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2015年10月2日(金)

吉祥寺の夜に鳴り響く「あの世で俺に」「詫び続けろ!」“LIVE・A・LIVE・A・LIVE 吉祥寺篇”レポ

文:megane

 1994年にスーパーファミコン用ソフトとして発売され、独特の戦闘システムとオムニバス形式のシナリオを採用していた異色RPG『ライブ・ア・ライブ』。初の単独イベント“LIVE・A・LIVE・A・LIVE 吉祥寺篇”が9月25日に開催された。

『LIVE・A・LIVE・A・LIVE』

 本イベントは、下村陽子さんならびに株式会社2083主催のもと、作曲家の下村陽子さんと本作ディレクターの時田貴司さんによって企画されたもので、『LIVE・A・LIVE』20周年の記念するイベントの一環となる。

 ライブの会場となった吉祥寺CLUB SEATAには、全席立ち見でもスペースがないほど大盛況で、『LIVE・A・LIVE』というタイトルへの思い入れの深さが非常に感じられた。会場の入り口ではライブオリジナルグッズが販売されていて、その一部は2083オンラインショップで購入できる。ただ、残念ながらTシャツは完売となってしまったようだ。

 なお、ライブは時田さんと20年近い付き合いというAKIRAさんをバンドマスターとしたメンバーで構成。エレキサウンドに乗せて各シナリオのテーマ曲や戦闘曲が奏でられた。

『LIVE・A・LIVE・A・LIVE』

【LIVE・A・LIVE・A・LIVEセットリスト】

 1:Select A Live
 2:PSYCHOで夜露死苦!!(近未来編)
 3:CAPTAIN SQUARE(SF編)
 4:KNOCK YOU DOWN!(現代編)
 5:Kiss of Jealousy(原始編)
 6:鳥児在天空飛翔 魚児在河里游泳(功夫編)
 7:WANDERER(西部編)
 8:殺陣!(幕末編)
 9:魔王オディオ
 10:MEGALOMANIA
 アンコール1:届かぬ翼(中世編)
 アンコール2:凛然たる戦い(中世編)
 アンコール3:GO!GO!ブリキ大王!!(近未来編)

 シナリオ選択画面の曲である『Select A Live』でしっとりと始まったライブは、2曲目の近未来編の戦闘曲『PSYCHOで夜露死苦!!』で会場の盛り上がりが急上昇。多彩な管楽器を担当する石戸谷 斉さんのテナーサックスが主旋律を奏でると、会場は大いに湧き上がった。

『LIVE・A・LIVE・A・LIVE』
▲石戸谷さんのテナーサックスで会場はまず一盛り上がり。

響き渡る「あの世で俺に詫び続けろ」コール&レスポンス

 2曲が終わると、いよいよ時田さんと下村さんの2人が登場。ステージに出てくるや否や、時田さんが「あの世で俺に?」と問いかけると、会場からは「詫び続けろ!」の返し。これは本作の終盤である中世編でストレイボウが主人公オルステッドへ叫ぶ有名なセリフ。本作を知る者にとっては初歩中の初歩であるこのセリフだが、コール&レスポンスへと昇華したのはさすがの濃さ。

『LIVE・A・LIVE・A・LIVE』
▲時田さんによるコール&レスポンスが会場に鳴り響く。

 オープニングトークでは本企画の成り立ちが語られた。時田さんが酔った勢いで『LAL』のバーチャルコンソール(VC)化をTwitterで聞いてみたところ、何千というRTが得られて、まずはVCの企画がスタート。

 その流れをうけて、「ライブもやりたいよね」という話になり、そこに下村さんが酔った勢いで居酒屋の領収書の裏に“LIVE・A・LIVE・A・LIVE”とイベント名を書いて、さらにそれをツイートした所、後に引けなくなったと語った。

 これに対して下村さんは「お酒を飲んでツイートしてはいけない」と自戒の念をこめて語っていた。

 ちなみに2曲めに演奏された『PSYCHOで夜露死苦!!』の舞台“近未来編”の主人公の名前はアキラ(田所 晃)だが、今回のバンドマスターの名前もアキラさん。このアキラさんと時田さんとの出会いは、アキラさんが小学校4年生の時に、自宅に時田さんが遊びに来たのが始まりとなる。

