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2016年5月12日(木)

ゲームクリエイターが過ごす1日や今ハマっていることは? 10年後の自分についても語る

文:イトヤン

 徳島県徳島市で5月3日~5日に開催された“マチ★アソビ Vol.16”。ここでは5月4日に両国橋西公園ステージで行われた“ゲームクリエイタートークライブ”の模様をお届けします。

“ゲームクリエイタートークライブ”

 サイバーコネクトツー代表取締役・松山洋さん司会のもと、ゲーム業界で活躍するクリエイター陣が集結して、楽しいトークを繰り広げる“ゲームクリエイタートークライブ”は、“マチ★アソビ”恒例のイベントとしてすっかりおなじみになっています。

“ゲームクリエイタートークライブ”
▲司会進行は、サイバーコネクトツー代表取締役の松山洋さんが務めました。

 今回はゲストとして、バンダイナムコエンターテインメントの富澤祐介さん、カプコンの小嶋慎太郎さん、セガ・インタラクティブの大崎誠さんという、このイベントではおなじみのメンバーが登壇しました。

 そしてもう1人、バンダイナムコエンターテインメントで『アイドルマスター』などのプロデュースを手がけている坂上陽三さんが登場する予定だったそうなのですが、前日に暴風雨が吹き荒れたために飛行機が飛ばず、徳島に来ることができなかったとのこと。

 そこで今回は、サイバーコネクトツーに入社して2年目という、若手社員の米村友希さんが登壇。この4名のパネラーで、トークライブが繰り広げられることになりました。

“ゲームクリエイタートークライブ”
▲写真左から松山洋さん、富澤祐介さん、小嶋慎太郎さん、大崎誠さん、米村友希さん。

ゲームクリエイターが過ごす1日の生活スケジュールは?

 今回は過去のトークとは趣向を変えて“みんなのプライベートを丸裸にする”という松山さん。まず最初は“1日のお仕事の様子を教えてください”とのお題で、1日のスケジュールを円グラフに書いてもらうという形です。

 ここでは1日の具体的なスケジュールよりも、説明の際に披露されたそれぞれの仕事の進め方といったエピソードを中心に紹介します。

 パネラーの4名が円グラフを書いている間に、司会の松山さんが自身のスケジュールを披露。松山さんは朝8時に起きて、9時に出社しているとのこと。

 サイバーコネクトツーでは18時が退社の定時だそうですが、以前は定時が終わると社内が自由時間のような雰囲気になっていて、仕事が終わっても自宅に帰らず、ずっと4人で『モンスターハンター』をプレイしていた社員もいたのだとか。それだと残業をしている人の邪魔になるので、今は仕事が終わった社員にはすぐ帰れと言っているそうです。

 このエピソードを聞いた『モンスターハンタークロス』のプロデューサーである小嶋さんが、「なんだかスイマセン」と謝って、客席の笑いを誘っていました。

“ゲームクリエイタートークライブ”

 まず最初は、『ゴッドイーター』シリーズのプロデューサーである富澤さん。富澤さんは朝5時に起きてご家族を仕事に送り出した後、PS4のゲーム配信をチェックしてダウンロードしたり、二度寝したりして、10時に出社しているとのこと。

 以前は富澤さん1人で『ゴッドイーター』のプロジェクト全体をプロデュースしていたそうですが、現在はプロデューサーが3人いるとのこと。今後『ゴッドイーター』というIPを大きく成長させていくために、プロデューサーだけでなくスタッフを増員して、みんなで一緒に動く態勢を作っているのだそうです。

 『モンスターハンタークロス』のプロデューサーである小嶋さんは、7時半ぐらいに起きて9時に出社。『モンスターハンター』の場合は開発現場や宣伝などの打ち合わせだけでなく、他社さんとのコラボレーションも多いので、カプコンに来てもらったり、小嶋さんのほうから出向いていったりして打ち合わせをすることが多いそうです。

