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2015年11月13日(金)

『チェンクロ』×『聖剣伝説』クリエイター対談。コラボの内容からシナリオ論まで徹底討論!

文:マスクド・イマイチ

 セガゲームスが配信中のスマートフォン用RPG『チェインクロニクル ~絆の新大陸~(チェンクロ)』と、スクウェア・エニックスがiOS/Android/PS Vitaで展開中のアクションRPG『聖剣伝説 RISE of MANA(聖剣RoM)』で11月下旬より相互コラボイベントが開催されます。

『チェンクロ』×『聖剣伝説』

 『チェンクロ』には、歴代『聖剣伝説』シリーズの主人公たちがアルカナとしてゲーム内に登場。敵キャラクターとしておなじみの“ラビ”たちもイベントにお目見えします。一方の『聖剣RoM』には、ボスキャラクターとして『チェンクロ』の人気キャラたちが出演。双方ともにモデリングや動きなどを熱く意見を交わし、こだわりの制作をしており、本イベントへの意気込みが強く感じられる内容になっています。

 今回、『チェンクロ』と『聖剣伝説』シリーズを手がけるクリエイター陣の対談が実現。コラボイベントの話はもちろん、開発秘話や「ゲームにおけるシナリオとは?」という深い話まで聞くことができましたので、以下でお届けします。

●参加クリエイター

『チェインクロニクル ~絆の新大陸~』

・松永純氏(セガインタラクティブ)
・井上周祐氏(セガインタラクティブ)
・小島邦彦氏(セガインタラクティブ)

『聖剣伝説』シリーズ

・小山田将氏(スクウェア・エニックス)
・琢磨尚文氏(スクウェア・エニックス)
・鈴木裕之氏(スクウェア・エニックス)
・八木正人氏(スクウェア・エニックス)

『チェンクロ』×『聖剣伝説』
▲左からスクウェア・エニックスの琢磨氏、小山田氏、鈴木氏、八木氏、セガインタラクティブの松永氏、井上氏、小島氏。

まずはクリエイターのみなさんの自己紹介から

――まずは自己紹介からお願いします。では『チェンクロ』チームから。

松永純氏(以下、松永):セガの松永です。『チェンクロ』シリーズの総合ディレクターとして、キャラ・シナリオ・ゲーム開発の監督を担当しています。それと立ち上げた人間でもあるので「これ作った本人しかわからないよね」という運営の相談など、そういった部分のフォローも担当しています。

井上周祐氏(以下、井上):同じくセガの井上と申します。コラボ関連を担当させていただいております。コラボイベントの立て付けですとか、お相手のメーカーさんとのやりとりなど、お互いの間に立ってプロデュース、調整する仕事をしています。

小島邦彦氏(以下、小島):小島と申します。主にデザインリーダーとして、3Dモデルの作成やクオリティの管理などをしています。

――『聖剣』チームの方々もお願いいたします。

小山田将氏(以下、小山田):小山田と申します。『聖剣』シリーズのプロデューサーとして、『聖剣RoM』だけでなく新作『聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-』のプロデュースや、その他の作品の監修なども担当しています。

琢磨尚文氏(以下、琢磨):琢磨と申します。『聖剣RoM』を去年の3月にリリースしたんですけど、その2カ月後ぐらいから運営プロデューサーとして参画しています。アップデートの内容を考えたり、開発と直接やりとりをしたりしています。

鈴木裕之氏(以下、鈴木):アートディレクターを担当しております鈴木です。今までは『ファイナルファンタジー』ばかり作ってきたので、今は『聖剣RoM』に全力投球しております。

八木正人氏(以下、八木):八木と申します。いわゆる開発ディレクターとして、『聖剣RoM』の立ち上げから開発にかかわっています。あとはシナリオを全部担当しました。運営は琢磨や小山田にお願いしているんですが、今は「こういう企画やるからシナリオお願いします」、「進捗どうですか?」と焦らされている日々です(苦笑)。

 過去作としては、PSで発売された『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』にもかかわらせてもらいました。僕はこのタイトルの世界観がすごい好きで、この世界観でもう少しアクションゲームチックな『聖剣』を出したいなと思い、ダメ元で企画を出したんですね。その後、小山田との出会いもあり、幸運にも今『聖剣RoM』をやらせてもらっています。

『チェンクロ』×『聖剣伝説』

実は似ているところも多い両タイトルのコラボのきっかけは?

