2015年12月10日(木)
PS Vita『うまるちゃん』は癒しを求める人に最高!? 『うまるちゃん』好き編集たちによる座談会をお届け
12月3日にフリューより発売されたPS Vita『干物妹!うまるちゃん ~干物妹!育成計画~』。ここでは、発売から1週間を迎えた本作をプレイした2人の編集と、担当ライター・カワカミ雁々による座談会をお届けします。
本作は、TVアニメ『干物妹! うまるちゃん』を原作にしたシミュレーションゲーム。プレイヤーはうまるの兄・タイヘイとなって、ぐうたらなうまるを育成しつつ、うまるや彼女の友人である海老名、切絵、シルフィンなどと交流していくというものです。うまるをどう育成するかによって、登場するヒロインとエンディングでうまるが就く職業が決まるシステムが特徴。
そんな本作を遊んだのはこちらの3人。はたしてどんな座談会になっているのでしょうか……?
カワカミ雁々……この特集の担当ライター。橘・シルフィンフォード分多めのプレイレポートを書いちゃうくらいシルフィンが好き。
ゴロー……いかつい風貌とは裏腹に、編集部きってのうまる好き。ちなみに娘さんも『うまるちゃん』のアニメにハマっていたらしい。
てけおん……アニメで『うまるちゃん』を知り、ファンになった。ヒロインの中では切絵ちゃんが好き。
▲座談会の様子。左からてけおん、ゴロー、カワカミ |
人生の先輩として、若者を導く楽しさがある
カワカミ:発売にあたって、編集部きっての『うまるちゃん』好き2人にプレイしてもらったけど、どうでしたか?
てけおん:『うまるちゃん』ファンなら間違いなく買って損はしないかな。
ゴロー:いわゆるヒロインたちとイチャイチャするだけの内容なのかと思っていたけど、違っていて驚いたな。
カワカミ:こういうキャラゲーって、例えば“タイヘイになって妹たちと仲よくなっちゃうぜー”って作品が多いし……それはそれで好きなんですけど、このゲームはそうではないんですよね。絶妙な距離感があるんですよ。
てけおん:タイヘイがしっかりと“うまるを見守る兄としての立場”を保っているよね。
カワカミ:主人公はタイヘイ(=プレイヤー)なのは間違いないんだけど、描かれる物語の中心にはうまるやシルフィンがいて、彼女たちがそれぞれ抱えているテーマを掘り下げていく。で、そのサポートをタイヘイがしてあげる。“人生の先輩として振る舞う”感じですね。その距離の置き方がすごくよかったなと。
ゴロー:すぐに恋愛関係になってしまうゲームとは違うので、遊んでいて新鮮だったな。
▲3人の座り位置などにも、うまい距離感が演出されています。 |
てけおん:2人はそのあたりに物足りなさって感じた?
カワカミ:いや、物足りなさは感じませんでしたね。あえてヒロインという言い方をしますが、各ヒロインのルートで描かれるシナリオが、それぞれキャラクターの根幹に迫る内容で、しかもこれまでアニメでは描かれていない部分なんですよ。だから「どうなるんだこれ!?」と、結末が気になっちゃうんですよ。
ゴロー:そうそう、ヒロインの掘り下げについて言うと、目いっぱい踏みこんでる感があるよね。俺もやってて何度も「あ、なるほどね」と思った。
てけおん:描かれていない内容って、例えば?
カワカミ:『うまるちゃん』の作品世界って、テーマの1つに“隠しごと”があると思うんです。たとえばうまるは、実はぐうたら人間なのに完璧JKを演じてるとか、U・M・Rとしてシルフィンと友だちになっちゃったとか。
ゴロー:海老名ちゃんだったら、タイヘイのことが好きとか、切絵の絵本作家になりたいっていうのもそうだよね。
カワカミ:このゲームでは、その“隠しごと”にズバズバ切り込んでいくんですよ。ここが本当にすごい。ネタバレになるんで詳しくは言えませんが、よくやってくれたなと思います。
ゴロー:“隠しごと”であるぶん、それが解放された時のカタルシスがとてもあって「いやぁ、よかったなあ」と思えるよね。俺、切絵ルートの最後とか、ちょっとウルッときちゃったもん。
カワカミ:だから、タイヘイとして誰かとくっつけなくても全然オーケーなんですよね。エンディングまで行くとホント「よかったな、君たち!」という気分になります。
座談会メンバーが好きなのキャラクターは?
てけおん:2人ともこのゲームを楽しんだみたいだけど、ちなみに誰のルートが特によかった?
