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2015年11月19日(木)

『ブレイブルー』完結を前に森Pへインタビュー。『BBCF』新キャラや新システムの注目点は?

文:AO

 アークシステムワークスのアーケード用格闘ゲーム『BLAZBLUE CENTRALFICTION(ブレイブルー セントラルフィクション)』が、いよいよ11月19日に稼働開始しました!

 ラグナの物語の最終章となる本作の稼働を記念して、プロデューサーの森利道さん、シリーズのイラストやグラフィックを担当した加藤勇樹さんと樋口このみさんへインタビューをしてきました。

『ブレイブルー セントラルフィクション』

●インタビューのお相手

・森利道:『ブレイブルー』シリーズのプロデューサーであり、世界観やシナリオも担当。1作目『カラミティトリガー』と3作目『クロノファンタズマ』のキャラクターイラストを担当。

・加藤勇樹:『ブレイブルー』シリーズのメインデザイナー。2作目『コンティニュアムシフト』と4作目『セントラルフィクション』のキャラクターイラストを担当。

・樋口このみ:『ブレイブルー』シリーズのグラフィック制作などに参加し、エンブレムのデザインなどを手掛けてきた。また、シリーズの派生作品である『エクスブレイズ』シリーズのキャラクターイラストを担当。

 このお三方は『電撃PlayStation』で『BBCF』の描き下ろしイラストを連載中で、11月26日発売号には加藤勇樹さんのイラストが掲載されます。

『ブレイブルー セントラルフィクション』
▲10月発売号の電撃PSに掲載された樋口このみさんのイラスト。今後、森利道さんの描き下ろしイラストも登場します!

 今回のインタビューでは、約7年におよぶシリーズの歴史を振り返るお話や、ゲームシステムに関する開発秘話などをお聞きしました。近日掲載予定のインタビュー後半では、キャラクターデザインにまつわる思い出話を掲載するので、お楽しみに!

『ブレイブルー セントラルフィクション』

『カラミティトリガー』から7年。ラグナ篇の完結を迎える心境は?

――まずは『ブレイブルー』の思い出についてお聞きしたいと思います。本作はついにラグナの物語の最終章になるとのことですが、手応えや心境はいかがなものでしょう?

:心境と言いますか、感想と言いますか、当たり前すぎて変かもしれませんが、キャラ数が増えたなあと思いながら作っていました。

 『ギルティギア』シリーズが20キャラ以上いて、それでも多いと感じていたのに、今や『ブレイブルー』は30キャラ以上ですからね。そういう意味では今回も大変でした。

『ブレイブルー セントラルフィクション』

 シナリオについては、いろいろと思うところがあるのですが、ぶっちゃけ、まだ全シナリオを書き終えているわけではなく、ACT3などは執筆の真っ最中なんですよ(笑)。

 11月19日にACT1が公開されますが、その後もACT2、ACT3へと続いていくので、「これから最終章に向けてて長い戦いが始まったな」という気分のほうが強いです。すでに頭の中でシナリオはできていますが、「もっと頑張らないと!」と思いながら現状制作しております。

『ブレイブルー セントラルフィクション』

加藤:今回はストーリー的に2回の大きなバージョンアップが決まっていますからね。新しいバージョンになるたびに再スタートという部分もあるので、確かにまだまだ戦いは長いだろうなと思っています。

――『ブレイブルー』シリーズのメインのイラスト担当は、森さんと加藤さんとで交代制の形でした。加藤さんが最終章を担当するにあたって、どう感じましたか?

加藤:やっぱりプレッシャーはありますね。なんだかんだで、まだ最後じゃないんじゃないかな? と思っていたりもするんですが(笑)。

:ラグナの物語は完結するのですが、もしかしたら『ブレイブルー』シリーズは続くかもしれません。その時は、僕でも加藤でもなくて、たぶん樋口が担当すると思います(笑)。僕と加藤はそろそろ開放させてもらわないと!

樋口:え!?  いきなり何を言っているんですか!(笑)

『ブレイブルー セントラルフィクション』

――(笑)。樋口さんは『ブレイブルー』の派生作『エクスブレイズ』を担当したことで知られていますが、『ブレイブルー』にはどのような形でかかわってきたのでしょうか?

