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2017年5月31日(水)

【電撃PS】『FF14 紅蓮のリベレーター』吉田直樹P/Dインタビュー【メディアツアーレポート2】

文:電撃PlayStation

 6月20日に発売予定の『FFXIV』最新拡張パッケージ『ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター』。この記事では、メディアツアー中に本作のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビュー! 『紅蓮のリベレーター』について、とくにジョブなどの変化にまつわる話を主軸に聞いています。

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『ファイナルファンタジーXIV』
『ファイナルファンタジーXIV』

『紅蓮のリベレーター』での新たな狙い

――さまざまな要因で新規プレイヤーが大いに増えているなか、『FFXIV』が4.0シリーズとなる『紅蓮のリベレーター』でどんなことを狙っているのか、どんなことをやろうとしているのかをお聞かせください。

吉田:大幅なコンテンツ追加と、“新生”ほどではないにせよ、新たなスタートというイメージです。正直なところ、2カ月くらい前まではこれからの『FFXIV』について、全体的な意識を持っていたのですが、今がちょうどマスターアップに集中してしまっていて、上手く言葉にまとまらないです(苦笑)。

――それは今の開発状況や、アメリカ・ヨーロッパでのメディアツアーの反応なりPLLの反応なりを見て調整を加えていく部分がありそうというイメージでしょうか。

吉田:いえ、純粋にまだ終わってない部分もあります(苦笑)。バトル関連はほぼ落ち着いたんですが、クエスト周りはひたすら僕のフィードバックをまだ反映してもらっています。

 修正の反映をしたものを僕がメディアツアー中にチェックをして……という状況です。今回この『紅蓮のリベレーター』で多くのオーバーホールやシステム調整をかけているのは、“まだ成長できるだろう『FFXIV』!”という思いが強くあったからです。

 かねてから何度かプレイヤーのライフサイクルのお話をさせていただいたと思うのですが、このタイミングで新しく『FFXIV』を始める方が、『FFXIV』の今後の発展に大きく影響すると考えています。“旧版”“新生”ときて、3サイクル目という捉え方をしています。

 4.0シリーズというのは、これまで熱心に応援してくださっているプレイヤーのみなさんと、3サイクル目の新しいプレイヤーのみなさん、その新旧のプレイヤーが混ざって、また強力なコミュニティになっていく期間なのかなと。“新生”したときに僕が“メインストーリーの全体像はこのあたりまで”と想定していたうちの半分くらいまでは到達したかな、と感じています。

――『蒼天のイシュガルド』のときはそこまで感じなかったのですが、今回『紅蓮のリベレーター』でここまでバトル面などのテコ入れや新要素が入ることで、ある意味『新生エオルゼア』のときに近いくらい大きく変化するイメージがあります。

吉田:そうですね……MMORPGにとって、安定と変化は紙一重だと思っています。“安定している”というのは長くプレイを続けるうえでとても大切ですが、変化という刺激がないと飽きてしまう。新生から4年たって、飽き……もしくは慣れてしまった部分を変えることで、また新鮮な気持ちで遊べる……“ミニ新生”というわけではありませんが、『紅蓮のリベレーター』はそういうタイミングとしてはいいのかなと思っています。PvPは“新生”気味ですけれど(笑)。

――実際にプレイさせてもらって、さわり心地がかなり一新しているなと感じました。とくに既存ジョブが思った以上に変わっていたので、実際にプレイする人はかなり新鮮な気持ちになるのではないでしょうか。

吉田:メディアのみなさんの試遊は、レベル70の新しいクライアントでセットアップされているので、昨日のPLLでもお話ししたグレーアイコンに赤枠というスロットは見られません。ですが、既存プレイヤーのみなさんは、アーリーアクセスにログインしたらグレーアイコンだらけで……“どんだけ変わってるんだこれ!”という状態になるかもしれませんね(笑)。

――今回プレイできたのはレベル70のジョブでしたが、ここまでのアクションを全部修得してちょうど『蒼天のイシュガルド』時の総アクション数に並ぶくらいでしょうか。

吉田:そうですね。レベル70のアクションを修得して、現在のレベル60総アクションとほぼ同数になります。とまどいが半分ありつつも、新鮮に“なんかすごい変わった!”という感覚は、いきなり持ってもらえるんじゃないかなと思います。

メディアツアーとPLLの感想について

――まだ終わったばかりですが、アメリカ、ヨーロッパのメディアツアーと、今回のプロデューサーレターLIVE(PLL)を終えられて、各国メディアの反応や手ごたえはいかがですか?

