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2016年6月23日(木)

『ネトゲの嫁』座談会第4回は髙橋龍也氏&雑破業氏&福良P。特別ゲスト・高橋名人の参加で懐かしゲーム談議に?

文:電撃オンライン

 TOKYO MX他各局で好評放送&配信中のTVアニメ『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』。座談会企画の第4回は、本作の文芸方面を担当するお2人&プロデューサーに、ゲームファンにはおなじみの高橋名人をゲストに迎えて、これまでとはひと味(?)違った顔ぶれによる座談会をお届けします。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

 『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』は、聴猫芝居先生が執筆するネットゲームを題材とした、電撃文庫の人気作品です。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

 第4回の座談会には、本作のシリーズ構成を担当した髙橋龍也氏、シナリオの雑破業氏、福良啓プロデューサーに加えて、ゲームつながりということで、なんと“16連射”でおなじみの高橋名人が特別ゲストとして参加してくれました。進行は、電撃オンラインのmeganeが務めます。

 本来は、『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』のお話を中心に伺っていくところだったのですが、初っ端から濃い目のゲームトークに花が咲いてしまっています。しかし、カットするのはもったいないとの判断で、あえてノーカットでお届けしたいと思います。

 もちろん、『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』についてのトークもバッチリ行っています。『ネトゲの嫁』ファンからゲームファンまで、じっくりと読んでみてくださいね。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』
▲写真左から、シナリオの雑破業氏、シリーズ構成の髙橋龍也氏、進行のmegane、高橋名人、プロデューサーの福良啓氏。諸事情により、顔はナイショ。

いちばん遊んでいたネトゲは『FFXI』ですね(髙橋龍也氏)

megane:それでは、まず自己紹介からお願いします。

高橋名人:高橋名人です。高橋名人として皆さんの前に立ったのは、1985年5月3日ですから、今から30年以上も前のことですね。その直前に『チャンピオンシップロードランナー』をプレイするというイベントをやったら、1,000人ぐらい集まったのかな。その前の『バンゲリングベイ』が30~40万本しかいかなくて……。今度は失敗するわけにはいかないと、当時のハドソンの役員が子どもたちの反応を見に来ていましたね。

髙橋龍也氏:30万本で失敗と判断されるのもスゴイですね。今なら大ヒットですけど。

高橋名人:だって『チャンピオンシップ』が120万本だから。それに比べれば失敗ですよ。

雑破氏:僕らとしては、コントローラーのマイクに向かって“ハドソン!”って言うので、むしろ印象に残っている作品ですね。

高橋名人:あれはマイクに音が入ればなんでもよかったんですよ。極端な話、マイクの部分を足の指でこすってガサガサ言わせるだけでもいいんだけど、せっかくだから“ハドソン!”って言わせようと。そうしたら、子どもが音声認識だと思ってくれたんで。

雑破氏:あっ、そうなんですか!

高橋名人:それでイベントが大成功した様子を見ていた役員が、「全国でやったらおもしろいね」と言い出して、ファミコン大会が決まったんです。そこで全国大会を準備する過程で、具体的なルールを決めてこれでいけるかなってチェックするためにやったのが、この5月3日のイベントなんですよ。そこで初めて、高橋名人と名乗るようになりました。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

髙橋龍也氏:『ネトゲの嫁』のシリーズ構成と脚本をやらせていただきました、髙橋です。自分は子どものころからゲームが好きで、小学校時代は駄菓子屋とゲーセンが一体化しているコーナーに、常にたむろしていました。

高橋名人:PTAから“入場禁止”みたいに言われませんでした?

