューサーと林さんにインタビューした際、「林さんも藤原監督も気づかないうちに、作品に素の自分が出ている」という発言がありました。林さんが本作を客観的に見て、そういったご自身の価値観が出ているなと思うシーンはありますか?

 主人公のツカサですかね。僕が平凡な生き方しかできてないというのもあって、主人公には僕が理想とするドラマチックな生き方をさせたいなというのはあります。ツカサは僕の中では“ヒーロー”というか、憧れる生き方を最終的にする男の子として描いています。やっぱりね、問題を抱えた女の子と仲よくなって「俺がいっしょにいてやるよ」的なことを言ってあげたいって願望が、男の子なら少なからずあると思うんですよ。

 そういう意味では……ツカサには自分の本心が出ているのかな? ツカサのように女性に対してひたすら誠実に、まっすぐな恋愛をしてみたいなっていうのはあるのかも。

――では、太字にしてアピールしておきますね。

 いやいや、すごく恥ずかしいんですが(笑)。

――みんなも赤面させていきましょう。TVアニメ『プラスティック・メモリーズ』もそういう作品だと認識しております!!

 そうですね、『プラメモ』は純愛を描いた物語です。作品を通じて、僕がピュアであるということをみんなに認識させないとね……って、いやいや、違いますから(笑)。

――では最後にファンへのメッセージをお願いします!

 今後、物語はアイラの残り時間が刻一刻と迫っているという状態の中で進みます。2人のピュアな気持ちの盛り上がりや覚悟の決め方など、純粋に恋するがゆえに苦悩するツカサとアイラを最後まで見届けてあげてください。

 なお、“G’sマガジン.com”でも林直孝氏のインタビューを掲載中だ。記事はコチラをクリック!

■TVアニメ『プラスティック・メモリーズ』概要
【放送情報】
 TOKYO MX……毎週土曜24:30
 チバテレ……毎週土曜24:30
 群馬テレビ……毎週土曜24:30
 とちぎテレビ……毎週土曜24:30
 テレ玉……毎週土曜 24:30
 tvk……毎週土曜24:30
 BS11……毎週土曜24:30
 AT-X……毎週土曜24:30
 岐阜放送……毎週火曜25:00
 三重テレビ……毎週火曜24:20
 ABC朝日放送……毎週水曜26:14
 ※放送日時は変更になる場合があります。

【スタッフ】(※敬称略)
 原作・脚本:林直孝(MAGES.)
 監督:藤原佳幸
 キャラクター原案:okiura
 キャラクターデザイン・総作画監督:中島千明
 プロップデザイン&総作画監督:菊池愛
 色彩設計:石黒けい
 美術監督:川口正明
 美術設定:高橋武之
 撮影監督:桒野貴文
 メカニカルデザイン:谷裕司
 3D・CG :渡邉悦啓
 編集:平木大輔
 音楽:横山克
 音楽制作:MAGES.
 音響監督:土屋雅紀
 音響効果:小山恭正
 アニメーション制作:動画工房

【出演声優】(※敬称略)
 水柿ツカサ:内匠靖明
 アイラ:雨宮天
 絹島ミチル:赤﨑千夏
 ザック:矢作紗友里
 桑乃実カヅキ:豊口めぐみ
 コンスタンス:日野聡
 縹ヤスタカ:津田健次郎
 ほか

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