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2016年8月17日(水)

『ニーア』を彩る音楽が生まれる地“MONACAスタジオ”ツアー。『オートマタ』のヴォーカル曲数は……全部!?

文:タダツグサガコ

 2017年初頭の発売を予定しているPS4用ソフト『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』。前作『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』で熱狂的なファンを獲得したシリーズの最新作に欠かせない要素といえば……それは「音楽である」と答える人は多いのではないでしょうか。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

 『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』はゲームが発売されると同時に、サウンドトラックが大ヒットを記録した経緯があります。

 ゲームサウンドの枠を超え、今なお愛され続ける『ニーア』の音楽の素晴らしさは、某通販サイトにおけるサントラのレビューに燦然と輝く星の数からも、また先日行われたコンサートライブのチケットが瞬殺完売したことからも明白です。

 むしろ、たくさんのファンから好かれすぎていて、愛されすぎていて、それはもうディレクターのヨコオタロウさんが嫉妬を隠しきれないほどなのです。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』
▲先日開催されたコンサートライブ&トークイベントのキービジュアル。そのチケットは瞬く間に完売。『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』を遊んだことこそないものの、サントラだけは購入している……なんて人までいる模様。

 なんとも切なく、もの悲しく、美しくて激しい……そんな『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』の音楽はどこで生まれたのか? そして次回作『ニーア オートマタ』では、どんな楽曲が私たちを迎えてくれるのか?

 今回はその楽曲制作を手掛ける岡部啓一さん、帆足圭吾さんが所属するサウンドクリエイター集団MONACAのスタジオツアーにお呼ばれ! お2人にプロデューサーの齊藤陽介さんを加えた3人に、期待高まる『ニーア オートマタ』の音楽の魅力を迫ります。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』
▲左から本作のプロデューサーである齊藤陽介さん、サウンドを手掛けている岡部啓一さん、帆足圭吾さん。

【インタビューに答えてくれた人】

齊藤陽介さん:『ニーア』シリーズのプロデューサー。意外にも、MONACAのスタジオに来るのがはじめてだったそう。

岡部啓一さん:MONACAの代表であり、『ニーア』シリーズのコンポーザー、サウンドディレクション兼プロデュースを担当。帆足さんのいいところを引き出すディレクションを心がけつつ、演奏者やスタッフを決めて取りまとめたりと『ニーア』サウンドの軸になる。

帆足圭吾さん:ライブではピアノ演奏を担当。『ニーア オートマタ』ではコンポーザー、サウンドディレクターとして本格的に参加。『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』時代はMONACAに入ったばかりで、何もできなかったと本人談。

●サウンドクリエイター集団・MONACAとは?

 岡部啓一さんを主軸とした音楽クリエイター集団。所属に、帆足圭吾さんをはじめ、神前暁さんや高田龍一さん、石濱翔さん、田中秀和さん、広川恵一さん、高橋邦幸さんなど。

 手掛けた作品は多岐にわたり、『THE IDOLM@STER』シリーズ、『アイカツ!』シリーズ、『涼宮ハルヒ』シリーズ、『物語』シリーズ、『太鼓の達人』や『鉄拳』シリーズなど。MONACAは知らないという人でも、きっとどこかでそのサウンドを耳にしているはず。

あの魅力的な音楽はどうやって生まれているのだろう?

 MONACAのスタジオは都内の一角にあるビルの中。プロデューサーの齊藤さんが初めてやってきて「え!? こんなところに本当にあるの!?」と戸惑うような場所にありました。

 メインとなるスタジオはペントハウス風。高い天井が印象的です。壁や天井に吸音材がたくさん設置されていて、部屋の真ん中には大きな作業テーブル。Macにシンセサイザーにギターにピアノにマイクに……と機材だらけ。音楽シロートのサガコのコメントとしましては「なんか、いろいろ壊したら怖いから端っこに座ってますね!!」という環境でございました。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』
▲吹き抜けの部屋に設置された数々のプロ用機材、そしてMONACAが手がけてきた作品群のサウンドトラックたちにまぎれて、ファンの方からプレゼントされたというヨコオさん……じゃなくて、エミールヘッドが!(笑)

 まずは岡部さんに、制作中の『ニーア オートマタ』の楽曲をお聞かせいただきながら楽曲作りのイロハについてを説明していただきましたので、その過程をまとめてみましょう。

岡部啓一(以下、岡部):基本的にこのスタジオに籠もって作業していることが多いです。ヨコオさんから“こういう曲を”とイメージを聞いて、こういう感じかな? と曲を作ってみる。それらをオーディオファイルにして、バージョン別に送ってチェックしてもらうんですね。

