2017年4月8日(土)
『劇場版 SAO』伊藤智彦監督に“ネタバレあり”インタビュー。あのシーンで明日奈はなんと言ったのか?
映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-(以下、劇場版 SAO)』の制作を指揮した伊藤智彦監督の“ネタばれあり”インタビューをお届けします。
劇場公開から5週目で興行収入20億円を突破した本作。4月8日からは新たな来場者特典として公式ネタバレ本『SAO劇場版“裏”記録全集』が配布されることが決定しました。このインタビューでは、それを踏まえて、公開当初には触れられなかった質問などを伊藤監督に伺ってみました。
またインタビュー後半では、電撃オンライン読者から募集した伊藤監督への質問にも答えていただいています。『SAO劇場版“裏”記録全集』には、ここで聞いている以上にさまざまな裏情報が記載されているそうなので、興味がある人はもう一度劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?
【注意】この記事には『劇場版 SAO』についてのネタバレが多く含まれています。まだ映画本編をご覧になっていない人は、鑑賞後に読むことを強く推奨します。
――公開5週目で興行収入20億円を突破したことを受けて、率直な感想を教えてください。(※4月6日時点で観客動員数160万人、興行収入23億円を突破)
伊藤監督:よかったです。“15億”を超えようという話は出ていたんですけど、ここまで伸びてくれたのは「よかった」の一言に尽きますね。
――4月8日からの来場者特典の『ネタバレ満載スタッフ座談会小冊子』を制作することになった経緯を教えていただけますか?
伊藤監督:原作担当編集の三木さん(ストレートエッジ代表の三木一馬氏)が「やりませんか?」と言い出したのが始まりです。昨年公開された映画『君の名は。』で、劇場公開中に第2弾パンフレットが制作されたことがありましたが、それをやりましょうと。
ただ、パンフレットはやはり制作に時間がかかる部分もあるので、上映期間中にできる限り早くユーザーに届けたい、ということを優先した結果、宣伝プロデューサーである相川さん(アニプレックスの相川和也氏)から「来場者特典にしましょう」と持ちかけられて、特典になることが決定しました。
――そうした経緯があったわけですね。
伊藤監督:でも座談会に参加してる人が一堂に会する機会がなくて(※)、ロサンゼルスのイベントの時にようやく座談会ができたんですよ(笑)。
(※来場者特典冊子の座談会には、伊藤監督の他、アニメキャラクターデザイン・総作画監督の足立慎吾氏、原作者の川原礫先生、原作キャラクターデザインのabec先生、プロデューサーの大澤信博氏、柏田真一郎氏、そして三木一馬氏の7名が参加しています)
内容はネタバレばかりなので、すでに劇場へ足を運んでくれた方は喜んでくれると思いますし、これから見るという方も映画を見た後に読んでもらえたらなと思います。あまり表に出ないabecさんのキャラクター原案イラストなども載っていて、なかなかレアなものも見られると思いますよ。
▲こちらは、『劇場版 SAO』の正式タイトル発表時に公開された和人(キリト)と明日奈(アスナ)の設定画です。 |
――本作が劇場用作品として初の監督作品ですが、制作を終えられてみていかがですか?
伊藤監督:思い描いている(『劇場版 SAO』の)完成形がスタッフごとに違っていたりして、俺が思っているイメージをどこまで伝えきれていたんだろう? と思うことがありました。小冊子にも書かれていることですけど、プロデューサー陣も把握しきれていないことがあったりしましたね。俺の思い描いているものを、どう共有するのが理想形なのだろうかを考えて、次の機会に生かしたいですね。
――制作はギリギリまで行われていたのでしょうか?
伊藤監督:試写会用の映像の納品日が一旦あって、その後でもう少し期間をいただけてたので、現在公開しているものは、試写会用のものからもう少しクオリティをアップしたバージョンです(参考:公開中の『劇場版 SAO』は試写会のものとはちょっと違うらしい)。とは言っても、公開1週間前とかに完成したというわけではないので、それなりに余裕はあったんじゃないかと思います。
――本作の脚本は原作者の川原礫先生との共同脚本ですが、どのような流れで制作されたのでしょうか?
