2016年12月30日(金)
『PSO2』の2016年を酒井、木村両氏が振り返る。アニメやPS4版の影響や、新規ユーザーの動向に迫る
セガゲームスが運営する、PS Vita/PC用オンラインゲーム『ファンタシースターオンライン2』の開発者インタビューを掲載する。
『ファンタシースターオンライン2』は、ネットワークゲームの楽しさや驚き、冒険を再び感じられるゲームとして開発された。PC版とPS4版、PS Vita版がサービス中で、iOS/Android向けサービス『ファンタシースターオンライン2 es』も行われている。
お話を伺ったのは、シリーズプロデューサー・酒井智史さんとシリーズディレクター・木村裕也さん。待望のPS4版サービスインや最大同時接続者数の更新、多数の大型コラボなど、今年も数多くの話題を提供した本作について、振り返っていただいた。
2016年で印象的だったことは?
――まず、2016年を振り返っての感想をお聞かせください。
木村:怒涛の年だったな、という気がします。1月にTVアニメとEP4がスタート、4月にはPS4版のサービスイン、夏からは『ファイナルファンタジーXIV』とのコラボがありましたし、アークスフェスティバルや今までにない形のライブ……かなりいろいろなことがあった年でした。
作っていて楽しかったなという印象があります。それと同時に、ユーザー層がガラッと変わった時期でもあり、当初から難しい時期になるとは想定していました。
――難しい時期とはどういった意味でしょうか?
木村:まず、TVアニメでライトな層が入ってきて、PS4版ではコンシューマ志向のユーザーさんがたくさん入ってくるだろうと考えていました。そういったユーザー層と、既存のユーザーさんではプレイスタイルの違いがありますし、ゲームに対する需要も異なります。
難易度もそうなんですけど、それよりも供給するコンテンツそのものですね。どちらの需要をどれくらいのバランスで叶えていくのがいいのか、そういった意味で難しい年で運営対応は過去よりもたくさんやりました。
――酒井さんはどうでしたか?
酒井:やはりTVアニメとPS4版のサービスインが今年の一番の大きな出来事で、それに向かってこれまで積み重ねてきたものを一気に出した感じでしたね。ファンタシースター感謝祭2016をやって、TVアニメをやって、PS4版のスタートでドカッと人が増えました。幻創戦艦・大和の配信では、最大同時接続者数も更新することができました。PC版のサービスインから4年目でそれが実現できるというのは幸せでした。
『FFXIV』とのコラボも大きなニュースでしたね。そして小林幸子さんとのコラボ楽曲の制作、これまでにないゲーム内ライブをやって、さらにリアルライブまでやるというのは新しい試みとして成功したと思っています。
その反面、後半はすごくたくさん増えたユーザーさんを維持し続けるという意味では厳しかった部分もあり、今はそのあたりの反省を踏まえてどのようにユーザーさんにプレイを続けてもらうのか、プレイを中断したユーザーさんに戻ってきてもらうのかを考えています。
――その原因はなんだったのでしょう?