吉田:やっぱり“このタイミングで大きく変更する意図は?”という質問が多く、特に北米からは、“『FFXIV』はよりカジュアル向けのゲームになるんですか?”という確認も多かったです。

 北米のツアー初日には、“『蒼天のイシュガルド』は新しいゲーム1本分だったのに対して、『紅蓮のリベレーター』はアジャストや変更が多いですね”みたいなことを言われたこともありました。僕としては、拡張パッケージである以上『蒼天のイシュガルド』のボリュームはあって当然だと思っているので、そこは3カ国のファンフェスを通してずいぶんお伝えしてきたので大丈夫かな、と思って説明を端折ったのですが……そこをあまり認識してくれてなくて。

 “『蒼天のイシュガルド』を超えるボリュームは当然すでにあるし、僕はそんなところをアピールするつもりがなかったです”って言ったら、メディアさん“えっ?”って(笑)。やっぱりキチンとそこから話さないとダメなんだ、と少し戸惑いました。

 そのため、2日目からプレゼンをちょっと変えたりもしました。あとは今回メディアツアーをやってみて印象的だったのは、“4人で遊べるハードコンテンツが欲しい”という意見が思いのほか多かったことでしょうか。ディープダンジョン“死者の宮殿”の180F以降がかなりキリキリ舞いする難度になっており、そこがおもしろかったっていう方が多いのかなと。ああいった4人で楽しめるハードなコンテンツの需要が、以前よりもより高くなっているんだなっていうのは、ここへ来てすごく感じました。

――8人より、もう少し小さめのコミュニティで、チャレンジ的な難度のコンテンツに行きたい、と?

吉田:ええ。インスタンスダンジョンより、ぜんぜん難しくていいよ、と。そういったお話が多かったので、日本に戻ったらこれはもう1段階真剣に検討してもいいのかなと。”ディープダンジョン2”など後継の遊びにもフィードバックできるんじゃないかなという気はしました。

ストーリーについて

――物語面でいくつか質問させてください。先日メインテーマ“Revolutions”のPVが公開され、その中にかなりのシーンが入れ込まれていてびっくりしたのですが、あのなかには物語の核心となる場面もあったのでしょうか?

吉田:もちろん、伏せるものは伏せてます(笑)。今はあの断片から想像して、アレコレ楽しむ期間かなと思っています。ちょうど5月15日から北米データセンター(DC)の移設があり、過密ワールドへの移動制限が入って……これらは4.0のために始まる施策なので、いよいよ4.0に向けた準備が一気に始まったなと。

 そのサーバーメンテナンスでログインできない状況の中、新たなPVを公開することで、いつも以上に視聴してもらえたのではないかと思います。動画を見て“これはこういう話なんじゃないか”とか、ヨツユのあの踏みつけで“ありがとうございます!”と言ってみたりとか(笑)。

 4.0が近づいてきて、メディアツアーも始まって……PLLでドカンと情報が出て、5月末にはメディアのみなさんのレポート記事も出て、あと2週間待てばもうスタートか! という一気の盛り上がりを作りたかったというのが大きいですね。

『ファイナルファンタジーXIV』

――『蒼天のイシュガルド』の物語はある種ロードムービー的というか、仲間とともに旅をする雰囲気がより強く出ていて、そこが人気だったと思います。それと比較して、『紅蓮』の物語というのはどういうニュアンスのものになるのでしょうか。舞台となる場所が“アラミゴ”と“ドマ”2つというのもけっこう大きなポイントかなと思うのですが。

吉田:雰囲気としては近いです。『FF』はもともと仲間と旅するという部分にフォーカスが当たることが多いですし、今回もそれらは意識しています。ただ、今回は前回に比べると、旅の総移動距離が長い。そして登場するキャラクターが多いため、進行に応じた“パーティメンバーの入れ替わり”があると思ってもらったほうがいいかなと。

――ある意味『FFIV』みたいに、その都度同行するメンバーが違うというような。

吉田:そうです。そこは意図的にそういう動きになってます。あとは、その地域そのシナリオ、シチュエーションのなかでフォーカスされるキャラ……主役が変わるというか。この期間はユウギリが主役ポジションなんだな、この期間はゴウセツが……と、そういう感じで、キャラ立ても含めてですけれど“旅している感”はありつつ、キャラの掘り下げもうまくやれているのではないか、と思います。

『ファイナルファンタジーXIV』

――今回はグラフィックの空気感にすごくこだわられたと、プレゼンでもお話しされていました。『蒼天のイシュガルド』でもそこは相当意識されていたと思いますが、それ以上となると主にどういった部分を表現しようとしたのでしょうか。