樋口:『ブレイブルー』は入社して一番最初にかかわったゲームで、オーバードライブ発動時に表示される紋章やキャラクターモーションのデザインなどを担当しています。

 キャラクターは最初にジンから担当して、そこからたくさんのキャラクターにかかわりました。初めてメインでキャラクターデザインを担当した『エクスブレイズ』も思い出深い作品ですが、これまでの仕事の主軸は基本的に『ブレイブルー』でした。

『ブレイブルー セントラルフィクション』
▲オーバドライブ発動時などに、キャラクターごとの紋章が浮かび上がります。

:紋章の話を聞くと思い出しますね。最初に社内のグラフィックチームの樋口たちが紋章のデザインを持ってきて「こんなカッコイイのがあるんですよ! 使ってくださいよ!」って、言ってきたんですよ。

 「すごいけど、こんな細かいデザインを最後までできるの?」って聞いたら、「大丈夫です! まかせてください!」と答えてくれました。でも最近は、お願いすると「もう勘弁してください……」と言われることもあります(笑)。

――『ブレイブルー』シリーズはコミックや小説、ADVの『エクスブレイズ』といった形でもストーリーが派生していきましたが、最新作ではこれらの物語もすべて集約されていくのでしょうか?

:その件に関しては、一貫してお話をしているんですが『ブレイブルー』の設定に“境界”というものがあって、そこからいろいろな世界がつながっている形でやらせていただいています。

 『エクスブレイズ』、『フェイズシフト』シリーズ、『ブラッドエッジ エクスペリエンス』でも、境界に関連する話が語られているので、根底では世界はつながっているんだよ、というところだけ理解してもらえればと。だから、セリカやナオトが参戦することもあるんですよね。

『ブレイブルー セントラルフィクション』

――ナオトはストーリーに確信に迫る、特に重要なキャラクターになりそうですね。

:ナオトに関しては何を言ってもネタバレになりそうで怖いんですよ。ちなみにナオトのストーリーのACT2とACT3は、僕がほとんど書かせていただきました。

 特にACT3は相当ネタバレなことを書いています。とにかく、派生作品であっても世界観は共有しているので、知っている人がニヤリとできるワードはあるていど組み込んでいますね。

『ブレイブルー セントラルフィクション』
▲知人の吸血鬼であるラケルを探して、レイチェルと出会うナオト。一新されたストーリーモードの演出にも注目です。

ノウハウの構築により、キャラクター制作にかかる時間は大幅に短縮

――『ブレイブルー』シリーズは稼働当時からHDの2D対戦格闘でしたが、やはり従来の格闘ゲーム制作より作業は大変だったのでしょうか?

:基本的にはそうですね。ただ、画質がよくなったことによって、逆に楽なところは楽になりました。HD画質になって色がしっかり見えるようになったので、塗り込みの労力は減りました。

 ドット絵でブラウン管表示をしていたような時代は、ドット職人が色のにじみや相互の干渉などを加味して小技を利かせながら“目的の色を見せる”という技術が必要でしたから。

『ブレイブルー セントラルフィクション』

 まあ、「HDになってどうなりました?」と聞かれて率直に答えるなら「お金がかかります!」って、思っちゃうかな(笑)。物量があるので、そういう意味では大変です。

――『ブレイブルー』の稼働から約7年経ちましたが、初期に比べてゲームデザインやグラフィック制作など、開発現場の環境は変わっていきましたか?

:それはもう、全然変わってますよ! わかりやすいのがモーションのリアクション数で、例えば当時の『ギルティギア』では、殴る、蹴る、ダウンする、必殺技を使うなどのリアクションのモーション数をあわせて55ぐらいでした。

 それに比べて『ブレイブルー』は、1作目から100ぐらいありましたからね。

加藤:特にライチはモーション数が多かったですね。

『ブレイブルー セントラルフィクション』
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:根底の物量がハンパじゃなくなったので、力技も使いながらやりくりをしています。とはいえ、マシンスペックも上がっているので、プログラムも改良しながらやっています。

 背景については、とにかく物量がすごくなることが予想できていたので、1作目から3Dにして対応をしました。

――シリーズを重ねてノウハウが積み重なり、楽になった部分はありましたか?