――総勢7名のみなさんに集まっていただけたところからも、今回のコラボへの両社の意気込みを感じております! 今回のコラボのお話は、どちらから出たものなのでしょうか?

松永:セガ側からですね。『チェンクロ』を遊んでくれているユーザーさんは、コンシューマのRPGを好んでくださっている方が多いんです。『チェンクロ』では、これまで世界観が似ているファンタジーRPGから意外性のあるものまで、さまざまなコラボをやってきました。そのなかでユーザーさんが強く望むのは、やはりファンタジーRPGの王道タイトルというのがありまして、前々からコラボをやるならコンシューマの大作RPGとコラボできないかと運営と相談していたところ、『聖剣』の名前が挙がって、スクエニさんにお願いすることになりました。

 『聖剣RoM』もそうかもしれないんですけど、『チェンクロ』は20代後半~30代前半のユーザーさんが多くて、スクエニさんのタイトル……『FF』や『ドラクエ』などのRPGをスーパーファミコンで学生の頃にガッツリ遊んでいた世代が多いんです。世代的にドンピシャということもありまして、お願いしました。

――私もまさにその世代です。スクエニさんは、コラボのお話を聞いた時はどう思われましたか?

小山田:もともと『チェンクロ』が世に出た時、メインビジュアルを見たらイラストレーターのHACCANさんや村山竜大さん、タイキさんが描かれていて、「あれ? 『聖剣』とかぶっている」と思い、すごい親近感を覚えました。ですから、「コラボをやれるとおもしろいね」と話していたのですが、具体的にお話を持っていくタイミングをなかなか見つけられず……。

鈴木:やっぱり3Dモデルの作品だといかんせん運営が大変なので、コラボの相談も前もってじゃないとできなくて。でも自分も小山田と同じように、『チェンクロ』には親近感を持っていましたね。

松永:ありがとうございます!

琢磨:『チェンクロ』がリリースされた時だと、スマホではまだブラウザゲームが主流で、『パズル&ドラゴンズ』があったぐらいで。ゲームっぽいゲームとしてはパイオニアで、「やっとこういうのがスマホに来たか」とうれしかったです。そして、それが売れてくれたのが何よりよかったですね。

松永:『チェンクロ』を開発したスタッフは、僕含めてコンシューマRPGに愛情の強いメンバーが多くて。やっぱりコンシューマRPGといえばスクエニさんのタイトルの印象が強いので、さっきみたいに「ビジュアルに親近感があった」というのも、僕らがスクエニさんの作品で育ってきたせいというのがあるでしょうね。そうやってRPGを遊んでいたというのが根底にあって、「そういうおもしろさって、もっとスマホにあってもいいんじゃないか」というのが『チェンクロ』を作った経緯でもありますし。

『聖剣』ストライク世代「その調整は“殺してでもうばいとる!”」

――『チェンクロ』と『聖剣』シリーズでは、“マナ”など共通の単語なども出てきますが、お互いのタイトルにどのようなイメージを持たれていますか?

松永:“マナ”という言葉自体は、もう一般的な日本のRPG用語で定着しているものだと思うんですけど、最初に使ったのって『聖剣』からじゃないですか?

小山田:私も初代『聖剣』は作った側ではなく、遊んでいた身なのでよくわからない部分が大きいのですが、自分も『聖剣』で“マナ”っていう言葉を覚えて、その後に『マジック・ザ・ギャザリング』で耳にしたって感じですね。

琢磨:ゲームだとそうかもしれませんね。ファンタジー小説を含めると変わってくるのかもしれませんが。

小山田:『FF』のイメージに近しいドラゴンの名前とかも、いろいろな作品に出てきますからね。それは『聖剣』の石井浩一さんや田中弘道さん、『FF』の坂口博信さんが作られていたものが、我々世代にとっては色濃く残っているということなんでしょうね。

――みなさんの印象に残っている『聖剣』シリーズ作品を教えていただけますか?