髙橋龍也氏:言われても行っていましたね。それからファミコンブームが来たんですけど、自分たちの時代はゲームセンターのゲームがいちばんハイエンドで、その下にパソコンのゲーム、そしていちばん下に家庭用のゲームがある、みたいなイメージがあったんです。でも、そんなイメージが一気に覆った時期があって、自分は『ドルアーガの塔』でファミコンを買いました。

高橋名人:1985年ですね。

髙橋龍也氏:その後に、ディスクシステムで発売された『ゼルダの伝説』を見て、“ゲームセンターのゲームとは、完全に違う進化をしているんだな”と思うようになりましたね。

高橋名人:ハドソンがファミコンに進出したのも、当時のパソコンが安くても5~6万円はしていた時代に、1万4,800円であれだけできるのはスゴいって理由でしたからね。

髙橋龍也氏:それで大学時代もずっとゲームをやっていたので、ゲーム業界に就職する以外の選択肢がもう、自分にはなくて(笑)。最初はタイトーに就職したんですけど、なかなか思うようにゲームを作らせてもらえなかったので、転職して入社したのが大阪のアクアプラスです。

 そこで『To Heart』など、何作かヒット作を出した後に、自分のゲーム会社を作ったんですけど、そのころにはPCゲームが下降気味になっていきました。そこで、これまでとはちょっと違う仕事をしようと、アニメ業界に入りました。それからもう10年ほど経つので、ゲーム業界にいたのと同じぐらいになりましたね。

megane:この作品で言うところのネトゲ、つまりMMORPGはプレイされていましたか?

髙橋龍也氏:いちばん遊んでいたのは『ファイナルファンタジーXI』ですね。ネットにつながるという意味では、『DOOM』や『ディアブロ』もプレイしていましたけど。その後に、『ファンタシースターオンライン』に思いっきりハマりました。“東京の作家さんやクリエイター陣がみんないる! 世界はつながっている!”みたいな(笑)。その次にハマったのが、『FFXI』です。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

アニメ業界に入る前は、実はゲームを作っていました(福良氏)

megane:続いては雑破業さんの自己紹介をお願いします。

雑破氏:『ネトゲの嫁』で各話シナリオを担当しました雑破と申します。僕はシリーズ構成の髙橋さんと同い年ですが、ゲームといえば最初はダイヤルのついたテニスゲームでした。その後も、歳の離れた兄がいたこともあって、ファミコンブームよりも前にパソコンブームだったんです。

 それで中学生の時に、それまで貯めたお年玉と兄貴の貯金を足して、PC-8801mkIIを買ったんですよ。ディスプレイとかも含めて30~40万円ぐらいしたと思うんですけど、買った半年後にPC-8801mkIISRが出て、超ガッカリしました(笑)。

megane:88mkIIとSR以降では、遊べるゲームの数がかなり違いますからね。

雑破氏:PC-88では、『信長の野望』のいちばん最初の作品とか、RPGだと『夢幻の心臓II』とかを遊んでいました。だから自分にとっての思い出のゲームは、ファミコンよりはPCゲームですね。

megane:福良さんは座談会の第1回にも登場してもらっていますが、改めて自己紹介をお願いします。

福良P:『ネトゲの嫁』のアニメのプロデューサーをやらせていただいている福良です。私も実は、もともとはゲーム業界の人間なんです。

megane:えっ、そうなんですか?

福良P:親にNECのPC-8001という8bitの名機を買ってもらったのが始まりです。まだパソコンじゃなくてマイコンと呼ばれていた時代のマシンです。当時はゲームを買うというよりも、雑誌に掲載されているプログラムを自分で打ち込んで、プログラムの仕方を覚えていく時代だったんです。

 その後にPC-8801mkIISRを買ったんですけど、自分でゲームを作ろうとしてもBASICじゃ動作が遅いので、Z80というマシン語を覚えました。ゲームを作るのが楽しくなり、学生時代にアルバイトで、ファミコン版『ファイアーエムブレム』の下っ端プログラマーをやらせてもらいましたが、それがお金をもらった初めての仕事ですね。

megane:そこからどうしてアニメに携わるようになったんですか?