 『ニーア』は1つの楽曲に対し、いくつものバージョン違いが用意されているのが特徴的。ストリングスのみやドラム入り、ベース有り、歌唱のあり/なしなど、ゲームのシーンに合わせたアレンジが施されています。

岡部:作った曲をゲームに入れてみたら「あ、もう少しこうしたい」とか要望が出てくるんですね。『ニーア オートマタ』では開発途中で実際のゲームに実装してみて、より細かくていねいに手を加えています。プラチナゲームズさん側と一緒にチェックして修正を入れたりするんです。

 実装してみると「なるほど、こういう場面、こういうシーンか。キャラはこんなふうに動くのか」と演出意図がよりいっそうわかるし、作品の軸がわかるようになる気がしますね。そして一度イメージがつかめれば、仕事はさらに進めやすくなっていきます。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

 デジタルの打ち込みによって作られる曲も多いが、もちろん生の歌声や楽器の音を収録することも多いはず。そういう時はどうしているのでしょうか?

岡部:ストリングスのセクションなど、大掛かりな楽器は外のスタジオで収録し、その音源を持ち帰って足していきます。大半はMacで作りこんで、最終的なミックスはエンジニアさんにお願いするんですよ。

 最近はデータでやりとりができるし、いろんなことがデジタルでできるようになったので、楽器を持ち込んだり、移動させたりせずにできるからずいぶん合理的になりましたね。

 いかに合理的になってきたとはいえ、楽曲を生み出していくうえで人間同士のやりとりは欠かせない……。そんな岡部さんには最近ひとつ、悩みがあるとか……。

岡部:コンピュータを用いての楽曲制作はとても便利ですが、そのぶん楽器を弾く頻度が極端に減ってしまいました。自分の演奏技術の衰えていく危険は常々感じています(苦笑)。

 だけど逆に言えば、楽器が弾けなくても音楽が作れるようになったということでもあるんですよね。これはこれで、素晴らしい時代だなぁと思うことはありますね。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

 そうはいっても、誰もかれもが簡単に楽曲を作れるわけではなく、そこにはプロのテクニックと魂が込められている。ここで帆足さんが担当している楽曲をスタジオに流してみることに。現在公開されているPVで、“歌うボス”戦の曲として使用されている激しい1曲だ。

帆足圭吾(以下、帆足):エミ・エヴァンスさん、中川奈美さん、ジュニーク・ニコールさん、3人の歌姫全員に歌ってもらっている曲です。今回の『ニーア オートマタ』で一番リッチな曲になりそうなんですよ。

 お2人が楽曲制作に用いるソフト“Pro Tools(プロツールス)”の画面で、3人の歌声を重ねたり、単独で聞かせてもらってみたり。同じメロディーラインでも、歌声でまったく印象が異なることに驚き! さらに3人の声を重ねたりすることでまたも印象が変わってくることに驚き!! まるで魔法のようです。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

岡部:僕たちは収録された声をこういうソフトで編集するのですが、たとえば収録した歌声をほんの少し後ろにずらして、“ため”ているように聞かせたりすることもできます。

 『ニーア』で歌をお願いしている皆さんは、大掛かりな編集がほとんど必要ないほど歌がうまいので、そういった微調整がおもな作業ですね。キャラクターの感情があふれるようなシーンであれば、ためて歌うほうがより感情に訴えかけることができるでしょうし、そうではない淡々としたシーンであれば、曲に合わせて歌うほうがいいかな、とか。

 何度も歌ってもらっているので、力強いボーカルのパターンと囁くようなボーカル、ふたつの雰囲気の異なるバージョン違いをつないでみたりもしますね。

 時間の多くを、この編集作業に費やすという岡部さんと帆足さん。細かな細かな、職人芸的な編集を重ねることで、『ニーア』の繊細な楽曲群は生み出されていたのです。

岡部:例えばこうやって中川さんの声をいくつも重ねると、合唱っぽくなったりもするんですよ。ほら。

帆足:荘厳な教会で一斉に歌ってるみたいに聞こえますよね。このような作業を延々と繰り返し、曲は完成へと近づいていきます。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

岡部:最後はトラックダウン→マスタリングの作業が待っています。このマスタリングの作業で、細かいノイズを取り除いたりして、ていねいに磨き上げるといったイメージですね。前の『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』もリマスタリングのチャンスがあれば、やってみたいかなぁ……どうかなぁ。