井上:『チェンクロ』開発チームには、『聖剣2』と『聖剣3』がどストライクな世代が多いんですよ。「私、中学生の時に“紅蓮の魔導師”に恋していました!」という女性デザイナーがいたり(笑)。サウンドにも「大学生の時に耳コピして曲を作っていました」という人がいて。今回パラメーターの調節をしているプランナーも「この調整だけは“殺してでもうばいとる”」って(笑)。とにかく思い入れ、こだわりが強いシリーズですね。それが今回のコラボイベントにも反映されて、どんどんよいものになっていってます。

小島:僕も『聖剣2』と『聖剣3』の直撃世代で、小・中学校の時にプレイしていて思い入れが強いです。今回のコラボの話を聞いた時も、すごくテンションが上がりました! オープニングとかドット絵の緻密さとかが強く印象に残っていますね。エネミーデザインとかもすごくかわいかったり、完成されているな、と。自分がゲーム業界に入った動機の1つに間違いなくなっているタイトルです。

八木:『聖剣3』は当時、作っている苦労を横目で見ながら「わー、このデバッグに参加することになったら大変そうだな……」って思っていました(笑)。

小島:『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』も好きですね。ゲーム性もおもしろかったんですけど、ビジュアル面が突出していました。

井上:何度もやりたくなりましたよね。

八木:すごいマニアックな話なんですけど、当時、僕は別のゲームを担当していたんですが、『聖剣3』って文字が細かくてキレイだったんですよ。そういうのを見て、自分の参加しているタイトルも「もっとキレイに文字出したいなぁ」って思っていました(笑)。スクウェアの他のチームで開発している人たちも、「『聖剣』ってキレイだなぁ」ってみんな思っていましたね。

『チェンクロ』×『聖剣伝説』

「このキャラクターだけは捨てられない」とどう思わせるか

八木:『チェンクロ』がリリースされた当時って、基本無料のゲームは「出たカードは使い捨て」という感じがしていたんです。でも『チェンクロ』をやってみたら、キャラにバックストーリーがあるのがいいなと思って。「困ったな、このキャラクターは捨てられない。これだけコイツの過去を知ってしまったら捨てられないよなー」という葛藤が生まれて。あれだけたくさんのキャラにそれぞれストーリーがあって、その部分にものすごく感動しましたね。

松永:ありがとうございます。その「捨てられないようにしよう」というのは『チェンクロ』の目標の1つでもありました。僕も当時のゲームに対して「使い捨てじゃないんだ、キャラっていうのは!」という思いが強かったので。今、ゲームを遊んでくれているユーザーさんにもそこが伝わっていてうれしいですね。

八木:それこそ『聖剣RoM』を作っている途中だったので、『チェンクロ』から受けた影響は大きかったですね。『聖剣RoM』はキャラがいっぱい出るわけではないんですけど、“魔ペット”と呼ばれるモンスターにバックストーリー的なものがあったほうがいいんじゃない? という話が開発中に出ていました。

 『チェンクロ』はキャラクターを描く人がそれぞれ違っているのでそこで個性が出ているのに、さらにストーリーもあって「なんというものを作ってくれたんだ……」と思っていました(笑)。

松永:そうですね。実際にあのストーリーを作る部分って、開発としてはものすごく重いんですよね(苦笑)。

八木:そこは「大変そうだなぁ」と思って遊んでいました(笑)。自分もテキストを描いたりしているので。

松永:もともと『チェンクロ』を立ち上げた時、ストーリーは1人で監修をしていたんですけど、200人超えた辺りから「コイツとコイツって知り合いだっけ……?」とどんどんわからなくなったりしましたね(苦笑)。やっぱり情報の管理が大変でした。

 しかも、ガチャでキャラが手に入るのが問題といえば問題で、「あれ? コイツと出会う前にコイツと出会ったらおかしくない?」とか。あとは、そろえてみたら「ここの酒場のキャラが足りない!」となって、移動させてみたりとか……魔法学園を無理やり卒業させてギルドに入団させたりもしましたね。設定を変えることも考えたりしながら、かなりドタバタしました。