酒井:もちろん1つではないのですが、キャラクターのレベルアップが早くて、さらにEP4からコレクトファイルが入ったことで★13を手に入れるスピードも速くなりました。
新規や復帰で入った大多数の方はライトな方だったのですが、わりとライトな方はそこで満足してしまったようなんです。「いくつかのクラスをカンストして★13武器を手に入れたから、もういいや」って中断してしまったようです。オンラインゲーム的にはそこからが本当のスタートともいえるところなんですが……。
木村:オンラインゲームやスマートフォンアプリの場合、ゲームを初めてから数時間の序盤のところでの離脱が多いのが常識なんですが、『PSO2』のここ1年くらいの状況は、プレイを始めて100時間くらい遊んでから、離れてしまう人が多いんです。
そういうところはコンシューマ志向ですね。大作タイトルでもだいたい総プレイ時間は100時間くらいじゃないですか。エンディングまでプレイしてそれからちょっとやり込んで終わる感じで、『PSO2』に対してもレベルがカンストした、一番レアな★13武器が手に入った、そこで満足してしまう。
酒井:『PSO2』に悪い印象でやめたのではなく、クリアしたような気持ちになってしまうんでしょうね。
木村:そういったところを想像できていなかったわけではないのですが、思っていた以上でしたね。本当に十分楽しんでからやめてしまったという感じです。これがチュートリアルや難易度ハードあたりでやめたのであればゲーム自体がつまらなったという評価なので、大反省しなければならないところですが、ちゃんと遊んでいただいたうえでとなると難しいですね。
それを裏付けるデータとして、PS4以降に入ったユーザーの方については、課金率、課金単価に関しても既存のユーザーさんよりいい結果でした。
酒井:しっかり遊んでお金も払ってという、短期集中型タイプです。ただ、だからこそまた大きな変化があれば戻っていただける土壌もあると思っています。
――PS Vita版がサービスインした時もコンシューマユーザーは入ってきていますが、その時と比べてどうですか?
木村:同じコンシューマでもPS Vitaのユーザーさんはコアタイプなんです。PS VitaでインターネットやWi-Fiでゲームを遊ぶ方たちですから、そもそもオンラインゲームへのリテラシーがあるんですよね。PS4はよりライトで、それこそ『PSO2』が初めてのオンラインゲームだったという人も多かったんじゃないでしょうか。
――やめてしまった方に対して、どのようにして戻ってもらおうとお考えですか?
木村:パッケージのナンバリングタイトルであれば、続編が出たらまたプレイしてみようという方も多いじゃないですか。『PSO2』はオンラインゲームですから、アップデートでナンバリング的な見せ方をするのも手だと思っています。
――基本プレイ無料という形式はいつでも戻れる反面、何かきっかけがないと難しいかもしれませんね。
木村:オンラインゲームは何かしらのコミュニケーションがゲームを続けるきっかけになると思うんです。そういったコミュニケーション施策が弱かったというのも1つの反省点です。『PSO2』はレベル上げから高難易度のクエストまで1人で全部遊べるので、オンラインゲームの魅力である“人とのコミュニケーション”まで行きつかずに満足してしまったのかなと。
最近、コミュニケーションキャンペーンを実施しているのは、そういったところが背景にあります。ただ、それを強制するわけにはいかないので難しいところですね。きっと1人で遊べるからこそ100時間遊んでくれた人もいるでしょう。
――その感覚は時代時代によって変わってきますね。『PSO』の頃と今では全然違いますし、5年先10年先にはまた変わってくると思います。
木村:そうですね。より1人で遊ぶものになっていくのではないでしょうか。まあ、そういった問題点をうまくカバーしていきたいですね。もともと、12人でマルチプレイができるクエストというのはパーティーを組まない人でも遊びやすいように作ったものですから、そこは『PSO2』のいいところです。
だから、もう1段階先に進まなければいけないのかなという時期になったと考えています。
タイトルの知名度が上がることでコラボもスムーズに
――最初の質問でたくさんあがりましたが、その中でも特に印象に残っている出来事はなんですか?
木村:TVアニメ化は『ファンタシースター』シリーズとしても初のことですし、大きかったなと思います。
酒井:ボクは全体として、地球が入ったことがすごく印象に残っています。東京を入れて幻創戦艦・大和を出して、さらには小林幸子さん。そういった流れは考えて実施しました。
賛否両論があることはわかっていましたが、『PSO2』だけでなく、『ファンタシースター』シリーズとしても世界や可能性を広げるという意味で必要なことだったと思っています。そこにうまくハマってくれるコラボも実現できたので、とてもよかったと思っています。
――コラボは1回で終わらないものが多かったですね。しまむらさんは2回目、アークスカフェはもう4回目です。
木村:ありがたいことにどのコラボも好評でして、先方からまたぜひにということで。我々としてもすごくうれしいことです。11月からはセブン-イレブンさんとのコラボもまた始まっています。以前に実施したパウチゼリーの売り上げが好評だったので、今度はアイスでやりたいとお声がけいただきました
――セブン-イレブンのコラボで冬にアイスというのには何か理由があるのですか?