伊藤監督:まずは、大もとの叩き台となるプロットを川原先生から出していただきました。そのプロットを俺と各社プロデューサー陣で話し合い、アニメの脚本形式に落とし込んで、それをさらに川原先生に監修していただいて……という流れで作っていきました。
――『劇場版 SAO』は、原作にはないオリジナルストーリーですが、そのアイデアも川原先生が出したものなのでしょうか?
伊藤監督:そうですね。「今回はARで戦います」「ARのアイドルがいます」「ラストは新国立競技場で戦います」ということはかなり早い段階で川原先生から出ていたアイデアですね。新国立競技場が舞台なのは、『アクセル・ワールド』でもそこが使われていたから、その繋がりだとも聞いています。
――本作は、海外でも同時に上映が開始しましたが、海外の反応はいかがですか?
伊藤監督:海外の方も喜んで見てくれている印象です。俺が海外で観客と一緒に見たのはロサンゼルスでの上映なのですが、こちらが反応してほしいところに反応していただきましたし、ラストの和人と明日奈がキスしようとするシーンでユイが出てくるところで「FU○K!」と少し興奮されていた方もいたりしました(笑)。
その時、俺の後ろに海外のキャストやその関係者の方々が座っていたんですが、それを言ったのが英語版キャストのご家族の方だったみたいで(笑)。後でキャストさん自ら「すみませんでした」と言われましたけど「俺は何も聞こえなかったよ」と答えました(笑)。
でもこういう反応はアリだと思うんですよね。日本で映画を見る時でも、もう少し反応しながら見てもいいのかなって思います。先日、マーベル・スタジオの『ドクター・ストレンジ』を見ていた時、ストレンジが魔法陣を出そうとしてなかなか出ないシーンで俺は大きな声で笑ってしまったんですけど、周りが静かでしたからね。
――日本よりも海外で反応があったシーンなどはありますか?
伊藤監督:日記を読み終わった和人の後ろに明日奈が立っているシーンで、海外の方はどよめいていましたね。「これはヤバイ!!」って雰囲気で。まぁ確かに、普通は怒られますよね。
――日本での先行上映では、和人が自販機をなぐって、その直後に詩乃に「飲むか?」って聞いたシーンで少し笑いが起きていましたね。
伊藤監督:あのシーンは海外でも反応していた方がいましたね。
――他のシーンについてもお伺いします。劇中のさまざまなシーンで蝶が飛んでいたり、新国立競技場の戦いでユナが持っていた盾に蝶の意匠が入っていたりと、作中で蝶がひんぱんに登場します。その意味については?
伊藤監督:小冊子でも多少語っていることですが、“胡蝶の夢(※現実なのか夢なのかの区別がつかないことの意味)”という言葉があります。それを表現したかったことと、アニメでは使いやすい記号だったということですね。だからユナが出てきた時は蝶が飛んでいるんです。それとキリスト教圏では、蝶が“復活”を意味していたりして、そういう意味にもつながるからですね。
――ユナのそばにいるマスコットは何者なんでしょうか?
伊藤監督:あれはラスボスの片割れみたいなもので、名前は“アイン”と言います。ユナ自体は《アインクラッド》第100層のボスのリソースで動いていたと作中で語られており、ラスボス的なものをユナの近くに置いておきたかったからです。アイドルだったらマスコットもいるだろうという理論をもとに、マスコットにされてしまったラスボスが彼女を監視している形ですね。
ドローンに記憶が吸い込まれているカットがありますが、その時だけアインがあくどい顔をしているので、そこはぜひ劇場で確認してみてください(笑)。
――エイジは《風林火山》にボスを仕向ける直前に「お前らの相手は~」とわざわざ宣告したり、研究室の風景をARで変えてビールを飲んでいたりと、自分や周囲を演出するのが好きなタイプに見えますが、いかがでしょうか?
伊藤監督:彼は残念なやつだと思いますよ(笑)。多分、《風林火山》に声をかけているシーンでは“自分は超強い”と暗示をかけているからだと思います。あの時はスーツを身に着けているので、実際にチートをして強くなっているわけですが、それによって自分が強く、偉くなった気がするのでそれが態度として出ていると思います。
研究室を変えているのは、せまい部屋にいるけれど明るい感じにも見えるし、旅をしているように見せたいという制作側の意図もありますね。
――病院で明日奈が倒れるシーンで、その直前に彼女が手を動かしていました。あれは何をしていたのでしょう?