吉田:『蒼天のイシュガルド』の場合はイシュガルド地方で、かつドラゴンという架空の生物のフィーチャーがあり、ドラゴンたちが住んでいる場所という、”誰も見たことのない土地”を絵作りしていきました。

 それに対して、今回の『紅蓮のリベレーター』は、ある意味で人と人の争い……価値観と価値観のぶつかり合いがメインみたいなところがあり、より一歩、現実にあるものにシフトしています。そのため、現実の写真にもある“奇跡の1枚”的な空気感になるように……と。

 今日のメディアツアーでは行けませんが、ヤンサとか、アジムステップなどは、晴れた時の空気がとても気持ちいい。大平原というのは『FFXIV』では初めてのエリアとなりますので、晴れたときは草が光を反射してハレーションを起こすあたりは、かなり細かく調整してもらいました。

 例えばすごくきれいに手入れされた芝生は、陽の光すら反射する……そういったイメージです。ヤンサは切り立った岩の柱が乱立し、その周囲を霞の雲が漂っていて……想像できる絵を、しっかり実映像化する、といったようなことを意識したつもりです。

――『蒼天のイシュガルド』のときはよりハイファンタジー的なイメージだったのが、今回は現実にあってもおかしくないファンタジーの、自然の風景などを出そうしているんですね。

吉田:はい、その通りです。そのうえでも、やはりファンタジーらしさを感じられるように、色の使い方だとかをちょっとだけズラしていたり。そういったところはけっこうこだわったところです。

――今回クガネの街を歩いたのですが、今まで以上に“生きてる街”感を味わえる場所だなと感じました

吉田:とくにそのエリアの生活感は、人物の配置の担当者や、イベントを作っているチームがすごく頑張ってくれたと思います。小さな作業の積み重ねで、細かいところに凝っていて、生活感を出すための動きをコツコツ作ってきてくれました。これまでのパッチでも、ずっとそうしたこだわりを作ってきてきれたのですが、その努力がだんだん実ってきているのかなと感じました。

『ファイナルファンタジーXIV』
『ファイナルファンタジーXIV』

――本日プレイできたダンジョン“紫水宮”の竜宮城的なイメージも、ある意味ファンタジー表現の流れなのでしょうか

吉田:海外のメディアさんのご質問でも“老婆になるギミックがいろいろなところにあるが、あのジョークはすばらしかった”って言ってくれました。“あれはじつは日本のおとぎ話に、浦島太郎というものがあって……”と話していたら“おお!”と(笑)。

 そういった、僕らの育ってきた東方文化を上手くアレンジして、ニヤリとできる部分などは、海外の方にウケがとてもいいですね。他にもいろいろありますので、ぜひ探してみてください。

ジョブについて

――ダンジョンのバトルは、難易度的に初見でもムリなくクリアできる感じでしたが、レベリングダンジョンはやはりそのくらいの手ごたえを想定しているのでしょうか。

吉田:ええ、『蒼天のイシュガルド』最初のダンジョン……“ダスクヴィジル”の難易度がハードだったこともあり、その反省を生かしています。また、今回は全ジョブに大きなアクション調整が入っています。

 ジョブによっては、そもそもLv60の時点でスキルのローテーションが変わっています。それもあり、今回Lv61から始まる新しいダンジョンの難易度は、これまでの3.Xシリーズに比べるとかなり下げています。レベルが上がるごとに、難度もだんだん上がっていき、Lv70に近づくあたりでいつもの感覚に戻る感じです。

――ジョブに関してですが、全体のコンセプトとしては、ある意味初心者の方が“これだけ覚えていればいい”ということがわかりやすくなる調整と考えてよろしいのでしょうか?

吉田:最低限、“これさえやっていれば大丈夫”というジョブ操作の難易度を、今よりもわかりやすく、シンプルにしたいと考えました。よく誤解をされがちなのですが、“わかりやすくシンプルであること”と“簡単”はイコールではありません。Lv70になり、使い込めば使い込むほど、味が出てくるという部分もかなり多いと思います。

 アーリーアクセスが開始されると、3.XまでのLv60ジョブアクションと4.0からのLv60ジョブアクションを比較して、“えっ、アクション、こんなに減るの?!”と焦る方もいらっしゃるかもしれません。ですが、みなさんがここから当面プレイするのは、キャップLv70の時代です。もちろん、Lv70になってからが本番となりますので、あまりLv60の時点で慌てず、ぜひじっくりプレイしていただけるとうれしいです。