カワカミ:僕はやっぱりシルフィンですね。レビューでも書きましたけど、シルフィンとタイヘイってあまり絡みがないから新鮮でした。プレイしていて、実はこの2人って似た者同士なところがあって、いいコンビだなぁと感じましたね。
てけおん:シルフィンはすごくアクティブ、タイヘイはどっちかという受動的という印象があるけど。
カワカミ:方向性の違いはあるかもしれませんが、2人とも“目的を設定してそこに進む”、“物事に真摯に取り組む”という点が共通してるんですよね。シルフィンはちょっと暴走気味になることもありますが、それは若さかなと(笑)。
▲橘・シルフィンフォード。常に付けている胸の“優勝”ワッペンが彼女のチャームポイントですよ。 |
カワカミ:シルフィンルートでは、打倒うまるを目指すシルフィンが、タイヘイとうまるの家に押しかけてきたりするんですが、彼女の一生懸命さを受け止めるタイヘイがまたいいんですよ。シルフィンの要望に応えて料理を教えてあげたりとか。いい師匠と弟子って感じの関係で、すごくよかったです。
▲目的のために頑張ってしまう性格は、実は2人に共通しているんじゃないかと感じますね。 |
ゴロー:妹たちのなかでは、シルフィンの暴走というか、圧倒的なエネルギーを受けきれるキャラクターがいないんだけど、タイヘイならそれができるんだよね。
カワカミ:ですね。タイヘイはシルフィンを年の功で導く、シルフィンはうまるとタイヘイをリスペクトしながら打倒うまるに向けて頑張る、そういう関係が心地いいんですよね。
てけおん:熱く語るねぇ(笑)。
カワカミ:いや、じゃあついでに語っちゃいますけど『うまるちゃん』世界において、うまると海老名、こまると切絵、U・M・Rとシルフィンの交友関係のなかでU・M・Rとシルフィンだけはちょっと特殊なんですよね。
てけおん:確かに。海老名と切絵については、うまるが「私、本当はぐうたら人間なの」とか「実は妹じゃなくてうまる本人だったの」ってカミングアウトしても多分問題がないからね。でも、シルフィンとU・M・Rだけはどうなるかわからない。なぜならシルフィンだけが“うまる本人には言えないこと”をU・M・Rには告白しているからです。
ゴロー:あ~。確かに、アレックスとどうしたらいいかみたいな話をしていたね。
カワカミ:そういう諸々ですね。そのU・M・Rとうまるが同一人物であることがバレたらどうなる問題についても本作では踏みこんでいて「なるほど、そういう手で来るか」と感じましたね。シルフィンファンにはぜひプレイして行く末を見届けてほしいです。
てけおん:そこまで言われると、気になるな……。ちなみに、ゴローはどうなの?
ゴロー:みんなかわいいなーって思ったけど、切絵が一番よかったかな。さっき、このゲームではエンディングで「よかったね」と思うって言ったけど“よかったね指数”はたぶん切絵が一番高い。
カワカミ:“よかったね指数”って……まぁ、確かにね(笑)。
てけおん:切絵は学校では怖い子と思われているし、兄であるぼんばとはうまくいってないしで『うまるちゃん』のなかでは、ちょっと“この子にいいことあるといいなぁ”と思わせるような女の子だもんね。
ゴロー:こまると遊んでる時だけが至福、みたいなところがありますよね。でも、ゲームだと、プレイヤーの視点の関係があるんでこの2人の関係にどうしてもタイヘイが絡んでくるんだよね。
▲こまると切絵の様子。お兄さんとして優しく見守ってあげたくなるシーンです。 |
てけおん:これ、遊ぶ前は「切絵は唯一の安息の地を奪われてしまうんじゃ……」なんて思って心配していたんだけど……。
ゴロー:うん、でもここでタイヘイのすごさというか人柄が生かされていますよね。ちゃんと切絵と打ち解けるというか、ほぐしていってあげている。こまると切絵の空間にタイヘイがいても、ガチガチにならない。特に、タイヘイが切絵に耳かきをしてあげるシーンがあるんだけど、ここはよかったね。
▲切絵の耳を掃除するタイヘイ。警戒心の強い切絵がこんなことに……。 |
ゴロー:あの切絵が、タイヘイのひざに頭を乗せて、あまりの気持ちよさにそのまま寝ちゃうんだよ。あの警戒心の強い切絵が、タイヘイに心を許してくれたんだなと感動したね。
カワカミ:切絵ルートだと、ぼんばとの関係もクローズアップされますよね。
ゴロー:うん。うまるとの関係ではシルフィンが一番複雑かもしれないけど、兄との関係では切絵が一番問題を抱えてるよね。仲よくできるのか、そもそも仲よくしたいのか。そのためにはどうすればいいのか……。
そういった問題に対して、切絵の絵本作家になりたいという夢の原点と絡ませていくストーリーはすごくよかった。切絵ファンにはぜひ見てもらいたいから詳しくは言わないけど、ルート終盤での切絵の独白はぜひ見てもらいたい。
カワカミ:“よかったね指数”で言えば、他のヒロインが100のところ、切絵は150くらいありますよね。
ゴロー:いや、180くらいあるんじゃない?
