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2015年7月30日(木)

SCE吉田修平氏と織田博之氏が語る中国での“Project Morpheus”の反響や展開【ChinaJoy 2015】

文:電撃PlayStation

 『China joy 2015』に先立ち、7月29日に開催された『2015 PlayStation Press Conference in China』。カンファレンスを終えたSCEワールドワイド・スタジオ プレジデント吉田修平氏とSCEJAデピュティプレジデント(アジア統括)織田博之氏への合同取材で、“Project Morpheus”やカンファレンスの感触、プロモーション展開についてお二人が語ってくれました。

――吉田さんはProject Morpheusのために上海にいらっしゃったのですか?

『2015 PlayStation Press Conference in China』
▲SCEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏。

吉田:そうです。Project Morpheusをプロモーションするために、世界中を回らせていただいています。先週は香港のアニメエキスポで、ユーザーさんに体験してもらいました。その前は台湾も行きました。E3のデモを持ち込んで、メディアの方に体験してもらったりしています。

――欧米、日本、アジアとで反応の違いはありますか?

吉田:私もいま勉強中なのですが、アジアの方は日本のカルチャーがけっこう好きみたいですね。香港に行くと漫画がたくさんあったりしますし。香港のイベントでは、『ダンガンロンパ』の新しいデモをスパイク・チュンソフトさんに発表してもらって、それもすごく好評でした。

 ですから、アジアの方は欧米のゲームも好きですし、日本のゲームも好きなので、ある意味PlayStation 4にとって、いちばんラインナップが充実している地域かなと思います。中国本土はセンサーシップ(政府による審査)があるのでタイトル数が減るのですが、広い意味でのアジアという意味では、PlayStation 4は盛り上がっているんだと思いました。

――中国でProject Morpheusが発売されるかどうかは未定のようですが、吉田さんとしてはどのように考えていますか?

吉田:それはもう。織田が「売りたい」といってくれれば(笑)。

――実際のところ、こういうデバイスは(中国で売るには)ハードルが高いものなのですか?

『2015 PlayStation Press Conference in China』
▲SCEJAデピュティプレジデント(アジア統括)織田博之氏

織田:コンテンツそのものですね。ハードウェアが高いということはないですね。

吉田:中国本土では、ということですよね。広い意味ではアジアに関してはその問題はないですね。

織田:ないですね。相当反応もいいので。いろいろと考えています。

吉田:台湾に行ったときは、「いま売ってくれ!」という感じでした。PlayStation 4の発売日が近かったんですね。欧米で11月に出して、アジアに12月に出していますから、そういう意味での期待感は高いですね。

――今回発表した4タイトルの選出の基準を教えてください。

吉田:デモを出すのもセンサーシップを通さないといけないんですよね。ですから、まずは通りそうなコンテンツを選びました。

織田:『サマーレッスン』などのE3で出たタイトルは、ユーザーさんの間であっという間に広がっていて。そういったユーザーさんの声を聞きながら、どれを持ってきたら喜ばれるかということを考慮して決めました

――やっぱり『The London Heist』(現代が舞台の銃撃戦のあるシュータータイトル)は難しかったですか?

吉田:ちょっと無理でしたね(笑)。今日のカンファレンスをご覧になってもわかるように、歴史的なものやファンタジーものは大丈夫ですが、現代的なものでやるのは難しいです。『サマーレッスン』は大丈夫でした。メンタルな分は大丈夫です。

織田:『サマーレッスン』も含めて、E3での出展内容は、中国のゲームユーザーのあいだにも、あっというまに広がっていったみたいです。添田のウェイボ(中国版Twittter)にいろいろと書き込みがあったようで、「こういうのが見たい」という要望があったようですが、そういうユーザーさんの声を聞きながら、センサーシップも含めて、どれを持ってきたら喜ばれるかな、ということで選ばせていただきました。

吉田:SCEの上海の方にも、いろいろなデモを体験してもらって、選んでいただきました。

――今回、初音ミクを大きくクローズアップしていますが、上海ではやはり初音ミクが人気があるのですか?

織田:先日、上海でイベントがあったのですが、あっという間に座席を完売したという人気の高さもありました。

――今回出展する4タイトルはどのような形での出展になりますか?

織田:チャイナジョイでの設置台数は8台で、1台あたりの試遊時間が10分だとして、約1000人弱のユーザーさんに遊んでもらおうと思っています。

吉田:どのイベントでもそうなのですが、プレイしている人が見えるようにセッティングしています。そうすると周りの人が興味を引けるようになり、体験者の数の何倍もの効果があります。

――VRコンテンツのセンサーシップはどのように提出する予定ですか?