――プレイ前はけっこうカジュアルになったのかなと思っていたのですが、日本のメディアで、プレイしたあとに“簡単になってる”とコメントした人は1人もいませんでした。これはまた考えないと、と(笑)。

吉田:(笑)。“工夫する余地”というか“考える余地”というものがなくなってしまうと、やっぱりゲームではなくなってしまうと考えています。全体的なバトルシステムの入口はとにかくなだらかにして、誰でもとっつきやすく。その代わりに、上を目指せば目指すほど、工夫する余地が、よりわかりやすく見えてくる形にしたかったんです。

 3.XシリーズでのLv60アクションの膨大な数と、1つのローテーションミスで一気にDPSが下がる恐怖。工夫というよりも、緊張感が強すぎて、小手先のテクニックがききにくいという……。これはこれで好きな方もいらっしゃると思いますが、この方向性はここが限界かなと。これ以上積み上げると、完全にコアの人しか遊べなくなりそうだぞ、と。

 今回は、ある意味シンプルにすることでより明確に、“自分はどこを改善したらよくなるんだろう”というのがわかるようになるので、うまい人はより高みへ行くんでしょうし、腕のいい方のなかでも差がわかりやすくなる気がします。

――ある意味、赤魔道士は初心者がふれるジョブではないからか、ある程度最初からハードルを上げて、やりくりするおもしろさみたいなものを前面に出しているのかなという印象を受けました。

吉田:そこまで強く意識はしていませんが、新ジョブをプレイする方は、基本的に『FFXIV』の基礎が完成している方が前提です。新ジョブにジョブチェンジするためには、いずれかのジョブがLv50になっている必要がありますしね。ただ、メディアのみなさんはいきなりLv70でプレイされているので、プレイヤーのみなさんとは、感じる感覚が異なるかもしれません。

――調整に一番苦労されたジョブはなんでしょう?

吉田:バランスという意味だと……うーん、どうなんでしょう。調整や実装担当によっても意見が違うとは思うんですが……。

 例えばタンクが3ジョブあるなかで、戦士はソロ性能が非常に高いですし、サブタンク(ST)枠が大安定みたいなところがありました。自己回復力高いですし、瞬発力も高い、つまりはかなり高いレベルで完成されているジョブ。

 しかし、だからこそ戦士が気持ちいい! と使っている人も多いから、単純に戦士の飛びぬけた頭を、無理やり押さえつけるというのは違うし……など、戦士の立ち位置を中心にしながら、ナイトの弱点を補いつつ、暗黒騎士も含めてどこに着地させるのか、というのはけっこう苦労があった点だと思います。黒魔道士は僕がさわってからもけっこう調整が入っているので、苦労しているかもしれません(苦笑)。

――プレイした感じですと、最も変わっているのはやっぱり吟遊詩人でしょうか。

吉田:機工士と吟遊詩人はダントツです。ほぼ新ジョブなんじゃないかという……すみません。

――でも歌を切り替えつつ、効果的に使っていくという意味で、かなり“詩人らしくなったな”という印象です。

吉田:攻撃速度影響があったり、自己強化でリキャストがリセットされたりとか、いろいろな効果が発生しますね。以前同様に、バッファー的な側面もありつつなので、詩人はやっていて楽しいと感じていただけるとうれしいです。2.5時代+αの進化というイメージで、やればやるだけ新しい発見もあると思います。

『ファイナルファンタジーXIV』

――全体的に、ステータスを忙しく切り替えるというよりは、一定のステータスを維持していると、どんどん強化されていくといったイメージの調整がなされているジョブが多かったように思いました。

吉田:基本的には、コンボ分岐するにしても意味のない分岐のようなものはなくして、“ストレートにローテーションを回していけば最低限のDPSは出ます”“そこから先はコンテンツに合わせた工夫で伸びしろの余地が変わります”というのを目指しているので、コンボルートに関してもかなり調整が入っています。

 そういう意味では、どのジョブもまっすぐにはなりました。余計なことを考えなくてもいいというか。ただ、どこで何を使うかという“瞬間判断”のタイミングでうまさが変わってくるという。

――しばらくはプレイヤー間での研究が白熱しそうですね。

吉田:そこが拡張パッケージの楽しい部分かなとも思いますので、ぜひぜひ結論を急がずに、レベリングしながらああでもないこうでもないと言って、1つ目のレイドでその工夫を試してみていただけるのがいいのかなと。何年かに1回しか来ないビッグウェーブなので、そこをゆっくり楽しんでいただけるとうれしいですね。