木村:最初に話をいただいた時は夏に実施予定だったのですが、急なことだったので何も用意できなかったんです。先方の話では既存のアイテムでもいいということだったのですが、やはりコラボをやるからには成功させたいじゃないですか。そういう話をしたら、夏の次にアイスの売れ行きがいい年末にしましょうと。
酒井:アイスの商戦期は8月と12月なんだそうです。コタツに入ってアイスを食べるという楽しさがあるようです。
木村:12月であれば、こちらとしてもしっかりとしたものを用意できますと。うちのゲームでいいなと思うのは、ゲーム内で遊んでいるとキャンペーンで手に入るアイテムをロビーで使っている人がいることです。
キャンペーンの告知は毎回やっていますが、見ていなかったり期間を忘れていた人がそれを見て興味を持ってくれる。そういったところで広がりやすくていいなと。
――では、コラボで一番印象に残ったのはどれでしょうか?
酒井:小林幸子さんです。
木村:ボクは『FFXIV』かな。どちらも仕込みの期間が長かった(笑)。
酒井:小林さんの話が最初に出たのは2年前でしたね。
木村:『FFXIV』は足掛け3年くらい。
――ファッションのしまむら、ゲームの『FFXIV』、歌手の小林幸子さん、飲食のスイーツパラダイスと、今年はさまざまな形でコラボがありましたね。
木村:すべてが狙ってやったのではなく、形になったのがたまたま今年に固まった感じですね。しまむらさんとのコラボも話が出たのは去年の秋でした。
酒井:その話をもらった時に、ちょうどEP4で東京が入るんですよという話になりました(笑)。しまむらさんは以前にもセガハードTシャツやぷよぷよコラボを実施していて、それでうちにも話が来ました。
木村:今まではこちらからコラボをお願いすることが多かったのですが、最近は外からお声がけいただくことが多くなりました。
――4年の運営実績があって、知名度が上がったことが大きいのでは?
酒井:そうですね。加えてコラボが成功したという事例が増えたことで、それが周囲に伝わって新しいコラボの話をいただくようになりました。取引があまりないようなところからもくるようになりましたね。あとは、その会社さんにアークスの方がいて話が来る、ということも増えましたね(笑)。そういう場合は話が早くて非常に楽です。
木村:そういった話が増えましたね。『乖離性ミリオンアーサー』も先方からの提案でした。
――ということは、今もコラボの話が?
酒井:内容はまだ言えませんが、あります。
木村:来年の前半は落ち着いていると思いますが、夏くらいからいろいろとやりたいなと。
――『龍が如く』シリーズが飲食関係でいろいろとコラボを実施していますが、『PSO2』側ではスイーツパラダイス以外の予定は?
酒井:やりたいなと思っているのですが、なかなか難しいところです。
木村:しまむらさんのように、全国規模で店舗があるところとやれればいいですね。
――PS4版がスタートして半年経ちましたが、手ごたえはいかがでしたか?
木村:まず、PS4の効果は想像以上でした。同時接続者数の更新もそうですし、アクティブユーザーも我々の想定より多かった。年間計画のなかには、毎月のアクティブユーザー数目標というものがあるのですが、8月くらいまではその想定を大きく超えていて、最近になってようやく予定どおりの数字になってきました。
今までもコアな方、ライトな方、新規の方で知識やスタイルに差はありましたけど、PS4でドカーンと入ってきてユーザー全体の層が変わりました。
酒井:収益的にも今年の当初の想定は大きく超えた形になっています。アクティブユーザー数の予想が当初の想定に収まってきた、という話がありましたが、逆に課金率は非常にいいので、収益の話でいうとまだまだ超えてきている状況なんです。
――PS Vita専用ブロックのように、PS4専用ブロックを作らなかったのには理由があるのでしょうか?
