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2015年8月13日(木)

『進撃の巨人』新作ゲームは“無双”でも“狩り”でもない。鯉沼プロデューサーにインタビュー!【gamescom2015】

文:電撃PlayStation

 単行本の累計発行部数が5000万部を突破し、TVアニメも大ヒットした超人気作品『進撃の巨人』が、コーエーテクモゲームスによってゲーム化されることが発表された。

⇒『進撃の巨人』新作ゲームがPS4/PS3/PS Vitaで登場

 本作のプロデューサーを務めるコーエーテクモゲームスの鯉沼氏に、gamescom2015の会場でインタビューを実施。圧倒的なスケール感で描かれる原作の世界観をどうゲーム化していくのか、その経緯や目指すゲーム像をうかがった。

“『進撃の巨人』”
▲プロデューサーを務める鯉沼久史氏。

いわゆる“無双ゲー”にしないでほしいと要望が

――今回、『進撃の巨人』のゲームを制作することになった経緯について教えてください。

 原作を読んでいて“立体機動を使って自由に動ける”ゲームをプレイしてみたいと思ったのがキッカケです。そして講談社さんや原作者の諫山先生にこの企画を提案したところ快諾していただき、2013年の年末から去年の1月、2月頃に始まったプロジェクトになります。提案時に先方が気にされていたのが、いわゆる“無双ゲー”にはしないでほしい、“進撃の巨人”の王道のゲームをということでした。

――『無双』のようなゲーム性ではないとすると、人間対巨人=多対一というマルチプレイアクションのような形になるのでしょうか。

 いわゆる“狩ゲー”とはちょっと違う形になると思います。私は基本的に、しっかりとした原作があるゲームの場合、最初の作品は原作ストーリーをなぞったほうがいいと考えています。原作を追体験するなかで“仲間との共闘”や“仲間の犠牲”は欠かせない要素なので、これらの要素が組み合わさったアクションゲームになると思います。

 また、諫山先生はゲームがお好きで、「こんなゲームにしてほしいと」いう意見もいただけたので、そのあたりも盛り込んでいます。

――アクションに加えて、ストーリー性も強いゲームになるのでしょうか。

 原作のストーリーはちゃんと追える形に入れ込む予定です。プレイするユーザーのなかには原作が好きな方やアニメから入った方だけではなく、話題になっているけれどまだどちらも見られていない方もいらっしゃると思います。

 そのなかで、この作品から『進撃の巨人』を知ってもらう方がいてもいいのではないかと考えています。アクションゲームとしての『進撃の巨人』ワールドの中でプレイヤーが思い通りに動ける、というイメージでしょうか。ただ、敵を倒すと物語が進むというものではなく、基本はアクションゲームで、そのなかでストーリーも理解できていく、というゲームになると思います。

――この作品で初めて『進撃の巨人』に触れるユーザーを想定しているということは、原作冒頭のストーリーからゲームがスタートするのでしょうか。

 まだ詳しくはお話できませんが、基本はそうなると思います。

――このゲームにおいて、鯉沼さんはどのような関わり方をしているのでしょうか。

 企画立案当時から私1人で動いていたタイトルなので、今回はプロデューサーという形で関わっています。ただ、4月から自分の立場が変わった(※2015年4月にコーエーテクモゲームス取締役社長に就任)ので、最終的にどこまでやれるか、関わり方が少し難しくなっています。

 とはいえ、「私が作ります」ということで先方と話をしているので、途中から離れることはしません。アクションの気持ちよさやゲームシステムなど、ある程度はチームスタッフに任せつつも、方向性やゲーム全体の管理監督はキッチリと行っていく予定です。

――発表タイミングをgamescomにあわせたのは、やはり海外での販売も考えてのことなのでしょうか。

 そうです。国内だけでなく、海外でも人気のあるタイトルですので。実際のところ、ここまで国内でちゃんと発表する予定はなくて、なんとなくサラッと伝えて終わりにしようと思っていました。ただ、国内の宣伝チームがいろいろやりたいと提案してくれてどうしようか思案していたところ、ちょうどコミックス最新刊も出るので、それにあわせてなにか仕掛けていこうという形になりました。