琢磨:僕も『チェンクロ』をプレイしているんですが、ゲームらしいゲームが、いわゆるソーシャルゲーム……広すぎてあまりこの呼び方すきじゃないんですけど、この業界に来てくれたな、と。それでいて、お客さんがいっぱい付いてくれたんだなと傍目に見ていてうれしかったです。カードゲームでブラウザベースというものが圧倒的に多く、一方で『パズドラ』がドーンと売れて、それに似たようなゲームが増えていくなかで、違うアプローチの仕方をしているなと思いました。準備期間を考えると、そうとう早く動いていたんだろうな、と。

 僕自身はコアなゲーマー寄りで、世代的にも小山田と同い年で今年33なんですね。『聖剣』シリーズは初代からストライクでして。当時はプレイヤーとして、その世界観に浸っていました。だから、スマホにも『チェンクロ』のようなタイトルが来てくれてよかったなと思いましたね。

小山田:僕にとっては、『チェンクロ』のような3Dのゲームがスマホで出て、売れてくれたことがとにかくうれしかったですね(笑)。「3Dのゲームがスマホで売れるの?」って社内で言われ続けていたんですけど、「『チェンクロ』売れてますよ!」って言えるようになりました。それに追いつかなきゃいけないという部分では、チームは相当苦労しましたけどね。『チェンクロ』は本当によく考えて作られているなあ、と遊びながら思っていました。

八木:ずーっと「くやしいなぁ、これー」って言っていましたもんね(笑)。

シリーズから新たな挑戦! 『聖剣RoM』の開発について

――『聖剣RoM』についてなのですが、アートディレクターとして鈴木さんが苦労した部分はありますか?

鈴木:この作品もゼロから作り始めまして。さっきも言ったとおり、八木は『聖剣LOM』も担当していて、あの世界観がすごくよかったのでそれをベースに持ってこようという話からスタートしました。私は、イラストレーターさんとキャラをどうしようかという話をメインで進めつつ、世界観を作り込むことを担当しました。ほぼ全部に口を出していましたね。

 今回のコラボに関しても、アート面の監修を担当させてもらっています。『聖剣RoM』はアニメーションに結構な容量を割いているんですけど、そういった意味でキャラの個性がそこに表れていて。『チェンクロ』のキャラの個性に重きを置いていることに近いんじゃないかと思っています。

松永:『聖剣RoM』を作る時、世界設定やアートワークのようなものってコンシューマのRPGと同じくらいにガッツリと作り込んだんじゃないでしょうか?

八木:同じぐらいは作りましたね。

松永:おー! やっぱりそうだったんですね。ビジュアルを見たときに、すごくそれを感じて。

八木:最初は資料を描いたりしていました。説明図を描いて、こういう世界設定でできています……って説明して、背景を描いてもらったり。

鈴木:僕らはコンシューマ上がりだから……それが問題でもあり(苦笑)。

八木:そうなんですよね(笑)。

松永:『聖剣RoM』が出た時に、「本物のコンシューマRPGが、ついに追ってきたぞ!」って思いましたねぇ。

小島:驚愕しましたよね……。

松永:『チェンクロ』って、そこらへんのアートワークなしで作り始めたんですよね。設定画も、僕が適当に描いたものぐらいしかなくて。僕らはアーケードゲームを作っていたチームだったので、コンシューマ的な作り方を知らなかったんですよね。世界観は文字と図が入った設定書だけ用意して、ビジュアルは開発しながらイメージをまとめていったんです。

 そうやって作っても、きちんとしたものはできたとは思うんですが、やっぱり大御所的なものではないなと。それで『聖剣RoM』がリリースされた時に、「おお、“大御所的なもの”が出たぞ!」って思いました。

(ここで八木さんが『聖剣RoM』の設定資料を取り出す)

八木:ウチはこういうのを作っていましたね。

松永:あああっ! こういうのない! ウチ!

(一同爆笑)

松永:いや、あとから作りましたけど!