吉田:基本的にはプレイしてもらって、中身を見ていただく形にしています。どれを発売するかはまだ未定ですが、発売するものを決めてからそれを持ち込んで、実際に体験してもらおうと思っています。今回は簡易センサーシップ(動画)を通して見ていただきました。

――Project Morpheusのアジアでの発売に関して、織田さんはどのような構想をお持ちですか? 2016年上半期発売目標にアジアも含まれているのかを教えてください。

織田:発売に関して我々はまだ大々的に発表はしていませんが、非常に期待値が高いので早く情報をお届けしたいと思っています。現時点ではどこの地域で発売するかを発表していないので、それに関しては伏せさせていただきます。

――E3の日本タイトルには大手のものからインディーまでいろいろありましたが、中国のインディーに向けて、モーフィアスのタイトルを作ってもらいたいという思いはありますか?

吉田:私はあります。

織田:具体的にはデベロッパー契約をはじめて、いろいろと意見交換をしています。それはもう日本やアジアに関わらず、積極的にモーフィアスタイトルを作っていく予定です。

吉田:台湾のデベロッパーさんでもうやっているところはあります。

織田:具体的に動いているところもありますし、積極的にお問い合わせをいただいているところもあります。中国でも数社“作りたい”というところはあります。

――今日のカンファレンスではさまざまな中国メーカーのタイトルが出ていましたが、吉田さんはどういった印象を受けましたか?

吉田:私は当初知らなかったので、中国でこんなにもたくさんゲームが作られていることに正直ビックリしました。映像を見ていても、中国っぽい歴史モノのタイトルが多かったように見られます。やっぱりローカルコンテンツはカラーがあると思いながら見ていました。

――気になるタイトルは具体的にありましたか?

吉田:インタビューの映像で男性が2人答えてましたけど、『幻鏡界限』はやってみたいと思いました。あとは2D・3DのアクションRPGみたいなものが面白そうだと思いました。MMO系のゲームが中国はやはり多いですね。そのへんは自然な流れなのかなと感じます。PCとPS4は親和性が高いので、オペレーションを含めて動きやすいのかなと思いました。

――中国にはセンサーシップがありますが、ワールドワイドスタジオの中国展開についてはどのようにお考えですか?

吉田:すでに『KNACK』と『DRIVECLUB』を出しており、『Journey(風ノ旅ビト)』が出ます。積極的にサポートしていこうと思っています。同時発売が一番望ましいのですが、センサーシップで場合によっては3カ月程度かかるのでそれしだいですね。ローカライズという意味では基本的に計画に入れていこうと思っています。

――今後、新規プロジェクトを立ち上げる場合は中国市場も含めたうえで開発を進めるということですか?

吉田:そうですね。アジアは当然のことながら、中国も内容しだいですが最初から入れていこうと思っています。

――中国にワールドワイド・スタジオのスタジオができる可能性はありますか?

吉田:中国・台湾、アジア圏含めて、かなりの仕事をすでに中国に出しています。この間も台湾のXPEC(エクスペック)さんを訪問したのですが、なんとすでにワールドワイド・スタジオのタイトルを30本手掛けてくれていたんです。ほとんどすべてのスタジオですね。ひとつだけ仕事をしていないところがあると言われました(笑)。ですから、そういう会社が今後オリジナルのタイトルを手掛けるときには、現地も近いのでJAPANスタジオなどは注目をしています。

 まだ中国本土のデベロッパーさんとは話したことがないですが、ローカルのデベロッパーも力が徐々についてきているのを感じます。じつはうちの欧米タイトルは、アジアのほうではけっこう売れているんですよ。英語が日本人よりできることもあって情報が早いですし、タイトルによっては日本より10倍の売上が出ているものもあります。

 そういった意味では、欧米のスタジオもアジア圏に注目をしています。ですから、SCEジャパンアジアという1つの会社になっていますが、そういった意味では両方合わせたボリューム感とか擬似的なつながりを含めて、頭を切り替えてスタジオを変えなければいけないと最近感じています。

――ワールドワイド・スタジオからアジア向けのタイトルが生まれる可能性もあるということですか?

吉田:ありえますね。日本向けのタイトルはこれまでもやっていますが、そのとき、一緒にアジアも最初から考えています。文化的にも近いので。

――『Journey(風ノ旅ビト)』が出たときは拍手が湧いていましたが、見た感じどうでしたか?

