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2016年12月1日(木)

『バイオハザード7』開発が目指したものは“素うどん”!? シリーズらしい達成感を存分に味わえる

文:Z佐藤

 カプコンから、2017年1月26日に発売されるPS4/XboxOne/PC用ソフト『バイオハザード7 レジデント イービル』。本作の開発者インタビューを掲載する。

『バイオハザード7 レジデント イービル』

 『バイオハザード7』は“恐怖”に焦点を当てて開発されたシリーズ最新作。写実的なグラフィック表現、主観視点でのゲームプレイにより、これまでにない没入感を実現している。また、PlayStation VRに完全対応していることも話題となった。

『バイオハザード7 レジデント イービル』

 これまでにないプロモーションやゲーム内容などから、さまざまな話題を起こしている本作について、川田将央プロデューサー、中西晃史ディレクターにインタビューを行った。開発が佳境に入った現在の様子や、開発でこだわっているところ、苦労話など、さまざまなことをお聞きした。

ユーザーの攻略速度に驚いた『ビギニングアワー』

――日本では東京ゲームショウ2016で初プレイアブル出展となりましたが、その反響や手ごたえはいかがでしたか?

『バイオハザード7 レジデント イービル』

川田:現在配信中の『ビギニングアワー』とは違う体験版として『ランタン』を準備してアピールさせていただきましたが、非常によい反応をいただいたと思っております。「すごく怖い!」という反応ですね。我々が1番最初に目指したものがダイレクトにユーザーさんに届いている印象で、すごくうれしかったです。

 ただ「あまりに怖すぎるので購入するのを見送ろうかな……」という意見を見た時に、ちょっと困ってしまったこともありました(笑)。

中西:「怖い、自分には無理かも」という意見はたまに聞きますね。

川田:ここ最近のシリーズはアクション部分にスポットを当てた作品がメインで、グロテスクな敵は登場しますが主人公はヒーローで、敵をバタバタ倒しながら進むという内容でした。

 そういった展開を『7』でも期待されていたファンの方にとっては、非常に怖い状況に突き落とされるような内容ですので、多少なりとも違和感を感じた方がいるかも知れませんね。

中西:ゲームを進めていただくと、ハラハラするような戦闘も味わえるようになりますので、強敵を倒して先に進んだ時の達成感はちゃんと体験していただけると思います。

川田:ただ、発表してみて“怖い『バイオハザード』”を求めていたファンがグローバルでたくさんいらっしゃったことも感じましたね。

中西:それは感じました。もちろん、アクションが好きという方もいらっしゃるのですが、“怖い『バイオハザード』”を発表すると「これを待っていた!」という声が予想していたよりも、かなり多く聞こえてきまして、そこは励みになりました。

――『ビギニングアワー』の攻略スピードがすごく早かったと聞きましたが、それに対して製品版での対策みたいなものは考えられていますか?

『バイオハザード7 レジデント イービル』

中西:あの攻略スピードは、我々にとっても想定外でした。ビデオの中に現れる女性の霊やキーピックの場所も「誰も気がつかなかったらどうしよう」って話していたんですよ。ですが配信を開始したら、ものの数時間ですべて攻略されてしまって。インターネットを利用した集合知には驚かされました。

川田:情報の集積と拡散のスピードがすさまじいですよね。我々が、攻略するのに1カ月くらいはかかるだろうと想定しているものも、おそらく2、3日で解かれてしまう気がします。

中西:体験版は新たなアップデートを準備しています。このアップデートではもっと歯応えのある謎も仕込んでいます。

 ただ誤解のないように言っておきたいのですが、メインの謎がそうなっているわけではありません。あくまでもやり込み方面ですね。謎に挑みたい人に向けて、より深く楽しんでいただけるような作りになっていると。

目指したものは“素うどん”!? 建物1つを掘り下げる開発について語る

――『7』は“狭く・深く”というコンセプトで作られていますが、その中での遊びはどのように考えられていったのでしょうか?

『バイオハザード7 レジデント イービル』

中西:例えばオープンワールドのゲームで、一瞬で通り過ぎてしまうような一軒の建物がありますよね。我々が作っているのはその建物1つだけで、その中で何時間も楽しめるようにしなくてはいけないと。

 単純に考えればそういったコンセプトですので、「いかにその密度を上げてプレイヤーに楽しんでもらうか?」に気をつけました。そうすると必然的に、その中での幅も出てきますので、そこをさらに掘り下げるように作っていった感じです。

――コンセプトについて“素うどん”に例えて話があったと聞きましたが、これはどういうことですか?