 不意に苦笑いする岡部さん……何か心残りというか、引っかかっているものがあるのでしょうか。

岡部:心残りというかですね、『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』の曲を作ってた時は、「サントラが出るかどうかもわからないよ」って言われてお仕事をしてたんですよ(笑)。

 そのくらい期待されていなかったというか……まぁ、新規IPならではの手探り感だったんです。なので、『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』では演奏時にノイズが入ってしまっているけど、ボーカルとしてのクオリティが高いと感じたテイクは、直感的に使用していたりするんです。

 微妙なノイズであれば、ゲーム内で認識することはほぼ不可能とのこと。そうであるなら、より精度の高いボーカルをチョイスしようとして使用しているそう。

岡部:ゲームの中でいい音楽にしたい気持ちもあるので、「うーん、どうせサントラが出ないのなら、細かいところは聴こえないわけだし、こっちのトラックを使おう!!」と、大胆にセレクトしてしまってる楽曲も多くてですね。(苦笑)

 『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』のサントラのヒットは個人的にはありがたくもあるけれども「それなら、もっときちんとしておくんだったー!」って部分が多くて……。だから今回の『ニーア オートマタ』については「何があっても対応できます!!」というていねいさで作業しています。

 つまり、今度は大ヒットしても大丈夫ってことですね!

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

帆足さんの生ピアノにうっとりと聞き惚れる夏の午後

 続いて、帆足さんの演奏するピアノ収録を再現していただくことに。突然の演奏のお願いにこころよくOKを出してくれた帆足さん、男前です。

帆足:実際に演奏すると、音がデータになってPCに収録されます。すると、間違ったりしたところを魔法のように修正していけるんですね。

 じつは、目の前で演奏してもらったにもかかわらず、どこにミスが合ったのかさっぱりわからない我々。目を点にしていると……。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

岡部:パッと聞いてわからなくても、データで見ると一目瞭然なんですよ(苦笑)。間違って押しちゃった鍵盤の音がここに見えます。これをポチポチと削除して、音をグリッドに沿って再生すると……ほら、さっきより断然スムーズに聞こえませんか?

 なるほど、たしかに……。

帆足:入力した音を足したり引いたりして、より精度を上げていきます。もちろん生のピアノの音を収録することもありますよ。デジタルとアナログ、両方のよさを状況に応じて使用するんです。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

 続いて、歌録りの再現も。スタジオの一角に吸音材などを立てて、簡易的に収録ブースができあがり! この環境でギターや歌などを撮るそうです。なかには数十万のマイクなどもあり、プロ仕様の機材が目白押し。

岡部:じつは、高い機材だから音がよい……なんて単純なものでもないんですよ。機材にも個性があるので、録るものに合わせて使い分けていますね。ちなみに、このブースでエミさんや、ジュニーク・ニコールさん、中川さんにも歌ってもらっています。

 同じ曲を何度も何度も歌っていただいて、いろんなバージョンを収録しているんです。あとは前作だと、『青い鳥』の男声コーラスなどを僕が自分で歌って収録していたりもします(笑)。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』
▲こちらが組み立て式の楽曲収録用ブース。ただの箱のようにも見えますが、吸音機能はしっかりしているとのこと。

 岡部さんがご自身でコーラスを歌っていた……初めて聞いた事実にビックリです。すると、ここでMONACAの若手クリエイター・瀬尾祥太郎さんが登場。

 合唱の経歴をいかして、今回の『ニーア オートマタ』では男声コーラスで参加とのこと。瀬尾さんがブースに入って発声練習を始めると、途端に場の空気が一変します。な、なんというイケボ……!!

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

岡部:せっかくだから、何か歌ってみようか?

 では瀬尾さん、せっかくなのでちょっと『ハレ晴●ユカイ』を歌っていただいてもいいですか……?

岡部:なぜ、そのチョイスを(笑)。

瀬尾:うーん……♪ あー↓ ♪ あー↑♪ あるぅ晴れーた日のことぉぉぉ♪

帆足:いやいやいや、ホントに歌うんだ(苦笑)。

 ひとつのスタジオで、さまざまな収録工程を見せていただきました。こんな風にして音楽はできあがっていくのだとひたすら興味深く拝見し、ステージで私たちが目にするような派手な側面もありつつも、一方で大変地味な職人作業の積み重ねであることもよくわかりました。

 いずれにしても、そのような細かな作業の大前提に、岡部さんや帆足さんの音楽的センスがまずもってあることは間違いありません。ということでここからは、「『ニーア』シリーズには、岡部さんの音楽が不可欠」と断言するプロデューサーの齊藤陽介さんを交えて、改めて『ニーア』の楽曲についてうかがってみることにしました。

ヨコオタロウが嫉妬してこその『ニーア』サウンド

――先日のコンサートライブでのお話などをお聞きしたところでは、今回は岡部さんのみならず、帆足さんもサウンド面でガッツリと前に出て、楽曲を制作されている印象があります。前作とはかなり作業配分が違うのでしょうか?