福良P:卒業後に就職したのが、今いる会社の前身でパイオニアLDCという会社です。そこはゲームとアニメの両方をやっていたので、就職したばかりのころには『天地無用!』などアニメ作品の落ち物パズルやアドベンチャーゲームを作っていました。そのうちに上司から「ゲームができるならアニメもやれ」と言われて、それで今に至ります。

 そういった過去があるからなのか、担当するアニメは『ネトゲの嫁』もそうですけど、ゲームに絡んだものが多いですね。座談会の第1回でお話ししたように、『FFXI』を14年間遊び続けて今でもやっているぐらいネトゲにもハマってましたから、このアニメでも、その経験を生かして担当させてもらっています。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

高橋名人:でも無茶だよね。「ゲームができるならアニメもやれ」と言われても、ぜんぜん違うものだよね。

福良P:その当時は映像メーカーに、ゲームやアニメに詳しい人間が少なかったんですよ。

megane:ちなみに僕は、初めて買ってもらったゲーム機はセガのSG-1000IIです。父親が「ファミコン買ってきたぞ!」というので箱を開けてみたらセガハード……当時のあるあるネタですね(笑)。

 ネトゲのほうはだいぶ後になって、『ディアブロ』『ウルティマオンライン』『FFXI』といった感じです。ここ数年は『ファイナルファンタジーXIV』をやってたんですけど、最近なぜかまた、『FFXI』をやるようになりました。

髙橋龍也氏:『FFXI』は、今はどんな感じですか?

megane:1人でなんでもできるようになってて、パーティを組む必要がないんですよ。復帰してから今まで、パーティを組んだことはありません。目標は、当時中途半端のままやり残していたストーリーミッションをちゃんとクリアすることなんです。

福良P:えっ、どうしてですか?

megane:人が集まらなかったり、アイテムがそろわなかったり、後は心がくじけたりして(笑)。

髙橋龍也氏:自分も何度かあきらめているんですよね。『FFXI』をやりこんでいる福良さんはどうですか?

福良P:ほぼ全部クリアしてますね。1人では無理でも、友だちの力を借りたりして、なんとかクリアできませんでした?

髙橋龍也氏:うちのリンクシェルのメンバーは、ストーリーにあまり興味がなかったんです。それよりもアイテムを集めたい派だったので。

megane:ミッションの場所まで行くのに1時間ぐらいかかって、そこからさらに1時間ぐらいかかった挙句に失敗したとなると、今度は人間関係にヒビが入ってくるんですよ。

髙橋龍也氏:わかります(笑)。

高橋名人:ゲームの中でまで、他人との関係に気を遣わなきゃいけないのはシンドイですよねぇ。

雑破氏:でも当時どっぷりハマっていた福良さんとしては、そのマゾい感じがよかったって感覚はあったんじゃないですか?

福良P:マゾい感じもありますが(笑)、目標をクリアするためにはこういうものを準備して、これとこれをやって……といった、お仕事に近い感じの段取りをしっかり踏んでクリアできた時の喜びと達成感は、なんとも言えないものがありましたね。

雑破氏:みんなで同じことを一緒にやるのが重要だった感じですか?

福良P:そこは本当に人それぞれなんですよ。ソロでずっと冒険する人もいれば、自分のギルドをどんどん大きくすることにやりがいを見つける人もいます。私の場合はリアルの友だちと一緒に遊んでいたので、後で直接会った時に「あの時はスゴかったよね」みたいな話をする、コミュニケーションツールとして使っていたのが良かったと思いますね。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

周りの反応を見て初めて、セリフの“元ネタがあったんだ!”と気づきました(雑破氏)

megane:髙橋龍也さんが担当されたシリーズ構成というのは、どういうお仕事なんでしょうか?

髙橋龍也氏:全体の流れを監督と自分が話し合って、各話の脚本家さん、今回だと雑破さんに発注する立場ですね。各話の担当者はその1本に集中してもらって、作品全体の流れを監督と話しあってコントロールするのが、シリーズ構成の役目です。

雑破氏:そこから私に「この回の脚本を書いてくれ」と話が来ます。

megane:原作の聴猫芝居先生が第9話の脚本を書かれていますよね。これはどういった流れで実現したのでしょうか?

