2018年5月28日(月)
あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として、“周年連載”を展開中です。
第72回でお祝いするのは1998年5月28日にスクウェア(現スクウェア・エニックス)からPlayStation用ソフトとして発売された『双界儀』です。
この『双界儀』は、コンビニでのゲーム販売を目的とした流通会社・デジキューブを介してスクウェアが発売したソフト。開発はプロレスゲームをはじめとするアクションゲームの開発で有名なユークスです。
『ゲームの巨人語録―岡本吉起と12人のゲームクリエイター』という本のインタビューによると、この時期のスクウェアは若手のクリエイターを育てるために小規模な予算で挑戦的なタイトルを多数リリースしていたということで、この『双界儀』もそんなタイトルのひとつ。同年に発売されたタイトルも『ゼノギアス』を筆頭に『パラサイト・イヴ』や『ブレイヴフェンサー 武蔵伝』、『アナザー・マインド』など尖った作品が多いです。そのため、この時代のスクウェア作品は当時からの熱狂的なファンが多いものが目立ちます。
本作は操作性や視点にクセがあるため、アクション部分の評価はそこまで高くないのですが、作り込まれた世界観や恋愛要素が多めのライトノベル的なストーリーが素晴らしく、その点が多くのユーザーの心をつかんでいました。そのユーザーの熱意は、とにかく充実したWikipediaを見ていただければわかると思います(苦笑)。
『双界儀』のストーリーは、富士山崩壊から始まった大異変によってズタズタに引き裂かれた日本を舞台に、主人公の真武居直柔(まぶい なおや)と仲間が寄り神と呼ばれる化け物や紫微仙という敵に挑んでいくというもの。
和をイメージした世界観が特徴で、インターフェイスに漢字が使われていたり効果音に太鼓を使われていたりとこだわりを感じましたね。『聖剣伝説2』などで知られる菊田裕樹さんの楽曲も本当に素晴らしかったです。最初のステージである“極月・珠洲”の『Quake』を聴いた時は、その神秘的な雰囲気に一気に引き込まれました。
本作に登場する操作キャラクターは6人で、隠しキャラクターを入れると7人。漫画家の皇なつきさんがデザインを手掛けており、豪華声優陣によるボイスが見どころとなっています。
代々、五方輪の一員として寄り神と戦ってきた真武居家の577代目の咒方士。単純明快で猪突猛進な性格をしている。
女子大学付属高校の3年生。学校では剣道部に所属しており、主将として部を引っ張ってきた。面倒見がいいため、部の後輩やクラスメイトの友人からも慕われている。
真言密教の寺の跡取り。最年長でしっかりしているため、仲間から頼りにされている。
安倍家の陰陽師。抜群のプロポーションをしており、関西弁をしゃべる。
3歳の時に寄り神に襲われて両親を失い、10歳の時に五方輪となった少女。おおらかで屈託のない性格をしている。
鹿島の名士、我舞家の次期当主。全国を旅しながら寄り神の退治屋をしている。
常世と現世の端境を守る祭司。高い戦闘力を持ち、クールな性格をしている。
キャラクターはそれぞれ流派や武具が異なっており、御巫無想流剣術や我舞式練氣術秘伝など中二病をくすぐるワードセンスの設定が満載でした。
また、6人のキャラクターがそれぞれ男女のカップリングになっているのも、物語のいいアクセントになっていたと思います。もどかしいやり取りをニヤニヤしながら見ていた覚えがあります(苦笑)。特に自分は主人公の直柔とヒロインのみづほの関係が好きでした。鈍感な直柔の態度に拗ねるみづほがカワイかった……! みづほの声は女優の京野ことみさんが演じていたのですが、自分はその初々しい芝居も好きでしたね。
▲みづほの誕生日を覚えていた直柔が、彼女に新しい技を教えることを約束するエピソードなど、かなりほっこりする内容でした。 |
▲物語はファンタジー寄りの設定ですが、キャラクターが等身大なので感情移入できるのもポイント。あずさの「おポンチ!」が印象的ですね。 |
前述したようにゲーム部分は操作性が尖っていました。ただ、これはPS初期のゲームですし、まだ3Dでゲームを作るノウハウが少なかったことも理由としてあると思われます。とはいえ、海のあるステージでは浅瀬に入っただけでキャラクターが一撃死してしまったりとか、鳥居がワープゾーンになっているステージで延々と迷ったり、つらい思い出が多いのも事実です(苦笑)。
ただ、“相克”による相性を考える必要があったりキャラクターのパラメータアップにかかわる“ガラン石”の破壊をしたりする部分は楽しく、しっかり光る部分もありました。
とくに“ガラン石”の部分は、初見では破壊できなくても後に仲間になったキャラクターを使用したり跳躍力のパラメータを上げたりすることで破壊できるようになるのでやり込みがいがありましたね。
▲赤→黄色→青の順番に破壊の難易度が上がる“ガラン石”。パラメータをアップさせなくてもプレイヤーのテクニックで遠くのものを破壊できるのも特徴です。 |
自分はアクションゲームが苦手なのでもどかしい思いをしたのですが、セーブデータ付きの雑誌『電撃PlayStation D』に最初からガラン石が大量に入っているデータやムービーを全部見れるデータが入っているのでそれを活用していましたね。懐かしいなぁ……。
他にも小説版やトレーディングカードなどの思い出もあるのですが、そこまで語ると長くなってしまうので今回はやめておきましょう(笑)。
と、いうわけで20周年のタイミングで『双界儀』の思い出を振り返っていきました。現在はゲームアーカイブスで配信中なので記事を読んで気になった方、なつかしさを感じた人はぜひダウンロードしてみてください。
……『ゼノギアス』も20周年でコンサートなどの展開があったので、『双界儀』もなにかしらの展開があるとうれしいなぁ……。よろしくお願いします、スクウェア・エニックスさん!
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キャラクターイラストレーション:皇 名月
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