2015年12月17日(木)
コンパイルハート&『メタルマックス』の田内智樹氏というタッグで贈るPS Vita『メイQノ地下ニ死ス』がついに発売を迎えた。それを記念して、電撃PS Vol.604に掲載した『メイQ』の田内智樹ディレクターへのインタビューを全文掲載する。
序盤の攻略に役立つ情報も満載なので、購入を迷っている人だけでなく既に『メイQ』を手にした人もぜひチェックしてほしい。
――『メイQ』はシステムとシナリオ、どちらがベースとなって生まれた作品なのでしょうか?
最初は私がコンパイルハートさんから“魔械士”と“ガーディアン”のもととなるキーワードをいただいて企画書を作った形になります。キーワード自体がすんなり頭の中でパーツとして組み上がっていったので、魔械士とガーディアンの関係性やそれを中心とした世界観も頭にすぐ浮かびました。
ほかにも3DダンジョンRPGで昼夜の変化を表現するのはあまりないから、昼夜が切り替わらない理由を世界観やストーリーに盛り込もうといったように、ゲームの大枠を決めるまでは非常にスムーズでした。ですからどちらが先ということはとくにないですね。
▲『メイQ』の舞台となる世界は、常に夜の闇に閉ざされている。 |
――『メイQ』を通常のRPGではなく、ダンジョンRPGとして開発された経緯は?
ダンジョンRPGの構造のほうが、マップ内にイベントやギミックを盛り込みやすいというのが理由になります。RPGを作る以上、なるべくユーザーさんに楽しんでもらいたいですからね。そういった経緯で、『メイQ』はダンジョンRPGになりました。
――システム全般に関して、開発時に心がけた点などがあれば教えてください。
ストレスをなくす、ということですね。カスタマイズやダンジョン探索など、ゲーム的な部分をおもしろくするというのはじつはそんなに難しくありません。大事なのは、そういった行程を苦痛にしないことです。
ですから、可能な限り快適に遊べるよう心掛けましたね。探索をしていても戦闘をしていても、カスタマイズをしていても何をしても楽しい。そういうゲームはストレスがないゲームなんですよ。
――開発中にとくに苦労した点などはありますか?
多くのユーザーさんがご存じのとおり、私はずっと『メタルマックス』シリーズを作ってきました。ですから新作にせよ移植にせよ、常に『メタルマックス』という下地があるうえでの作業でした。
ところが『メイQ』は完全なゼロベースからのスタート。家に例えるなら、『メタルマックス』はリフォームですが、『メイQ』は更地からの建築といった具合です。そうするとなにが起こるかわからないんですよ。例えば家を設計してみたけれど、よく見るとトイレがないとか(笑)。そういった“リフォーム”ではあって当然のものがないなど、思わぬところでの問題をよりよくしていくのに苦労しました。
――システムを作るにあたってベースにしたものはありますか?
システムだけではないのですが、『メイQ』を作るにあたっては五行思想をもとにしています。『メイQ』の世界は完全にオリジナルなものですが、オリジナルの世界を作ろうとすると、シナリオやシステムの都合で作られた世界観になりがちです。
そうすると、世界自体がご都合主義に見えてしまうんですよ。それを避けるために、基盤となるルールを設ける。それが『メイQ』では五行思想になります。
――では、エストラたち魔械士が5人となったのも?
はい、五行思想ありきになります。
――ちなみに5人のなかでお気に入りの娘はいますか?
マキですね。私は眼鏡っ娘が好きなんです。魔械士の設定は私が書かせていただいたので、好みで眼鏡っ娘を1人入れさせていただきました(笑)。
――マキをひいきした部分はありますか?