髙橋龍也氏:もともと原作ファンの方に向けて、アニメオリジナルの回を入れようと考えていたんです。聴猫先生がアニメにも積極的に参加してくださっていたので、「それならぜひ、オリジナル回を」とお願いしました。聴猫先生は最初、一脚本家として普通の話を担当したいとおっしゃっていたんですけど、せっかく書いていただけるのならぜひオリジナルを、と。

megane座談会の第2回で、聴猫先生にも参加していただいたんですけど、アニメに関してもすごく楽しそうに参加されていた印象でしたね。

雑破氏:この作品では特に、ネトゲに関してはマニアックなネタが多いので、そこを書かれた本人にチェックしていただけたのはすごく助かりましたね。

高橋名人:オリジナルの回の評判は、どうだったんですか?

髙橋龍也氏:かなり評判がよかったです。

福良P:原作者が自らオリジナルのシナリオを書いてくださった上に、小説の中では出てこないような主人公不在時の気持ちの機微まで表現されていますし。

雑破氏:小説は一人称で書かれているので、主人公の存在は絶対に外せないんです。でも媒体がアニメになることによって、主人公が出てこないとどうなるのか? をお話にできたのは、おもしろかったですね。

髙橋龍也氏:原作ではパロディや元ネタのある言葉がふんだんに盛り込まれているんですけど、アニメだと意識的に抑えめにしていたんです。よりさわやかな方向に振っていたので。でもこのオリジナル回は、しょっぱなから飛ばしていますよね(笑)。そこは原作者である聴猫先生だから許されるところで。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』
『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』
▲原作者の聴猫芝居先生がオリジナル脚本を執筆した第9話は、お風呂シーンがたっぷりと登場するサービス満点の内容だ。

雑破氏:僕自身はネットスラングにはあまり詳しくないので、原作に出てくるセリフをそのまま脚本にも入れていたんです。それが放映されてから周りのリアクションを見て、初めて“元ネタがあったんだ!”と気づいたぐらいですから。

福良P:これ見よがしに入っているわけじゃなくて、普通の会話の中にネットスラングが絶妙に盛り込まれているので、わかる人はクスクス笑えるし、わからない人は普通にお話として楽しめるんですよね。そこがこの原作のスゴいところだと思います。

髙橋龍也氏:話としては自然にわかるんだけど、その中にいったい何パーセントぐらいパロディが盛り込まれているのかを探す楽しみは、昔のゲームの隠しキャラを探す感覚に近いですし、ある意味それがゲーム的と言えるかもしれません。“キミは何個見つけられたかな?”みたいな(笑)。

福良P:『ネトゲの嫁』は、2002年前後に流行したMMORPGで起こった出来事がネタとして盛り込まれていることが多いので、観た人から“懐かしい”って感想もけっこうあるんですよ。ちょっと前のネタをおもしろおかしく取り上げているという、ワンクッション置いている部分があって、それがあざとくない感じになっているのかなと。

雑破氏:ネットスラングにしても、10年間生き残ってきたものだけを使っているので、ある程度は周知されているのかなっていう部分はありますね。

高橋名人:あんまり古すぎると、今度はまたわからなくなるのが難しいですけどね。ポケベルなんて今は、誰も知らないでしょう。

雑破氏:別の作品の現場で「昔、音響カプラというものがあって、電話の受話器にピーピーガーガーって音声を流して通信してたんですよ」っていう話をしてたら、20代ぐらいの人に「その設定はいいですね」って言われて。“フィクション扱いかよ!”って(笑)。

高橋名人:音響カプラなんて、1980年代に使ってたものなのにねぇ……。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

ゲームを好きな人の気持ちが本気でわかるアニメを作りたかったんです(髙橋龍也氏)

megane:本作のシナリオを執筆される上で、注意した点はどういったところだったのでしょうか?

