2015年9月10日(木)
レースゲーム好きのみならず、車好きの心を掴んで離さないXbox One『Forza Motorsport 6(Forza 6)』。発売が9月17日に迫った本作のレビューをお届けする。なお、『Forza Motorsport 6 アルティメットエディション』特典のアーリーアクセスを使用した場合は、9月10日22:01よりプレイが可能になるようだ。
『Forza』シリーズは2005年に初代Xboxで産声を上げ、そこから2年周期でナンバリングタイトルが発売されている。車のカスタマイズとシミュレーション要素を重視した本シリーズは、2007年に発売された『Forza 2』でその方向性を確立。特にペイント機能を活用した痛車デザインについて、開発元のTurn 10から賞賛の声が上がったのは記憶に新しい。
▲ユーザーが作成したデザインでレースをそのまま走れるのが『Forza』の魅力。ただ単に画像を貼り付けただけではないのも特徴。ちなみにこのEK9 Civic Type-R用のMAD CATZデザインはすでにサーバーにアップロードしてあったものを適用した。 |
最新作である『Forza 6』では、シリーズ初の要素として“レイン(雨天)レース”が導入された。また、1作目にあったナイトレースも今作で復活。1作目では1コース限定だったが、今作では数多くのコースに適用されている。レインレースのプレイ感については、8月21日に掲載した体験会レビューにあるので参照してほしい。
最初に個人的なスタンスを明らかにしておくと、私は2011年(もう4年前!)に発売された『Forza 4』がシリーズ最高傑作だと思っている。前作『Forza 5』は、ゲーム機の世代チェンジにあたる作品ということもあり、車種やコースの少なさ、UIの使いにくさなどいくつかの“間に合わせ感”があった。確かにビジュアルは『Forza 4』までのものとは段違いだったが、楽しさはやや失われていた。
『Forza 6』は、今世代機における『Forza』ナンバリングタイトルの2作目となる。Xbox Oneローンチタイトルとして発売された『Forza 5』から2年、はたして最新の『Forza』はどのように進化を遂げているのか。特徴的な要素を中心にお伝えしていく。
『Forza』シリーズは物理演算をふんだんに使ったカーシミュレーション要素が特徴である。と言うと、難しいレースゲームのように思えるかもしれない。しかし、今作にも従来シリーズと同様に初心者向けの“オートブレーキ”やABSなどの各種アシスト機能が搭載されている。
▲レースゲーム初心者はまずこのEASY設定から始めよう。 |
これらのアシストを使うことで、レースゲームがあまり得意ではない人でもコースをラクラクと周回することができる。これは今まで通り。まずはフルアシストの状態で走ってみて、オートブレーキ、STMを外していくことで上達していく感覚が得られるだろう。ABSおよびTCSを外すかどうかはお好みで。
一方、アシストなしの状態の挙動はやや難しくなったように感じた。運転しにくくなったわけではないが、グリップが抜けてしまった後に無理をするとすぐに破綻してしまう。トリガー部が振動するインパルストリガーの恩恵もあって、グリップを失いそうかどうかの判断は早めに行えるが、破綻後のリカバーには慣れが必要だろう。このあたりのピーキーさは『Forza 3』を思い出す。
▲ABSなしでブレーキがロックしてしまい、ステアを回しても曲がらない様子。画面右下の表示でタイヤが熱を持ってしまい、真っ黄色になっているのがわかる。 |
とはいえシビアなだけではなく、グリップのギリギリを見極めて、インパルストリガーを感じながら指先でアクセルを調節し、コーナーをクリアしていく楽しさは格別。特にFR車のドライビングが難しいけど楽しい。
今作の目玉となるレインレースは、体験版でプレイした人にはとてつもなく難しく感じたと思われる。しかし、一般車に近いレベルであるDクラス程度なら、無理やりなドライビングでなければ十分対応できる、くらいまでに感じられた。ドライ路面に比べたら神経を使うことには変わりないが、クラスを落とせばまともに走れないというレベルにはならないだろう。
▲Civic Type-RのようなFF車は、雨の日でもスピンする危険性は低い。しかし、スピードが乗った状態で無理をするとあっという間に横転するので注意。 |
なお、レインレースは一部のコースにのみ用意されている。用意されているのは、ブランズハッチ、スパ・フランコルシャン、ルマン・サルテ・サーキット、ニュルブルクリンク北コース、ニュルブルクリンクGPコース、セブリング、シルバーストーン、トップ・ギアの8種類だ。