カワカミ:180いっちゃいますか。いやぁ、あるなあ。
てけおん:読者の皆さんがシステムの話と勘違いしちゃうだろ! “よかったね指数”は、あくまでこいつらが独自にはじき出したものなので、気にしないでくださいね。
ゴロー:じゃあ次はうまるについて話してみようか。このルートはとにかくホンワカなごませてくれる。うまるとタイヘイっていい兄妹なんだなぁってひしひしと思ったよ。
カワカミ:逆に海老名ちゃんルートはヤバいです。ただひたすらにヤバい。
ゴロー:うん、あれはヤバいね。
てけおん:感想をヤバいで言うのやめろ(笑)! ……だけど、ストーリーについて話すとそれ自体がネタバレになっちゃうんで説明が難しいんだよな~。ただ、海老名ちゃん好きな人はプレイしたほうがいいのは間違いない。
カワカミ:再三このゲームは、各キャラクターの“隠しごと”について踏みこんだ作品だと言ってますが、もちろん海老名ちゃんルートでも、それは変わりません。こう言えば、なんとなくわかってもらえるかなと。
ゴロー:こんないい子が、アパートの1つ下の階に住んでいるなんて最高だよね。パジャマパーティとかしちゃうし。そのままあの部屋にお泊りだし。
▲「普通、うまるが海老名ちゃんの部屋に行くのでは?」という健全な発想はひとまず置いといて、かわいい寝顔をたっぷり堪能しましょう。 |
カワカミ:ある意味で、海老名ちゃんルートが一番踏みこんだストーリーでしたね。本当に恐れ入りましたって感じです。
てけおん:ある意味、『うまるちゃん』ファンが見たいものがきちんと描かれているよね。うまるの出番自体も多いし。
カワカミ:そこも本作のポイントだなと思います。どのルートでもうまるは出てくるので、自然と“うまる分”みたいのは補給できるんですよ。
ゴロー:そうしておいて、アニメとかだと深く描かれなかったサブヒロインたちに思いっきり焦点を当ててる感じだね。みんなキャラがいいだけに、もっと掘り下げてほしいって思ってたユーザーは多いはず。そのツボを見事についてるなと思うよ。
カワカミ:あとは、残念ながらルートは用意されてませんが、叶をはじめとするサブキャラもいい味を出してますね。叶やぼんばに会いに行くと、ヒロインたちの好感度を上げるチャンスをつぶしてしまうので悩みどころなんですが、でも叶が出てくるとついつい彼女のところに行っちゃう(笑)。
ゴロー:叶もいいキャラしてるよね。ちょいちょいストーリーに絡んでくるし。そして、あのテレテレな態度、「もうお前らくっついちゃえよ!」とホント思うわ。
▲叶のちょっと物憂げな表情、イイですよね。ちなみにゲームではサブキャラクターに会いに行くと、うまるの育成に使えるアイテムをもらえます。 |
ファンアイテムとして見た場合はどうなの?
てけおん:そろそろまとめに入ろうと思うけど『干物妹!うまるちゃん ~干物妹!育成計画~』は、ファンアイテムとしてはナイスな作品ってことでいいのかな?
カワカミ:僕は大満足でした。アニメが終わっちゃって“うまロス”だった僕には、砂漠のオアシス的な一品です。キャラクターの掘り下げについてももちろんですが『うまるちゃん』って、意外とビジュアル、ボイス面でのコンテンツが少ないんですよ。単体でソーシャルアプリにもなってないし、カードゲームとのコラボとかもない。
ゴロー:そうだね、コラボを他のソーシャルゲームとちょっとやってたくらいだね。
カワカミ:だから、そういった面でも貴重なアイテムだなと。しゃべって、動くうまる達がたくさん見られます。うまるちゃんのキャスト陣は新人さんが多くて、それほど色々な作品に出てるわけじゃないから、声優さんのファンになったって人にもいいんじゃないかと。
ゴロー:あとね、小さいことかもしれないけど、とにかく作品全体が暖かいんだよね。ギスギスしたシーンがなくて、プレイしてると癒される。
カワカミ:ああ、それはありますね。プレイしてて「なんでだよ!」って言いたくなる場面がなくて、ただ「よかった」と思える。
ゴロー:そういう、ホンワカしたゲームを求めてる人にも触ってみてほしいかな。こういうキャラクターコンテンツで、ここまで毒がないというか、ひたすらに優しい作品ってあまりないと思うから。
てけおん:なるほど。『うまるちゃん』のファンアイテムとしてはバッチリ、それにプラスしてのんびりホンワカしたゲームを遊びたい人にもオススメと。
ゴロー・カワカミ:ですね!
(C)2015 サンカクヘッド/集英社・「干物妹!うまるちゃん」製作委員会
(C)FURYU Corporation.
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