2016年8月30日(火)
自分の周囲すべてがゲーム画面に変わるVRデバイス。その1つOculus Rift向けにコロプラからロボット対戦格闘『STEEL COMBAT』がリリースされました。開発はこれまでに格闘ゲームを作ってきたエイティングが担当しています。
ですが、VRならではの対戦格闘というとどんなものなのか想像しにくいという人もいるでしょう。
そこで、この記事では実際に本作をプレイしてわかったシステムや感想をレポート。さらに、開発スタッフさんへのインタビューも掲載します。
ヘッドマウントディスプレイをかぶると、目の前に広がるのは仮想現実という名にふさわしいサイバーな雰囲気ただよう空間。
やはりVRは没入感が違いますね。画面内に見えている世界はゲーム内の空間でありながら、奥行など脳に入り込んで来る情報は現実と大差なし。映像と頭で理解していても、頭の別なところが“これは現実だよ”と訴えかけてくるようでした。
さて、本作の舞台ですが円筒型の空間がありその中央に立っているのが自分といった構造。そして円筒の外周部にステージがあるという構造になっています。ただし、ステージは完全な円形ではなく壁があることで一部が封印されており、この壁がいわゆる画面端ですね。
ここで戦いを繰り広げるのが、自律型ロボット“VR(Voluntary Ranger)”。普通ならここで(以下、VR)と書くところですが Virtual RealityとVoluntary Rangerがごちゃごちゃになりそうなので、わかりやすくロボットと呼称します。
このロボットの迫力がすごいんですよ。とくに登場シーンや勝ちポーズでプレイヤーの目の前まで来るというのはVRでしかできない演出! 決めポーズを取る際に振り上げた拳が自分に当たりそうで思わず「おおっ」とのけぞってしまいました(笑)。
ほかにも投げ技を決めたときに相手ロボットが画面手前(=自分の目の前)に飛んできたりして、今までの対戦格闘の演出とはまるで異なるものを感じました。
そんな本作、VR用タイトルということもありロボットたちは3Dで描かれていますが、システムは2D対戦格闘がベースです。
基本となるアクションは弱攻撃、中攻撃、強攻撃の3種類。攻撃が相手に当たった場合、弱攻撃>中攻撃>強攻撃といったようにより威力の高い攻撃にスムーズにつなぐことができます。
さらにレバー入力しながら各種攻撃ボタンを押すと、通常とは性能の異なる特殊技を繰り出せます。この特殊技、ヒットした相手を浮かせるものやしゃがみガード不能なものなどさまざま。通常技の連携からキャンセルして繰り出すこともできるので強力なコンボを狙ったり、攻めている最中に相手のガードを崩したりといったことも可能です。
また、必殺技や超必殺技、それに投げといった2D対戦格闘ではおなじみのアクションも用意。必殺技は専用のボタン1つで繰り出せるほか、レバー入力との組み合わせで繰り出せるものもあります。
こういった各種アクションを組み合わせると弱攻撃>中攻撃>強攻撃>特殊技>必殺技>超必殺技というような対戦格闘に触れたことがある人ならおなじみのコンボが可能。とにかくどこもかしこも基本は2D対戦格闘です。
ただ、ここまでを読んで「映像がすごいだけの2D対戦格闘じゃない?」と思った人もいるでしょう。大丈夫、本作にはVRならではの仕掛けが用意されています。
一般的な対戦格闘ですとステージの広さに関係なく、お互いのキャラクターが画面に収まる位置までしか距離を取れませんよね。多くの対戦格闘ではいくらジャンプしても、キャラクターが画面内に収まるように調整されています。こういった制限がないのが本作の大きな特徴。
相手が画面におさまらないほど距離を取って遠距離戦を行うこともできますし、2段ジャンプを行えば地上が見えないほどの高さまで跳び上がれます。そういった、画面の制限なく動くキャラクターを視界に収めながら戦うというのがVRならでは。
例えば、自分からはるか遠くに離れたキャラクターがなにをしているか確認したければ、実際に相手キャラクターの方を向けばOK。上に視点を移せば、上空から攻めてくる相手の行動も確認できます。
遠く離れたキャラクターに視点を移せば、自分のキャラクターは見えなくなりますがそれこそ本作独自の立ち回りや読み合いに重要なポイントになりそうです。上空へ移動して相手が視点を移す前に攻めてガードを揺さぶるなど、他の対戦格闘では起こりえない楽しさがありますよ。
ちなみに、各キャラクターには近距離戦用と遠距離戦用、2つのモードが存在。遠距離戦用のモードになるとガードが行えない代わりに弱~強攻撃はすべて射撃に変わります。ですので、どれだけ距離が離れようとつねに気の抜けない戦いが楽しめますよ。