中西:“狭く・深く”に含まれる方向性の1つで、責任者の竹内がスタッフに話をしたんですよ。「きつねうどんや肉うどんではなくて、素うどんでいいんだ」と。

川田:シンプルなものだけど、うどんそのもの、出汁(だし)そのもの、つまり素材自体の味がしっかり楽しめるものに仕上げようという例えです。

中西:開発を進めていきますと、こんなのがあったらおもしろいと、いろいろなアイディアを入れたくなるんですよ。

『バイオハザード7 レジデント イービル』

川田:素うどんを作っていたはずが、具材たっぷりのうどんすき、それも通り越してわけのわからないごった煮料理になってしまう(笑)。今回はそこからそぎ落とす、削る作業を行ったんです。

 最初の素うどんに戻したんですけど、それまでにやってきた成果はしっかり、うどんと出汁に残っていて、結果的にすごく骨太なゲームになっている。つまり途中に入れた要素を削っても、ベースとなっているものに浸み込んだ味は残るという例えですね。

――テストプレイをされた方について、想定外のプレイや印象深い遊び方をされた方はいましたか?

中西:テストプレイは早い段階から行っていましたが、ユーザーのプレイスタイルは幅広いですね。戦うのが好きな方や逃げ回ってばかりの方とか……。そういったすべての幅にこたえられるようにするのは難しかったですが、いずれの遊び方も否定しないスタンスでしたのでデータを集めながら調整を重ねていきました。

――メインの探索は、その過程でいろいろな発見や驚きがあったため、作業感はまったく感じませんでした。

『バイオハザード7 レジデント イービル』

中西:緊張と弛緩のリズムは、サバイバルホラーで重要な要素です。さらに、初見プレイが重要で、何が起きるかわかっているのと、いないのではプレイが変わってしまいます。多くの初見プレイヤーによるテストを繰り返して手を加えていきました。

――「××××が入手できるタイミングにはこだわった」と聞いていましたが、まさに絶妙でした。あの時の高揚感は本当にすごかったです!

中西:あのタイミングは開発チームでも好評なんですよ。「こういうのが『バイオハザード』のよさだよね」という印象を皆さんに持っていただけると思っています。

――すべての敵を倒しながら進むと弾薬が不足して、どんどん追い詰められていくような緊張感も味わえました。

『バイオハザード7 レジデント イービル』

中西:『バイオハザード』シリーズの醍醐味ですよね。どの作品をたくさん遊んだかが、『7』の進め方にも出ます。

――攻略方法は1つではない場面もありそうですが……。

中西:先ほどの弾薬が不足する場面でも、人によってプレイスタイルはさまざまです。ナイフで挑みつづける人、上手に逃げ隠れしてやり過ごす人、戻って弾薬をかき集めて乗りきる人。シリーズの経験によってもプレイが変わるようですが、そういった攻略の幅も持たせています。

川田:そこも“狭く・深く”の部分になりますね。

――探索中に“壊れたショットガン”を入手しましたが、こちらは何に使うものですか?

『バイオハザード7 レジデント イービル』

中西:シリーズファンなら、使い道は想像できるかもしれませんが、今回はそれだけではなく、修理して使うこともできて、1つの選択肢になっています。

――恐怖のさじ加減もプレイヤーごとに違うと思いますが、そのあたりはどのように調整されましたか?

中西:怖いかどうかの個人差は、かなりありますね。やりすぎると引かれてしまうし、遠慮するとマニアは物足りない。また、恐怖の感情は、プレイヤーの想像に負うところも多いので、あまりマニアックにしすぎると、一般の人がわからない、伝わらないんですよね。

 さらに、国や文化でも違ってくる。なので、なるべく多くの人が怖がれるように、普遍的で、わかりやすいものに調整しています。

――恐怖演出のメリハリについてもよく練られている印象でしたが、その点の配慮についてはいかがですか?

『バイオハザード7 レジデント イービル』

中西:プレッシャーの続く時間とか、そこから解放される時間というのは注意した部分ですね。緊張状態が長すぎるとストレスになりますので、ゲーム構成を見直すのと同時に、場面によっては、敵の出現頻度をAIでコントロールするようにしています。

恐さを感じないシチュエーションで楽しむのもアリ!?