木村:PS Vitaに関しては、どうしてもスペック的な理由があるので分けましたが、PS4であればPCとそん色ないので、ブロックを分けてもデメリットしかないと考えたためです。
15時間放送よりも疲れる“あの番組”
――秋から2つの新番組がスタートしましたがユーザーの反応は?
酒井:ここまで3回やってみて、反応はけっこういいかなとボクは思っています。PSO2 STATION!とアークスライブ!で住み分けをしたいと思っていたので、それはうまくいっていますね。
当初はPSO2 STATION!の色や内容がどう出るのか、ユーザーさんの中でもわからない部分があったのではないのでしょうか。実際にやってみて、PSO2放送局の流れを継ぎながらも独自の色は出せて、ユーザーさんにも理解されてきたと思います。
――バラエティ的なノリの番組ですね。番組MCの諏訪彩花さんがおもしろいです。
酒井:もちろん彼女のキャラクターがいいと思って起用しているのですが、あそこまでうまくハマるとは思ってなかったです。おもしろすぎます(笑)。
木村:当初の企画としてはニュース番組風の作りだったんですけどね。
酒井:あの諏訪さんのおもしろい流れなんて台本には書いてないんですよ。でも、諏訪さんのボケとなすなかにしのツッコミが合わさっておもしろくなる、人選にはそういう狙いもありましたが、想定以上でした(笑)。
――アークスライブ!のほうはゲームをやり込んでいる人向けですね。
木村:見てる人は濃いですね。
――アークスフェスティバル2016で“PSO2放送局”を卒業した会一太郎さんがアークスライブ!を担当するというのは、あの時点ですでに決まっていたのでしょうか?
▲アークスフェスティバル2016の模様。 |
木村:ボクと2人で新番組をやるってことだけは一太郎くんにも、ふわっと伝えていましたが、具体的な内容は決まってなかったですね。
酒井:結果として茶番と思われたかもしれませんが、長年やってきた“PSO2放送局”の最終回ですから、自分自身も、一太郎くんもそれで泣いていた流れではあったので、あの涙自体がムダになったわけではないと思うんですけどね……。実際にアークスライブ!は全然違う番組になってますし。
――アークスライブ!は、ユーザーさんからの質問に答えるところが見ている側としてすごくいいと思います。
木村:生で答えるのはドッと疲れます。もっと放送時間を延ばしてくださいという意見もあるけど無理ですね。単純なトークミスもあるし、開発として間違ったことを言ってはいけないからすごく神経を使うんです。
これまで数多くの生放送に出演していますが、アークスライブ!は、翌日何もできないくらいに疲れます。15時間放送のほうが楽なくらいです。
――酒井さんはアークスライブ!には出演していませんが、現場には行っているのでしょうか?
酒井:行っています。そこで番組に出るかは、その時の内容しだいですね。
――EP4チーフディレクターの中村圭介さんやEP4ディレクターの濱崎大輝さんはどちらの番組にも出ていませんね。
木村:出演人数が増えると、それだけ番組の尺が伸びてしまうので絞っています。各ディレクターには、必要に応じてコーナーにスポットで出てもらう感じにできればと。
――昨年の12月からはファンタシースター感謝祭2016がありましたが、次の予定は?
酒井:あるかもしれません。いつになるかはわからないけれど考えています。
木村:今年の夏はアークスフェスティバル2016があったものの、PS4版から入ったユーザーさんはまだアークスグランプリを経験していないのでやりたいですね。
――アークスフェスティバル2016で入場制限がかかったのは、やはりPS4版でユーザー数が増えたことが影響していたのでしょうか?