 開発現場との打ち合わせでは、「新しいモンスターをプレイしてください」と言われてプレイを始めると、新モンスターが思いっきり強い状態になっているのだそうです。小嶋さんがあっさりやられると開発スタッフがニヤッと笑って、「これから調整しますから」と言われるのだとか。

 その話を聞いた松山さんは、「アクションゲームの開発では、最初は難しくてだんだん易しくしていくことが多い」とコメント。それに対して小嶋さんも、だんだん難しくしていくと、加減がわからなくて収集がつかなくなると語っていました。そのため、わざと手ごわい状態から、プレイヤーが気持ちよさを感じる瞬間をどこにするのかを調整していくそうです。

 『初音ミク Project DIVA Future Tone』のプロデューサーである、大崎さんの起床は朝9時。起床後はとりあえず『艦これ』の遠征の報酬を回収するという、『艦これアーケード』のプロデューサーでもある大崎さんらしいエピソードを披露していました。

“ゲームクリエイタートークライブ”

 大崎さんの出社は朝11時とやや遅めのため、出勤前に自宅の周囲を歩いて、『Ingress』で敵のポータルを“焼いて”いるのだとか。また帰宅後にもやはり『Ingress』のプレイで歩き回っているため、現在は1日トータルで2万歩も歩いているのだそうです。

 大崎さんの場合、開発中のゲームはなるべく“遊ばない”ようにしているとのこと。というのも、大崎さんが開発を行っているアーケードゲームの場合には、オリジナルのUI(ユーザーインターフェース)を作成することが多いため、開発中にプレイして操作に慣れてしまうと、UIのわかりやすさや操作感がチェックできなくなってしまうのだそうです。

 この話題を受けて松山さんは、「UIは本当に大事なものなのに、ゲーム業界にUIアーティストと呼ばれる職種の人はすごく少ない」とコメント。ゲーム業界を目指している人は、そういったゲーム業界で求められている職種を目指せば、うまく入社できるかもしれないと語っていました。

 最後の米村さんは、サイバーコネクトツーのCGアニメーターです。『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』では、敵のバトルモーションを作成したとのこと。

 米村さんが「朝8時に起きて、出社して9時から業務開始して……」と説明すると、松山さんからは「オレと同じやな」というツッコミが。同じ会社で働いているのだから、そりゃそうですよね(笑)。

ゲームクリエイターはやはりゲームにハマる!?

 続いては、“今ハマっていること”というお題です。司会の松山さんは、暇さえあれば漫画を読んでいるとのこと。またアニメや映画、TVドラマもよく観ていて、最近観ているドラマはこちらも漫画が原作ですが、『重版出来!』だそうです。

“ゲームクリエイタートークライブ”

 さて、富澤さんの回答は、なんと“情報リーク”。松山さんは、あなたが止める立場だろうとツッコんでいましたが、富澤さんのお話は、いわゆる情報漏洩とはちょっと違っていました。

 富澤さんのご家族は、TVのニュース番組でリサーチを行う仕事をしており、どんな話題が一般の視聴者にニュース性があるのかを、専門的に考えているとのこと。

 そこで富澤さんは、自分の仕事の話題をご家族に話してみて、ゲームファン以外の人たちにはどんなポイントが興味を持ってもらえるのかという、情報の伝え方を研究しているそうです。

 続いて小嶋さんは“アメコミを見る”と回答。コミックを買ったり映画化やドラマ化された作品を観たりしているそうです。カプコンでは以前からアメコミのキャラクターが活躍するゲームをリリースしていますが、近年は映画などの成功でアメコミがどんどん元気になっているので、日本のコンテンツもがんばってほしいと語っていました。

 大崎さんが今ハマっているものとして挙げたのは、オープンワールドRPGの『Fallout 4』。なかでも、自分の拠点に武器を置いて要塞を建設したり、ニンジンを植えたりできるクラフト要素にハマってしまい、ストーリーが先に進まなくなっているそうです。

 じつは大崎さんのご家族が、以前から農場系のゲームにハマっていて、息子さんは『マインクラフト』にハマっているのだそう。その様子を見ていた大崎さんは、なぜそこまでハマるんだろうと思っていたそうですが、自分が『Fallout 4』をプレイしてよく分かったと語っていました。

