2017年7月29日(土)
ガンホー・オンライン・エンターテイメントから配信中のiOS/Android用アプリ『ディバインゲート』。2017年夏開始予定として期待が高まる新章、『ディバインゲート零』のキャラクターストーリーを追っていく連載企画をお届けします。
今回お届けするのは、カズシ編・第一章“それぞれの想い”。スタジオに突如として現れた少女の名はルーニ。カズシの持つ“共振音感”が目的のようですが……。
テキスト:team yoree
イラスト:noraico
カズシにルーニと名乗った少女。若干13歳の彼女は海守学院に在籍する研究員だ。魔力界の起こす魔影蝕への対抗手段として『エクステ』という理力増幅装置を開発しており、海守学院は、その研究機関として最前線の施設でもあった。
そして彼女は今、『エクステM』という、エクステの派生機を開発し、更なる対抗手段を研究していた。しかし、エクステMは扱える人間が限られており、ある特殊能力を必要としていた――。
カズシは突然現れた二人を前に目をぱちくりと瞬いていた。
「仲間……?」
「あらためまして。あたしの名前はルーニ。 海守学院の研究所でエクステMプロジェクトのリーダーを務めてます。こっちはメルティ。こう見えてもアンドロイドなの」
「え……?」
カズシはルーニの隣で控えている女性を見た。メルティという名前のアンドロイドとのことだが、どう見てもきれいな生身の女性にしか見えない。
「アンドロイド? 嘘だろ……?」
「嘘じゃないわよ」
信じられない、という顔でまじまじとメルティを見るカズシ。そんなカズシにやれやれと一つため息をつくメルティ。
「私のことはよいのです。ルーニはあなたの力を借りにはるばるスカウトに来ました。どうぞお力添えを」
「俺の力?」
困惑しているカズシにルーニが頷く。
「そう。あたしが研究しているエクステMに、あなたの演奏力を貸してほしいの」
「エクステ? 演奏『力』??」
「イデアのギタリストってあなたでしょ? でも、一年前、シブヤの音楽フェスで起きた魔影蝕のときに、他のメンバーは……」
「ああ。助かったのは俺だけだ……」
「どうしてあなただけ助かったのか、その理由をあたしは知ってるの」
「は……? なんだよ、理由って」
「それは、あなたのその演奏力!」
カズシが眉を寄せて、困惑の顔をルーニに向ける。
「よくわからないんだが……」
「簡単に説明すると、ギターを弾くことによってあなたの身体の中にある理力が増幅されて、音に力が備わるの。そして、音があなたの周りを囲むことによって魔影蝕からあなたを守った、という推察なの」
「は? え? は??」
カズシはさらに怪訝な顔をした。
「そして、その力を貸してほしいの。あなたの力があれば、あたしの理論に最後のピースがはまる。だから一緒に来てほしいの!」
「えっと……つまり、お前たちの研究のためにギターを弾けっていうことか?」
「そうなの! イデアの時とはジャンルが違うかもしれないけど、他にもメンバーはいるからきっと楽しいはず!」
ルーニが目を輝かせてカズシを見た。しかし、カズシは考える間もなく一言を放った。
「断る」
「どうして!?」
「俺のギターはイデアのためのギターだ。誰とでもいいってわけじゃない。……悪いが帰ってくれ」
そう言うとカズシは踵を返した。
「ま、待って! まだ説明は終わってない!」
「どんだけ説明しても無駄だ。……子どもにはわからないさ、大事なものを失った気持ちなんて……。あいつら以上に一緒にバンドをしたいやつなんて、いないんだ……!」
「……」
「じゃあな」
すたすたと歩いて行くカズシ。その後ろでルーニが息を吸うのが聞こえてきた。そしてルーニが悲痛な声をあげる。
「あなただけじゃない……っ!」
「……?」
「大事なものを失ったのはあなただけじゃない……!!」
「……っ!」
驚いて振り返るカズシ。
ルーニが俯きながら微かに震えている。
「自分だけが悲しい思いをしてるだなんて、大間違い。みんな、みんな、悲しい思いをしてるの! この国だけじゃない。世界中で……! でも、そんな思いをなくしたい。そんな思いはもうしたくない。そのためなら何だってやる。あたしはそう決めたの!」
「お前……」
「あなたはどうなの? いつまでも過去の中に生きて、悲しみ続けて、未来を見ないで、そんな情けない日々を繰り返すの!? できることがあるのに、何もしないで……!」
「……っ」
ハッとさせられてカズシが息を呑む。ルーニの目を見ると、微かに潤んだ瞳がカズシを真剣に見つめていた。
きゅっ、とカズシが悔しそうに拳を握る。
「お前も……誰かを失ったのか?」
「……パパとママを……」
ハッと目を見開くカズシ。目の前の女の子は気丈に振る舞ってはいるが、どう見てもまだ幼い。それなのに両親を失っているとは……。
「そうだったのか……すまない。何も知らなくて……」
カズシは悲痛な表情を浮かべ呟いた。
そして微かに首を振る。
「いや、違うな。何も知らないんじゃない。何も見ようとしてこなかったんだ……。お前の言う通りだ……」
「そのことを悪いと言ってるわけじゃないの。ただ、できることがあるなら、やって欲しいって思ってるだけなの……」
「だとして、俺がギターを弾くことが何に繋がるって言うんだ……」
カズシは不思議そうにギターを見つめた。
「それは……失った人にもう一度会うために演奏してほしいってことなの」
えっ、と驚いてカズシがルーニを見る。
「まさか……あいつらに、もう一度会えるっていうのか?」
「うん」
「そんなわけないだろ……! だってあいつら、みんな消えたんだぞ!?」
「でも会えるの! まだ理論が完成しただけだけど、あなたの力を貸してもらえれば、実現できるかもしれないの!」
「……嘘だろ? そんなことができるわけ……」
「できる。あなたには『共振音感』がある。その力があたしの開発したエクステMと合わされば、エクステの持つ力はもっと増幅されて、魔影蝕に対抗できるの。だから、未来の可能性に一緒に懸けてほしいの!」
「共振音感……」
カズシはルーニに言われると同時にセリに言われたことも思い出した。昔、セリとバンドを組んだばかりの頃、セリからもカズシの持つ『共振音感』について言われたことがあったからだ。カズシの共振音感のおかげでイデアの音が輝いていると――。
「……ルーニって言ったな」
ルーニの瞳を見つめるカズシ。
「俺のギターが力になるっていうのは、本当に、本当なんだな……?」
「あなたがあたしを信じてくれるなら……!」
しばしの間無言で見つめあう二人。
ルーニの真剣な目にカズシは一つ頷いた。
「わかったよ。まだよく分かんねえけど、お前のこと、信じる。あいつらを取り戻せるなら、いくらでも弾いてやる」
そう力強く言ったカズシにルーニが笑顔になる。
「ありがとうカズシ! これからよろしくね!」
こうしてカズシは海守学院へ転入することになった。登校初日、ルーニに案内された研究室には既に仲間が集まっていた。それぞれ胸に強い思いを秘め、エクステを手に未来を望んでいる。
「失った仲間を取り戻すために……」
今、カズシたちの戦いが始まる……!
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