酒井:初めて参加したという人の割合がかなり多かったですね。PS4版で増えただけでなく、小林幸子さんが出るということでイベントに参加した人も多いんじゃないでしょうか。
いっぱいになるかもしれないとは思っていましたが、入場制限をかけなければならないほどとは想定していなかったです。とはいえ、あれ以上の大きな会場で無料は難しいですね。
木村:今年は最後まで参加する方が多かった。毎年、延べ人数は多いんですけど、途中で帰る方もいるのでギュウギュウ詰めになることはなかったんです。
酒井:過去には来場者特典だけもらって帰るという人も少なからずいたのですが、実際に会場内に入って参加した人の数でいえば今年が一番です。
――今年は地方を回るアークスキャラバンをやっていませんが、また開催する予定はないのですか?
酒井:やりたい気持ちはありますが、現状予定はないですね。何かしら小規模でも、PSO2 STATION!かアークスライブ!の公開収録だけでもできればいいんですが……。
木村:小規模なイベントとなると、事前応募制にしなければならないのですが、そうなると参加の敷居が上がってしまいますし、どれくらいの応募が来るのかも読めません。都内のクリスマスパーティーのようなイベントであれば、過去の実績があるので規模もわかるのですが……。
酒井:PSO2 STATION!の放送自体がスタジオで行ったのがまだ1回だけですし、放送時間の問題もあります。番組としては夜に放送するのがいいんですが、お客さんにも都合がありますから。もう少し落ち着いてきたタイミングでもいいかなと思っています。
EP4の評判は!?
――ここからはゲーム内の質問が中心となります。EP4が始まって、ストーリーに対するユーザーさんの評価はどうでしょう?
木村:EP3から展開がガラッと変わったことで、最初は拒否反応を示す方もいました。あと、最初は展開がゆっくりだったこともあって学園物と思われていた方もいました。話が進んでいくうちにSF的になってきて、こういう仕掛けだったのかと気付いてもらうことで評判がよくなってきました。
ボクはアップデート直後は、Twitterなどのソーシャルメディアをよくチェックするのですが、「ストーリーが更新されたからログインしよう」という書き込みは過去のストーリーよりも多いですね。EP4はこれまでの話とはまったく違う新しいことをやるというのが、かなり冒険だったのですが、物語が進んでいくことでどんどん受け入れられていきましたね。
――なぜ、ストーリーを大きく変えようとしたのでしょうか?
木村:アニメやPS4版をきっかけにプレイを始める方が過去のストーリーを知らないと楽しめないのはダメだと思っていて、そこは意識しました。実際、PS4から始めた方は、ストーリーが楽しいって言ってくれる人もいて、普通のRPGとして楽しんでもらっています。
アークスライブ!の放送でもお話ししましたが、EP4は1話1話でケリをつける形です。オンラインゲームは配信の影響でストーリーが間延びになってしまいます。そうなると前回の話を忘れてしまう人もいるので、昔のアニメや特撮的な作り方で、毎回悪い敵が出てきて倒して終わりというようにしました。
途中で敵の幹部がいっぱい出てくるのもお決まりですよね。また、ストーリーボードのシステムが入って遊びやすくなりました。演出にもこだわっていて、そこも評価されている部分ですね。
――EP4のストーリー全体から見て、6章でどれくらいまで話が進んでいるのでしょうか?
木村:このインタビューが掲載されるころには7章が配信されていて、いかにもクライマックスといった感じですが、そこで終わりではなくじつは8章があります。
――8章は年明けすぐの配信に?
木村:8章はパート1とパート2に分かれています。パート1が年明け、パート2が春くらいで、そこがEP4のストーリーとしては終わりです。
――ハギトやファレグなど、ストーリーに登場する敵キャラクターたちも人気ですね。
木村:特にファレグがイレギュラーな立ち位置で、思った以上に評判がいいですね。
――地球の第3フィールドとしてマザークラスタの本拠地が登場しましたが、今後フリーフィールドなどが配信されるのでしょうか?