伊藤監督:あの動作は、我ながらわかりにくいなとは思っているところです。その前のシーンで《ALO》内にある《アインクラッド》22層のログハウスでキリトが照明をつける所作をしましたけど、あの時にアスナは「明かりもつけないで」と言われてましたよね。実はその時のアスナは、照明のつけ方も忘れていたんです。
キリトが電気をつけた動作を思い出して、倒れる時に明日奈はその動作をマネして、今の状況が現実なのか、仮想空間なのかの混乱を動きとして表現しているんです。パッと見た時に、明日奈がおかしくなったのでは? と伝わればいいんですけどね。
――なるほど。そういった演出意図があったんですね。記憶に関することで言うと、エギルのお店のシーンで、クラインが「銭ゲバ道具屋~」とエギルに言っていて、クラインの記憶が戻ったんだなってわかる描写がありましたね。
伊藤監督:コンテのト書きでは、そのシーンの女子たちのところに、「クラインの記憶は無事に戻ったんだなと思い……」と書いていました。つまりは、そういうことですね。
――また演出については、人物の上にアイコンが表示されたりとARを意識した作りになっていたところもARをテーマにした作品らしいポイントだと思いました。それについてはいかがですか?
伊藤監督:可能だったら《オーディナル・スケール》のランキングや名前もずっとやりたかったんですけど、それをずっとやるのはなかなか大変で(笑)、そういう表現は前半部分に集約させました。後は要所要所で見せていて、気がついたらそういうUIが映っているという形にしています。
――ラストバトルでは《ALO》や《GGO》のキャラクターたちが登場しますが、そのシーン以外にもTVアニメで登場したキャラクターは登場しています。「これは気付かないかも?」というキャラはいたりしますか?
伊藤監督:これは舞台挨拶でも話していたりしますが、最後の新国立競技場でユナが消えていくのを見上げていくシーンでは、キバオウらしき人がいますね。他にもシンカーやユリエール、第1期の第4話でシリカを襲っていたギルド《タイタンズハンド》の青龍刀使いや、太っている人、ギルド《聖竜連合》の肌が褐色の人、後は隣に奥さんらしき人が一緒にいるニシダさんと思しき人ですね。
――ニシダさんもいたんですか!? 気が付きませんでした。
あのカットだけ、明らかにSAOサバイバーの人たちがいるだろうと描いています。Blu-rayとDVDが出た時には、コマ送りで確認してもらえれば(笑)。
――明日奈の部屋のシーンで、彼女がベッドで和人に言ったセリフはなんですか?
伊藤監督:「いいよ」と言っているわけですね。まぁ、その意味は察してください(笑)。ということは、今までこの2人はそういう行為をしていないのか……ということが気になるかもしれません。川原先生の答えはわかりませんが、三木さん曰く「まだ」とのことでした。でも、ラストシーンで2人でキャンプに行くということは……とも言っていましたね(笑)。
――監督は『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』に衝撃を受けたと以前別のところでお話しされていましたが、最後のキリトが一撃で敵を倒すシーンや、合宿に行っている直葉の「島根にパソコンが~」というセリフはこの作品を受けてのことなのでしょうか?
伊藤監督:そうです。いわゆるリスペクトですね(笑)。キリトが一撃で次々と敵を倒していくシーンですけど、“キリト無双をいれよう”というリクエストがあって、剣を振るっただけで爆発するくらいの圧倒的な力持っているんだよ、と描写するために入れていました。
直葉のセリフについては、“彼女がどこかでネタを仕入れて使っている”という設定で入れています。どういうことかと言うと、「島根にパソコンなんてあるわけない」自体はすでに有名なネットスラングですが、その元ネタは『デジモン』なわけですよね。でも直葉は元ネタはともかくそのネットスラングを知っていて、使っているということです。
――なるほど、そういう意図だったんですね! てっきり単なるリスペクトだと思っていたので、“直葉がネットスラングを使う女の子だった”というのはおもしろい発見でした。それでは続いての質問です。『SAO事件記録全集』の著者は公開されていませんが、最後の一文を追加したのは誰なのでしょう?