さすがに意図してひいきしたことはありません。ただ、少々出番が多いとユーザーさんが感じたら、そこには私の愛があるのかもしれませんね(笑)。
▲こちらが田内氏イチオシのマキ。物語を導くように序盤からたびたび登場するが、これは田内氏の愛のあらわれかも? |
――5人の魔械士以外でお気に入りのキャラクターはいますか? こちらも理由とあわせてお聞きしたいです。
星風館のメイドのエルです。彼女は癒しですね。ちなみに、タッチすると胸が揺れるんですよ。あれはいいものです(笑)。
▲田内氏が癒しと語るエルは、幼い顔に似合わず……大きい。 |
――話がそれてしまいました(笑)。続いてダンジョンについてですが、ずいぶんギミックが多いですよね。
ダンジョンを進んでいく過程でなるべく飽きないようにしたかったんですよ。苦労して1フロアを登っても、また同じギミックで悩まなければいけないのではおもしろくないですから。
だから迷路しかギミックがないダンジョンでも、網目状になっていたり分岐で選択を迫ったりといったように、フロアごとに異なる形の迷路にしています。
――一般的なダンジョンRPGと比べると、広い空間が多いですが、ここにはどういった意図があるのでしょう?
おそらく2番目の塔にたどり着いたユーザーさんも同じ印象を受けると思いますが、そこからが『メイQ』の本番になります。ダンジョンRPGは部屋と部屋同士をつなぐ通路でマップが構成されていますが、それだと踏破するのが簡単なんですよ。ストーリー上でも塔の内部は魔界につながっていることですし、難易度、設定の両面からかなり広い空間を設けています。
逆に最初に挑む塔はチュートリアル的な位置付けですので、こちらはあえて既存のダンジョンRPGと同様の部屋と通路によって構成されたマップにしています。
――難易度を高くしたというお話の割に、フロア間やダンジョン間の移動手段は豊富ですよね。
これは難易度が高いからこそですね。最初は苦労するけれど、1度踏破した場所はスムーズに通り抜けられるように用意しました。最初にお話しましたが、こちらもユーザーさんのストレスを減らすための仕組みです。
――続いてバトルについてですが、ガーディアンと魔械士を切り替えて戦うというシステムが生まれたのは?
魔械士とガーディアンのどちらかだけが戦うという形にはしたくなかったんですよ。ですが、どんなバトルでも毎ターン切り替えなければいけないとなると、わずらわしい。ですから普段はガーディアンのみで戦い、ボス戦では魔械士のサポートがあると戦いやすくなるという構造にしています。こういった部分も『メイQ』の難しさにつながっているかもしれませんね。実際、ガーディアンだけでボス戦をなんとかしようとして、苦労しているスタッフもいました。
――魔械士をガーディアンのスキルや魔械術を追加するオプション的な扱いにする方法もあったと思いますが、あえて魔械士にもHPを設けたわけは?
ギリギリの戦いが偶然生まれることに期待して用意しました。魔械士は敵に狙われるとすぐに力尽きてしまいますが、逆に言えばガーディアンが力尽きてもあと1~2ターンは行動できます。そうすると、ガーディアンが力尽きてもうすぐ全滅するというときに放った魔械術で敵にとどめをさすといった燃えるシチュエーションに出会うことがあるんですよ。もうダメだと感じたあとに奇跡的に勝つ。これはすごく気持ちのいい体験ですよ。
――戦闘中に回復アイテムを使えないのも、ギリギリのバトルを演出するためですか?
それもありますが、回復アイテムを限界まで買い込んで力押しで戦うという遊び方をしてほしくなかったんですよ。ですから同じようにガーディアンを回復させるものもある魔械術も、MPではなく魔械術ごとの回数制にしています。
――ボス戦に撃破指数という数字を設けたわけは?