岡部:そうですね。7年前の帆足は、仕事としての音楽作りの経験値がほぼない状態だったんですよ。ゲームのシーンに合わせて音楽を作る、という蓄積がほとんどなかったんですね。今は7年前とは違って、よくできる子に育ってくれているので、さまざまな部分を任せています(笑)。

齊藤:そうなんだ? ピアノコンサートでバリバリ弾いてもらっていたから、すっかり熟練の方なのかと思っていました。

帆足:ゲーム音楽製作に携わる前は、アメリカにいてバンドを組んでまして。演奏がメインで、ワゴンに揺られながらライブをする日々を送っていました。

岡部:彼は大人になる多感な時期にアメリカにいたんで、ときどき音楽に、かなり日本人離れしたイラッとしたところを出してくるんですね(笑)。それが『ニーア』と合わない部分もあるんですけど。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

――確かに『ニーア』って、ある意味日本ぽい、奥ゆかしさの音楽な側面がありますよね。豪放なイメージのあるアメリカ的なサウンドとはちょっと違うというか。

岡部:感情表現がとても素直なんですよね。グイグイきすぎのド直球を投げてくるので。それが生かせるパートももちろんありますが、もう少し距離感というか、行間を読んだ曲にしてほしいと注文した部分も多いです。

帆足:最近はだいぶ学ばせてもらいました(笑)。

――なんというか、メジャーリーガー的なんですかね。

岡部:帆足のそういうところがまっすぐ生きる作品もあるんですが、『ニーア』はどちらかというと日本人的な哀愁も感じさせてほしいので、そこらへんのバランスは心がけてほしいなと伝えています。

 一方で『ニーア オートマタ』では前作になかったイメージや雰囲気も打ち出していきたいので、そういった部分には帆足の直球な感性がいかせているようにも思っています。

齊藤:前作とまったく同じものを提供したいわけではない。とはいえ、新しいものも見せていきたい。そう考えた時に、このお2人が軸に立って音楽面を担当していただいていることにはすごく安心感があるし、期待もしています。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

――作業工程としては順調なのでしょうか?

岡部:ほとんどの楽曲について、ラフ段階のものは提出できている状況です。

齊藤:ドイツで開かれるGamescomでは、岡部さんを主役にセッションを行います。だから、そこまでにある程度終わらせておいてねってお願いしてあります。

岡部:目の前にニンジンをぶら下げられていまして……。打算的と思われるかもしれませんが、「あぁ、がんばろう」と(笑)。

――締め切りが前倒しになっちゃった……という考えではなく、ポジティブにとらえたんですね!

岡部:音楽制作って、自分の中で「キタ!!」という感じになるまでが大変なんですよ。1音入れては「……違うな」「やっぱり違うな」をひたすらに繰り返す。そして、時間があればあるほどいいものにしようと繰り返しちゃうんです。「これでいい」というところが、自分ではなかなか判断できない。

 今回はそこに「ドイツに行きますよ」という明確な区切りとご褒美が設置されたので、むしろ制限ができて「キタ!」と思える速度が上がった気がします。なので、猪突猛進で猛烈に巻き返しているところです。ヨコオさんからは「消える直前のロウソクの炎みたい」って言われちゃいましたけど(笑)。

――それはダメですよ、燃え尽きちゃうじゃないですか!

齊藤:燃え尽きられたら困ります。きっと、岡部さんのセッションはドイツの人達も喜んでくれると思っています。やっぱり音楽は『ニーア』シリーズにとってすごく大切な位置を占めているものですからね。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

続編だからこそのしかかるプレッシャーは重く

――新規IPとしてリリースされた前作とは違って、本作は続編にあたるという点で、心がけていることに違いってありますか?