 「大崎さんは昔からFPSやミリタリー物が好きだけど、作っているのは『初音ミク』や『艦これ』ですよね?」という松山さんのツッコミに対して、大崎さんからは「こういった作品も、システムの根幹は『バーチャファイター』と同じなんですよ」という意外な話が飛び出しました。

 『バーチャファイター』だとこのフレームで攻撃判定があるといった処理の代わりに、『初音ミク』や『艦これアーケード』ではエフェクトの処理などを行っているので、これまでに培われた開発のノウハウが、しっかりと発揮されているそうです。

 また大崎さんは、人気キャラのIPを使った作品は、ファンの期待が大きいのでがんばって作らなければいけないし、がんばったぶんだけファンからの反応が返ってくる、と語っていました。

“ゲームクリエイタートークライブ”

 次の米村さんは、今ハマっているものとして『ダークソウル3』を挙げていましたが、残念ながらステージの進行が押していたので、詳細はスルーされる結果となりました。

10年後の“マチ★アソビ”には、観客もVRで参加!?

 最後のお題は、“10年後の自分は何をしていると思いますか”というもの。これに対して富澤さんは、“VRの世界にいる。または宇宙にいる”と回答しました。

 10年後にはVRが当たり前になって、ここにいる観客の皆さんのうちの半分ぐらいは、10年後のマチ★アソビにもVRで参加してるはず、と語った富澤さん。それぐらいリアルとバーチャルがガチガチにつながる世の中になった時、自分が何をやればいいのか、今から考えていきたいそうです。

 一方で富澤さんは、自分はバーチャルよりも宇宙やSFの世界にあこがれていたギリギリの世代とも語り、小さい頃からあこがれていた気持ちを、大人になっても持ち続けていたいとのことでした。

“ゲームクリエイタートークライブ”

 小嶋さんの10年後は、ゲームのプロデューサーをしていると思いますがと前置きをしつつ、“ゲームテーマパークの館長”と回答。『モンスターハンター』のイベントでゲームの展示を行ったり、USJとコラボしたりといったことを体験する中で、ゲームをきっかけにしてエンタメというカテゴリでもっと大きなことをやりたいという気持ちが生まれていると語っていました。

 そういった野望を持ちつつも、小嶋さんはもう1つの希望として、“会社に内緒でゲームバーのマスターもやりたい”とコメント。バーは同じ趣味の人が集まるので、そこでの会話が楽しいのだそうです。

 大崎さんは「ドン引きますよ」と前置きしたうえで、“ご家族の実家の家業を継いでるかもしれない”という、驚きの回答を披露。この回答は、松山さんの著書を読んだことがきっかけになっているそうです。

 松山洋さんが昨年出版された新書『熱狂する現場の作り方 サイバーコネクトツー流ゲームクリエイター超十則』を読んで、大崎さんは「同い年の自分はここまでできているのかな」と、大きな衝撃を受けたのだそうです。その話を聞いた松山さんは「もうすでにできていますよ」と、大崎さんに返していました。

 最後の米村さんは、“ド派手なアクションをバンバン作っている”と回答。ところがその回答を見た松山さんは「それは今年やることだ」と、米村さんのスケッチブックを奪って、自ら回答を書き直し始めました。

 改めて出された、米村さんの10年後はこちら。

“ゲームクリエイタートークライブ”

 現社長から部下への愛ある激励が披露されて、会場からは大きな拍手が起こっていました。

 今回のトークライブは、過去のトークとはやや趣向が変わり、ゲーム開発現場のエピソードがよりストレートに伝わってくる内容となっていました。それだけに、これからゲーム業界を目指す人にとっては、特に興味深いものだと思います。

 アニメイベントのイメージが強い“マチ★アソビ”ですが、このようなイベントもありますので、ゲームファンの皆さんもぜひ今後のマチ★アソビに注目してみてください!

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