――ジョブゲージのデザインはどれもすごく特徴的ですね。

吉田:ええ……かなりリトライをしてもらいました。今回ジョブゲージのUIデザインは複数のスタッフが担当しているのですが、みな微妙に出してくるデザインの性格が違う。

 “今までのUIデザインにあわせる”もしくは“リードデザイナーの皆川(裕史氏)が作りそうな、『ファイナルファンタジー タクティクス』や『タクティクスオウガ』に寄せる派”と、“思い切ってもっと写実的にジョブのイメージを出す派”、“もっとシンプルにすべき派”などなど、色々飛び交ったようで、僕のチェックに回ってきた初回は“オイ、これジョブ毎にデザインテーマ違いすぎじゃん!(笑)”となり……(苦笑)。

 1種1種あらためてバトルチームとUIのデザイナーたちで、バトルチームの“このジョブの管理要素は必ず入れてほしい”というリクエストと、UIチームの“だとしたらこれくらいの範囲はUIとして必要です”というものをすり合わせていきました。

 それに加え、僕がそのうえに“各ジョブのジョブゲージモチーフを何にするか”というところで意見を出すことで決めていきました。例えば吟遊詩人は、ゲージのデザイン自体が今とまるで違ったのですが、“演奏、音楽、詩、ゲージと考えれば、素直に五線譜かな”とこちらから指定して変えました。

 どこまでデザインに凝るか、逆にシンプルさはどうするのか、これはデザイナーが相当悩んでしまうポイントです。そのため”シンプルさ”というキーワードは、“シンプル版のジョブゲージは、別モードで作った方がよりシンプルになるし、それが好まれるはず”とデフォルトのジョブゲージコンセプトから排除して、“もっとそのジョブを表すグラフィカルなもの”という方向へ統一をとっていった感じですね。

――それはつまり、今後フィードバックがあってシンプル版を実装した場合、切り替えが可能になると。

吉田:既に作業しており、任意で切り替えられるようにします。

――ゲージの存在自体は人によって意見が分かれるようですね。デバフを見るのは変わらないから、結局見るものが1つ増えただけではという意見と、やっぱりこういうのがあったほうがとくに初心者は何を重視すべきかわかりやすくなっていい、という意見と……。

吉田:例えばですけれど、黒魔道士の“アストラルファイア”と“アンブラルブリザード”はとても説明しにくいシステムです。しかし、ジョブゲージが実装されたことで、炎と氷の属性が絵で示されるため“あ、なんか炎っぽいシンボルがついた”と。そこからでいいと思っているんです。

 青いから今は氷属性、オレンジだから炎属性……シンプルに、それが小さなバフアイコンではなく、目の端っこに引っかけるだけでもわかる専用ゲージになるというメリットは、プレイヤーのみなさんにとって大きなものだと思います。

『ファイナルファンタジーXIV』

――今後デバフに対しても視認性を高めるUIを導入する可能性はありますか?

吉田:デバフはさすがに数が多すぎて無理ですね……。せいぜい今回抵抗してやったのが“エスナ”で消せるものと消せないものをアイコンでわかるようにしたくらいで。やはりコンテンツごとに違うし、パーティ間で共有しないとならないので、仕方がないのかなと。ジョブゲージは自分にさえ見えていればいいので、ここまで大々的にできる感じですね。

アクションについて

――アクション関連で、例えば“猛者の撃”や“捨身”が使えなくなるジョブがあったり、“クルセードスタンス”の仕様が大きく変わったりしています。最終的にはどのジョブも以前と同じ感覚でDPSを出せるようなバランスになっているのでしょうか。

吉田:うーん“以前と同じ感覚”というのが、何を指しているのかによります。そもそも、バトル計算式の係数1つとってもLv60までとLv70で違いますし、2.Xから3.0で変化したように、全ジョブに変化があると思っていただいたほうがいいかと思います。

 当然ながらLv70のバランスは、先ほどもお話ししたように、現在のLv60ジョブアクションのローテーションと比較しているわけではなく、Lv70ジョブアクションで調整されています。過去のLv60時代の自分と比較して調整するのではなく、Lv70の各ジョブ横比較で調整されている、という意味です。レベルが上がっている以上、トータルDPSは絶対にこれまでよりも高くなりますしね。

――一番驚いたのは“クルセードスタンス”の仕様変更でした。私自身はスタンスの切り替えがネックでヒーラーを敬遠していたので、個人的にはうれしいです。

吉田:ヒーラーの攻撃計算式変更があってこそになりますが、大きく変えたかったのはやはりその点です。高難易度レイドを除く他のコンテンツでは、ヒーラーはもっと気楽にできていいと思うのですが、どうしてもインスタンスダンジョンを早くクリアするために“ヒーラーも攻撃した方がよさそう”という雰囲気があります。