伊藤監督:新国立競技場にいた誰かというのが、答えですね。川原先生も誰が作者なのか決めてないと話されていますが、ファンの間ではキバオウが書いているという説があるらしいですね。
原作の記述を読むと大ギルドに入っていた人が書いていたものらしく、キリトについては揶揄的なことも書いているので、キバオウが書いているんじゃないか? と。新国立競技場のシーンでキバオウがいるのは、その説もあって入れているわけです。だからキバオウ説が当たっている可能性もありますが、答えが出たわけではありません。
――エンドクレジット後のシーンと「SAO will return」という一文に、ファンならやはり期待してしまいますが……。
伊藤監督:みなさん、続報にご期待ください。
――続いては、電撃オンライン読者から寄せられた質問の中から、多数寄せられたものをチョイスしてお答えいただきたいと思います。
電撃オンライン読者からの質問とその答えを掲載
【質問】明日奈はバイクを運転するのでしょうか? 流星を見に行くシーンなのですが、キリトのバイクにキャンプ装備一色を積んでのタンデムは無理だと思ったのですが……。ライダー姿の明日奈が見てみたいです。(ふぉーすさん 男性/45歳)
伊藤監督:はい、無理ですね(苦笑)。俺も絵を描いた後で「これは無理だなぁ……」と思ったんです。荷物はたぶん先に送っていて、明日奈とタンデムして到着後に荷物をピックアップしたんじゃないかと思います。明日奈がバイクを運転できるわけではありません。
【質問】劇中で、和人がパスタを茹でながらユナの曲を聴いている理由を知りたいです。有線などでたまたま流行曲がかかっていた的な感じですか? キーキャラクターの曲だから流したとかでしょうか? それとも他に理由があるのでしょうか? 教えてください。(ともるさん 女性/38歳)
伊藤監督:和人はあの時点で、新国立競技場で行われるユナのライブに行くつもりだったんでしょう。「気が向いたら」なんて言いつつ、予習していたんですよ。多分、里香あたりからデータが送られてきて、それを聞いているんだと思います。
――そうだったんですね。
伊藤監督:ちなみにファミレスのシーンで、里香の主観映像の時にユイが降ってくるカット。右上に「ダウンロード中です」というメッセージが表示されているんです。あの瞬間、ユナの曲をダウンロードしているんですね。その後で珪子を歌わせるシーンになるわけです。
――なるほど! すでにレストランにいた時から里香は珪子に歌わせるつもりだったんですね。
伊藤監督:そういうことです。
【質問】《オーグマー》は“視覚とわずかな触覚”への干渉がある“《ナーヴギア》のダウンスペック版”ということでしたが、《オーディナル・スケール》では触覚へのフィードバックが実は含まれていたりするのでしょうか?(mangiferaさん 男性/22歳)
伊藤監督:《オーグマー》自体が触覚へのフィードバックをすることはありません。スティック状のコントローラを持っているカットがいくつかありますが、そのコントローラが震えたり、それ以外のガジェットを付けて触覚を補填してるんだと思います。
《オーグマー》単体でそれをやると、どんな技術なんだってなるので。《オーグマー》に骨伝導がついていると、普通の音を聞くよりも違った感覚が得られるかもしれません。実際にARゲームをプレイする時には、振動が伝わるビブスのようなガジェットを着用してプレイすることもあるみたいなので、《オーグマー》の時も似たようなことができるんじゃないでしょうか。
【質問】オーグマーは種類がいくつかあるのでしょうか? 《オーグマー》は装着時、頭の左側に棒?みたいなものがありますが、《オーグマー》の説明映像でマラソンをしている人たちのものは右側に棒がありました。(タカポンさん 男性/20歳)
伊藤監督:本編内のマラソンの映像は《オーグマー》のPVで、あの映像に登場しているものはモックアップなんです。製品版はみんな左側につけるものになっています。それ以外で本編中に右側に付けてる人はゼロだと思います、多分。
【質問】4D上映を決めた経緯を教えてください(たなかさん 男性/21歳)
【質問】4D上映の演出(座席の動きや振動、においなど)はどのようにして作っていくのでしょうか?(乱取りALLさん 男性/23歳)
伊藤監督:4D上映を決めたのは俺ではありません。いつの間にか決まっていました(笑)。その後、4D上映のチェックができたので、MX4Dに関してはいろいろと意見を言わせていただきました。例えばカメラが動いたら、イスも同じように動いたり、カメラワークに合わせて振動したり、絵的に光った時はフラッシングの演出が入ったり……といった具合です。