木村:フリーフィールドはありません。実はあれ、まっすぐしか作ってないんです(笑)。ただ、いずれどこかのクエストで使う可能性はあります。
――サモナーのバランスはどう考えていますか?
木村:もともと、強くて使いやすいクラスだと考えていました。ただ、そこに至るまでに準備が必要だったり、使い方も他のクラスとは全然違ったりする。そういった手間をかけて実現される強さです。
今はその手間に見合ったところだと思います。マロンに関しても、1つ強いペットを入れたいという意図どおりです。
――クラス間のバランスはどうですか?
木村:全体として悪い状況ではないと思っていますが、今後もテコ入れは細かくやっていきます。クラスの強さはクエストにもよるので、例えば近接クラスは防衛戦のように敵がばらけるクエストは苦手。ですが、狭くて敵が密集しているエクストリームクエストなどは強い。コンテンツごとに強弱が出てしまうのはある程度仕方がないことだと思います。
コレクトファイルや★14武器に迫る
――コレクトファイルの評判はいかがですか?
木村:もともと、石集めと言われたことへのテコ入れだったので、EP3以前のユーザーさんにはすんなりと受け入れられました。反面、PS4版から入った人の中にはシートを設定せずに遊んでいる方も多くて、導線が弱かったという反省があります。おおむね好評ですが、作業感が出たという意見もありますね。
――コレクトファイルの期限についてはどう考えていますか?
木村:手に入れるのがカンタンになったぶん、その期間内にログインして集めてねということです。そこはバーター。そもそも期間限定にするなっていうのはこちらの意図とは違います。あとは、シートが山ほど増えても何から手を付けたらいいのかわからなくなってしまう。
過去のアイテムは今も交換ショップに残っていますが、新規の方にはどうしたらいいかわからないですよね。
――過去のシートの再配信はあるのでしょうか?
木村:再配信ではなく、対象エネミーを変更したり、配信は短期間だけどゲージがたまりやすくしたりなど、何かしら変えて出そうとは考えています。
――コレクトファイルで直接ドロップがうれしくなくなったという意見もありますね。
木村:ドロップの最低保証が欲しいという意見に対する答えなので、そこは仕方ないところかなと思います。大多数の方は、コレクトファイルの恩恵を受けていると思います。とはいえ、そういったご意見も理解できるので直接ドロップにうま味を増やしました。
――ユーザーさんの要望で多いのはどのような内容でしょうか?
木村:夏くらいまでに一番多かったのは、プレイスキルの差で野良がつらいという意見。それを受けてエキスパートブロックを入れました。
――エキスパートブロックを入れてみた感想はいかがですか?
木村:入れる、入れないでいえば入れてよかったです。いろいろ施策は検討したのですが、選んだ手段としては間違っていなかったと思います。エキスパートブロックに行けないことで萎えて、それが原因で離れてしまう人がたくさんいるだろうと覚悟していましたが、実際にはそれほど多くなかったですね。
今まで敬遠していたエクストリームクエストに挑戦する人も増えましたし。ただ、今は逆にエキスパートブロックに入れる人が多くなって、条件を見直してほしいという意見も出ています。
――今後はもっと条件を厳しくするのでしょうか?
木村:単純に今の条件を厳しくするのではなく、条件の方向性を見直します。エクストリームクエストのクリアだけでは装備を強化していなかったり、プレイスキル以外の部分は測れません。だから今度は、現在の条件に加え武器強化関連の条件を加えようかなとも考えています。どうなるかはデータを分析してからになりますが、これ以上条件にプレイスキルが求められないようにしたい方針です。
――実際にプレイしていると、XHブロックとエキスパートブロックでは大きな差があると感じます。
酒井:その差はありますね。もうプレイスタイルから違います。
木村:本来はXHがキツイ人はSHに行ってくださいということなんですけど、それだとコレクトファイルが進まないという問題があります。ですので、XHに比べたらゆっくりになるけれどSHでもゲージがたまるように考えているところです。
――コレクトファイルが受け入れられた一方で、★14武器をドロップ限定にしたのはなぜですか?
