江口拓也さんが初舞台に挑戦! 沖野晃司さん、斉藤範子さんらの熱演光る舞台『銀の国 金の歌』観劇レポ
福圓美里さんと松崎亜希子さんが主宰の演劇プロデュース団体・クロジによる最新公演『銀の国 金の歌』が10月4日~9日東京・俳優座劇場にて上演されました。
ファンタジーな世界観でありつつも、リアルな人間模様を描くクロジの作品。今作では江口拓也さんが初舞台を踏むということでも大変注目を浴びていました。ガルスタオンラインでは写真とともに壮大な舞台のストーリーをお届けします。さらに、福圓さんと松崎さんからの貴重なコメントも届きましたのでお見逃しなく!
※ネタバレがありますので、予めご了承ください。
舞台『銀の国 金の歌』のストーリーを写真とともにお届け
物語の舞台は海に面した北東の辺境国“流宮(るく)”
舞台は女帝・スグリ(松崎亜希子さん)が治める、海に面した北東の辺境国“流宮(るく)”。漁によって生計を立てている小さな国ではありましたが、側近の美禰(みね:末原拓馬さん)や参謀の槌谷(つちや:江口拓也さん)をはじめ、気心の知れた民たちは平和に暮らしていました。
大漁の宴が行われているなか、盲目の巫女・凪(なぎ:斉藤範子さん)はこの国に血が流れる気配を察し、進言のため宴席へ向かいます。そこには刀鍛冶の親子が商談に訪れており、スグリは戯れに「商いの許可を得たければ息子を切って試せ」と脅します。
追い詰められた伊佐治(いさじ:加藤将之さん)が息子に刃を向け揉み合いになった時、息子が伊佐治を手にかけてしまいます。漁師たちは息子を捉え、スグリはその男を海に捨てよと命じるのでした。
そこへ凪が、「先見が当たった褒美に、その子供を犬としてもらえないか」と要求。かつて都の帝との間にできたため捨てた子どもであると直感した凪は、男に銀(ぎん:沖野晃司さん)と名付けます。本当の父親のことを知りたい銀は、スグリから「山賊を倒せば教えてやる」と言われ退治に向かうことに。
たった1人で見事に山賊を退治し、彼らを従えて帰還した銀。これにより銀に流れる父親の血は、スグリの兄でもある“威央(いお)”の国の帝である礼賢(れいけん:山口太郎さん)ということが決定的となるのでした。
母の愛と、最強の剣士としての重圧に耐えきれなくなる銀
数カ月たち、鰤刃(しば:狩野和馬さん)から剣術指南を受けるほど流宮に馴染んだ銀でしたが、槌谷だけはまだ銀を受け入れられずにいました。一方スグリは西の大国“塵呉(じんご)”との争いの兵力として、銀と山賊たちを使えないかと帝に進言することになります。
しかし、今までただ生きているだけだった銀は、凪の重い愛や最強の剣士としての扱いに戸惑いやイラ立ちを覚え始めていました。不安定な銀を励ます鰤刃でしたが、凪が一度銀を捨てたという過去を伝えてしまいます。混乱した銀は鰤刃を斬殺し、凪の元へ。そんな銀を凪は母の愛でただやさしく包み込み、2人の絆はより強固となっていくのでした。
争いの絶えない世にしびれを切らす流宮の民たち
数年後、スグリの命によって嫁いだ琴(こと:福圓美里さん)とともに、銀と凪は3人で暮らしていました。そんな折、突然流宮へ帝・礼賢とその息子・六馬(りくま:三原一太さん)が訪れます。初めての対面となった銀でしたが、礼賢に冷たくあしらわれた凪が絶望し、銀は礼賢を殺すよう指示されてしまいます。
そして戦も本格化、流宮の民たちも戦場に駆り出されるように。疲弊しきった民を目の当たりにして、槌谷はこの戦に疑問を持ち始めます。銀もまた怪我を負った仲間を思い、イラ立ちを募らせていました。
そんな銀に凪は「王になればみんな言うとおりになる」と、いつものように優しく触れながら告げます。まるでそれは呪いの言葉のように銀に染み込んでいくのでした。
その夜ついに槌谷は山賊たちを連れて、国を守るためにスグリを襲撃します。応戦した美禰は銀を呼ぶも命を落とし、銀はその手でかつて仲間であった山賊たち、槌谷、そして「おまえにすべて与える。ここは銀の国だ」と告げたスグリまでも殺めてしまうのでした。
実質的な流宮の王となった銀は、凪とともに礼賢との食事会に招かれることとなります。しかし、礼賢による凪への非礼な扱いを目にした銀はその場で礼賢を斬殺。凪にぬくもりを求めますが、礼賢を失い血に濡れた銀の未来を視た凪からはもう返ってくるものはありませんでした。
そして銀は新たな国“真賀城(まがしろ)”王として君臨することとなります。鮮血の大地に根を張る王、“銀凪”として――。
舞台の演出や舞台初出演の江口さんの演技に注目!