『チェンクロ』×『聖剣伝説』

八木:コンシューマあがりなので、ワールドマップもこういう風に描いたり。それで『聖剣LOM』の雰囲気でやったらどうなりますかねー、っていう打ち合わせを重ねました。

鈴木:ディレクターの言葉と資料があると一気に開発陣の脳内でイメージ共有ができるんですよね。それを私が具体化して後押しするような作り方でやってきました。

松永:その辺りの“きちんとした作り”は、最初のビジュアルのイメージからも伝わってきますよね。「先に船出したけど、すぐに追いつかれそうでヤバイ!」って思ったりもしていました。

小島:モデルのクオリティとかすごすぎて、ちょっと凹んだりもしましたね……。

井上:参考用にモデルを見せてもらったんですが、そのすごさが、デザインチームさんが見入ってしまって仕事が止まるぐらいの作り込みで……。

小島:テクスチャの密度といい、描き込みの統一感、造形力がすばらしいなと。デザインも洗練されていて、デフォルメの出来もトップレベルだと思いました。

八木:それはそれで運営的には「本当にこのクオリティでやり続けるの?」って物議をかもしたりしましたね(苦笑)。

鈴木:それなりにコストがかかりますからね。アート、モデル、テクスチャー、アニメーション、エフェクト、スキル……といろいろ入れると1キャラに対するコストがすごくて。さっき小山田が言っていたように、コラボのタイミングという面では準備にすごく時間がかかるんですよ。だから、残念ながら武器1本だけとかそういうコラボも何回かありました。やっぱりスケジューリングがすごく難しいので、今回は“運”もありますよね。

松永:そういう意味では、『チェンクロ』でも小島がモデルのクオリティにこだわりすぎていてコストが……という話もあったりするので(笑)。その小島が驚愕する『聖剣RoM』のモデルは、コスト効率を考えるとどんなものなんだろうと考えてしまいますね。

鈴木:そこは管理するようにしています。私がやる場合は、「ここからここはガッツリやります! ここからここは流しましょう」とコントロールはしているので。キャラの個性の一番大事なところはちゃんとやりましょう、というところが押さえてあれば、あとは制作に任せてしまいますね。

琢磨:端末のスペックもここ最近劇的に進化してきましたよね。『聖剣RoM』リリース当初はメモリが落ちることもかなりありまして、その辺のバランスの取り方も『チェンクロ』はうまいなと思っていました。多分、泣く泣く削減しているところもきっとあるんだろうなって、自分たちの『聖剣RoM』を見ているとすごくよくわかりました。

松永:モデルは泣く泣く削った部分多いですね。開発初期のデザイン的な大仕事は、泣く泣く削ることばかりでした。

鈴木:でもちゃんと管理されているなと感心していました。絶対そのほうが早いし、キャラが頭身低くなってカワイイ。それがカワイさを維持しつつコストにも見合っていたものになっていていいな、と。キャラの関節がないところも、「あ、そういうことなんだ」って理解していました。

松永:関節は早々に取り払ったよね。

小島:そうですね、いろいろ付けたかったんですけど。

鈴木:でもあれが正解だと思いますよ。

それぞれのタイトルにとって“シナリオの重さ”とは?

――『チェンクロ』も『聖剣』シリーズもシナリオが高く評価されていますが、両タイトルにとってその位置づけはどのようなものなのでしょうか?

松永:『チェンクロ』はジャンルを“チェインシナリオRPG”と言っているところもあって、シナリオはタイトルの命です。ゲーム性やビジュアルも売りではありますけど、「スマホで、ちゃんとストーリーのあるRPGやるぞ」というのが大きなコンセプトだったので、ストーリーは一番大事なものだと思って作っています。

八木:自分は『聖剣』におけるシナリオってゲームに浸るための“入り口”だったり、ユーザーさんをその世界に入り込めるように押し出してあげるためのゲームの一要素かなと思っています。だから逆に、適当になり過ぎないようにかつ、あまり語りすぎないように、ユーザーさんをうまく盛り上げてあげられるものだったらいいなと思っていつも作っています。

松永:『聖剣』シリーズは、シナリオよりゲームが中心にある印象がありますよね。

八木:『聖剣』のマナの世界というのをうまくユーザーさんに届けるための、一要素にきちんとなっているんですよね。『聖剣RoM』もそうなるように頑張ったつもりではいます。