:楽になってます?(樋口さんを見ながら)

樋口:ある程度の流れのようなモノは確立できていますし、やりやすくなってきた感じはします。

加藤:最初の頃に比べると、キャラクター1体を作る時間はかなり短縮されています。昔はコンテだけで2~3カ月、そこから線画を書いたりして、なんだかんだで5か月ぐらいはかかっていました。

 最近は、順調だと2カ月ぐらいで1キャラクターが全部まとまるぐらいまで短縮されていますね。

『ブレイブルー セントラルフィクション』

――特にノエルが顕著ですが、新たなデザインにあわせて、流用ではなく完全に新しいグラフィックになっていることが多いですよね。

加藤:グラフィック全般を新しく作り直すことも頻繁にあります。もちろん流用する場合もありますし、使えるところは使っています。

 とはえいえ、キャラクター性が一番大事なので、「今回はこれは合わないな」と感じたら完全に作り直しています。

『ブレイブルー セントラルフィクション』
『ブレイブルー セントラルフィクション』
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初プレイアブルとなる黒鉄ナオトとヒビキ=コハクのコンセプトは?

――ここからはゲームシステム的な部分に関してお聞きしようと思います。まず、初プレイアブルとなる黒鉄ナオトとヒビキ=コハクのシステム的なコンセプトや注目点を教えてください。やはり、他のキャラクターとの差別化については苦心されたのでしょうか?

『ブレイブルー セントラルフィクション』

:新キャラクターに関して制作陣に指示したのは、とにかく「わかりやすいキャラクターにしてほしい」ということでした。制作陣はキャラクターが増えれば増えるほど、複雑なシステムを入れてみるなど、難しくしたがるんですよ。

 例えるなら最初はスポーツカーを作っていたけど、徐々に物足りなくなってスーパーカーを作り、さらに物足りなくなって最後はF1マシンを作っちゃいました的な。

『ブレイブルー セントラルフィクション』

 そこまでくると誰も乗れませんよね? 持てる技術を全部出したいのはよくわかりますけど、僕らの場合はF1マシンを作るんじゃなくてスポーツカーの中で、乗り方を変えてみたり、パーツを組み替えてみたりして、おもしろいものを作らないといけません。

 なので、今回はできるだけ扱いやすいキャラクターを作ってもらいました。

 特にナオトは、もう1回主人公を作るぐらいのつもりで作ってほしいとお願いしましたね。ただ、彼は超オーソドックスな性能のクセして、今までの『ブレイブルー』にいないキャラクターだったんですよ。

 彼のおかげで、実は『ブレイブルー』にはオーソドックスなキャラクターがいなかったんだと気付かされました(笑)。

『ブレイブルー セントラルフィクション』
▲主人公キャラのようなコンセプトで作られたナオトは、基本的な動きにクセがなく、初心者にも扱いやすいキャラクターです。固有技であるドライブ能力は“ブラッドエッジ”で、自身の血で形成した刃を繰り出せます。

 ヒビキに関しては、ちょっと『ブレイブルー』の原点に戻ろうと思い、制作陣には「Dボタンを押すと、どんなキャラクターだかわかる感じに」とお願いしました。

『ブレイブルー セントラルフィクション』

 その結果、ボタンを押すと分身が飛び出すという、非常に特徴がわかりやすいキャラクターになったと思います。

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▲分身を生み出すドライブ能力“ダブルチェイス”を使用するヒビキ。手数とスピードに優れたキャラクターです。

――となると、ナオトやヒビキは今作から始める人にも使いやすいキャラなんですね。

:そうですね。とっつきやすさは抜群だと思いますよ。まさに主人公といった感じの普通に戦えば普通に強いという方向性です。

 余談ですが。ナオト役の島﨑信長さんの声は主人公タイプで、社内のスタッフでの評判もよかったです。これぞ王道主人公という感じの声ですよね。

――確かにナオトは王道の主人公キャラという雰囲気ですよね。どちらかというとラグナはダークヒーロー系な感じがありますし。

:僕としては、ラグナみたいなほうが好きなんですよね。どうしても、周りが理不尽じゃないと嫌だなとと思っているんで。

 ラグナもパッと見た瞬間に主人公だとわかるデザインにはしてありますが、ナオトはそれ以上にわかりやすいデザインになっています。

『ブレイブルー セントラルフィクション』
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――ちなみに、既存キャラクターでシステム的に大きな変更を加えたキャラはいるのでしょうか。