 そうなるとクルセードスタンスが準必須化し、スタンス切り替えも必須、面倒くささも必須、切り替えミスでの壊滅もありそう……ということで、ヒーラーを出陣させるのが面倒になってきています。これから『FFXIV』を始める方にとっても、これはあまりよくない。今回フィジカルボーナスも廃止となったため、計算式が変更できるようになり、そもそも攻撃計算式をMNDで行えれば“スタンスの切り替え”はいらなくなります。

 これは”ヒーラーにより攻撃してほしい”のではなく、攻撃という選択肢を気楽にしておきました、という変更です。

――今回はロールアクションのセットの仕方で立ち回り方がかなり変わる印象です。そこで個性も出てくるし、自分が何をしたいのかによってもカスタムの余地があると思うのですが。

吉田:自分のできること、というよりは、こだわる方はコンテンツに合わせたセットアップができる。あとはパーティメンバーとの相性というか、MPのサポートはこちらでやるね……みたいな、今までと違った遊び方も出てくるかなと思います。

――今までみたいな無言のシナジーではなく、もう少しコミュニケーションをとったうえでの選択というか。

吉田:面倒だから基本セットで固定してしまおう、という場合もあるでしょうし、カジュアルにレイドをコツコツやっていくパーティだから、お互いを補助するアクションを多めに入れよう、とか。そういう選択は出てくるかもしれないですね。

ステータスについて

――ステータス関連についてですが、今回フィジカルボーナスをすべてなくしていますね。

吉田:振り忘れもそうですし、結局のところ極振り一択なのでもういいかな、と(苦笑)。

――一番影響が大きいのはやはり学者と召喚士でしょうか。

吉田:ですね。それができたから今回ヒーラーのダメージ計算式をMND依存に変更できました。

――新たなサブステータス“不屈”“ダイレクトヒット”について教えてください。不屈の効果が被ダメージ減&与ダメージ増ということで、かなり強力な印象を受けましたが……。

吉田:うーん、わりと重要なパラメータかなとは思います……。ただ、Lv70のタンクの計算式にもいろいろ手を加えてあるので、Lv70のタンクが何を重視するかについては、今は明言しないでおきます。

 あんまり言っちゃうと“よし一択だ。マテリジャ買い占めろ!”になっちゃいますので(笑)。“吉田がああ言うから買い占めたのに、大したことないじゃねーか!”ってなっても嫌ですし(笑)。このあたりはみなさんで高度な情報戦の上、先物買いしておいて、あとでいろいろ試してほしいですね。MMORPGの醍醐味の一つでもあるのかな、と……。くれぐれも破産しない程度に(笑)

――すでに装備品に天眼のマテリジャを付けていた場合、その効果はダイレクトヒットに自動で置き換わるのでしょうか? また、ダイレクトヒットのステータスはDPS職の装備にのみ付いているとのことでしたが、マテリジャとしてはめた場合は、タンクやヒーラーにも効果があるのでしょうか?

吉田:ダイレクトヒットの発生確率は全ジョブにあります。仮にヒーラーが攻撃したときにもダイレクトヒットは発動します。ですので、パッチ3.57までの装備に天眼のマテリアがはまっていて、それがすべてダイレクトヒットのステータスに置き換わった場合、ダイレクトヒット発生率に対してプラスの影響はもちろん与えられます。

 が……その影響は大したことないです。そもそもヒーラーのダイレクトヒット発生率が高くないので、それを付けてもあまり……といった感じです。

――まったくムダにはならないけど、新しい装備にわざわざ付ける意味はないと。

吉田:そもそも、今後出現するヒーラーの装備にはダイレクトヒットが付いていないので、元が低いところに足しても仕方ないかなと。

PvPについて

――あとはPvPが本当に著しく変わりましたね。これはPvEのアクション以上にカジュアルになるように……というのが意思が大きかったのでしょうか。

吉田:いえ、PvPは最終的に突き詰めができないといけないので、入り口をとにかく“シンプル”で“わかりやすく”することで、カジュアルにプレイし始めて、どんどんやりこんでいける、という意図になります。

 また、プレイ人口を増やしていくためにも、とにかくフリートライアルの人にもさわってもらいたかった。『FFXIV』の中にはフィーストとフロントラインという大きな遊びがあるにもかかわらず、これをプレイするまでに時間がかかりすぎるのは、すごくもったいないと思っていたんです。