もちろん、こういったロボットの動きを練習できるようにトレーニングモードも完備。このトレーニングモード、お互いの体力状況や超必殺技に使うゲージ量、さらに立ちやしゃがみといった相手の状態など、トレーニングモードにほしいと思うものはすべて搭載されているといっても過言ではありません。
なかでも注目なのが、こちらの行動に対して最速で相手が反撃を行うリバーサル関係。相手キャラクターにリバーサルを行わせたい場合は、まず実際に技を出したりコマンド入力を行ったりして相手のアクションを登録。
そして“相手がリバーサルを行うか”という設定をONにするだけです。この登録を行うと、相手をのけぞらせてもダウンさせても攻撃をガードさせても常にリバーサルで反撃を行うように。
さらに、相手キャラクターのアクションを登録する際に“左に1秒歩いて、右に1秒歩いて、それから必殺技”という入力を行ったとしますよね。こんなリバーサルに関してはムダの多い入力を行っても、相手がリバーサルで行うのは必殺技の部分だけ。
例えが極端でしたが、登録時に少しだけ長いレバー入力を行ってしまったとしてもそれを自動でカットしてくれると言えば普段対戦格闘をプレイしている人には便利さが伝わると思います。
このように本作は、2D対戦格闘をベースにVRならではの視界を利用した読み合いなどが楽しめ、さらにトレーニングモードの例で見るように妥協なくシステムが作られているタイトルなのです。
さて、あまりに作り込まれていて正直驚いた本作。どのような形で作られていったのか、開発スタッフであるコロプラのヨッシーさん、エイティングの徳田拓さんにインタビューをさせてもらいました。
※インタビュー中は敬略称。
――本作の制作に至った経緯を教えてください。
ヨッシー:以前コロプラからリリースしたソーシャルゲームに『バトロボ!』というロボットを使った格闘アクションがありまして、それをVRで作ったらどうなるのかという提案があったのがきっかけですね。
最初は数人で制作していたのですが、よいものができそうだという結論に至り本格的な開発が始まりました。ですが、我々には時間とノウハウの都合上しっかりとした対戦格闘を作るのは厳しいものがありました。そこで実績のあるエイティングさんに依頼をさせていただいたというしだいです。
――エイティングさんはお話を受けたとき、どのように回答されたのでしょう?
徳田:エイティングではVRを用いたタイトルを作ったことがなかったので、いろいろ試行錯誤することにはなるだろうとは思いましたね。ですが、それ以上に作ってみたいという気持ちが強かったので「ぜひ、やりたい」と即決断しました。
――制作時に苦労した点や工夫した点は?
ヨッシー:VRで対戦格闘というと、一人称視点でハデなアクションを楽しむというイメージが強いと思います。当初は本作も一人称視点のゲームとして制作していました。ですが、一人称視点では対戦格闘で重要となる間合いがわかりにくいんですよ。
さらに対戦格闘でよくあるカメラが急に切り替わったりズームしたりといった演出。こちらもVRとは相性がイマイチで3D酔いを招いてしまいます。
こういった対戦格闘としての楽しさと、VRらしさを考えながら何時間でも遊べる対戦格闘を作るという点に苦労しました。
徳田:正直一人称視点で対戦格闘を作るとゲームにするのが厳しく、対戦格闘としてユーザーが望むものにはなりませんでした。逆にキャラクターを横から見るいわゆる2D対戦格闘の視点のゲームにしようと決めてからは、開発はスムーズに進みましたね。
ただ、ヨッシーさんも話していたとおりVRではカメラの切り替えをすると、ユーザーさんの負担になってしまいます。ですからVRならではの演出を作るという点には少々時間がかかりましたね。
――システムのベースを3D対戦格闘ではなく2D対戦格闘にした理由は?
徳田:3D対戦格闘では軸移動や横移動と呼ばれるアクションで、相手との位置を調整することがあります。一般的な3D対戦格闘では、この軸の変化に合わせてカメラも移動しますよね。ですがVRで同じようにカメラを動かすと、3D酔いにつながってしまうのですよ。
かといって軸がずれたときにカメラを動かさなければ、最終的に片方のキャラクターがまったく見えないアングルになってしまいます。この問題を解決する手段はあると思うのですが、そこを検証するよりも2Dでよいものができると感じたので、2D対戦格闘をベースにしました。
ヨッシー:3D酔いのしやすさいは個人差があるのですが、酔うという体験をした人はもう二度と遊んでくれません。本作は完全な新規タイトルですから、より多くの人により長い時間遊んでほしいです。そのためいかに酔わないようにするかには力を入れましたね。
――ロボットに近距離モードと遠距離モードを搭載した理由は?