『LIVE・A・LIVE・A・LIVE』
▲バンドマスターのAKIRAさんと時田さん、下村さんは旧知の仲。

 その時は、遠足に行くために朝起きてきたアキラさんのために、時田さんが即興でお弁当を作ってあげたとか。アキラさんは当時『クロノ・トリガー』が好きだったため、時田さんがその『クロノトリガー』の開発者であることにビックリしたそうだが、学校の友達に言っても全然信じてもらえなかったというエピソードを披露した。

 下村さんも「このライブを任すのは彼しかいない」と語っていた。ちなみに下村さんとアキラさんの出会いは居酒屋だったとか。

ゲストギタリストとして『艦これ』プロデューサーの岡宮道生さんが登場

 ソプラノサックスの軽やかな音色でSF編の戦闘曲である『Captain SQUARE』が演奏された後は、ゲストギタリストで岡宮道生さんが登場。岡宮さんは『LAL』発売当時の宣伝プロデューサーであり、スクウェア社員で作られたロックバンド“THE BLACK MAGES”のギタリストであり、『艦隊これくしょん -艦これ-』のエグゼクティブプロデューサーでもある。

『LIVE・A・LIVE・A・LIVE』
▲さまざまな分野で活躍する岡宮道生さん。DMM.comでは『艦これ』の偉い人。

 4曲めの『KNOCK YOU DOWN!』以降、岡宮さんはラストまでコンスタントに演奏に参加し、髪の毛を振り回すパワープレイを披露していた。なお、ライブ当日は『艦これ』のアップデートがあり、しかもメンテナンス中ということもあって「ここに来ている場合ではない」と言っていたが、「今日はこちらです!」と強く語っていた。

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▲中央でソロパートをかき鳴らす岡宮さん。

 5曲めは原始編の戦闘曲『Kiss of Jealousy』を、歌手の加瀬愛奈さんの歌声とともに披露。加瀬さんは2014年2月に行われた下村さんの25周年ライブでも歌を担当し、その時に「また一緒にやりたい」という話が下村さんから寄せられていたという。ただ、周年ライブとしては「次は50周年になる」として、サブタイトルも“ともに生き延びよう”が候補にあるとか。

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▲華やかなドレスに身を包んで歌う加瀬愛奈さん。

開発メンバーが11人も集まって当時のエピソードをぶっちゃける

 休憩を挟んだ中盤は、時田さん&下村さんを含む、本作の開発に携わった11人が登場。近未来編の象徴的アイテムである“たいやき”を手に再会を祝った。

『LIVE・A・LIVE・A・LIVE』
▲たいやきを手に乾杯の一同。

 近未来編&原始編のシナリオ兼バトルディレクターやモンスターグラフィック、イベントプランナーなど開発の中核となるメンバーが揃ったこのトークセッションでは、当時の開発状況(主に時田さんのプロレスエピソード)が赤裸々に語られた。

 当時のスクウェアのRPGとしては実験的な内容が多く含まれる『LAL』は、本作で初めてのゲーム開発というメンバーもちらほらといて、24人ほどで開発が進められたという。また、当時は4つのチームに分かれて、それぞれが複数の章を担当していたが、サウンドは全体を担当していたため、リテイクなどの連絡が来るのは一気に来る時が多かったとか。

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▲昔ばなしに華が咲く開発メンバーの方々。

 それぞれが当時の思い出を語っていると、話題は時田さんに関するプロレストークに。バトルキャラクターのドットなどを担当した宮本さんは「もしかしたらプロレス枠だったのかも」と語り、同じくグラフィック担当の倉島さんも、獣神サンダーライガーの衣装を競り落としに行ったエピソードを語った。

 その時、時田さんはオフィスで仕事をしていたそうだが、誰かが通りかかる度に衣装が来たのか、とソワソワとしていたという。

 背景のメイン担当だった佐々木さんは、『FFV』でマップを作っていたものの、ドットもほとんど打てない状態でメイン担当に任命されて、「このプロジェクトは大丈夫なのか?」と不安になったとか。

 また、開発終盤になって、近未来編で湖に沈んでいくブリキ大王のグラフィックを入れたいと時田さんが言い出したことには「無茶苦茶ですよ」とコメント。なんとかして、某映画で溶鉱炉に沈んでいくラストシーンのように親指だけを描写するだけの容量を確保したという。