絵にあわせてそういう演出をしていくのは、俺が言わずともやってくださいました。MX4Dでは、ユナが和人の後ろに立っている時に、首の後ろに“プシュッ”って空気を吹く演出をやってくださいとお願いしました。キリトが「うわっ」ってなった時にこの演出ができたらおもしろいんじゃないかなと思ったんです。
またユナが和人を第100層に誘うシーン。あのシーンではカメラ自体はそんなに動かないんですけど、現実感を忘れさせたいと思ってイスをじわ~って動かしています。4Dは絵や音だけではない臨場感を与えられて、おもしろいやり方だなとも感じましたね。
【質問】作画の枚数は全部で何枚だったんですか?(灼眼のたいきさん 男性/26歳)
伊藤監督:ざっくり6万枚くらいです。正確な数は俺も知らないです、制作スタッフが教えてくれません(笑)。
【質問】エイジは和人に敗北した後、《ドルゼル・ザ・カオスドレイク》に襲われますがその際に《SAO》時代の記憶をスキャンされてしまったのでしょうか?(オーディナルスケール起動!さん 男性/20歳)
伊藤監督:あそこでエイジが記憶をスキャンされたとは限らないんですよね。奪われたところは描かれていないわけですし、その後エイジが競技場に上がってきましたけど、それまでモンスターから逃げ回っていたかもしれません。「うわーー!」というセリフ自体は収録したんですが、編集でそのセリフはカットしたので、エイジの記憶が無事だった可能性はあるんですよ(笑)。スーツのない状態で倒すのは難しいかもしれませんが、回避することなら……という感じです。
――もしも、あのタイミングで《オーグマー》を外すとどうなったんでしょうか?
伊藤監督:目の前からモンスターが消えて、なんともなくなりますね。ただ、それを言うと競技場でのシーンはみんな《オーグマー》を外せば解決するわけですが(笑)。まあ、そうならないように、競技場の中の人は目の前に人参をぶら下げられている状態にしているわけですけどね。
(制作陣補足:スタジアムの会場にある超大型モニターには「ユナのライブを楽しむためにオーグマーは外さないでください」といったような注意書きが出ていました。そのため、オーグマーを取り外すという発想自体が観客には持ち得なかったのでしょう)
【質問】《オーディナル・スケール》は何気に《ラフィン・コフィン》の格好の狩場だと思うんですけど、やっぱり幹部クラスでないと、リアルで殺る勇気が出ないものなんですか?(シイタケ嫌いの絶剣さん 男性/16歳)
伊藤監督:実は幹部じゃないやつは混ざってるんじゃないかと思いますけどね。あの時点で逃亡している“彼”は参加していないでしょうし、あのギルドマスターもいませんね。ただ、あの人たちが殺しているのは、「実際には殺してませんよ。ゲームですけど何か」という免罪符を持っているからやっているだけであって、ARでやると実際に捕まっちゃうじゃないですか。だからクラインの腕の骨を折ったエイジは、あの後捕まっていると思いますよ(笑)。
――ああ、やっぱりエイジはあの後で捕まっているんですね。
【質問】直葉が本気でオーディナルスケールをやっていたら、ランキングは何位ですか? その際の胸の揺れ具合はどのくらいですか?(リーファの《ALO》での揺れを十段階の5とした場合)(蒼乃翼さん 男性/26歳)
【質問】なぜ途中でリーファ(直葉)を合宿に行く設定にしたんでしょうか? そこだけが一番気になります! もっとリーファの活躍が見たかったのでショックです。リーファを動かすのが面倒だったとかではないですよね?(黒羽さん 女性/23歳)
伊藤監督:竹達さんにも話しましたけど、真面目に直葉がプレイすればエイジに勝つんじゃないでしょうか。場所次第だと思いますけど、ピョンピョンと飛べない場所での戦いだったら、直葉のほうが有利かもしれません。揺れ具合は……実際に動くとしたらサポーターとかをつけると思うのであまり揺れないんじゃないかなと思います。言っておきますけど、決して直葉を動かすのが面倒なわけではありませんよ(笑)。
▲第2弾キービジュアルや“サイバーセキュリティ月間”のコラボポスターには、本編ではお目にかかれなかった“《オーディナル・スケール》衣装の直葉”がいたりします。 |
【質問】エイジが和人に千切られるまで着けていた背中の機械は、どのように機能しているのでしょうか?(烏さん 男性/21歳)
伊藤監督:背中のというよりは、エイジはパワードスーツを身に着けているんです。実際にアメリカ陸軍とかで採用しているパワードスーツの便利なものだと思ってください。このスーツのおかげで、エイジはものすごいジャンプができたり、素早く動けたりします。スーツが電気信号を送って、強制的に肉体を強化しているイメージですね。和人が外した背中の機械は、このスーツの中心部分的なものです。ただ、このスーツに関してだけは何年か後には実現して、アニメを現実が超えている気がします。
――ちなみに、エイジがクラインのパンチの軌道を読んだのは、スーツとは関係ないのでしょうか?
