津田健次郎さんが“フィルム映画”保存活動の意義や大切さについて学ぶ
声優・津田健次郎さんが教授となり、毎号気になるカルチャーを研究する本コラム。電撃Girl’sStyle4月号(3月10日発売)では、現在数少なくなったフィルム映画の発掘・復元・保存の大切さについて学びました。今回は、映画フィルムの調査などの活動に取り組んでいるコガタ社の中川さんにお話をうかがいました。フィルムの仕組みや映像保存の魅力など、誌面に載せきれなかった内容をお届けします!
フィルムや機材の種類と用途
――フィルム映画とは、どういうものか教えてください。
中川さん(以下、中川):長く巻いてあるフィルムをカメラに入れて連続して写真を撮り、現像して映写機で投影するものです。さまざまなサイズがありますが、主に8ミリは一般家庭でホームビデオのように使われ、16ミリはドキュメンタリー映画のようなものに使われていました。
津田教授(以下、津田):8ミリや16ミリのフィルムは僕も知っています。フィルムカメラの長い盤ですよね。
中川:そうですね。今でも撮られている方がいらっしゃいます。
津田:電気屋さんで中古品をいいなあ~と眺めたこともありました。
中川:現在では新しい機材が出ているわけではないので、いろいろな形で中古を手に入れて、工夫して使用しています。
津田:保存はどのようにされているのですか?
中川:フィルムは基本、高温多湿がよくなくて、アセテートという素材でできているフィルムは、保存状態が悪いと酸っぱいにおいがして、縮んでしまうんです。映像が真っ赤に褪色しまうものもあります。今では、その縮んでしまったフィルムを平らに伸ばす技術がある業者さんもいます。
津田:切れてしまうこともありますよね。
中川:そうですね。一応フィルムをつなげるテープなどの周辺道具を販売してはいるのですが、生産が中止になってしまったものあります。なので、そのテープがなくなってしまった場合はどうしようかという悩みもあります。
――現在おこなわれている事業内容や活動について教えてください。
中川:いろいろなところで眠っている映画フィルムを、貴重な歴史的資料として保存し、情報提供をしていこう、という活動を主にしています。たとえホームムービーでも、所有者の方や地域の方がそれを見て懐かしいと感じたり、思い出したりできるというのは、とても素敵なことだと思うんです。それを未来に残していきたいと考えています。
津田:どういった依頼が多いのですか?
中川:そうですね、やっぱり家からフィルムが出てきたけれど、映写できないので調査してほしい、といったことや、とりあえず見てみたいから映してほしい、といった内容ですね。DVDなどのメディアに変換する相談も受けています。
津田:ここでフィルムや機材を修理したりもするんですか?
中川:修理というほど立派なことではないのですが、ご相談はお受けしています。また、16ミリ映画を図書館で上映したいというときに、上映できるかどうか、使用するランプはあるのか、などの相談ごとも受けています。
津田:各自治体に16ミリの機材が残っているということですよね。
中川:そうですね。機材もそうですし、場所によってはフィルムが9000本もある図書館もあります。ドキュメンタリー、教材、ニュース映画のようなものもあって、見るとすごくおもしろいんですよ。
▲上映会を行う蔵の前にて。異国な雰囲気です。 |
――印象深かった依頼や、難しかった依頼などはありますか?
中川:フィルムの調査を頼まれる方は、30~40本ほど持ってる方が多いんです。それで、調査するために内容を見てみると、一人の子どもの成長記録ということもあります。そういうホームムービーだと、不思議と家族感が味わえて楽しいですね。
津田:ふふ、そうですよね。
中川:撮られている方の個性も出ますし、基本的にその子どもと近しい方が撮られているので、見ている側と目が合っているような気持ちになるんです。子どもの一番かわいい笑顔を見られたりもします。
津田:それはかわいいですね。
中川:難しかった依頼ですと、東日本大震災での作業でしょうか。いくつかの会社と一緒に映像資料の洗浄をしました。私はビデオテープの洗浄を担当したのですが、テープがとても長いので洗浄しては見て、また洗浄して……という作業を繰り返しました。
津田:けっこうたくさんあったんですか?
中川:たくさんありましたね。フィルムは実際に画像が見えるのですがテープはビデオデッキがないと確認できないので難しかったです。でも、アナログのビデオテープは強いと思いました。汚れを落とせばある程度は見られるんです。
津田:確かにそうですよね。断片的にでも見られますよね。
中川:はい。作業は大変でしたが、映像の魅力をいろんな世代の方がいろんな形で記録を残しているんだなと実感できました。なので、フィルムやビデオテープの再生の仕方や技術を若い人に伝えていかなければならないと、改めて感じました。
▲小型映画を上映できる映写機の前での1枚。津田教授も興味深く見られていました。 |
――若い方に伝えたいことはありますか?
中川:もし、家からよくわからないテープやフィルムが出てきたら捨てないでとっておいてほしいですね。そして、私たちのようなところに持ってきていただきたいです。調査してみたら、とても大事な記録だったり、それが今に活きることもあると思います。それに、私のように自分が体験したことがないことでも体験しているような気持ちになることができるかもしれません。
津田:貴重なお話を、ありがとうございました。