髙橋龍也氏:ゲームのアニメ化って昔からあるじゃないですか。これはあくまで自分の印象なんですけど、アニメの現場の人はゲームのことをあまりわかっていないというか、ゲームとアニメって似ている世界のようで、ぜんぜん違うんじゃないかっていうのがずっとありました。中にはもちろん上手く融合したり、アニメのほうがゲームより有名になっているものもあるんですけど。

雑破氏:アニメとゲームって同じようなものとしてひとまとめにされがちなんですけど、それぞれメディアごとに特性があるので、そこをどう落とし込んでいくかという点は注意しましたね。

髙橋龍也氏:雑破さんもゲームをアニメ化した作品のシリーズ構成をいくつか担当されていますし、その点は安心してお任せしました。

雑破氏:そうですね。美少女ゲーム物が多いですけど。

髙橋龍也氏:自分も『アイドルマスター』とか、ゲーム原作の作品は多いですね。“ゲームは得意だろう”ということでお話が回ってくるのかもしれません(笑)。

高橋名人:アニメの監督にとっては自分の作品でもあるので、原作を活かしつつ、自分の個性も活かしつつというところで、どっちを取るかの問題なんでしょうね。

髙橋龍也氏:原作ゲームとタイトルは同じでも、中身はぜんぜん関係のないことをやっている作品をずっと見てきて“ゲームのアニメ化って、そういうものなんだろうな”という諦めもあったんです。でも、ゲームを好きな人の気持ちが本気でわかる作品ができれば、きっとゲーマーの人たちは喜んでくれると思っていました。なぜなら自分もそう思うので。しっかりと理解あるスタッフが作れば、きっとおもしろいものができるだろうと、ずっと思っていたんです。

 『ネトゲの嫁』に携わるにあたって、プロデューサーの福良さんと監督の柳伸亮さんとお話させていただいたのですが、監督がめちゃめちゃネトゲに詳しかったんですよ。だから柳さんが監督じゃなかったら、聴猫先生に協力していただけなかったら、ここまでゲーム関係のネタを盛り込まなかったでしょうね。もっとストーリーに寄せていたと思います。

 アニメの中に出てくるネトゲは架空のゲームですけど、柳監督はさも実在するかのように、アニメ内ゲームを作り込んでくださいました。なにしろ、ゲーム内に出てくるドットキャラの作画スタッフがいるぐらいですから。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』
『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

福良P:原作だとチャットの会話だけで進んでいくことが多いので、それをアニメでどう映像化するのかといった、メディアの違いが本当に難しかったんですけど、それを髙橋さんたちがいろいろとアイデアを考えてくださって、上手くアニメ化できたんです。

髙橋龍也氏:アカウントハッキングされる回のやり取りも徹底的にこだわって、ゲーマーが見て納得できる感じになっていて。現場のスタッフのみなさんが、1秒とか2秒とかで見過ごすところを細かく作り込んでくれているからこそ、“ちゃんと作っているんだ!”っていうのが伝わると思うんですね。

高橋名人:やっぱり監督さんが、その原作をどこまで愛しているかって、根本にあると思いますね。ゲームの好きな監督さんが、そうやってゲーム画面に凝れば、見ている人にも伝わりますよ。

髙橋龍也氏:柳監督は本当にゲームと一緒に育ってきた世代ですからね。

福良P:そういった意味では、高橋名人の『Bugってハニー』がアニメ化されたころに比べたら、アニメ業界にもゲームの好きな人が爆発的に増えていると思います。

高橋名人:そこへいくと『Bugってハニー』はめちゃくちゃ簡単でしたよね。キャラクターがオレで、飛び跳ねていれば、それでもうオッケーでしたから(笑)。

福良P:逆の話もまたしかりで、昔はアニメのゲーム化も、そっちはそっちで厳しい作品が多かったですよね。

高橋名人:『忍者ハットリくん』は、そういう思い出がありますね。「ハットリくんとケムマキが戦っていくんだぁ~!」という内容の企画書を考えて、原作者の藤子不二雄A先生のところへ企画書を持って行ったんですけど、企画書を渡す前に座談会があったんです。