伊藤監督:あれはエイジが一人だけ特別な《オーグマー》を使っているからですね。スーツと同じくチートです。
【質問】和人とエイジとの戦闘シーンで剣の攻撃を弾きあっているのはなぜですか? ARなので実体化していない限り攻撃を弾かれるのはありえないと思うのですが……(グォレンさん 男性/22歳)
【質問】なぜARなのにつば迫り合いができるのですか?(テイクさん 男性/17歳)
伊藤監督:剣と剣で弾きあったり鍔迫り合いをしているわけではありません。よく見てもらえるとわかりますが、剣ではなく拳と拳がぶつかっているんですね。
【質問】《SAO》のさまざまなキャラが作品内に登場しましたが、このキャラは泣く泣く諦めたというのはありますか? 自分はアルゴを出して欲しかったです!(カオさん 男性/22歳)
伊藤監督:番外編のキャラを出すという話も出たことはありましたけど、アニメだけを見ている人にはわからないところもあるので、今回は出しませんでした。
【質問】ラストバトルでのアスナが放った“あの技”は《アリシゼーション》編で明かされたシンイによるものなのでしょうか? 《SAO》時代のセーブデータのアスナでは《ALO》にコンバート後に獲得した技は使えないのでは? と疑問に思ったので質問いたしました(tatuyaさん 男性/29歳)
伊藤監督:気合ですかね……(笑)。茅場も「システムを凌駕する~」と話していましたが、そういうことなんじゃないでしょうか。身体が勝手に動いた……というやつだと思います。
【質問】ユナを見た明日奈や和人が“不思議そうな顔”をしているのですが、あれは、「どこかで見知った顔なのだけど」思い出せずに居る状態から、ラストの《SAO》で彼女に会ったことを思い出した。に繋がると思ったのですがあっていますか? 鑑賞5回目ぐらいにソレに気づいて1人鳥肌でした。(exlionさん 男性/40歳)
伊藤監督:はい、あっています。
【質問】エイジが“彼女”に対して恋愛感情を抱いている描写がありましたが “彼女”からはどうだったんですかね?(魔剣グラハムさん 男性/26歳)
伊藤監督:俺個人としては、“彼女”はエイジを恋愛対象としては見ていないと思っています。
【質問】なぜユナのコンサート当日に、和人くんは指輪を持っていたのでしょうか? カバンに入れっぱなしということはないですよね……? 私は約束の日に指輪を渡すと思っていたので、そこだけがいまだに疑問です。(いちはさん 女性/24歳)
伊藤監督:それはライブ前に買ったからだと思います。キリトが買った指輪のブランドの“agete(アガット)”の本社が新国立競技場の近くにあるので、そこまで取りに行ってからライブにいったんじゃないかな?