吉田:中国出身のクリエイターが作っただけあって盛り上がっていましたね。日本もそうですけど、世界に独自の文化を発信できる力はありますよね。それも中国の方も今後気づかれるんではないかと思います。今まではオリジナルを作るというよりは、仕事を請け負っていることが多かったですからね。

――スマートフォンのタイトルが中国でも多くなっているのですが、PS4でもプレイできるフリートゥプレイのタイトルが増えていく可能性はありますか?

吉田:今日のプレゼンでもかなりありましたね。

織田:PCゲームを移植したものもありますし、スタンダードになってきているので、PS4に移植して中国のユーザーが入りやすいように増やしていこうと思っています。

吉田:欧米のパブリッシャーでも、アクティビジョンさんやエレクトロニック・アーツさんのタイトルを、内容を変えてフリートゥプレイにして持ち込まれていますね。

――PS4をSteamみたいなプラットフォームにして、タダでゲームができるような形になっていくのですか?

織田:PlayStationというものに興味を示してもらいたいので、どんどん移植していこうとは思っています。

――PS4を実際発売してから、空気というか流れに変化はありましたか?

織田:昔のプラットフォームですと欧米と比べてアジア地域での発売まで1年待たされたのですが、PS4は欧米に遅れること1カ月ぐらいで発売することができました。これだけでもみなさんポジティブに感じてくれたと聞いています。タイトルも欧米のものが多かったのですが、アジアの人たちにも出足が良かったと感じています。

――発売台数は公表されていませんが、PS3よりもPS4のほうが伸びている印象は感じられますか?

織田:PS4は発売から2年弱たっていますが、伸び続けています。

吉田:非常に大きな違いはゲームを買っていただけるという点ですね。バイラシー(海賊行為)のゲームを買うとか扱うということに抵抗が出てきているように思えます。経済的にも文化的にも水準が上がってきて。アジアはゲームが売れるんですよ。それに続いて本体も売れるので非常にありがたいです。中国本土に関して言えることですけど、じつは(3月の発売前から)ユーザーさんはけっこういらっしゃいました(笑)。なので、徐々に中国向けのハードにしてユーザーさんが増えるようになればいいと思います。

織田:PlayStationをまだ触ったことない人がたくさんいらっしゃるんですよ。そういった方たちに届けられたらいいなと感じています。

――中国でのプロモーションは、日本でいうCMを流せばいいという形ではないと感じたのですが、どのようにプロモーションをしていくのですか?

織田:一番いいのはネットメディアですね。添田(SCE上海プレジデント)には、けっこうファンに対してアプローチしてもらっているのですが、彼にはコアなファンが個人的についていて、彼と遊べる会とか、サイン会とかをやっています。そういった意味では手触り感のある規模でビジネスをやっているので、コミュニティーにアプローチして、ファン層を広げていく。今日も中国のメディアさんがたくさんいらっしゃっていましたが、取材の前にサインをくれという方が多かったですね。

吉田:台湾メディアなどの記事なんかも中国本土で見られているらしく、情報はかなり入っているようで、インターネットにセンサーシップがわりとあるのかなと思ったらそんなことはなく、情報は欧米からガンガン入ってくるようです。

織田:台湾は2千数百万人(=台湾総人口)のマーケット向けに、アジアで一番大きな規模のゲームショウを主催しているのですが、インターネットを通じて中国にいる13億人に向けても発信している形になります。香港やシンガポールなど、中国圏に向かってプロモーションをしています。

吉田:中国のメディアの方も、E3やゲームショウなどの時に取材を受けているのですが、情報という意味ではほとんど差がありませんね。

――中国のゲームコミュニティはオンラインの中でコミュニケーションを使っているのですか?

織田:両方ですね。いわゆるSNSの中でもあったり、ゲームイベントでもあったりとさまざまです。

――今回のチャイナジョイをきっかけにこれから販促を進めていくのだろうと思いますが、今後どのような計画や展開を見せていく予定ですか?

織田:毎週毎週1個人のファンを囲むイベントなどでプロモーションをやっています。大型のプロモーションというよりは、手作り感のあるものをやっていくようにしています。イベントは毎回20~30人ぐらいの規模ですが地方にも行ったりしています。ちょっと地方に行くと、逆にそういうところではイベントをやらないものですから、みなさん非常に熱心に集まってきてくださいますね。できるだけ、そういうところで、直接お客さんと交流できないかなと考えています。

――初めての中国での出展でモーフィアスに期待している方が多いと思いますが、意気込みなどあればお答えください。

吉田:凄まじい人のなかにモーフィアスを持っていく予定なのですが、中国の人は欧米の人と同じように体で感情を表現されますので、体験される方の反応を期待しています。

『2015 PlayStation Press Conference in China』

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