酒井:やっぱりそこは、ロマンです!
木村:コレクトファイルは予定調和ですからね。
――★14武器をカタナ、アサルトライフル、ロッドにした理由はありますか?
木村:打撃・射撃・法撃で分けました。★14武器はこれから徐々に入れていきます。
――ダークファルス・エルダー戦で★11武器が3種実装された時、★12武器もこっそり入っていました。今回も3種ということで、実は★15もあるということは?
木村:ないです(笑)。
酒井:★14の存在を言わないという選択肢もありましたが、今回はよりたくさんの方に知っていただくために、あえて言いました。
――そういえば、エスカダーカーからドロップする★13武器は事前の情報がなかったですね。
木村:あれは久しぶりにやってみたことですが、評判がよくてそれを目当てにフリーフィールドに行く人もいます。やってよかったと思っています。
実装されているコンテンツ、新コンテンツの内容とは!?
――ギャザリングのブーストアイテム消費問題に関して進展はありますか?
木村:1月の配信で、ドリンクメニューにブーストアイテムの消費を止める機能が入ります。その機能を使ってからドリンクを飲むと、ドリンクの効果時間中は各種ブーストアイテムの消費がストップします。
ドリンク自体の値段や効果はそのままですから、一番安いものを使ってからクエストへ行ってもらえればと。こういう形にしたのは、キャンプシップ内でできるようにしたかったからです。
――EP3後半から一斉スタート方式のクエストが増えましたが、今後はこの方式が中心になるのでしょうか?
木村:ドロップをクエストの後半に置いておかないと途中破棄が出てきてしまうので、一斉スタート方式が中心になっていきます。ただ、人が集まりにくいというのがあるんですよね。そこは問題だと思っているので、いろいろ検討はしています。マッチング見直しの構想はあるのですが、やるとしてもだいぶ先のことです。
――ボーナスクエストに新しいものが追加される予定はありますか?
木村:1つは既に考えています。配信は春くらいかな。
――現状の武装エクステンドでは★13武器に及びませんが、クラフトのテコ入れはありますか?
木村:ないです。やるとしても、装備の強化と特殊能力追加をみんながやるようになってからかなと。クラフトはやらなくてもいいけれど、強化はやらないとキツいですよね。それが完全に浸透していないのにクラフトをアップデートしても意味がない。それよりは強化や特殊能力追加をテコ入れしていく方針です。
――エクストリームクエストやシップ対抗戦など、旬を過ぎたコンテンツのテコ入れはありますか?
木村:エクストリームクエストのテコ入れは考えていません。シップ対抗戦も近々の予定はありませんが、やろうと思えばまた開催できます。
酒井:アークスリーグのほうがどちらかといえば成功したので、今はアークスリーグがメインになっていますね。
――PS Vita版のクライアント容量が大きくなっていますが、何か対策を考えているのでしょうか?
木村:すでに公式サイトで告知していますが、メモリーカードを32GBに替えていただくことになります。先日のアップデートで1GBほど圧縮したのですが、システム的にはもうこれ以上の圧縮は難しいです。
酒井:先日の配信は、10GBのアップデートをすると総容量が1GBほど減るというものでした。しかし大容量のためにアップデート当日にログインできない方もいましたし、毎回それをやるのは現実的ではないですからね……。
木村:古いコンテンツを削るという手段もあるのですが、その判断も難しい。
――PSO2 STATION!で公開されたバトルアリーナの詳細について聞かせてください。
酒井:方向性としては、全員がやらなければいけないというものではありません。チャレンジクエストと同様に、装備の持ち込みはありません。
木村:プレイヤー同士の対戦コンテンツは『PSO』からあったものなので、『PSO2』でもいつかやりたいと思っていました。
酒井:カジノやチャレンジなど、『PSO2』の中での遊びのバリエーションの1つとして考えています。
木村:報酬は、繰り返しプレイすることでポイントをためて景品と交換できます。交換できる景品も必須ではないものを考えています。マッチングはレーティング方式で、ランキングも予定していますが、報酬であまりユニークなものは用意しません。
――特定の人と遊ぶことはできないのでしょうか?