 その座談会で藤子A先生が、「ケムマキはライバルであって敵じゃないから、手助けしてくれるんですよ」と教えてくださって、企画書を出せなくなってしまいました(笑)。「今日はいいお話をありがとうございました。これを参考にゲームの企画を考えてきます!」と挨拶して、そのまま帰ってきちゃいました(笑)。そんなこともありましたね。

ネット上で結婚に発展したカップルの第1号は、ハドソンの社員という話があるんです(高橋名人)

雑破氏:時代が変わったという話だと、今は親子で同じソーシャルゲームをやってたりするじゃないですか。僕らの時代には、親と一緒に同じゲームを遊ぶなんてことはまずなかったので、なんだか不思議な感じですね。

高橋名人:ファミコンのころも『ボンバーマン』なんかは、親子でやってることが多かったですよ。でもイベントで親子大会をやったのは失敗でしたね。親子2人でチームを組んで、他の親子と対戦するんですけど、子どもにとっては自分以外はみんな敵なんです(笑)。親のほうは自分の子どもを倒せないから、まず最初に親が子どもの餌食になってしまって(笑)。それで結局は、子ども同士の対戦になっちゃって。

福良P:『ドラクエX』を親子でやってるという話も聞くので、ネトゲを親子で遊ぶということもあるでしょうね。

高橋名人:できることならモニターを並べて置いて、親子でしゃべりながら遊んでほしいですね。横の会話をやりながら遊べば、ネット弁慶っていなくなると思うんですよ。

髙橋龍也氏:このアニメはまさに、ネトゲ部を作ってリアルで会話をしながらネトゲを遊ぶことで、なんとかヒロインを更正させようという内容なんですよ。

高橋名人:それはいいですね。とにかく人と話すことに慣れればいいんですよ。そういえば、『ネトゲの嫁』で思い出したんですけど、ネット上でつながって結婚まで進んだカップルの第1号は、昔のハドソンの社員だという話があるんです。ゲームじゃなくて、掲示板での話ですが。

福良P:当時だとNIFTY-Serveですかね?

高橋名人:NIFTYなのか、それともPC-VANなのか。

雑破氏:ネットのゲームで出会って、と言われると不思議な気もしますけど、テニスで出会ってとか、大学のサークルで出会ってとか、同じ趣味を持つ縁だと言われると、違和感はないですよね。

高橋名人:みんなが集まる場所って考えれば、何の不思議もないですよね。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』
『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

髙橋龍也氏:ただ、この手のMMORPGは、ゲーム内のキャラクター同士でも結婚ができるんですよ。ゲーム内での夫婦ごっこが、リアルにまで影響してくる。それがこのアニメのテーマのひとつなんです。

福良P:昔は、ゲームを遊んでいるのはほとんど男性、みたいな偏りがあったんですけど、今は男女ともにゲームを楽しんでいるからこそ、こういった形の出会いも生まれていると思うんですよ。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』
『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

高橋名人:女の子がいなかったら、相手はネカマになりますからね(笑)。ネカマと結婚はさすがに寂しいでしょう。

megane:第2回の座談会でも言ったことではありますが、実はネトゲで接していて、心地いいのはネカマの人なんですよ。ネカマは男の気持ちがわかるので。

雑破氏:あぁ、なるほどね!

megane:男性からすると女性って、よくわからないところがあるじゃないですか。急に機嫌が悪くなったりとか。ネカマの人はそれがないんですよ、だって男性だから(笑)。

髙橋龍也氏:僕も『FFXI』では女性キャラをやってたんですよ。最初は男性キャラを作ったんですけど、ゲーム中はほとんど自分の背中を見てるので、ぜんぜん萌えなくて(笑)。女性キャラだと、服をいろいろ着替えたり、イベントの水着をつけたりもできるし。

福良P:女性キャラのロールプレイもされてたんですか?