――アクションとして敵の攻撃を防御する“ガード”が採用されましたが、その意図について教えてください。

『バイオハザード7 レジデント イービル』

中西:アイソレートビューの採用により、これまで以上の臨場感や没入感が体験ができるようになりましたが、それによって戦闘を行う際の敵との距離がより近くなりました。かなり至近距離で戦うことになります。

 テストプレイしていた人が、画面いっぱいの敵が自分にむかって殴りかかってきた時、反射的に、自分の手で防ごうとしたんですよ。レースゲームをやっていて体が傾いちゃうみたいなものです。それを見て、ガードはありかなと思いました。

 試してみると、目と鼻の先で攻撃を受ける感じや、防いだ手の隙間から敵の様子をうかがう感じなど、没入感を高めることにも繋がりました。

――武器を持った状態だと、武器を使ってガードをしますが、効果が変わるのでしょうか?

中西:一部の攻撃に対して、効果が違うことがあります。ガードをすればダメージを大幅に軽減できるので、生き延びるためには重要です。

――ベイカー・ファミリーの中でお気に入りのキャラクターは誰ですか?

川田:ルーカスですね。その理由は現時点では言いづらいですけど(笑)。食卓を囲んでいるシーンでかなり異彩を放っていますが、ずっとあのままのテンションのキャラです。個人的には、全編ダークな『7』の中にあって、あのバカっぽい、明るいキャラクターが気に入っていますね。

中西:自分は、全員に愛着がありますね。担当したスタッフたちそれぞれのマニアックな個性が出ています。強いていうならマーガレットでしょうか。我々開発スタッフの間でも、「もうとにかく、いろんな意味でスゴいよね」というシチュエーションがあります。

川田:戦う時にはどうも先に担当者のキャラが頭に浮かんで、ちょっと複雑な気持ちになるんですよ(苦笑)。

『バイオハザード7 レジデント イービル』

中西:確かに作り手のカラーは存分に出ていますね。それぞれ個性的なキャラクターに仕上げられていますので、実際に会う日を楽しみにしていただければと思います。

――PS4、PS4 Pro、PSVR、Xbox ONE、PC、さらに異なるCEROレーティング版と、1つのタイトルでこれだけのバージョンを作るのは大変なことだと思いますが、いかがでしたか?

中西:実質、開発ハードが増えているのと変わらない労力なので、そこは現場のスタッフがすごくがんばってくれたと思いますね。

――PS4Pro+HDR+4Kテレビで体験させていただきましたが、ロウソクの炎のゆらめきやアルミ素材の反射加減なども感じられて描写表現には本当に驚きました。

中西:我々も当初は4Kの対応に疑問もありました。ただ、実際に見たら「コレは欲しい!」となりました。対応には苦労もありましたが、それだけの価値はありました。

――発売日に向けてのプロモーションはどのように考えられていますか?

『バイオハザード7 レジデント イービル』

川田:あまり情報を出さない戦略でしたが、発売日も迫ってきたので、そろそろさまざまな要素を紹介するべく、いろいろと準備を進めているところです。

中西:ここまでホラー色は全面に出してきたので、その点は伝わっていると思いますが、一方で「実はぜんぜん違うゲームなんじゃないか?」と、心配されているユーザーも多いようです。

 『ビギニングアワー』とは違って本編には戦闘もありますので、そのあたりを皆さんに向けて発信していこうと思っています。ぜひ、お楽しみに!

――『7』の中で1番自信のあるところは?

中西:「こんなゲームってあまりないよね」という言葉が自然と出てきそうな、そんなところですね。

川田:あらゆるところから感じられるインパクトの強さでしょうか。他のゲームと比べた時に『バイオハザード』らしさ、もしくは『バイオハザード』でないとやらないようなことをしっかり詰め込むことができたのがすごくよかったと思っています。

――怖くてプレイできないという方へのアドバイスとしては、どんなことがありますか?

『バイオハザード7 レジデント イービル』

川田:友だちと一緒にわいわい楽しむのがいいと思います。お菓子や飲み物を持ち寄ってパーティ形式で、まったく怖くない状況を作ってから皆で怖がる(笑)。

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

『バイオハザード7 レジデント イービル』

中西:私自身も『バイオハザード』の中で得られる緊張感や達成感が好きで、今回もそれをたっぷり味わえるようなゲームに仕上げています。

 シリーズのファンの方はもちろん、『バイオハザード』を知らない人も、ぜひ遊んでほしいと思いますので、よろしくお願いします。

川田:とにかく1度遊んでいただきたいですね。怖すぎて先に進めない場合は、先ほどお話したようにいろんな手段を講じていただいて、最後まで楽しんでいただきたいです。

 遊び方としては、最初に普通のテレビでクリアして、そのあとPS VRで遊んでいただくとか。そうやってアプローチの方法を変えることで新しい発見もできますし、何度も楽しむ機会を作れるのではないかと。

 ぜひ1人でも多くの方に遊んでいただきたいなと思っています。

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