ヨッシー:本作の登場キャラクターはすべてロボットです。しかもいかにもミサイルなどの兵器を使いそうな。そういったビジュアル面の理由から「せっかくだからいろいろ撃たせたい」と搭載した経緯があります。
また、システム的な面で見ると本作は自分の周囲ほぼ360°に広がるステージを自由に動き回れるのが特徴。当然既存の対戦格闘にはないほど距離を取ることもできます。そういったシチュエーションでいっさい攻撃手段がないのはおもしろくないというのが搭載理由ですね。
徳田:VR的な表現として、視覚外から弾が飛んでくるというのはおもしろいものです。個々のキャラクターが撃つ弾にバリエーションがあればなおさら。そう考えると、遠距離用の技というものを複数作る必要がありました。
ですが、本作に複雑なコマンド入力は設けたくない。その結果としてモードを切り替えることで近距離用と遠距離用の技を切り替えられるという仕組みにしました。
――ステージを完全な円形ではなく、あえて画面端を設けたのはなぜでしょう?
徳田:本作の開発当初はステージに画面端を設けていませんでした。ですが、そうすると機動力の高いキャラクターは一方向に移動し続けるだけで逃げ続けられてしまうんですよ。
そうすると、相手はひたすら追いかけることになる。そうやってぐるぐるステージを回りながらプレイヤーも一方向に回転してキャラクターを追いかけていると、Oculus Riftのコードが身体に巻き付いてしまうんです。
自分の目でキャラクターを追わなければいけないという手間もVRを使ったゲームの良さだと感じていますが、かといってコードに締め付けられてほしいわけではありません。
現状VRデバイスはコードレスでは遊べませんので、画面端を設けてプレイヤーが回転し続けることを避けたというしだいです。
ヨッシー:あと、バトル中にステージのサイズを変える手段も用意しています。1つは相手にラウンドを取られたとき。こちらはステージサイズの拡大もしくは縮小が行え、負けた側が次の試合では有利な戦場で戦えるようにするというものです。
徳田:もう1つは、タイムが残りわずかになったときに強制的にステージのサイズが最も狭いものになるようにしています。こちらはちょっとしたペナルティですね。本作はタイムが非常にゆっくり経過するため基本的にタイムアップで試合が決着することはありません。
つまり、タイムアップギリギリになるということはひたすら逃げ続けるなど“対戦格闘をしていない”プレイをどちらかが行ったということになります。ですから、そこにリスクを負わせようという試みです。
――普段対戦格闘をプレイしていない人が本作を遊ぶ場合、オススメのロボットはいますか?
徳田:ロックアップというパワーキャラですね。ロックアップは例外的に投げ技以外でも、相手を画面手前や奥に吹き飛ばすVR的な演出を盛り込んでいます。ですから単純にVRのゲームとして本作を楽しみたい人にもオススメです。また、パワーキャラということもあり攻撃1発1発の威力が高く体力も多め。そういった意味でも初心者向けでしょう。
――逆に対戦格闘好きにオススメのロボットは?
徳田:オススメというわけではないのですが、1体だけ上半身と下半身を分離させて戦える戦車型のキャラクターがいます。イロモノではありますが、そのぶんほかのキャラクターにはできない立ち回りが可能ですのでぜひこのキャラクターで成果を挙げてほしいですね。
もう1体挙げるとしたら投げ技を主体にしたロボット。このロボットは重力を操れるのが特徴で、相手を飛べなくしたりこちらに引き寄せたりできます。ですから今まで投げキャラで虐げられてきた人にはぜひ触ってほしいですね!
――最後にユーザーさんにひとことお願いします。
徳田:本作は2D対戦格闘をプレイしている人にとって、非常にわかりやすいシステムを設けています。トレーニングモードも力が入っているのでぜひ遊んでください。
また難しいコマンド入力を避けるなど対戦格闘をプレイしていない人にとっても遊びやすくしていますので、本作で対戦格闘デビューをしたいという人も大歓迎です!!
ヨッシー:完全新作でVRで対戦格闘。本作ではいろいろなチャレンジをしました。その結果、対戦格闘ファンもVRに興味のある人もどちらも楽しめる作品になったと思います。
オンライン対戦も用意してありますので、自信のある人はぜひ本作のトッププレイヤーを目指してください。
また「対戦はちょっと……」という人には“観戦モード”がオススメです。これはほかのプレイヤーの対戦を観戦しながら、ステージ上の好きな場所を見られるモードです。
形こそ異なりますが、どんな人でも対戦を楽しめるようになっています。
最後になりますが、完全新作でしかもVRという場でありながら、ここまで完成度が高いものができあがるのか!! というのが本作への率直な感想。自分のキャラクターと相手のキャラクターを同時に見失って、起き上がりを攻められるというVRでしか体験できないようなシーンにも出会いました。
VR自体がゲームの未来の形の1つと考えると、将来「対戦格闘なのにVRじゃないとかありえないよね」と当たり前のように話される未来が来るかもしれません(笑)。
どんなプレイヤーも必ず新しい体験ができますので、ぜひ本作をプレイしてみてください。
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