岡部:前作を作っている時には想像していなかったほど、多くの人に聴いていただけて本当にうれしかった。その気持ちは今もすごく大きいです。

齊藤:前作の作業を終えたばかりの頃は、岡部さんは「ゲーム音楽を手掛けるのはこれで最後だ」くらいに言ってたのにね。

岡部:すべて絞り出したんですよ、前作で。ゲーム音楽にはゲーム音楽ならではのおもしろさもあれば、難しさもありますから。しんどいなと思っていた部分も大きくて。だから、こんなに『ニーア』の音楽に注目してもらえるとは思っていませんでした。

 居並ぶスクウェア・エニックスのビッグタイトルとは真逆の自由さで、僕が心底よいと思えるものを作った結果だったので、本当に感激しました。ブランドが大きくなればなるほど、やはり気を遣いがちです。

 今回は期待をされている面が本当に大きいので、のしかかるプレッシャーが重たくて重たくて。考えてしまう部分も多いですね。だからこそ、最初の頃は思うように進まなかったんだと思います。

帆足:『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』の時は、言われたものを一生懸命作っていただけでした。でも、今回はそうはいかない。前作のどこがよかったのか、『ニーア』を好きと言ってくださるファンの方たちに、“何をもって”よいと評価してもらえていたのか。それらを分解して、理解して、うまく配分するにはどうしたらいいのか。そんなことを岡部とよく話しあったりしています。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

――何をもってして『ニーア』か? というのは、命題のひとつになりそうです。いくつか楽曲は発表されていますが、前作をどこまで踏襲していると言える感じでしょうか?

岡部:前作はどちらかというと“オーガニックな手触り”を大事にしたんです。牧歌的というのかな。前作ってファンタジーRPGだと思って遊んでいたら、実は違っていて、最終的にはSF的な作品に落ち着いていったじゃないですか。だから音楽もそれに沿って、音が増えていったり重くなったりしたんです。

 けれども今回の『ニーア オートマタ』では、最初からメカやアンドロイドなどが出てきて、世界観がまったく違うんですね。だからといって、前作からの流れや、ファンの期待をすべて裏切るわけにはいきません。そのあたりのバランス取りを注意しつつ作っていますね。

齊藤:不安だったのが、ヨコオさんが強く持っている“前にやったことをもう1度やりたくない”というこだわりなんですよね。常に新しいこと、ファンのみなさんを驚かせることを重視する人なので。

――ものすごく伝わってきます、そのこだわり(笑)。本作と前作の音楽性でもっともわかりやすく異なる部分として、新たな歌姫の存在があげられるのではないですか?

岡部:そうですね。明確な違いを打ち出すため、今回は新たにジュニーク・ニコールさんに加わっていただきました。

齊藤:最初にデモテープでジュニーク・ニコールさんの歌声を提出された時に、あまりにもソウルフルだったから「これが新しい『ニーア』か!? でも、これって『ニーア』なのか!? 岡部さんもヨコオさんと同じ感じで、新しいことをしでかしにきたか!?」と不安になりました(苦笑)。

 ですが、先日のコンサートでジュニーク・ニコールさんが歌うテーマソングを聞いたとき「ああ、これも間違いなく『ニーア』だ!」と確信できたんです。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

――確かに、あの歌声の力強さは『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』にはなかったものですが、しっかりと『ニーア』らしさを感じさせてくれました。

岡部:『ニーア』には、歌声が入った楽曲が欠かせません。前作はエミさんのカラーがものすごく強く、その歌声は繊細さや透明感を具現化していました。なので、今回は逆の魅力を持ったジュニーク・ニコールさんを推したんです。

 ソウルフルなジュニーク・ニコールさんの歌声に、ニーアの雰囲気をミクスチャすれば、きっといいものになると確信していたんです。推した時には『ニーア』の曲ではなく、ゴスペルの楽曲の歌声だったのでイメージが伝わりづらいかも……とは思ったんですが(苦笑)。

齊藤:結果的に、岡部さんを信じてジュニーク・ニコールさんにお願いできたことは幸運でした。中川さんのライブでの歌声にも、僕は震えましたからね。すさまじい歌唱力をまざまざと見せつけられましたから。

岡部:新しい『ニーア』は、この3人の歌姫の楽曲を軸にサウンドを構成しています。まだ公開されていない曲もたくさんありますので、どうぞお楽しみに。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

――ちなみに、曲数は全部でどれくらいになりそうでしょうか?

帆足:そうですね。さまざまなアレンジを加えることで加速度的に曲数は増えるのですが、ベースとなる楽曲という意味では30~40曲かなと思います。

――前作でもアレンジアルバムなどがたくさん出ましたし、曲のバリエーションの豊富さは他にない味わいですよね。サントラが何枚組になるのか楽しみです(笑)。

岡部:ゲーム内ですでにバージョン違いの曲がたくさんあるので、それらをどんな形でサントラに収録するかは、まだまだこれからですよ。

――ちなみにヴォーカル曲はどのくらいになりそうですか?