この舞台はさまざまな人物の絆が多彩に描かれていますが、なかでも印象的なのは銀と凪の絆に圧倒的にインパクトを受けました。凪の重い母親としての愛などはまさに圧巻の演技力です! そして普段はセクシーでかわいらしい宦官の美禰が、スグリを救いたいがために一瞬見せる男らしい一面や、刀から庇うシーンもギャップ萌えでした……!
またプロジェクションマッピングを使用し銀の心理描写を表現していたりと、衣装、美術、音楽とすべて抜かりのない演出も舞台に華をそえていました。
この作品が初めての舞台という江口さんでしたが、優しくも強い槌谷という人物を見事に演じられていました。滑舌よく響く声に加え、長身が本当に舞台に映えていました! とくにクライマックスでスグリに思いをぶつけるシーンでは、長いセリフにもかかわらずありったけの感情を込めた熱演ぶりに鳥肌が立つほど。多彩な江口さんの新たな一面、“俳優”としての活躍にも、目が離せませんね!
福圓美里さん、松崎亜希子さんからのコメントが到着
『銀の国 金の歌』が終演してから三週間ばかり経ち、客演さんやスタッフさんは別の現場に向かいましたが、私たちクロジと脚本家の森悠は未だ流宮の世界におります。ようやくぼちぼちと次回公演のことを話し始めましたが、まだもう少しだけこの物語のことを考えていたいと、そんな風に思うのは珍しいことのように思います。
そんなふうに思うのは、今回の座組みがとても純粋にこの物語を信じ、心から楽しみ、我々の予想を裏切るほど真摯にお稽古に取り組んでくださる奇跡のようなメンバーだったからかもしれません。
打ち上げは、その光景をみなさんに見ていただきたいと思うほど幸せな時間でした。みんな芝居への愛を語り、物語への愛を語り、時に泣いておりました。このようなキャリアの方たちが集まってこんな状態になるのは本当に珍しいことです。
我々の想いすべてがお客様に伝わっていると傲慢に思ってはおりませんが、少しでも、一瞬でも、空気や熱がご覧くださったお客様に届けることができていれば、こんなに嬉しいことはありません。
今後もクロジはスローペースながらもお芝居を作り続けていこうと思っておりますので、ぜひ一度劇場に遊びにいらしていただけたら嬉しいです! ありがとうございました。
クロジ 福圓美里・松崎亜希子
【公演情報】クロジ第16回公演『銀の国 金の歌』
■公演日時:2017年10月4日~9日
■公演劇場:俳優座劇場
■脚本:森悠
■演出:三浦佑介
■出演(敬称略):
沖野晃司:銀役
斉藤範子:凪役
松崎亜希子:スグリ役
江口拓也:槌谷役
末原拓馬:美禰役
狩野和馬:鰤刃役
福圓美里:琴役
木村はるか:千弦役
大高雄一郎:唐津役
今西哲也:チリ役
中泰雅:アクタ役
加藤将之:伊佐治役
山口太郎:礼賢役
三原一太:六馬役
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