 また、とくにフィーストの試合展開をスピーディーにするという意味もありますし、対戦の実況をしていくにしても、アクションが多すぎて実況に求めるスキルが高くなりすぎる……などなど、e-sports寄りにしていくにあたって、現状のままではあまりにも弊害が多いので……全部変えよう、というのが素直なところです。

――ということは、4.0ではフリートライアルでPvPができるようになる、と。

吉田:できます。ちなみにジョブ経験値も入ります。ですのでPvEに戻ったときに、レベルが上がったりもします。

――『紅蓮のリベレーター』からはレベル上げにPvPを盛り込める、と。

吉田:はい、そうなります。例えばPvPが大好きで『FFXIV』のPvPをさわってみようと思ってフリートライアルを始め、とりあえずLv30になってPvPスタート。ステータスは固定なので、ジョブレベルが低くてもずっとPvPに参加できる。で、“なかなかおもしろいから、ランクマッチに参加してみようかな”と考えてアカウントをアクティブにしてくれたりするとうれしいですね。

 そのままPvPを続けていれば、そのジョブレベルもガンガン上がっていて……せっかくだしメインシナリオやってみるか……といった感じで定着してくれるとうれしいなあ、と。ちなみに、フリートライアルの場合は、さすがにランクマッチには参加できないようにしてあります。

ギャザラー・クラフターについて

――現状まだ明かされていないギャザラー・クラフターの方向性についてなのですが、こちらのアディショナルは残るのでしょうか?

吉田:はい残ります。撤廃されるのはバトルクラスのアディショナルシステムです。

――4.0のギャザラー・クラフターはどんな感じになるのでしょう。

吉田:3.0以降よくなかったところをどんどん修正し、調整してきた部分を素直に伸ばしています。大きなシステムの追加や変更はありませんが、“週制限はもういらない”という結論にもなりましたので、スクリップに関しては週制限がなくなります。

 基本は今の流れで、そこから週制限をはずし、マイスターをもう少し切り替えやすくしつつ、作りたいものを作っていく。このサイクルにしっかり落ち着かせようと話しているのが、4.0になります。3.5からスタートした“得意先取引”のようにNPCと関われるなど、もっとコンテンツ化した遊びに寄っていきたいと考えています。

 ギャザラーは単純に海の中、水の中に採取場所が広がるので、またいろんなところに行って物を採ってきて供給……ということになります。唯一、刺突漁が入る漁師はコレクション要素というか、獲るものが増えるので、そちらを楽しんでいただけたらなと思います。

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――副道具が追加されるという認識でしょうか。モリ的な。

吉田:そうです。“銛”の追加ですね。あとは第35回のPLLでもお話ししましたが、クラフターはマイスターのメリットがより強化されていたりするので、同じクラフターアクションでもマイスターのときに使ったほうがボーナスがつくものもあります。極めたいものはマイスターになっていたほうがより有利という感覚です。

冒険者小隊について

――冒険者小隊をいずれ連れて歩けるようになる……というお話でしたが、あちらはいつ頃の予定になりますか?

吉田:パッチ4.1での実装を目指し、小隊メンバーと光の戦士で、ダンジョンを一緒に攻略できるように作業中です。

――『蒼天のイシュガルド』のシナリオ後半で、仲間のNPCが範囲攻撃を避けるのはその試みの一環では……という噂もありました。

吉田:あれはですね……ちょっと種明かししてもいいですか。じつは『FFXIV』のイベントバトルは、同じ系統のイベントに見えて作りが2種類ありまして。プログラマーか、めちゃくちゃスクリプトのウデがいいプランナーがガチのコーディングで作っているものと、汎用的なアクションだけで作っているものの2種類。

 ガチガチで作っているほうは、今回みんなさらに作り方のレベルを1段階上げていて、NPCが範囲をよけたりとかもするようになっています。本当によくできたイベントバトルも多いので、ぜひじっくりご覧ください。

 しかしその一方で、4.0のいくつかのイベントバトルは、範囲を避けない汎用仕様で作られているので……。小隊用に転用できるものはあるのでどんどん転用してはいるのですが、“イベントバトルでもNPCが範囲攻撃を避けるようになったぞ!”“これは冒険者小隊に向けて期待が持てる!”っていうネットの書き込みを見て、“こりゃ頑張らないと(汗)”と思っていたりします(笑)

――4.0の段階ではまだ小隊メンバーのレベルキャップははずれないのでしょうか。

吉田:はい、レベルキャップを変更するのは次のコンテンツアップデートの際になります。

今後の情報公開について

――レイドなどの情報はまだ出ておりませんが、これはE3で詳細が公開となるのでしょうか?

