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2017年1月14日(土)

【電撃PS】SIE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』を全文掲載。テーマは“かつての作法に学ぶ”

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.627(2016年11月24日発売号)のコラムを全文掲載!

第96回:かつての作法に学ぶ

 俳優の瑛太さんや、最近はその後輩(?)として菅田将暉さんが新人サラリーマン役で登場する、一風変わった住友生命のCMがありますよね。“1UP”という、生命保険のCMです。あのCMを見ていて、ふと思ったことがあります。“1UP”という言葉、あれって、もちろん僕もそうなのですが、たぶん大半の人が、『スーパーマリオマリオブラザース』で初めて聞いた言葉なのではないでしょうか。それ以前、アーケードゲームの文化としてすでに使われてはいましたが、それも含め、思い返せば“ゲーム発信で一般化した言葉”っていっぱいあるなあと思います。

 例えば“チュートリアル”。人気お笑いコンビのコンビ名として有名になりましたが、この言葉も間違いなくゲームで使われたのが最初でしょう。そして“カスタマイズ”。これも最近ではいろんなシーンで使われる言葉ですが、先のチュートリアルと併せ、何作目かはともかく『ファイナルファンタジー』あたりで一般化した言葉なのではないかと思います。さらに普遍的なところでは“アイテム”という言葉。これなんて、今やファッション業界で使われることも多いわけですが、そもそもはゲーム文化として、道具やグッズ全般を言い表す言葉として相当古くから使われている言葉です。他にも、“世界観”という言葉。今ではタレントさんや芸人さんが持つ雰囲気みたいなものを表現するときに使われたりもしますが、これも広く使われだしたのは、中世ファンタジーや剣と魔法など、それまで日本ではあまり浸透していなかった“テーマ”をゲームが採用し、そのビジュアル世界を語る際に使われ、そして広がっていった言葉なのではないかと思います。

 “ヌルい”、“レベルアップ”、“大ボス”、“フラグ”。改めて探ってみると、ゲーム業界って本当にたくさんの言葉を一般化してきたと思います。スマートフォンの普及でゲームそのものの広まりがより進むのだとすると、この傾向にさらに拍車がかかり、コンシューマーとはまた別種の浸透が起こるのかもしれません。たまにしか会わない人のことを“レアキャラ”と言ったりすることはもはや普通でしょうし、ひょっとしたらクラス替えのことを“ガチャ”と呼ぶようになるのかも。そんな想像をしてしまいます。

 さて、話は少しずれるのですが、去る11月11日、PS4のアップグレード版、PlayStation 4 Proが発売となりました。ただでさえ美しいPS4のグラフィクスをさらに4Kで楽しめるこのハードの発売日と奇しくも同日、任天堂からは、“ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ”が発売となりました。“ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ”は、ミニサイズのファミコンの形をしていながら、なんと30本ものソフトが内蔵されています。つまりテレビに接続し電源を入れるだけで、あの頃の懐かしいゲームがとっかえひっかえ遊べるわけです。僕のフェイスブックはこの日、フレンドであるプラスマイナス10歳の、30代~50代男性による「買ったぜ!」報告で溢れました。まさにおっさんホイホイ。しかしまあ、世代的&職業的にこれはもう仕方がありません。なんせ、ほとんどのフレンドが、当時のファミコンに触れていなければ、今ゲームの仕事をしていないでしょうから。

 僕も御多分に漏れず収録されているゲームをあれこれ遊んだわけですが、そこでちょっと気づいたことがありました。例えば、シューティングゲームの作法としてよく使われる、ギリギリで敵からの攻撃を避けている実感を得るために、当たり判定を自機の見た目よりも小さく設定する、という作法。これにより、一瞬やられた! と思ってもまだ大丈夫、ということが起こり緊張感が高まるわけですが、でもこれ、シューティングが流行る以前にリリースされた『パックマン』がすでに採用しているんですよね。また、任天堂初期の作品である『バルーンファイト』と『アイスクライマー』も収録されているのですが、これらのゲームで採用されている、右から出ると左から戻ってくる、つまり画面右端と左端がループしているという仕組みも、『パックマン』が先駆け。当時は、当然ハード性能の低さもあり、一画面で成立させざるを得ないゲームが多かった。しかし先人たちは、一画面なら一画面なりに、フィールドを広げる工夫を編み出していたわけです。その後、“スクロール”という手法を手に入れ、ゲーム世界に格段の広がりがもたらされることは皆さんご存知の通りです。

 ゲームを構築する上で採用されてきた言葉が一般的に使用されるようになったのと同様に、これら制限の中でのUI(ユーザーインターフェイス)もまた、一般化される。画面の右端と左端をループさせるなんて、今やあらゆる文字入力で採用されていますよね。逆に、改めて昔のゲームを遊んでみると、あれ、これは掘られていないぞ……と感じる埋蔵金もたくさんあることに気付きます。一例としては、『ギャラガ』の1機犠牲にしてパワーアップするシステム。“1機”という概念が廃れてしまったこともありますが、あれ、相当応用が効く優れたアイデアだと思うんですよねえ。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.630』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年1月12日
■定価:694円+税
 
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