髙橋龍也氏:そこは社会人としての“ですます”口調でしたね。「リアルは男女どちらですか?」って聞いてくる人もいたので、「男っすよ」って(笑)。

実は僕自身が、リアル“ネトゲの嫁”なんですよ(megane)

megane:実は僕がこの座談会の司会を担当してきたのには理由がありまして。僕は『FFXI』を通して、リアルの嫁と知り合ったんですよ。

福良P:リアル“ネトゲの嫁”ですね!

髙橋龍也氏:直結厨だ!(笑)

高橋名人:いるじゃないですか、リアルな例が(笑)。どういったきっかけで仲良くなったんですか?

megane:それがちょっと特殊でして、当時は彼女がアメリカに留学していたんですけど、アメリカの『FFXI』のクライアントソフトは日本語が使えなくて、ローマ字で会話してたんですよ。それで「日本語が上手ですね」と話しかけたら、「nihonjin desu(日本人です)」と返ってきて。そうやって仲良くなって、彼女が卒業して日本に帰ってきた時に、LSのグループでオフ会をしたんですよ。

髙橋龍也氏:オフ会で初めて女性とわかったんですか?

megane:その前に本人から女性だとは聞いてはいたんですけど、ネカマ説もありましたね(笑)。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

髙橋龍也氏:ネトゲは主婦の方が多いですよね。男性は昼間になかなかログインできないので。

福良P:「このアニメを見て、妻が“懐かしい”と言っている」という夫の方々の感想をよく聞きます(笑)。

雑破氏:そこでいろいろ調べると、ゲーム内で別の男性キャラと結婚していたという家庭内争議的な話にはならないんですか?

髙橋龍也氏:リアルの夫とは別のキャラと結婚していた女性もいましたよ。まさに「ゲームとリアルは別だ」って話で。周りは夫婦どちらも知ってるので、ヒヤヒヤでしたけど。ゲーム内では明らかにラブラブな空気を出してたので。ちなみに、もし奥さんが別のゲームで他のキャラと結婚したらどう思います?

高橋名人:微妙な問題ですねぇ。

雑破氏:ゲーム内でやってることはすべてロールプレイなのか、それとも、その中でのコミュニケーションは、ゲームを通した人付き合いであって、そこはリアルと同じなのか。

高橋名人:ゲームも生活の一部であるならば、生活の一部で他の相手と結婚するのは不倫かもしれない、ということでしょうね。オレの場合は、そこは自由にさせてほしいなぁ(笑)。リアルではあなたしか見ないから、ゲーム内は別で、という感じで。

髙橋龍也氏:例えばゲームじゃなくて、SNSならどうなるのか。SNS上で匿名同士のコミュニケーションをしていて、「これは私じゃなくてこういう人格だから」と言われて、旦那は納得できるのか。でも、それって納得はできないと思うんですよ。

高橋名人:そういう意味では、完全にリアルを断ち切るのは難しいかもしれないですね。オレはSNSだとしても、リアルで会っていなければいいかなって気持ちが、半分ぐらいはありますよ。実際にそういう場面に出会ったことがないからかもしれないですけど。

福良P:今この場には男性しかいないですけど、女性から見るとまた違うのかもしれないですね。どこまでいくと浮気なのかという“浮気ライン”の設定が。

ヒロインの部屋の中に、視聴者がVRで入れるってどうですか?(高橋名人)

megane:『ネトゲの嫁』のBlu-ray/DVD第1巻が、いよいよ6月23日に発売されますが、第1巻に収録された第1話と第2話で特にオススメしたいポイントはどこですか?