吉田:そうですね。E3ではコンテンツのロードマップというか、4.0Xシリーズのアップデートスケジュールを明確にします。パッチ4.05がいつリリース予定で、レイドがいつ開くか……。そのタイミングでオープンになる別のコンテンツについても含め、E3でお知らせすることになるかなと思います。そこが『紅蓮のリベレーター』の最後の直前情報となります。あとはパッチノート朗読会ですかね。

――朗読会、今回は非常に長そうですね。

吉田:今回は変更も非常に多いですし、逆にネタバレもよくないので“程よく端折れ”という指示を出しました。一字一句書くなと。でないと終わらない(笑)。

――ジョブだけで数時間かかりそうですね(笑)。

吉田:“この部分は、今回は1行で済ませていいよ”とか、“ここはUIだけ貼って終わりにしていいよ”とかを指示して、かなり減らしました。でないと本当に、読む人がどれだけいるんだろうというボリューム感になっちゃいますし。ただジョブの変更点に関しては別ページを設けるくらい詳しくまとめてあるので、そちらはじっくり読んでいただいたほうがいいと思います。

新たに本作を始める方々と現役のプレイヤーへのメッセージ

――最近始めた人、これからやろうかなと思っている人、あるいは離れていたけど復帰してみようかなと思っている人に対して『FFXIV』が4.0でどんな楽しみを提供できるか、もしくはどういう風に遊んでもらえれば今の『FFXIV』を楽しめるかをぜひお聞かせください。

吉田:フリートライアルも時間制限がなくなって、今後はフリートライアルからPvPもできるようになります。みなさんの好きなペースで『FFXIV』をさわってみることができるので、より始めやすくなっていると思います。

 また、多くの改修によって、わかりにくかったところなどに、すごく手厚いフォローが入るようになります。これまで以上に、迷わずメインストーリーをまっすぐ進めるために、メインクエストの新ガイド機能も実装されているので、これまで“オンラインゲームはちょっと怖いんだよな”と思っていた方々にさわってみてもらいたいなと思っています。

 また、休止されている方、いろいろな理由で止めていらっしゃるかと思いますが、4.0という新しいシーズンの到来に伴い、“みんなヨーイドン!”でスタートとなりますので、ちょうど復帰するのには格好のタイミングだと思います。

 また、Lv60になって難しくなりすぎたなと思っていた方々にとっても、レベリングしている最中は段階を踏んで強くなっていく感じが味わえるよう、なだらかな難度で遊べる調整をしています。いろいろな方向で楽しめると思いますので、まずはぜひ触っていただけると、嬉しく思います。

――最後に、現役の光の戦士に4.0でどんな驚きが待ち受けているか……メッセージをいただければと思います。

吉田:最初の驚きは、多数のグレーアイコンでしょうか(笑)。“聞いてはいたけれど、すごい数だな!”と。ただ、その際には“ああ、これがなくなっている……”などの悲観ではなくて、“すごい変わってる!”とか“この新しいアクションはなんだろう? 使ったらどうなるんだろう?”というような、新しいスタートが待っている未知のワクワク感のほうを強く持っていただけるとうれしいです。

 どのジョブも大きく変わるので、慣れが必要だとは思いますが、ゆっくりメインストーリーを楽しんで、インスタンスダンジョンをやっていくうちにだんだん新しい楽しさに気づいていけると思います。ゆっくりと『紅蓮のリベレーター』のシナリオを楽しみつつ、新しくなった自分のジョブになじんで、Lv70になってからは新しいエンドコンテンツに向かっていただけるとうれしいなと思います。あと、ネタバレ対策としてネットはしばらく見ない方が……(笑)。

 あ、ただですね、何かしらアーリーアクセスでトラブルがあった場合は、すぐにtwitterなどでつぶやいてもらえると、我々の監視サポートが迅速に動けて非常に助かります。問題がなくても……ときおり、休憩のときなどに、『紅蓮のリベレーター』の感想をひと言でもいいので流していただけるととてもうれしいです!(笑)。

 前回『蒼天のイシュガルド』のときは、私と室内(俊夫氏)がアメリカから徹夜で総指揮を執っていたのですが、感想が一切、何も流れてこなくてですね……。

――それだけみんな熱中してたんですよ(笑)。有給を取る人も多いでしょうし。

吉田:何かしらひと言でも反応いただけると、たいへん励みとなりますので……感想いただけるとうれしいです(笑)。

――ありがとうございました!!

『ファイナルファンタジーXIV』

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データ

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