 『LAL』の企画当初から携わっていたという岡宮さんは、時田さんとの出会いをリフレッシュルームで遊んでいた『ファイヤープロレスリング』であると語った。当時、同じようにビクトリー武蔵使いであった2人が出会い、そこから意気投合をする。その後、「オムニバス形式のゲームを作りたい」という時田さんの呼びかけに対して、「じゃあ俺が宣伝をやる」と返したという。

 なお、『LAL』は小学館のマンガ雑誌『サンデー』系列の作家を各シナリオのキャラクターデザインに採用しているが、当初は出版社の枠を超えて作家を揃えたかったという。一番最初に話を持って行ったのは集英社だったそうだが、企画自体はその場で「無理だ」ということになり、すべて小学館の作家でお願いすることになったとか。

 ちなみに当時、時田さんは本作の発売後に「続編を作る」と言っていたらしいが、当の本人は忘れていたことも、ここで明かされた。

二胡や尺八、三味線なども登場したライブ後半戦

 開発者によるぶっちゃけトークの後は、ライブも後半戦に突入。ゲストとして二胡とバイオリンを奏でる伊藤友馬さんが登場。功夫編のテーマ曲である『鳥児在天空飛翔 魚児在河里游泳』(鳥は空を翔び、魚は河を泳ぐ)と、西部編のテーマ曲である『WANDERER』を演奏。

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▲二胡で『鳥児在天空飛翔 魚児在河里游泳』を奏でる伊藤さん。

 続いて幕末編の戦闘曲である『殺陣!』では、HIDE×HIDEの2人が尺八と三味線で登場し、2人のデュエットパートもある大胆なアレンジかつハイテンポな演奏が行われた。ゲーム内の強敵である岩間さまとの戦いを想像した人も多いのではないのでしょうか。

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▲2人のかけあいパートなどもあり、和の雰囲気たっぷりに演奏された『殺陣!』。

 続いてステージ裏手から時田さんと下村さん、そして岡宮さんが登場。本企画の主催である株式会社2083の斎藤さんを紹介しつつ、このライブの盛り上がりに「次もあるんじゃないの?」と次回開催の可能性を匂わせる。そして「今後も」「あの世で俺に」……「詫び続けろ!」と観客とともに叫び、ラストの2曲が始まった。

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『LIVE・A・LIVE・A・LIVE』
▲やっぱり掛け声は「詫び続けろ!」

 ラストの2曲は重厚なキーボードソロで始まった『魔王オディオ』からのボス曲『MEGAROMANIA』。岡宮さんとバンドメンバーの宮本さんの2人による数分間のギターソロのかけあい、そして激しいドラムソロなど会場のボルテージは最高潮に。

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▲ラスト1曲めは『魔王オディオ』からスタート。
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▲『MEGAROMANIA』では岡宮さんと宮本さんによるギターソロも。

 続くアンコールでは、これまで演奏されていなかった中世編の楽曲をフィーチャー。『届かぬ翼』で主人公オルステッドの悲哀をピアノとフリューゲルホルンが表現すると、アンコール2曲めは一転して戦闘曲『凛然たる戦い』を披露。オルステッドの剣士としての戦いぶりを思わせる勇猛果敢な曲調ながら、どこか寂しさも感じる、そんな演奏に会場も聞き入っている様子だった。

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▲石戸谷さんによるフリューゲルホルンが悲しみを演出する。
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▲勇ましい曲ながら、どこか寂しさも漂わせる『凛然たる戦い』。

 『凛然たる戦い』の終了後、再び出てきた時田さん。「まだやっていない曲がありますよね?」と問いかけをして、「みんなも一緒に歌える曲をやります!」とアナウンス。間髪入れず『GO!GO!ブリキ大王!』が開始され、当時のデモテープと同じように、ボーカル:時田さん、技名叫び&ギター:岡宮さんのコンビで熱唱していた。

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▲『GO!GO!ブリキ大王!』を熱唱する時田さんと加瀬さん。

 そして曲は3番にさしかかり、サビを会場の全員と一緒に繰り返して熱唱。ゲームの内容と同じように会場にいる全員で一体となり、熱狂の“LIVE・A・LIVE・A・LIVE 吉祥寺篇”はその幕を閉じた。

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▲最後はサビ部分を会場と一緒に熱唱!
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▲会場は熱気に包まれたまま、『LAL』初のライブイベントは終了した。
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▲会場のバーカウンターで提供されていたオリジナルドリンク。ここのアイデア出しは非常に熱く行われたとか。

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