松永:特にスマホだとストーリーで間口を狭めてしまったり、読むのが重くなるとそれが理由でやめられてしまう場合もありますよね。『チェンクロ』は「ストーリーで泣かせたい」という目標があるんですが、そこはクライマックスやキャラクターのクエストに回して、メインストーリーは八木さんがおっしゃったように、ちゃんとゲームに没入するための入り口にならないとダメだなと思って作っています。まず遊びやすいゲームありきですよね。

八木:初代の『聖剣』とか、本当にビックリするぐらいシナリオのテキストが少ないんですよ(苦笑)。だけどゲーム画面で見たらちょっとジワっとくる出来になっていまして。それは『聖剣2』と『聖剣3』も同じなんですけど、ラスト辺りなんて「あれ、これしか語ってなかったっけ?」ってなるくらい。『聖剣LOM』も1つ1つの話はそれほどガッツリ語らずに、キャラと背景があって、そこにシナリオが加わることでゲームの世界観に導いてあげるという感じになっています。

小山田:『聖剣RoM』を作っていた時って、ソーシャルゲームがストーリーもなくカードイラストを大量に出していた頃で。だから今も含めて、叩かれがちかなとも思っていたんです。でも10年経った時に「あのゲームやったなぁ」って、いい思い出を語ってもらえるような「思い出に残るタイトル」になるといいよね、とスタッフで話しながら作っていました。だから、焼畑してすごい悪いイメージだけ残って、10年後その人がゲームしなくなったというタイトルにはしたくなかったんです。その分、ちゃんとお金をかけようと(笑)。

『チェンクロ』×『聖剣伝説』

松永:我々もまったく同じです。やっぱりそうですよね。家庭用のRPGを体験していると、そういう思いで作りますよね。

――『聖剣3』って20年前のタイトルなんですよね。それでも名作として語り継がれていて。あの頃のRPGのシナリオって、いまだに話題になりますもんね。

松永:居酒屋とか行った時とかに、延々と話しちゃいますよね。それは我々のゲームもそうなってほしいと思います。どうしてもスマホのゲームって、以前は暇つぶしみたいな、電車の中でちょっとやるものという印象がありましたよね。でも、「ゲームは暇つぶしじゃねーよ! だったら、俺らこんな仕事してねーよ!!」っていう強い思いがあって。今の話を聞いてて、そこは同じなんだなぁと思いました。

八木:でも『聖剣RoM』でストーリーをどうしようか、というのは悩みました。わりと最初の頃は「(ストーリーを短く)切れ、切れ」って話もあったりして、「ストーリーをそんなにやってるスマホゲームないだろ」と言われたり(苦笑)。

松永:僕らも同じことを言われました(笑)。

――セガさんはその意見をどうクリアしたんですか?

松永:その時は「ゲームだけじゃ勝てないですよ」って話をしましたね。当時は『パズドラ』ショックのようなものがありまして。なので今のチェンクロのバトルを作った時に、あとは『パズドラ』みたいなメニュー画面を付けて、すぐ出せって言われたんです。でも『パズドラ』って画面設計も秀逸ですが、ゲーム自体が10年に1本出るか出ないかのパズルゲームだと思うので。あのレベルのものを作らなきゃ勝てないのなら、誰も勝てないですよって。チェンクロのバトルシステムは自信作ですけど、2年も3年もこれだけ遊んでもらえる保証はない。だから『チェンクロ』にはストーリーが絶対に必要なんですと説得したんです。

 何カ月も何年も遊ぶスマホゲームにおいて、ストーリーというのは読んだら終わりの、作り手からすると非効率なものに思われるんですけど、違うんですよね。運営していても、導入した時に一番反響がもらえるのはストーリーやキャラだったりするんです。そういう意味で、ゲームの寿命を一番担保できるのは世界観やストーリーなので、本当に大事なものですね。

今回の相互コラボは開発陣の熱がとにかくすごい!

――今回のコラボについて、シナリオやビジュアルの見どころはどんな部分でしょうか?