また、ナイトレースは、ただ暗くて見えにくいだけのレースではない。夜ということで、路面温度が下がっており、タイヤが温まりにくいという特徴もある。タイヤが温まっていない1周目は抑えめで走り、十分なグリップを得てから全開走行をするという戦略も必要だろう。
▲気温が低いナイトレースでは路面温度が低下しているのでタイヤの温まりが悪い。レース開始直後は無理をしないように。 |
ナイトレースも一部のコースのみで楽しめる。ナイトレースがあるのは、スパ・フランコルシャン、デイトナ、ル・マン・サルテ・サーキット、ニュルブルクリンク北コース、ニュルブルクリンクGPコース、セブリング、ヤス・マリーナサーキットの7種類。
今作ではMODと呼ばれるカードが存在する。これはキャリアモードで使用できる機能で、レース終了後にもらえるXPを増やしたり、車の性能を上げたりできる。MODは3つまで適用してレースに臨める。
▲MODを装着すると様々な効果が得られる。中には難しい設定でのドライブを強制して、そのぶん賞金を上げるなんて効果も。 |
MODは購入するまで何が手に入るかわからないカードパックとして用意され、ゲーム内クレジットを使用して購入する。パックの中には複数枚のカードが封入されており、それぞれコモン、アンコモン、レア、スーパーレアといったランク分けがされている。
▲従来作をプレイしている人でForza Hubを利用しているなら、ゲームスタート時に100万クレジットがもらえる。大金があるので一番高いのを購入してみた。 |
MODは、キャリアモードを楽に進めていくのにとても有用である。中でも一番高い30万クレジットが必要なパックに入っていたスーパーレアの“ゴースト”は、自分が他車にぶつからなくなる。一度使うとなくなってしまうタイプなので、ここぞというところで使うのをオススメする。
▲スーパーレアのブーストを入手。自分がゴースト状態になって他者とぶつからなくなる。しかし1回使うとなくなってしまう。 |
また、一度使うとなくなってしまうタイプの他に、付けている間じゅう効果を発揮するタイプもある。基本的に車の性能をアップさせるものが多く、実際のPI以上の走りをすることが可能だ。
ただ、MODによる性能向上に慣れてしまうと、ライバルモードやオンラインでのマルチプレイ時に実際の性能と異なるために違和感が生じてしまうかもしれない。MODを利用するのはほどほどにしておいたほうがよさそうだ。
今作には26のコースが収録されている。これは『Forza 4』と同レベルの収録数である。しかし、残念ながら『Forza 5』と同様に日本国内のコースの収録は見送られた。非常に残念ではあるが、今後のコース追加を期待したい。
『Forza 6』で新しく追加されたコースは、イギリスの“ブランズハッチ”、アメリカの“サーキット オブ ジ アメリカズ“、“ライムロック パーク”、“ワトキンズ グレン”、“デイトナ インターナショナル スピードウェイ”、“モンツァサーキット”の6種類。いずれも実在しているコースだ。
▲アメリカ コネチカット州にあるライムロック パークが新たに収録。 |
『Forza』からオリジナルコース“リオデジャネイロ”が復活した他、『Forza 4』からドイツ“ホッケンハイム”とアメリカ“ソノマ サーキット(Forza 4時はインフィニオン・レースウェイとして)”も再収録している。また、アメリカ“インディアナポリス”は2014年のリニューアルを受けて作りなおしているという。
▲リオデジャネイロが『Forza』から復活。 |
オリジナルコースは『Forza 5』に収録されていた“プラハ市街地”、“ベルナーアルプス“、“テスト トラック エアフィールド”の3つに上記の“リオデジャネイロ“を加えた4種類。個人的には日本ならではの峠コース“富士見街道”の復活を強く希望する。
今作にはオフライン用のゲームモードとして“キャリア”、“フリープレイ”、“テストドライブ”、“Forzavista”などが用意されている。キャリアは、クリアしていくごとに次々とカー ディビジョンごとのシリーズが開放されていき、次第に難易度の高いものがプレイできるようになるという、基本的な構成はこれまでと変わらない。
これらのディビジョンは非常に多数のものが用意されており、次々と車を変えて新しい気持ちでレースに臨むことができる。また、レースクリア後に“ショーケース”と呼ばれるスペシャルレースが開放されることがある。
