2017年8月12日(土)
【ディバインゲート零:前日譚】日常編・“シンクの「教えて!ルーニ先生!」”~理力学の導き
ガンホー・オンライン・エンターテイメントから配信中のiOS/Android用アプリ『ディバインゲート』。2017年夏開始予定として期待が高まる新章、『ディバインゲート零』のキャラクターストーリーを追っていく連載企画をお届けします。
今回お届けするのは、日常編・“シンクの「教えて!ルーニ先生!」”。勉学もベースの腕も完璧に近い男・シンクが、理力学のさらなる追求のために課せられたこととは……!?
日常編・“シンクの「教えて!ルーニ先生!」”
テキスト:team yoree
イラスト:シノ屋(TENKY)
僕の名前はシンク。勉学こそ正義と信じる、完璧に近い男だ。勉学の中でも特に理力学を学ぶことは大正義だと信じている。なぜなら理力学はこの世に存在する全ての謎に答えをくれるからだ。謎を謎のままにしておかない。わからないことをわからないままにしておかない。フィーリングをフィーリングのままにしておかない。全てのものに方程式を与え、僕たちを導いてくれる。それが理力学。僕はそんな理力学が大好きだ。
だが、そんな理力学でも僕に答えを示してくれないことが一つだけある。
「こらー! シンクー! また練習さぼってるー! さっさと弾くのー。弾きまくるのー」
この声の主はプロフェッサー・ルーニ。彼女とムサシさんに出会ったのは二年前のことだ。あまり思い出したくはないが、まあ色々とあって僕は二人にベースを弾けと言われ、気が付いたらベースで世界一を目指す男になっていた。何度も心が折れかけたが、努力に努力を重ねた結果、現在、ほぼほぼ世界一に近いとのことだ。(二人が言うには)
それはともかく、今でも理解に苦しんでいるのが、あの無茶苦茶な言動が理力学の権威であるプロフェッサー・ルーニから発せられているということだ。事あるごとに無茶ぶりをかましてくる彼女に、いったいなぜそんなにも不思議なことばかり言うのか、理力学は未だに答えを示してくれない。プロフェッサー・ルーニの頭の中にはどんな理論の宇宙が広がっているというのだろう。
……というより、たまにはまともな講義を聞かせてくれれば、全て解決するかもしれない。そうだ、それがいい。
「なになに? 講義が聞きたいの?」
「はい。プロフェッサー・ルーニが書かれた共時世界の論文について、もっと理解を深めたいと思いまして」
「いいけど~。ついてこられるかな~?」
「大丈夫です! 僕はあなたが認めてくれた優秀な生徒ではないですか」
「そうだったね! じゃあ始めるよ~」
「お願いします!」
「何がいいかなあ……。そうだ、『共時球の独楽』について話すね」
そう言ってルーニはいつもとは違う、プロフェッサーらしい真面目な表情になった。
そう、見たかったのはこういうところだ。
「これは、共時球と呼ばれる、理力界の事象の地平面より外にある共時領域内で、エネルギーを取り出す方法についての研究のこと。
現在もまだ研究は続けられていて、最終証明には至っていない。でもこの研究が進めば魔力界への渡航方法を解明できるんじゃないかって期待されているわ」
プロフェッサー・ルーニがホロディスプレイに直接書き込みながら解説をしてくれている。やはり講義を申し込んでよかった。たまにはこうやってまともなことも聞かないと、彼女への信奉が崩れてしまうというもの。僕は今、とても幸せだ。
「ちなみに共時球と理力界の境界面の存在は、『超次ゆりかご理論』で証明できて、物質を送り込むことは、蝕発生装置の応用で技術的に可能であると推測がされている。現状の問題は、高い出力を発揮できる蝕発生装置がないこと。あたしたちの使命はこの部分をクリアにすることなの」
「えっ。まだ見つかっていないんですか?」
「そう。いろいろと試してみてはいるんだけどね。例えば、毎日逆立ちで登校してみたり、食べるものは全部凍らせてから食べてみたり……」
……ん?
「チャーハンからホワイトシチューを作ってみたりもしたしー、銀行強盗を捕まえようと忍者教室に通ったこともあったかなー」
……え?
「シンクのベースの弦を入れ替えたりもしたわね!」
……それいつの話!?
「そうだ! シンクにもちょっと手伝ってもらおうかな?」
「うえっ」
「実はちょっと試したいことがあって~」
「顔がっ。顔がにやけてるんですがっ!」
というか、ものすごく悪戯心に満ちた顔だ。
「それ本当に大丈夫なやつですか?」
「もちろん! あたしがシンクに嘘言ったことある?」
「…………」
嘘は、ない。だがなぜだ。イエスと言ってはいけないと僕の脳が警鐘を鳴らしている!
「あのっ! 質問があります!」
「なになに?」
「本当にそれで見つかるのですか?」
「もっちろん! 試せることは何でも試す! これがあたしの研究方針。ほんのわずかなきっかけで、可能性は無限に広がるものだから!」
「ねえ見て。生徒会長よ」
「ほんとだわ。どうしたのかしら、あの格好」
「素敵! 今までのシンク様の中で断トツにかっこいいわ!」
「いっそのこと、毎日あの服装で学園に来てくれないかしら……!」
……くっ。みんなの声がちらほらと聞こえてくる。視線も痛いほど感じる。何を言われているのかはっきりとは聞こえないが、きっと笑っているんだろう……。ああ、いいさ。存分に笑ってくれ。僕が校門でやたらと派手な衣装を着て全校生徒に手を振る様を……!
「おっ。シンク~。いいねえ~。めちゃくちゃかっこよくなってんじゃん。どうした? 今度はアイドルか舞台役者でも目指すのか?」
「ち、違っ……」
「あ、ムサシ。今回のシンクはどう?新たな理論構築の実践なの」
「いいね!ベースも弾ける王子様って感じだな。略してベスプリ? ……ネーミングは一考か」
ちょっ。何が王子様だ。
思わずムサシさんを振り返る。
「……あの! これは、王子様などを目指すためではなく、これを着て全校生徒に笑顔を振りまけば新しい理論の答えが得られると聞いたのでやっているだけで……」
「はっはっは! なるほどね! いいねえ。さすがだぜルーニ!」
「でしょでしょ~。これを一週間、いえ、一か月くらいやれば見つかると思うの!」
「えっ、そんなに!?」
そんな長い間やるとは聞いてないぞ!
「あ、シンク! 今、嫌そうな顔したでしょ」
「そ、それは……」
「ダメなの! 疑いの心は研究の妨げになる。信じる者のみ前に進むことができるの! だから四の五の言わずにやるの!」
「そうだぞシンク。なんでもやってみることが一番だ。この二年間でお前はそれを学んだだろ。ベースを弾くことでな」
「うっ」
また痛いとこを突いてくる。確かに理力学を理解するにはベースを弾け、という二人の無茶ぶりのおかげで僕はベースを好きになった。理力学にも造詣が深くなった…と思う。とはいっても……。
「いけいけシンク!」
「ゴーゴーシンク!」
あああああ……初めてベースを弾いたときと同じだ。また二人のエールが僕の心に刺さる……!
ああいいさ。やってやるさ。これが理論の確立に役立つと言うのなら、僕は何だってするのみだ。
僕は気合いを入れ直して下校する生徒に手を振った。そして心に誓う。
「僕は世界一コスプレの似合う生徒会長になる!」
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