井上:今回、『聖剣』シリーズの主人公たちの描き下ろしイラストを使用した新アルカナが登場します。追加されるキャラクターについては、「夜になると変身してすごく強くなる」という『聖剣』シリーズの特徴を持たせようとしています。これは『チェンクロ』の世界では初めてのことで、『チェンクロ』をやっている人にとっても新鮮に感じてもらえると思いますし、『聖剣』を遊んでくれていた人にも「これこそ原作再現」と思ってもらえると思います。

 シナリオに関しては、原作のストーリーのこの辺りから飛んできたのかな? というところまでこだわっています。たとえば『聖剣3』だったら、「“マナの聖域”に入る前くらいの主人公たちが、ユグドに来ているのかな?」とか。

 こちらでも設定資料的なものを隠れて作っていて、例えば「『聖剣3』で魔法を使えなかった頃のアンジェラは、これぐらいのことを考えているんじゃないかな」というのを想像して、それが「もし『チェンクロ』の“魔法学園”の生徒とふれ合ったら、成長して魔法が使えるようになったアンジェラはなんて言うか、というところまで考えてこだわっています。

 『聖剣』シリーズを遊んでいた人も楽しめるし、『聖剣』は初めてという『チェンクロ』ユーザーさんにも楽しめるものを目指しています。だから、ストーリーもガッツリと力を入れていますし、バトルにも新しい要素を盛り込んでいますし、イラストも描き下ろしまし、すべての要素に全力投球しています。

――イラストをどなたが担当されているのかも気になっていました。今まで『チェンクロ』に参加されている方ですか?

松永:今回、SSRは6キャラ登場する予定で、この6キャラに関してはすべて『チェンクロ』を今支えてくれているイラストレーターさんがそれぞれ描き下ろしています。

――6キャラというと、『聖剣3』の6人が思い浮かびますが……。

松永:はい、そうですね。あの『聖剣3』の6人に登場してもらいます。SRになりますが『聖剣2』の3人も登場しますよ。

『チェンクロ』×『聖剣伝説』
▲『聖剣伝説2』の主人公・ランディ(SR)

――『聖剣3』の人気はシリーズでも屈指ですよね。“リース”はいまだに高い人気を誇っていますし。

琢磨:『聖剣3』はスーパーファミコンで出たきりですからね。移植やリメイクがされていないからこそ熱いファンが多いのかな、と。

井上:『聖剣』はイラストレーターさんの間でも人気が高くて、「コラボが決まる前から、ずっとプライベートでも“ケヴィン”を描き続けていました!」という熱い想いを持った作家さんもいらっしゃいました。。「スケジュールに余裕が全然ないんですけど、このコラボだけは絶対にやりたいです!」という方もいました(笑)。

――イラストレーターさんも『聖剣』シリーズ直撃世代の方が多そうですね。

井上:そうですよね。

松永:逆に、「『聖剣』シリーズ好きだから、このスケジュールでやります」って言っていただけなかったら、このコラボ自体が実現しなかったですね(苦笑)。

琢磨:話が決まってからは早かったですね。

井上:チェンクロのコラボ史上、もっとも早いですね。全部、かかわっている人たちの熱のおかげです。

――11月下旬に実装ということは、スクエニさんは怒涛の監修の日々を送っているのでは?

鈴木:やり取りの量がとにかく多いですね(笑)。

松永:ありがとうございます! 本当に。

井上:1日何通メールをやりとりしているんだろうと(苦笑)。

小島:ビジュアル面でも多数の資料をご提供いただき、ありがとうございました!

鈴木:でも、『チェンクロ』と『聖剣RoM』はお互いに3Dのタイトルなので、やりやすかったですよね。データをすぐもらってすぐ見られるので楽でしたよ。

『チェンクロ』×『聖剣伝説』
▲コラボイベントに登場するエネミーの画像

――『聖剣RoM』側でのコラボはどんな内容になるのでしょう?