岡部:えっと……全部ですね。

――ぜ、ぜんぶ!?

岡部:じつは、前作の時点で“すべての楽曲にボーカルを入れてほしい”とヨコオさんから発注はあったんです。けれど、さすがに全曲に歌を入れるのは無理だろうと判断して、「これはピアノヴァージョンだから、歌が入るとおかしいでしょ?」と説得した経緯がありまして。もうね、説得というよりなだめすかしたというか、かわしたといいますか……(苦笑)。

――となると、本作でもその意向があったと?

岡部:ええ。前作の作業が終わったあと、やり方によってはすべての楽曲にボーカルを入れることも可能かな……と思えるようになりまして。

 たとえば、主旋律はあくまで楽器のみなのですが、うしろで小さくコーラスが入っているだけでも、聴き手が受ける印象が大きく変わりますよね。今回、そういったアレンジを趣向として取り込み、すべての楽曲に声を用いることになったんです。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

――それはイチファンとして楽しみですね。ちなみに、帆足さんの担当された曲数はどれくらいになりますか?

帆足:ごめんなさい。今すぐ正確には数えられないのですが、少なくとも前作から比較するとかなりの楽曲を任せてもらえていますね。

岡部:サウンド制作には、さっき歌ってくれた瀬尾も参加しています。まだお知らせできませんが、彼には独特のアレンジを手掛けてもらったりしているんですよ。具体的には……ゴニョゴニョ。

――な、なんですって? その演出は前作にない仕掛けですねっ!

齊藤:ちょっと岡部さん!? それはまだ言っちゃダメですよ……。ヨコオさんに「ネタバレだ!」って怒られちゃう(苦笑)。

岡部:まぁ、たしかにそうですね……。じゃあここらへんはボカして書いてもらうとして、とにかく、前作にはない試みもたくさん盛り込んでいるということで。ぜひ楽しみにしていてください。もちろん、新たなチャレンジににもすべて、きちんとした意味があります。

――では、楽曲制作を2人で進めるにあたって、衝突したことなどはありましたか?

岡部:初期の頃にした「『ニーア』っぽさってなんぞや?」という話し合いは白熱しましたね。

――おっ、それはおもしろいテーマですね。つまるところ『ニーア』っぽさとは……その結論はなんだったんですか?

岡部:『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』はオーガニックぽくした結果、音の数が極端に少なくなりました。今のJ-POPの流行は、かなり音の数が多く詰まっているわけですが、『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』は時代に逆行するかのように音が少ないぶん、残響音をとても大切にしていました。

 たとえばやまびこみたいにこだまする残響もあれば、お風呂場みたいに少しくぐもって聞こえる残響もあって、それらが折り重なっているものが、『ニーア』という作品の音楽性の軸になっていると考えたんです。音楽的な見地からすると、“残響音がなければ『ニーア』にはならない”ということですね。

齊藤:とても興味深いお話だなぁ。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

岡部:だからこそ、この新しい『ニーア』でも残響音はしっかりと演出として盛り込んでいきたいというイメージが僕の中で明確にあって、それを帆足と共有するため、よく話し合いをしました。

 じつは、今だからこそいえますが、ジュニーク・ニコールさんの歌声はエミさんの歌声とは違いすぎるので、僕の中に不安もあったんです。ちゃんと『ニーア』になってくれるかな? って。

齊藤:そうだったの? あんなに自信満々だったじゃないですか!

岡部:不安というか、手探りだったんですよ(苦笑)。でも、実際に歌を収録して、余韻や残響を意識して編集した時に「あ、これで『ニーア』になった」というふうに再認識できる瞬間があったんです。それで少し自信が持てました。

――なるほど。岡部さんの『ニーア』サウンドへのこだわりは残響音にあり……ってことですね。では、帆足さんが『ニーア』の音楽を作る際に大事にしている部分は?

帆足:岡部の言ったことに加えるとすると、“もの悲しさ”でしょうか。どこかで必ず悲しさを感じさせてくれる物語ですし、それを演出するための音楽ですから。

 僕は仕事に慣れてくると、どうしても音数が増えてしまう傾向にあるんですけど、それを岡部に「音数が多すぎる」と注意されたこともありました。すなわち、もの悲しさがどっかに行っちゃうってことなんですけど(笑)。

岡部:最初のころは「この曲、『アイカツ!』みたいになってるけど?」ってやり取りとかあったよね(笑)。帆足は今どきの感受性を持ったクリエイターなので、音を詰めちゃいがちでして。もちろん、音楽としてはとてもいいんだけど、それは時にキラキラしすぎていたりもするんです。

 そんな時は「『ニーア』はもっとくすんでるんだよ!」と力説してみたりしました(笑)。

帆足:やっと最近、意識してやれるようになってきたかなと。

岡部:そうだね。最終的には、ようやく『ニーア』らしさ、『ニーア』っぽさを共通認識として理解できたなと思っています。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

またライブをどこかで、ぜひやりたい

――3人の歌姫については、それぞれにどんな印象をお持ちですか?

