2017年8月5日(土)
【ディバインゲート零:前日譚】日常編・“リアンとミカのショッピング”~嬉しい痛み
ガンホー・オンライン・エンターテイメントから配信中のiOS/Android用アプリ『ディバインゲート』。2017年夏開始予定として期待が高まる新章、『ディバインゲート零』のキャラクターストーリーを追っていく連載企画をお届けします。
今回お届けするのは、日常編・“リアンとミカのショッピング”。シリアスな展開だったカズシ編から一変して、リアンとミカが仲良くデートする平穏な日常が描かれています。
日常編・“リアンとミカのショッピング”
テキスト:team yoree
イラスト:シノ屋(TENKY)
「リアーン! こっちこっちー」
「あ……。ミカ。やっと見つけたわ」
「もー。見つけたのはこっち。こんなわかりやすい場所で待ち合わせなのに、迷うなんてびっくりだよ」
「ごめんなさい。学校以外に出かけるなんて、ほとんどしたことがなくて」
「それもびっくり。じゃあ今日は、いっぱい楽しまなくっちゃね!」
「うん……」
「て、おおーい! もっとテンションあげてこー! あたしとリアンの初デートなんだからー」
「うん……」
「もー。あげてこーって言ってるのにー」
「ふふ……。ミカはいつも元気ね……」
「まーね! 元気が一番ですから!」
ミカが満面の笑みで言った。思わずこっちも笑ってしまう。ミカはいつも明るい。研究室のメンバーの中でも、1、2を争うくらい元気ね。ちなみに好敵手はルーニ。いえ、シンクもかしら……。
今日は研究室がお休みのため、ミカと二人で出かけることになった。ショッピングに行こうと言われたけれど、外で何かを買うなんて、あまりしたことがない。……というより、初めてかもしれないわ。制服以外の服は用意してもらったものを着ているだけだし、お人形のお洋服はメルティが作ってくれるし……。
こっちに来てからだいぶ経ったけれど、この環境を楽しめていない、ということなのかしら。
「じゃーん! ここだよ。リアンと一緒に来たかったところは」
「えっ?」
見上げると、そこは大型のショッピングモールらしき建物。外からなら何度か眺めたことがある。でも中には入ったことがない。
なんだか緊張してしまう。中にはたくさん人がいるのかしら……?
そんなことを思っていたら、ミカが私の手を取った。
「ほら。行こ行こっ」
ミカが私の手を引いて先を行く。ミカの温もりが伝わってくる。あったかい……。誰かと手をつなぐなんて、いつ以来だろう。子どもの頃は平気だったはずなのに……。
「ねえ、ミカ……」
「うん?」
「このまま、こうして行くの?」
「もちろんっ! デートだからね!」
「なんだか……ちょっと恥ずかしいのだけど……」
「ふふふー。そんなリアンも最高にかわいい」
にっこりとミカが笑った。
「……もう。からかうのはやめて……」
そんなことを言ってみたけれど、私はミカの手を放せなかった。私たちは手をつないだままモールへと向かった。
モールの中は中央にエスカレーターがあって、フロアにたくさんのお店が並んでいる。「すごいわね……。こんなにたくさん」
「あっ! あの服かわいい!」
ミカが私の手を引いたままお店の中へと入って行く。そこはフリルやレースがたくさん施された、メルティが着ているような服がたくさん売られているお店だった。
「これなんかどう?」「やだー、こっちも似合うー」「これはこれは?」
次から次へと服を手に取り、私の身体に合わせて行くミカ。
「……どれもかわいいわね」
素直にそう思った。
「あっ! あっちの店にある、ちょっとセクシーな感じのも似合うんじゃない?」
「えっ」
「迷わず行ってみよー!」
またミカが私の手を取って駆け出した。
……? セクシーって?
連れてこられた店は先ほどのお店とは雰囲気が変わって、露出が高めな服が揃っていた。
「どれにする? リアン、どれが着たい?」
「と、言われても……」
なんだか寒そうな服がいっぱいだわ……。みんな、こんなのを着て平気なの? 風邪ひかないの?