木村:できますが、勝敗がレーティングに影響されない練習モード的な扱いですね。
――バトルアリーナのバランス調整はどう考えていますか?
木村:使える武器もランダムなので、仮に1つ強い武器があったとしても当たりというだけなので、そんなに大きなバランスのミスは起こらないと思います。もちろん、大きな問題があればしっかりシステム的に調整します。
――手に入れた武器にはPAをセットできるのでしょうか?
木村:武器ごとに決まったPAが付いています。全部使えるわけではなく、各武器1つか2つに絞りました。
――今後、アークスグランプリの種目として使われる可能性も?
木村:eスポーツ的な作りをしているので、あればいいですね。
酒井:可能性の1つとしてはあります。ただ、ユーザーさんの反応にもよりますね。
今年の『PSO2』を漢字1文字で表すとしたら?
――今後の配信予定の中で、他に言えることはありますか?
木村:年明けに新春イベントとして、期間限定クエストを出します。これまでとはちょっと毛色の違うクエストを考えていて、イベント後半に配信されるクエストは4人マルチクエストでちょっと難しめのもの。このクエストでは、パーティーを組まなくても12人マルチと同じように最大4人でマッチングします。それから春はバトルアリーナ、EP4最終章とレイドボス、あとは5周年かな。
酒井:それから3月にはついにレベルキャップ80の解放があります。
木村:必要経験値はこれまでに比べても当然多いですが、さらに、今回はレベルキャップ解放オーダーがあります。
――かなり長い期間Lv.75でしたが、これまで解放しなかったのはどのような理由があったのでしょうか。
木村:単純に差が付いちゃうからです。特に今年は新規の方がたくさん入ってきたので、レベルキャップとは別方向で強化していきました。ひととおりレベルが上がってきたので、解放するという流れです。
――レベルキャップ解放と同時に新スキルも追加されるのでしょうか?
木村:新スキルはありません。Lv.80になることで、単純にスキルポイントが5sp増えるだけです。あとはXHでもLv.80じゃないと受けられないクエストが出てくるくらいです。
――EP4のストーリーが最終章ということで、EP5の時期はいつごろになりそうですか?
酒井:言えるわけないじゃないですか(笑)。最終章の配信が春だから、春以降じゃないですかね!?
――『ファンタシースター』シリーズの別タイトルに期待しているファンもいると思いますが、そういった予定はありますか?
酒井:今のところないですね。そのリソースがあれば『PSO2』の開発に入れる、今はそんな状況です。
――人手が欲しいというのは、他のハードでの開発も視野に?
酒井:それもないです。『Nintendo Switch』を知ったのは発表されてからですからね。
――年末ということで、今年の『PSO2』を漢字1文字で表すとしたらなんでしょうか?
酒井:お祭りのように一年中、いろいろなことをやりましたから“祭”ですね。
木村:うーん、“動”ですかね。TVアニメは動画、ライドロイドは動く乗り物、ゴジラロビーも動いていた……いろいろなものを動かして、いろいろなことが動いた年でした。
――最後に、来年の抱負と読者へのメッセージをお願いします。
木村:今年もたくさんのことをやりましたけど、来年もいろいろやります。『PSO2』5周年、『ファンタシースター』30周年を意識したアップデートで楽しいことをやっていくので期待してください。新規の方だけでなく、休止してしまった人が戻ってこられるようにしたいです。
酒井:『PSO2』5周年、『ファンタシースター』30周年に向けていろいろとやっていきます。10年に向けた折り返し点ということで、オンラインとオフラインイベント、どちらも楽しんでもらえるようにやっていくので今後ともよろしくお願いします。
(C)SEGA
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