 また、日本の場合だとコンテンツ自体の強さがあるので、そこまで意識して発信しなくても大丈夫かなと思っていました。そこで海外に我々がこういうゲームをリリースするという発表をしつつ、逆輸入的に日本に持ち帰る予定だったのです。

――日本でもカウントダウンサイトに注目が集まっていました。

 それ自体は素直にうれしいですね。最初はシンプルなモノにする予定でしたが、さすがにそれだと寂しいので、『進撃の巨人』で使っているようなフォントなどを使用したので、気付いた方は早目にわかったようですね。

『進撃の巨人』はPS4をベースに開発中

――機種はPS4、PS3、PS Vitaというマルチタイトルになっていますが、ベースはPS4と考えてよろしいのでしょうか。

 そうですね。今まではPS3を軸にして、PS4をブラッシュアップ版、PS Vitaは携帯機でPS3レベルのものが遊べる、といった形で行っていましたが、今回はPS4が基本となります。理想はPS4で遊んでいただきたいですが、PS3とPS Vitaでもちゃんと遊べるモノにしていきます。

――発売時期は2016年と出ていました。

 gamescomが行われている欧州では「2016年」の発売と告知しています。日本国内については「今冬」でご案内していますので、期内には出したいと思っています。いかに原作の爽快感を出すか、アクションパートを数回ビルドアンドスクラップするなどしており、試行錯誤をしています。

――それは原作者の要望や、自身のイメージとの違いによる試行錯誤からでしょうか。

 いえ、ティザー映像に関しては講談社さんからの評判は上々でした。ただ、アクションの手触り部分は社内のチェック機関やバージョン検討会で進めていますが、社内でも「まだ違う」という声があってブラッシュアップしているところです。

 ストーリーややり込み、ゲームシステム部分の制作は順調なので、アクションパートが落ち着けば一気に完成に近づくかなと思っています。とくにアクション部分は『無双』ゲーではない、新しいアクションゲームになるように開発チームにがんばってもらっているところです。

――立体機動の爽快感は期待度が高いだけに大変そうです。

 『進撃の巨人』をゲーム化するにおいて、そこは絶対に外せないポイントですよね。“いかに気持ちよく立体機動を使って動けるか”、そして“いかに気持ちよく巨人に対してワイヤーを使いながら戦えるか”、ここだけは妥協せずに作り込みができれば、面白いゲームになると考えています。

――ω-Forceが開発を手掛けると、サクッと完成してしまうのかなと考える人も多いと思いますが。

 いえいえ。やっぱり初めての試みなので、巨人に立ち向かう調査兵団なみに悪戦苦闘しています。原作を読んでいる方はどうやって再現するのかと疑問に思っていると思いますが、開発当初は本当にどうしようかと頭を抱えました(笑)。

――ゲームのプレイヤー視点は、原作の主人公・エレンになるのでしょうか。

 そこはまだお話できません。

――日本国内での展開はどうなりますか? 東京ゲームショウで何かしらの発表を期待しても大丈夫でしょうか。

 東京ゲームショウについては、ほかのタイトルを含め、近いうちに出展タイトルを発表する予定ですので、ご期待ください。

――諫山先生からのリクエストについて教えてもらえますか。

 「歯ごたえとやりごたえのあるゲームにしてほしい」というリクエストは、最初からいただいています。

――ストーリーをなぞるのが基本の簡単なアクションにはならないと。

 はい。とはいえ、ユーザー層はゲーマーだけではなく、本当に原作が好きなだけのライト層も想定していますので難しいところです。基本の操作や巨人を倒すことはだれでもできるけれど、素早く倒したり華麗に倒したりといったところでアクションの歯ごたえを出していく予定です。

 巨人複数体と同時に戦うとやられちゃうから、敵を分断させる、仲間に犠牲になってもらうなど、ゲームとしての攻略性もキチンと作り込んでいきたいと思います。

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