ショーケースのレースでは、インディカーのオーバルサーキット走行や英BBC“TopGear”のStigと対決するレースなどが用意されており、通常のレースとは異なるさまざまなレースを楽しむことができる。
▲リアルのStigは『Forza』がプレイできないので、いとこであるデジタルStigがプレイヤーの相手になるとのこと。 |
キャリアモードを順にこなしていくことで、徐々に速い車にも乗るようになり、レースゲーム初心者もレースに慣れていくことができるというわけだ。逆にレースゲームのベテランにとっては、さまざまな変化が用意されている『Forza 6』でも、まだまだキャリアモードは単調に思えてしまうかもしれない。
▲車の購入やアップグレードはメインメニューからすぐに行えるようになった。画像に写っているPCがSurfaceなのはマイクロソフトならでは。 |
「レースゲームのグラフィックが綺麗なのは当たり前」となっている昨今、レースゲームのおもしろさの基準の1つは、「遊び場が提供されているかどうか」にあると私は思っている。
『Forza 4』からこれまで搭載されているライバルモードは、時間を忘れてフレンドとタイムを競い合うのに十分である。その上でプレイヤーをオンラインで競わせる要素の1つが“リーグ”だ。
▲ライバルモードはフレンドと競い合う環境にあればとても熱い機能だ。記録したタイムがフレンドに抜かれるとメッセージが届く。そのメッセージを見て、さらに抜き返したくなるものだ。 |
▲マルチプレイでは普通のレースの他に鬼ごっこもある。ただし、サッカーなどの変則ルールはなくなってしまったようだ。 |
リーグは自分のスキルレートをもとに他のプレイヤーとのマッチングが行われる、ランクマッチとしての機能を持つ。このレビューを書いている時点ではまだテスト環境なので、この機能を楽しむことはできなかったが、同様の腕前を持つプレイヤーとのしびれるようなバトルに期待したい。
▲自分と近いスキルレートでマッチングされるリーグ。正式サービス前のため残念ながらメニューにもたどり着けなかった。 |
なお、ざっと機能を見た感じ、『Forza 4』や『Forza Horizon 2』にあるようなクラブ機能はないようだ。というように、『Forza 6』には従来シリーズにあった要素がすべて含まれているわけではない。今後、今作のオンライン要素がどうなっていくのか、正式に発売されてからの話題に期待したい。
『Forza』シリーズを日本で特徴づけたのは、リアルな挙動でも豊富な車種でもなく、ペイント要素だろう。幾何学模様を変形させて組み合わせて作るペイント機能で、日本の職人たちはさまざまなアニメペイントカー(痛車)を作り上げた。
その盛り上がりは『Forza 4』で最大化した後、『Forza 5』でいったん沈静化した。それは機種の切り替わりによってデザインが引き継げなかったのと、デザインの検索方法が改悪されて見つけるのが困難になってしまったからである。
残念ながら検索方法は『Forza 5』と同じく、車を指定した後にその車に合うデザインを検索する形となっている。しかし、デザインは『Forza 5』と『Forza Horizon 2』からそのまま移行できるようになった。
▲『Forza 5』や『Forza Horizon 2』で作成したバイナルやデザインが……。 |
これまで、『Forza 5』から『Forza Horizon 2』へのデザインの移行もサポートされていなかったため、『Forza 5』で作られたデザインと『Forza Horizon 2』で作られたデザインに分かれていたが、その両方が『Forza 6』で合流する形となる。よりデザインが活性化することに期待したい。
▲『Forza 6』でインポート可能に! |
前作『Forza 5』をベースに、物足りないと言われていたコンテンツを拡充し、ゲームとしてさらに昇華させたのが『Forza Motorsport 6』というタイトルだ。レースゲームとしては何の申し分もなく、そつのない優等生……それが『Forza 6』である。
ただ、車好き、レースゲーム好きがニコニコしながら楽しめる一方で、レースゲーム初心者が飛び込んでくるには、「これだ!」というひと押しが足りないのも事実だろう。Xbox Oneにはゲームプレイ配信機能もあることだし、目を三角にしてタイムを追うだけではない、走ることの楽しさを配信映像から感じて、そしてこの世界に飛び込んでもらえればと思う。
極上のカーフェスティバルはまもなく開幕するのである。
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