敗北を次につなげてほしかったのが理由ですね。同じ敗北でも、敵のHPをほとんど減らさなかった敗北と、敵のHPを99%減らしたうえでの敗北は違います。自分があと一歩で勝利できるのかどうか、その目安にするために撃破指数を数字でユーザーさんに見せています。
――カスタマイズによってバトルの難易度が、かなり変わる印象を受けたのですが。
それはレベルでごり押ししてほしくなかったというのが理由ですね。レベルを上げればなんとかなってしまうと、ユーザーさんはカスタマイズをしてくれないんですよ。ではどうすればユーザーさんがカスタマイズをしてくれるかといったら、カスタマイズを行わないと越せない壁を作る。カスタマイズ同士の間に壁を作れば、カスタマイズによって強くなったと思ってもらえます。そのため、カスタマイズによって大きく難易度が変わるようになっています。
――プレイをしていると、ボスに有効なパーツがそれまでの旅で手に入るように感じました。
そうですね。ボス戦のカギとなるパーツはそこまでにたどり着く途中で手に入るようにはしています。そのアイテムを手に入れないとボスに勝てないのでは、ゲームの目的がわからなくなってしまいます。ですから一通り探索しておけば、ボス戦までには勝つためのピースがそろうようにはしています。
――『メイQ』初心者にカスタマイズに関するアドバイスをするとしたら、どういったものになりますか?
魔械士の属性ボーナスを利用して、ガーディアンのステータスを底上げするのが重要ですね。そこを意識すると、レベルにして5レベルから10レベル相当まで強化できるかと思います。
魔械士に装備できるシードや魔宝石は、魔械士自身を強化すると同時に、ガーディアンを強化するものでもあります。これは『メイQ』固有のシステムなので、気づかないで苦労してしまう人もいるでしょうね。魔械士を強化したくなるのを、ぐっとこらえてもらえればバトルが楽になるかと思います。
――魔宝石という、ガーディアンと魔械士両方に装備できるアイテムを用意したわけは?
アイテムを無意味に増やしたくなかったんですよ。ガーディアンが魔宝石、魔械士がシードと分けると単純にアイテムが2倍になってしまう。あとはちょっとしたジレンマを入れたかったのもありますね。手に入れた魔宝石をガーディアンに使うか、魔械士に使うか。そこが共用だからこその選択が生まれるかと思います。
――逆に魔械士専用のシードを用意したわけは?
こちらはプレイ中にユーザーさんの目標となる、レアアイテムになります。非常に強力なアイテムですから、あえて特別感を出しました。
▲シードのなかには、属性ボーナスを大きく上げるものも。 |
――プレイして気になったのですが、アームパーツはガンガン作っていいものなのでしょうか? ボスから手に入る素材を使っていいかが正直迷いました。
基本的に魔械ファクトリーで今よりも強いパーツが作れたら作って問題ありません。ボスのドロップ品などもったいなく感じるかもしれませんが基本的に『メイQ』では1つの素材から2種類以上のパーツを作れることはありませんので。
また、物語の都合上2つ目が手に入らなさそうなパーツもゲーム後半に別の形でもう1つが手に入ったりしますので、両腕スキルが気になる場合でもとりあえず1つは作っておいて問題ありません。
ただ、わずかながら1周では2本のアームパーツが手に入らないものもあります。そういったパーツの両腕スキルは非常に強力ですので、2周目に期待してほしいですね。
――斬新なシステムが豊富な『メイQ』ですが、盛り込めなかったシステムはありますか?
その点はコンパイルハートさんにがんばってもらったので、やりたいことはほぼすべて盛り込めましたね。けっこう無茶を言っている自覚があったので「え、直してくれるんだ?」ってビックリするくらいでした。(笑)。
『メイQ』は直感的にカスタマイズできることが重要なタイトルですので、コンパイルハートさんにも触っていただきながらいろいろと決めていきました。
――最後にユーザーへ向けて一言お願いいたします。
『メイQ』はゲーム好き、とくにRPG好きなユーザーさんに向けてつくったタイトル。カスタマイズして戦うという部分が好きな人なら必ずはまると思います。これまで遊んだカスタマイズを行うゲームとは違う独自の体験が味わえると思いますので、ぜひ手に取って遊んでみてほしいですね。
(C)2015 COMPILE HEART
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