と、躊躇っていると、服を見ながらミカがあれこれと私の身体に合わせ始めた。
「リアンって、どれ合わせても似合うよねー。いいなあ」
「ミカだっていつも素敵じゃない」
「いやいや、素敵の方向性が違いますから。うん」
「え?」
なんだかミカがしゅんとしたような、明後日の方を見たような……。何か変なことを言ってしまったかしら……。
「あっ、この服かっこいい!」
ミカが一着手に取って私に合わせる。
「きゃーっ。やだーっ。足出しすぎー。でも着てみて!」
嫌なのか見たいのか。よくわからないけれど、言われたままに試着をしてみる。
「どうかしら? レギンスでも履いた方が……」
「……いや、エロい」
「えっ?」
「よし。これもいってみよー!」
今度は両肩が大胆に開いた服を渡される。
「どうかしら……? なんだか、肩がとっても不安な感じなんだけど……」
「……いや、エモい」
「えっ?」
「次これね!」
と、次にミカが渡してきたのは、胸元がかなりルーズなデザインのニット。
「ミカ……これは……」
思わず躊躇ってしまった。今までの二着よりかなり大胆な服だから。本当にこれを私が着るの? 着ても大丈夫なの?
「ね、ねえ……ミカ?」
問いかけてみたけれど、ミカはまた服を選びに行ってしまっている。どうすればいいのかしら……。こんな感じの服を私は着たことがないから不安しかない……。
でもせっかくミカがすすめてくれたのだから、着てみないと……。
そして私は恐る恐る試着室を出た。
「ど……どうかしら……」
「……おぉお! なんという破壊力……!」
ミカがその場に崩れ落ちた。いったいどうしてしまったのかしら。
「大丈夫? ミカ。体調でも悪くなった?」
私はミカに駆け寄った。
「……違うの。ちょっと、なんていうか、何言ってるかわかんないと思うんだけど」
ミカはそう前置きをして話し続けた。
「あまりにも素晴らしいものを見て、幸せを感じると共に、自分に絶望もしてしまったというか……天国と地獄が同時に来たみたいな? 始まりと終わりが同時にやって来た、みたいな? 曲を聞きはじめたら、いきなりクライマックスですぐ終わっちゃった、みたいな?」
「どういうこと?」
本当に何を言っているのかわからない。
困惑しているとミカが私の両肩を掴んだ。
「リアン! きみは本当にすごい! どんなカラーでも、どんなスタイルでも、どんなデザインでも、全部全部着こなしてる! きっと、この世にある服は、ぜーーーんぶリアンのために作られたんだよ!」
「いや、そんなわけ……」
「あるある! いや、あってほしい!」
「ごめんなさい、ついていけてなくて……」
「いいの、リアンがそのままでいてくれれば。私の願いはただそれだけ!」
「そう……」
ミカの言っていることはよくわからなかったけど、でも、ミカが喜んでくれたことだけはわかったわ。思い切って着てみて良かった……。
「あっ。でも、もう一個お願いがあるんだけど、いい?」
「ええ。もちろんよ。ミカのお願いだもの」
そうして私たちはまた別の店へと来た。そこは、店内が空や海の写真で壁一面が彩られているお店で……。
「ミカ、お願いって……?」
「うん。リアンに似合う水着、選んでもいいかな?」
夕方になり、私たちは帰路についていた。手には買った服が入ってるショッピングバッグをいくつも提げている。そして、もう片方にはミカの手。すっかり私の手に馴染んでしまった。
「ミカ、今日はありがとう……」
「こっちこそだよ。楽しかったなー」
「ミカに選んでもらった服、いっぱい着るわね……」
バッグを提げている手は痛い。でも、すごく充実していて、すごく嬉しい痛みだわ。
「ミカ、私、また一緒にショッピングしたい……。また私と来てくれる?」
「もちろんだよ! また来よー! 私もまだまだかわいいリアンを見たいからね」
「うん。ありがとう」
私はそう言って、ミカの手をもう少しだけ強く握った。
カズシ編・第一章
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