【質問】《オーディナル・スケール》内での戦闘はARによるもので、網膜に照射されているであろう映像と音声のみですが、なぜ爆風エフェクトで髪がたなびいたり衝撃で仰け反ったりするのでしょうか。アニメの演出としてどうしても必要であることは重々承知しています。ただなんというか、プレイヤーを端から見ている人たちの視点から考えるとどうしても矛盾が発生してしまうように思うのですが、監督はその辺の描写についてどのようにお考えですか?(オスミウムさん 男性/17歳)
伊藤監督:《オーディナル・スケール》でのアスナの髪がなびいてるのは“ゲーム中の映像”です。ゲーム中に爆発や衝撃のエフェクトがあったからといって、実際に髪がなびいているのではなく、なびいているようにARで見せているということですね。だから《オーグマー》を付けていない人からは、髪はなびいているようには見えません。
のけぞったりするのは、2つの理由があります。1つはそのプレイヤー自身のロールプレイですね。もう1つは反射でやっているものがあると思います。例えば、目の前にすごい勢い銃弾が飛んできた場合、とっさに目をつぶったり、避けようとしたりしますよね。考える前に体が動いてしまう、そんな感じですね。
――理由の2つめについては、VRゲームをプレイしているとわかりますね。確かについついビクッと身体が動いてしまったりします。
【質問】劇中で詩乃が何かのバイトをしているとのことですが、ズバリどんなバイトをしているのでしょうか?(なか卯では1弾目のカードでなか卯の制服を着ていなかったですし) 後、なぜバイトを始めたのか気になっています。(旋律零式さん 女性/27歳)
伊藤監督:なか卯でアルバイトしてるんじゃないかな……? だから、和人からの牛丼クーポンはいらないって言ったんだと思います。なか卯の話で言うと、コラボの時に明日奈がなか卯の制服を身に着けていて、明日奈はバイト禁止なんじゃないのかってツッコミをいただいたりして、結構困りましたね(笑)。
【質問】最後の戦いでボスが“とある行動”を2回します。1回目の行動を見ていないはずのアスナが、2回目の行動をつぶしていましたが、なぜ止めようと思ったのか謎です。1回目を見ているのであればわかりますが。(カインさん 男性/22歳)
伊藤監督:あれは指揮官としての勘ですね。あの雫がどういう効果をもたらすかよりも“行動を成立させてはいけない”と経験則で感じ取ったんです。デスゲームである《SAO》の前線で生き抜いてきたからこそ出てきた言葉です。
▲映画中盤の戦いでも、アスナはプレイヤーとしてだけでなく指揮官としての能力の高さを見せるくだりがありました。 |
【質問】流星群を見に行ったラストシーンで、明日菜と和人が音声なしの掛け合い(口パク)があったと思いまが、どんなやり取りがされているのか、気になりすぎます! ぜひ、教えていただきたいです!(むーさん 男性/28歳)
伊藤監督:これは答えられません。皆さんが思った言葉を2人に言わせてあげてください(笑)。
――それでは最後に、『劇場版SAO』を見てくれたファンにひと言お願いします!
伊藤監督:見に来てくれてありがとうございます。答えを知ったうえで見ると新たな発見ができるかもしれません。ぜひ映画を楽しんでもらえたらと思います。
――ありがとうございました!
というわけで、伊藤監督にさまざまなことを伺ってみました。遅ればせながら、質問をお送りいただいた読者の皆さま、本当にありがとうございました。本来であれば皆さまから頂いた質問にすべてお答えいただきたいところですが、あまりに数がぼう大だったので、途中で説明したように似たような内容が多かったものを中心にさせていただきました。
『劇場版 SAO』のヒットだけでなく、原作小説の第1巻が4月25日の増刷発行分をもって単巻100万部、全世界累計で2,000万部を突破するなど、さらなる飛躍を遂げている『ソードアート・オンライン』。『劇場版 SAO』は、キリトを演じる松岡禎丞さんも舞台あいさつなどで「これまでの『SAO』の集大成です」というくらい、見どころがいっぱいの作品に仕上がっています。
▲4月下旬出荷分より、電撃文庫『ソードアート・オンライン1 アインクラッド』が記念特製帯で店頭に登場します。すでに持っているという人も、記念にゲットしてみては? |
(※全世界累計発行部数は、日本国内での累計発行部数1,300万部と海外での累計発行部数700万部を合算した部数です。海外では、2017年3月末現在、中国、台湾、韓国、タイ、アメリカ、イギリス、ベトナム、スペイン、イタリア、フランス、ポーランド、ロシアなどで翻訳版が刊行されています)
このインタビューを読んで気になることがあった人は、ぜひもう一度劇場に足を運んでみてください。タイミングによっては、4月8日配布開始となる来場者特典『ネタバレ満載スタッフ座談会小冊子』でもっともっと“『劇場版 SAO』の裏側”を知ることができるかもしれませんよ?
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