岡部:エミさんは彼女の持っていた今までの音楽性と『ニーア』の世界観ががっちり合っていました。あの不思議な透明感は、エミさんにしか出せない部分。本作でも期待してもらって大丈夫ですよ。

 ジュニーク・ニコールさんはエミさんとは真逆で、声にパワフルさがあって、それを持って『ニーア』の世界に飛び込んでもらったイメージです。

 中川さんは個性的で、歌だけではなく舞台や声優など、多彩な表現力の持ち主です。歌声もバリエーションが広く、声の演出そのものが上手です。「ちょっとムリかも」をやってみてもらってお願いできる。

 先日のコンサートでも、ご覧いただいた方から「中川さんが1人であれだけのバリエーションを出して歌っているとは思っていなかった!」という驚きの声をたくさん耳にしました。三者三様の個性を、うまく引き出していきたいと思っています。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

――前作の曲のアレンジもあるんですよね?

齊藤:絶対的に前作の『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』を好きな人もいらっしゃるので、過去の曲も入れてほしいとお願いしました。これは、僕から音楽的な部分でお願いした唯一の部分ですね。

 新たに抜擢されたジュニーク・ニコールさんはもちろんのこと、エミさんの歌声にもすごく期待しているんだよ……と僕からは伝えていますよ。ちゃんと入ってるかな? 入ってるんだよね!?

岡部:どうでしょう(苦笑)。

齊藤:……なんせ、ヨコオタロウだからなあ(笑)。

岡部:いやいや……先ほども言いましたけど、『ニーア』のサウンドを語るうえで、エミさんの存在はなくてはならないものですから。本作でもものすごく前のめりに参加してくださっていますよ。

――ちなみに、エミさんの未来語もありそうでしょうか?

岡部:どうぞ楽しみにしていてください……とだけお伝えしておきますね。

――ではここで、まだ全曲が公開されたわけではありませんが、岡部さんと帆足さんにお互いが制作した曲の中から、とくに印象に残っている曲を教えていただけないでしょうか。

岡部:帆足の作った曲の中で、僕が印象に残っている曲ってことですよね。となるとやっぱり、先日のE3 2016のプレイ動画にも使われていたボス曲、3人の歌姫が歌う“歌うボス”の曲でしょうかね。ちなみに、楽曲名は全曲いまだ未定です。

――そうなんですね(苦笑)。

岡部:あの曲はそれぞれの歌姫の良さがしっかりと色濃く出ているし、僕から見た帆足のよさ、彼らしさも存分に出ている1曲だと思っています。インパクトも強いし、細部を聞いてもらっても自信を持って世に送り出せる曲ですね。

帆足:最初に“3人の歌唱で”と発注が来た時に、「あんなに毛色の違う3人の声をどうやって組み合わせればいいんだろう」とずいぶん悩みました。試行錯誤はありましたけど結果的に、とても厚みのある曲になりました。

齊藤:あの曲は本当に素晴らしいですよ。物語的にも、ものすごく盛り上がるところで使われていますので、ファンのみなさんもきっと気に入ってくれるのではないかと。

帆足:ありがとうございます! 苦労して制作した甲斐があります(笑)。

岡部:曲に合わせてボスが攻撃してくるという新しい試みにも期待してほしいです。曲がゲームを引き立てるのではなく、ゲームのほうが曲を引き立てて盛り上げてくれるという新しさ。

 通常のゲームサウンドとは真逆のコンセプトで取り上げてもらった感動はなかなか言葉にできないのですが、ファンのみなさんにもぜひ楽しんでいただきたいです。

帆足:岡部が制作した曲のなかで、僕が最も印象に残っているのは、ライブで中川さんが歌ってくれた曲ですかね。

 制作当初“新しい『ニーア』はどうなるんだろう。どうすればいいんだろう”と模索していた時期に岡部が作った曲なのですが、あれを聞いた時に、とても具体的に「なるほど、新しい『ニーア』はこうなるのか」と方向性が見えた気がしました。そういう意味で、僕にとってはマイルストーン的な楽曲に位置づけられています。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

――4月のコンサートでのインパクトも相当のものでした。

齊藤:日本のファンの方に発表するべく、大急ぎでお願いしたライブでしたが、MONACAさんとしてはイヤじゃなかったですか?

