2016年8月17日(水)
アトラスから8月4日に発売された3DS用ソフト『世界樹の迷宮V 長き神話の果て』。
日がな一日ダンジョンに潜り、地図を描き、不意打ちを受けてモンスターに全滅させられたりと、みなさんも楽しい冒険者ライフを満喫されている頃ではないでしょうか。
今回は、『世界樹の迷宮V』のディレクター・小森成雄氏とアートディレクター・笹津啓志氏へのインタビューをお届けします。本作の見どころや、シリーズを支えてくれるファンの方々への熱い想いなどを語っていただきました。一字一句、お見逃しなく!
なお、8月20日に発売される電撃Nintendo10月号では、今回のインタビューの全文が掲載されます。そちらも要チェックですよ!
●小森成雄(こもり・しげお)
『世界樹の迷宮V』のディレクター。『世界樹の迷宮I~III』、『新・世界樹の迷宮1~2』、『ノーラと刻の工房』、『世界樹と不思議のダンジョン』などに携わってきた。
●笹津啓志(ささづ・ひろし)
『III』と『IV』の開発に携わった後、本作も含め、『新・世界樹1』以降のシリーズ作品でアートディレクターを務める。
――まずは、『世界樹V』の見どころや、制作にあたってのこだわりからお聞かせください。
小森:立場上、僕は「見どころは全部です!」と言わなければならないんですが(笑)……そのなかで1つあげるとするなら、新要素“アドベンチャーエピソード”でしょうか。
以前から言っていることですが、『世界樹』シリーズはテーブルトークRPGを意識しています。モンスターとの戦闘以外で、キャラクターたちが樹海のなかでどんな出来事に巻き込まれるのか、プレイヤーが想像しやすいようにイベントを配置しました。
笹津:小森と同様、デザイン側もプレイヤーのみなさんに“想像すること”を楽しんでいただきたいと思い、情報の提示の仕方を今までと変えました。
初報としてワールドマップを公開し、新しい世界で冒険が始まることを強く印象づけよう、と。ワールドマップは開発の最も初期に描かれたもので、ここから中身のイメージを膨らませていきました。そういう意味では、開発スタッフも“想像すること”を楽しんで作ったタイトルといえるかもしれません。
――ワールドマップはどなたが描かれたのですか?
笹津:ラフ絵は僕が描きました。開発が始まったばかりのころ、小森とキャラクターデザインの日向悠二さんが今回の世界観を設定したんです。どんな種族が住んでいるのか、どんな土地があるのか……などなど。
それを聞きながらラフ絵を描いて、それに対して小森たち関係スタッフにアイディアを足してもらったあと、株式会社バンブーさんに仕上げていただきました。
僕らは背景美術を描くことに関しては専門ではないので、どうしても設定の甘いところがあったんですが、バンブーさんはそこを補強してくださいました。
ただ、今回は世界樹をきちんと見せたいという思いがあったので、いくつかはデザインを重視して進めていただいた部分もあります。
――たとえばどの絵でしょうか?
笹津:例としては、七つ丘の都に張った世界樹の根です。今回の世界は世界樹を中心として構成されているので、いたるところに根が張っているんです。現実世界ではありえないビジュアルですよね。
これまでのナンバリングタイトルの美術設定画は、どちらかというと現実的なものが多かったんですけど、今回は“魔法”や“アンデッド”といったファンタジー色の強い要素が世界観に盛り込まれているので、それを背景に反映させています。
――魔法やアンデッドを盛り込んだ理由とは?
小森:最初に、新しい世界での新しい冒険をプレイヤーのみなさんに提供しよう、という意図がありました。これまでのシリーズのコアなファンの皆さんほど、魔法やアンデッドが存在することに敏感に反応してくれるだろうと思いましたので、そういう要素をわざと出して。種族を入れたり、月が2つあるのもそんな仕掛けの一環ですね。
シリーズファンのみなさんって、想像することがとても得意なんですよね。一枚の絵に対して、すごく想像を膨らませていただける。今回も世界観に対していろいろ想像してほしいなと思ったので、要素を足していった感じです。
――種族を追加した経緯について、お聞かせください。
小森:キャラクターメイクのときに種族を選ぶっていうのは、ダンジョンRPGではお約束ともいえる要素ですよね。ある程度このジャンルを遊ばれてきた方であれば懐かしさがあり、逆に『世界樹』しかやってきていない方であればちょっと新しい。種族が追加されることでゲームがどう変化するんだろう、と想像していただきたかったというのが、1つの理由です。
それから、シリーズが長く続いてきて、職業のアイディアを出すのになかなかに苦労するので、新しい要素を追加すれば、みんなの気持ちも変化するんじゃないかなという理由もあります(笑)。
――今回はフェンサーをはじめ、10の職業が登場しますが、ボツになった職業などはあるのでしょうか?
笹津:マップを描く職業やコックがいましたね。
小森:マッパーだっけ? オートマッピングしてくれる職業として考えたんですが、1つの職業として立たせるのは難しくて見送りました。今、振り返ってみると、非戦闘職が1つくらいあっても良かったかもしれませんね。
コックは、『II』のころから入れたいと言い続けていたんですが、いつも入らないんですよ(笑)。
――これまでのシリーズでも料理の要素が盛り込まれていましたが、小森さんのなかで何かこだわりがあるのでしょうか?