福良P:私としては、声をしっかり聞いてもらえればと思います。たとえばヒロインの亜子は、ともすればイヤな感じがしてしまうところもあるんです。そんな毒を感じさせない演技にするため、日高里菜さんには何度も録り直しをお願いして、かわいく聴きやすい声のバランスにしてもらったんです。ルシアンやアコのかけあいなど会話劇の楽しさを、ぜひ聞いてもらいたいですね。

雑破氏:僕が担当した話数は、第1巻には入っていませんので、僕としては第5話と第8話をプッシュします。2回も最終回を書いた感じがありますね。

髙橋龍也氏:この作品には3話、5話、8話、12話と、全部で4回も最終回がありますから(笑)。

雑破氏:その中でも5話のラストはシナリオだけでなく、絵で心情が伝わらないとグッとこないところなんです。そこを演出を含めてかっちり作り込んでもらえたので、すごくよかったと思います。Blu-rayで何度も見てほしいですね。

髙橋龍也氏:先ほどもお話ししたように、ゲームのことをよくわかっているスタッフが作っているので、ゲーム画面のキャラの動きだとか、そういった細部をじっくり見てほしいですね。第1話と第2話に関して言えば、男性だと思っていたゲーム内のキャラが、実は女の子だったという大ネタも、マジメに作っています。

megane:第1話だと、主人公はプレイヤーを男性だと思っているので、ゲーム内のキャラも男性で描かれているんですよね。

髙橋龍也氏:それがオフ会でプレイヤーが女の子だとわかってからは、2話だと地声でしゃべる時は女性の声で、キャラとしてしゃべる時は男性になったりして、徐々に女性になっていくんですよ。脳内のイメージを擬人化しているというか。そのあたりはスタッフさんが細かく計算して、すごくがんばって作っているので、ぜひ見直してみてください。

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』
『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

福良P:こうした改めて振り返ってみると、ゲームとアニメが歴史を重ねてきた中で、ついにこういった形の作品が生まれてきたという思いがありますね。

髙橋龍也氏:ゲームの中の世界の話でもなく、ゲームの中に入っちゃう話でもなく、ゲームを遊んでいる子たちをメタに描くという意味では、福良さんが言われたように、ゲームとアニメの歴史の積み重ねがあって、初めて生まれてきた作品だと思いますね。

福良P:その意味で、ゲームとアニメの関わり合いの黎明期から活躍されてきた高橋名人と、こういう作品があるんですよという形でお話しできたのは、本当におもしろかったです。逆に高橋名人は、これから未来にこういうアニメがあるといいなといった予想はありますか?

髙橋龍也氏:でっかい無茶振りがきた(笑)。

高橋名人:そういうアイデアを言ったら、僕も声優で使ってくれたりするの?

福良P:それはもちろんですよ。

高橋名人:これからのゲームはどんどんVRになってきて、ゲームの中の空間に入っていくゲームがメインになると思うんです。そうなると、それをアニメ化しても、普通のアニメと変わらないですよね、普通の生活と同じような空間なんだから。

髙橋龍也氏:逆にアニメがVRになって、360度をグルリと見たりできるようになるかもしれないですね。ガンダムのコクピットのシミュレーションみたいに。

高橋名人:じゃあ、最終巻の特典で、ヒロインの部屋の中に視聴者がVRで入れるっていうのはどうです?

髙橋龍也氏:最終巻には入らないと思いますけど、そういうアニメも今後は出てくるかもしれないですね。女の子と一緒に暮らしているような体験ができるとか、アイドルと一緒に踊れるとか。

福良P:そんなふうに今後はどんどん、アニメとゲームが融合していくかもしれませんね。

髙橋龍也氏:そうしたら、みんなで冒険島に行けるかもしれませんよ。みんなでジャンプして。

高橋名人:それは作りたくないなぁ(笑)。

megane:ちょうどオチがついたところで、この座談会も終了です。どうもありがとうございました!

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

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