帆足:そんなことはありませんよ! 準備にすごく苦労した記憶はありますが、それだってむしろうれしかったし、何より楽しかった。ファンの方たちに直接音楽を届けることができて、終わったあとにはすごく満足感がありました。

岡部:僕らは本来裏方なんです。それがライブとなると、大勢の人の前で表舞台に立たせてもらえる。光栄だけども、普段の仕事と違うので、準備期間中にそこへ意識を持っていかれる側面もありました。だから不安でしたよね。

 『ニーア オートマタ』の作業がね、あの頃はだいぶ遅れてたんです。なのに、齊藤さんからの「大丈夫なの? ホント大丈夫なの?」みたいなプレッシャーはすごかった(苦笑)。

 ただやるとなればきちんとやりたいし、『ニーア』単体のチケット代をいただいてやるイベントは初めてだったので、とにかく成功させたかったんです。とりあえずやるだけやりました、といういい加減な形にはしたくなかった。結果的にお客様に満足していただけたようで、好評の声をたくさんもらえて、本当にやってよかったと思いました。

齊藤:お2人がやってよかったと言ってくれるならば、またぜひやりましょう。個人的に、今度は『ニーア オートマタ』を軸において、ぜひやりたいと思っていますよ。

岡部:我々としては本当に望むところですよ! ぜひお願いします。

――実現の暁には、より多くのファンの方が生で楽しめるようなホール探しからになりますね。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

齊藤:前回は私とヨコオさんの見込みが甘く、キャパ的に小さすぎたようでファンのみなさんにはご迷惑をおかけしましたからね……。ただ、ホールを押さえるのってかなり大変なんですよ? それこそ、ゲーム発売直後にやろうとするならば、今から探し始めるくらいじゃないと……。

――なるほど。でも、そんなお言葉が齊藤さんの口から飛び出すってことは、発売はそう遠くないって感じですかね?

齊藤:うーん、どうだろう……。こればかりはわからないですよ。ヨコオタロウのみぞ知るってところでしょう(苦笑)。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

――完成を楽しみにしています。それでは最後にひと言ずつ、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

帆足:前作から期待していただいている方にも、新しいユーザーの方にもいいものだなと言ってもらえるように、一生懸命頑張っている最中です。精一杯やっていきますのでよろしくお願いします!

岡部:ヨコオさんの“ファンを裏切ってナンボ”なコンセプトを不安に思ってらっしゃる方も多いかもしれませんが(笑)、僕としては今回の音楽には、“裏切り”というよりも“こう来たか”と思ってもらえるような工夫をこらしているつもりです。

 シリーズの続編を作るうえで「こういうのがお望みでしょう?」っていうのがあまりにも慢性化すると、テンプレート化してコンテンツの魅力がなくなってしまうことも多いと思います。だから期待されていることとは別のラインで、新しい『ニーア』のために、今の我々ができる新しい提案をしてみました。

 それが受け入れられるかどうかは別として、まずは新しい『ニーア』の魅力を求めて作った曲をぜひ聞いていただきたいなと。ゲームと合わさって、きっといいものになると思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。

齊藤:ヨコオさんが嫉妬するほどいい音楽……これが『ニーア』シリーズの大きな魅力のひとつなんじゃないかと思っています。けれど、今回の『ニーア オートマタ』では、そんな嫉妬のヨコオさんをはじめ開発のメンバー全員が、この岡部さんと帆足さんの音楽に負けないようないいゲームを生み出そうと全力を尽くしています。

 そこに生じる期待値は、前作の比ではありません。必ずいいものになると思いますので、今後も『ニーア オートマタ』にぜひ期待していてください。

――本日はありがとうございました!

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』

3月31日に攻略設定資料集が発売。キャラ&ストーリー解説やヨコオタロウ氏による短編小説なども収録!

 本作の攻略情報と設定資料を収録した『NieR:Automata Strategy Guide ニーア オートマタ 攻略設定資料集 ≪第243次降下作戦指令書≫』を3月31日に発売します。価格は2,500円+税。仕様はB5判・304ページとなっています。

 やり込みに役立つ攻略データに加え、ネタバレ注意のキャラクター&ストーリー解説も収録!

 ディレクター・ヨコオタロウさんによる短篇小説、小説家・映島巡さんによる書き下ろし小説2篇も読める『NieR:Automata』ファン必携の1冊です。

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