鈴木:『チェンクロ』と同じく、11月下旬から2週間を予定しています。『聖剣RoM』の世界を『チェンクロ』のキャラたちが「わ~」って走り回ってくれるだけでもカワイイですよね。

松永:だいぶモデルも造形が違うので、『チェンクロ』ユーザーさんも「イイネ!」って思ってくれるはずです。

井上:『チェンクロ』っぽく見えるように、モーションをいろいろ調整いただいたりもしました。

鈴木:開発のほうで『チェンクロ』の独特なモーションありきで作っていて、スキル発動の時は『チェンクロ』に合わせた印象のものになっています。

井上:『チェンクロ』って、あの画角で一番かわいく見えるようにモデルや動きを作っているんですよ。今回『聖剣RoM』になった時に、360度見回してもよく見えるように、両チームで相談して、作っていただきました!。“ダッシュブレード”の剣の振り方とかにもこだわってもらいましたよ(笑)。

――洋服の色が変わった『チェンクロ』キャラも新鮮ですね。

松永:「この色もありだな!」と思いました! 監修が楽しかったです。

鈴木:それも最初は「赤が目立つよなぁ」と思ったんですけど、「赤ばっかりはどうなんだ」ということで、いろいろ分配させていただきました。

――“主人公”がちょっと派手な色の服を着ているのがイイですね。

松永:そうなんですよ。こちらからすると刺激的で(笑)。“ヴェルナー”の赤も印象的ですし、“ユニ”と“フィーナ”もカワイイですし。

鈴木:頭身だけちょっと世界観に合わせさせていただいて、頭の大きさを少しだけ変えています。

――『聖剣RoM』側のコラボシナリオはどんなものに?

琢磨:絶賛調整中ですね!(苦笑)

八木:ウチはいつもコラボの時って、WEB画面で簡単なセリフのやり取りがあって、それが一応プロローグになっているんです。あとはクエストに入った時のちょっとしたイベントシーンと、最後にキャラが登場した時のイベントシーンでシナリオを作っています。

琢磨:『聖剣RoM』の世界観の設定として、特にユーザーさんに開示していないんですけど、「実はこういう設定」というのを絡めたのがコラボの時のシナリオですね。今回もそれに乗せたものになっています。

八木:いつも都合のよい設定が1つありまして。ゲームの中に“シオン界”という、いろんな次元とつながっている世界があるんです。レイドボスが出てくる時などは、“次元振動”という現象が起きて、その影響でボスだけでなく他のキャラクターも転げ落ちてくるという。それを元の世界に帰してあげるには、肉体的な死を一度体験しないとダメで、「というわけで、倒させてください」、「いやいやバカな」的なやりとりがあって、結局戦うことになるんです。

琢磨:ゲームの仕様上、敵として出させていただくことが多いんですよ。あとは「主人公と主人公が戦う」というのがドラマチックだろうと思っていて。これだと戦う理由がないと納得してくれないだろうということで、「一度倒されないと帰れない」という設定になっています。

八木:それで『チェンクロ』のシナリオを考えた時、「あれ、『チェンクロ』の主人公ってしゃべるんだっけ……」と悩むところから始まりました(苦笑)。それがネタになっているシナリオも『チェンクロ』にあったので。あとで相談させてください(笑)。

――そこもどうなるのか、『チェンクロ』ファンは楽しみですね。

相互コラボでスマホRPGをもっと盛り上げたい!

――今回のコラボにかける意気込みを、両チームからいただけますでしょうか。

松永:両チームとも同じ思いといいますか、もともと「RPGは、ゲームはおもしろい!」と気持ちで作ったタイトル同士がコラボをしていて、お互いが互いの作品へのリスペクトを半端なく持っているので、めちゃくちゃ熱いコラボになると思っています。本当に細かな部分からも、原作のよさだったり、作っている人間がコンテンツに対してどれだけ愛情を持っているのかが伝わるものになっています。

 触ったユーザーさんの評価って「作っている側がわかっているかどうか」という部分が大きいと思うんです。今回はまさに「作っている人間がすごくわかっているコラボ」になっているので、ぜひやってみてください!

小山田:監修をいろいろと依頼されているなかですごい熱を感じるので、こちらもそれに負けないようにおもしろく作っていきます。『聖剣3』でこんなにコラボしてもらったのに、現状『聖剣3』を遊べるハードがスーパーファミコンしかないという状況はなんとかしたいなと僕も思っています。これについては今回のコラボなどから熱をいただいて、なんとか『聖剣3』を世に出したいなと思っているので楽しみにお待ちください。

『チェンクロ』×『聖剣伝説』

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