:基本的にキャラクター本来のコンセプトはそのままにしてあります。僕は最初に設定したコンセプトを変えるのはあんまり好きじゃないんですよ。

 これはちょっと反省になるのですが、過去作でν-No.13-(ニュー)のコンセプトを一度変更してしまったことは、よくなかったかなと。“フェイスリフト(戦闘スタイルを切り替える技)”が好きな人はいるんですけど、それはν-No.13-本来のコンセプトじゃないんですよ。

『ブレイブルー セントラルフィクション』

 彼女は生粋のシューティングキャラクターで、近寄らせずに完封することがコンセプトになっています。ただでさえ、プレイヤーがシューティングという要素に集中しなきゃならないのに、そこに“戦闘スタイルの切り替え”という要素を入れるのはちょっと違いましたね。

 そんな思いがあって、大変申し訳ないのですが、ν-No.13-についてはシリーズの途中でキャラクター性を変えてしまいました。Λ-No.11-(ラムダ)が復活したのも、その過程からですね。

――キャラクターごとのコンセプトはシリーズ内で守り続けていきたいと。

:そうですね。新たなシステムが入ってくる関係で多少の戦い方は変わってしまいますが、基本的なキャラクターのコンセプトはあまり変えたくないと思っています。

――コンセプトを守りつつ、キャラクターを調整するのは大変そうですね。セリカには新システムが追加されていますが、それもコンセプト強化のためでしょうか?

:はい。前作ではセリカの本来のコンセプトである“回復”があまり生かされていない気がしたので、そこをもっと強く出そうと思って搭載したシステムです。

『ブレイブルー セントラルフィクション』
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 ちなみに調整でいつも苦労するキャラクターはジンですね。彼は氷を使う能力や手数の多さなど、1作目からコンセプトが完成しきっているので手を入れずらいです。

 逆にテイガーなどは調整の方向がわかりやすいですね。テイガーは投げキャラというコンセプトの仕様上、移動が遅かったり、ダッシュができかったり、いろいろ不自由に作っています。

 やっぱり、いろいろと苦しい状況の中で一発逆転するのが投げキャラの醍醐味ですからね。

『ブレイブルー セントラルフィクション』

 でも、それを極端にしすぎたせいで、稼働前の初期テイガーは本当に何もできなくて、ただボコボコにされるだけになってしまいました(笑)。それで調整を繰り返し、スレッジハンマーなどの技を追加して、今の形にいたった感じです。

――新システムのエクシードアクセルとアクティブフロウについて、導入の理由などがあれば教えてください

:アクティブフロウに関しては、あんまり意識しすぎずに使ってもらって大丈夫です。あれはボーナスのようなもので、攻撃的に動くと少し有利になりますよぐらいの認識でよいと思います。

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▲攻撃する、ダッシュするなど、積極的な行動を取るとアクティブフロウが発動。キャラクターが点滅して、攻撃力やエクシードアクセルの威力が上昇します。

 エクシードアクセルは、オーバードライブの選択の幅をより広げるために搭載しました。ボタン4つ押しでダメージを与えるか、自分なりのコンボを見つけてさらにダメージを伸ばすか、状況にあわせて自分なりの戦術を作り上げてほしいですね。

 アクティブフロウ中にオーバードライブ状態のコンボを決められたら、それはすごいことになるので、ぜひ狙ってみてください!

『ブレイブルー セントラルフィクション』
▲エクシードアクセルは、オーバードライブ発動中にABCDボタンの同時押しで発動する強力な必殺技。キャラクターごとに、それぞれ固有のアクションが用意されています。

 開発スタッフインタビューの前半はここまで。近日掲載予定の後半では、個々のキャラクターデザインにまつわる思い出話や、稼働後だからこそ明かせる新情報などをお届けする予定です。

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▲3人の方々にお気に入りキャラのイラスト入りサイン色紙をいただきました。こちらは樋口このみさんのもの。インタビュー後半でプレゼントするので、お楽しみに!

(C) ARC SYSTEM WORKS

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