小森:テーブルトークRPGの話題に通じますけど、ゲームでキャラクターたちの生活感が感じ取れる要素を表現したいとつねづね考えているんですが、その1つとしてわかりやすいのが食事なんです。
笹津:『III』ではキャンプができたりしましたが、ダンジョン内での生活って妄想を膨らませられる要素ですよね。プランナーは毎回四苦八苦されているんでしょうけども(苦笑)。
――今回の調理のシステムは、最初から今のような形だったのでしょうか?
小森:最初はもっとシンプルでした。というよりも、アドベンチャーエピソードの1つだったんですよ。ダンジョン内で何かがあって魚を釣るとかイノシシを捕まえるとか。
これまでも木の実がなっていて食べる、といった小さなイベントはありましたけれど、『V』ではアイテムが手に入るなど、もう少しいいことがあるイベントを作ろうと思っていました。
ところが、作っていくうちに“たき火で焼いたら効果が上がる”とか内容がエスカレートしていって、イベントのなかに微妙にシステムっぽい要素が成立してしまっていたんです。これはルール化しなければいけないかなと思い、現状の形になりました。
――今回の特徴的なシステムというと、達人スキル(二つ名)がありますが、これが生まれた経緯についてお聞かせください。
小森:明確にルール化しているつもりではないのですが、『世界樹』シリーズは2作品ごとにシステムを変えているんです。
『III』と『IV』ではサブクラスがあって、『新・世界樹1』と『同2』ではグリモアがありましたよね。1回新しいシステムを作ったら、続編でそれをブラッシュアップして遊びやすくしているんですけど、3回、4回と続けたら飽きられてしまうのではないかと考えていまして。そこで今回は達人スキルを盛り込みました。
――これまでのシステムと達人スキルとの違いを言い表すならばなんでしょう?
小森:ひとことで言えば、“先鋭化”です。サブクラスやグリモアではキャラクターのできることを増やしましたが、達人スキルは1つのことに特化していく成長をします。
最初は、開発スタッフのなかでは達人スキルではなくて“上級職”という呼ばれ方をしていたことからも、それが伝わるのではないかと思います。
実は、サブクラスを入れようと悩んでいた時期もあるのですが、スキルの内容を考えていく過程で、尖らせていったほうが面白いんじゃないかという考えにたどり着き、そのタイミングでサブスキルはやめました。
利便性で考えると、サブクラスがあったほうがいいと思うのですが、ないなかでの試行錯誤をしてもらいたいと考えています。
――実際にプレイさせていただいて、戦闘のバランスはこれまでよりも若干易しいかな、と感じたのですが、これは意図的なものでしょうか?
小森:最初からそうしようと思っていたわけではなくて、作りながらすごく悩みました。ユーザーの皆さんは尖ったバランスを望んでいるんじゃないかと思っている部分もありまして。
ただ、ずっと『世界樹』を作ってきているせいか、僕らが考える“難しい難易度”がユーザーの皆さんにどう受け取られるのか、判断に苦しむ部分もあるんです。
今回から入ったスタッフにテストプレイしてもらうと「難しすぎますよ!?」と言われて調整し直したこともあります。本当に最後まで試行錯誤でした。
エンディングまでであればどんな編成でも到達できるように調整しましたので、最初は第一印象で気に入った編成でプレイしていただくのがいちばんだと思います。
――『III』や『IV』にあったフィールド探索をなくした理由についてお聞かせください。
小森:最初は作ろうかどうか悩んだんです。ただ、過去作のアンケートや感想を見ていると、多くの方から“メインダンジョンのボリュームがほしい”といわれていたんですよ。
笹津:『IV』ではかなりの数の小迷宮があったのですが、メインダンジョンが階層ごとに3フロアということで、ダンジョンの数が減ったと捉えられてしまったのかもしれません。
小森:そういった感想を受けて、地図を描いてダンジョンを探索するという本来の遊び方に特化させようとシンプルに考えました。
――シリーズも長く続いてきて、ダンジョンの構造やギミックのネタ出しは毎回苦労されるのではないですか?
小森:それはもう、『II』の頃からダンジョン担当は「もうネタ切れですよ?」と言っていますね(苦笑)。
ダンジョンは、僕も含めてプランナーが何人か集まって「こんな遊びを入れよう」というブレインストーミングを行ってある程度の方向性を決めたら、背景を作るデザイナーですとか、関係各位を集めて全員でその遊びが遊びやすいかとかわかりやすいか、表現できるのかの検討をします。
ダンジョンを探索するゲームですから、ここは全員作業ですね。
――最後に、読者に向けてひとことお願いします。
笹津:今回は燃え尽きるくらい頑張って、すべてを出し切りました。ぜひ楽しんで、感想をいただければと思います。
小森:『V』は世界をあたらしくしましたので、これまでシリーズをプレイしたことのない方でも遊びやすくなっています。体験版も配信していますので気になる方はぜひ手を伸ばしてみて下さい。
そしてすでに製品版をプレイしてくださっている方、今作の後半のダンジョンはかなり遊び応えのあるギミックを用意していますので、楽しんで頂ければ嬉しく思います。
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