2018年6月4日(月)
『モンハンワールド』『ドラゴンクエストXI』の開発陣が受賞理由やポイントを語る。マル秘エピソードも!?
SIEは、“PlayStation Developers Choice Awards 2018”を5月24日に開催。その受賞作品を手掛けた開発者へのインタビューを掲載します。
“PlayStation Developers Choice Awards 2018”は、2017年度に発売されたタイトルの中からデベロッパーが6部門の受賞作品を選ぶというもの。“ベストビジュアルアーツ”を『ドラゴンボール ファイターズ』、“ベストオーディオ”を『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』、“ベストVR”を『V!勇者のくせになまいきだR』、“ベストテクノロジー”を『アサシン クリード オリジンズ』、“ベストゲームデザイン”・“ゲーム・オブ・ザ・イヤー”を『モンスターハンター:ワールド』が受賞しました。
なお、本カンファレンスの模様は、電撃オンラインの記事をご確認ください。
表彰式の後には、各受賞作品の登壇者へのインタビューが行われたので、そちらの模様を掲載します。なお、インタビュー中は敬称略。
“ベストビジュアルアーツ”受賞作品:『ドラゴンボール ファイターズ』
プロデューサー 広木朋子さん(バンダイナムコエンターテインメント)
ディレクター/テクニカルアーティスト 本村純也さん(アークシステムワークス)
――一番の売りであった“超ハイエンドアニメーション”が評価されていましたが、狙い通りといった感じでしょうか?
広木:ユーザーからも『ドラゴンボール』のアニメ表現を最大限に生かしたゲームを出してほしいという要望が多く、アニメを自分で動かしているかのような表現をどうしてもやりたかったという思いがありました。その狙い通りの評価をしていただけてすごくうれしいです。
――格闘ゲームで唯一の受賞したことへの感想をお願いします。
広木:格闘ゲームという敷居が高く見えてしまいがちなジャンルに、『ドラゴンボール』というカジュアルな人も楽しめるものを絡ませることによって、幅広い人に遊んでもらいたいという思いがありました。
その中でグラフィック部分は、非常に力を入れなければならないものだったので、アークシステムワークスさんと何度もすり合わせて開発したということが、格闘ゲームで唯一受賞できたことにつながったのではないかと思います。
本村:格闘ゲームにおけるグラフィックは、他のジャンルとは違う意味で重要になってきます。プレイしている人たちが楽しいと思うのはもちろん、見ている人たちも楽しめるというところが、eスポーツなどで盛り上がっている要因の1つだと思うので、そこをすごく意識しました。そのため、グラフィックを評価されたというのは非常にうれしいです。
――受賞したからこそ思い出す、一番大変だったことなどはありますか?
広木:開発中に一番つまった点が実はグラフィックでした。『ドラゴンボール』は非常に歴史のあるタイトルなので、そのまま表現すると、ひと昔前の表現ということになりがちになってしまうので、一時期はあっさりした表現になっていました。
単純に『ドラゴンボール』を再現するのではなく、新しい見せ方にするという点は、何度も何度も悩んで、イメージボードも作りました。
本村:いろいろなパターンの案を絵で用意して、もとの『ドラゴンボール』のイメージを崩さず、かつアピール力のあるものを絞り込んでいきました。そこのやり取りはかなり心を削って行いました。
“ベストオーディオ”受賞作品:『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』
ディレクター 内川毅さん
PlayStation4版プロデューサー 岡本北斗さん
――“ベストオーディオ”を受賞されてのお気持ちをお聞かせください。
岡本:本作は、すべての『ドラゴンクエスト』ファンに届けようと思いがありました。過去の作品の名曲があったり、新曲があったりと、新しくも懐かしいのを全部入れようというコンセプトだったので、プレイした時にワクワクしていただけたのが受賞できた1つの要因だと思います。
内川:本作はサブタイトル『過ぎ去りし時を求めて』をコンセプトにしたこともあり、過去作の曲を使用することがテーマとも一致したので、作曲を担当されているすぎやまこういち先生と相談して、過去作の曲も多く使用させていただきました。
――すぎやま先生とのエピソードで思い出に残っていることはありますか?
岡本:一番印象的なのはエンディングの曲です。堀井さんから一番最初に終わり方について「こうしたい」という話があり、そこにどのようにつなげるかをすごく考えました。その中で「今回のエンディング曲の方向性はこのようにしてはどうか」ということをすぎやま先生に提案して、できたのが『過ぎ去りし時を求めて』です。
他にも、ベロニカとセーニャが演奏して大空を飛ぶところで流れる曲は、本当は新曲が用意されていました。いただいた曲がダメだったわけではなく、映像が完成した時にタイトルのコンセプトに沿って改めて映像を見直したところ、『III』の『おおぞらをとぶ』がもっとも適切と判断し、堀井さんと相談してシナリオテキストとともに音楽も変更しました。
内川:新曲をお願いしていましたが、一番大事にしたかったのが、『過ぎ去りし時を求めて』というテーマと、フルートとハープの演奏でした。その中で『おおぞらをとぶ』を当ててみたらどうなるだろうというのを岡本と試してみたらがっちりはまったので、堀井雄二さん、すぎやま先生に相談して、変更させていただきました。
“ベストVR”受賞作品:『V!勇者のくせになまいきだR』
シリーズプロデューサー 山本正美さん(SIE JAPAN Studio)
シリーズディレクター・大橋晴行さん(アクワイア)
――受賞するに際して、どの部分が評価されたと思いますか?
山本:もともとのシリーズが一風変わったシステムだったので、そこに個性出しとしてメタ的なネタを多く入れ込みました。ふと思えば、今回会場にいる人たちが作ってきたものをお借りして、栄誉ある賞をいただけたとも言えるので、皆さんに感謝しかないです。
大橋:コンテンツとしては、魔王やムスメと一緒にボードゲームを遊ぶ体験が目新しかったので、そこが評価されたのかなと思います。
――開発の中で一番大変だったことは何ですか?
大橋:描画まわりですね。魔王やムスメをきちんと描画するためにも、フィールド上の魔物をどのくらい表示するか、どう両立させるのが大変でした。
山本:VRコンテンツは、カメラの主導権はユーザーが持っていて、ゲーム側にはないので、ルールを覚えてもらう際のチュートリアルをどうやって作るかという点には苦労しました。
“ベストテクノロジー”受賞作品:『アサシン クリード オリジンズ』
リリースマネージメントマネージャー 岸田定幸さん
――今回“ベストテクノロジー”を受賞することになった、一番の要因は何だと思われますか?
岸田:前作よりも強化した、アニメーションの流れをスムーズにするという点やNPCの生活感を出せたという点が大きかったのではないかと思います。
――これからゲームをプレイしてみようと思っている人に向けて、改めて本作の特徴を教えていただけますか?
岸田:古代エジプトがテーマですので、ピラミッドなど魅力的なものが多く存在します。教科書やテレビで見たようなそれらを、ゲーム中でいろいろ見つけてほしいです。
“ベストゲームデザイン”・“ゲーム・オブ・ザ・イヤー”受賞作品:『モンスターハンター:ワールド』
プロデューサー 辻本良三さん
ディレクター 徳田優也さん
エグゼクティブディレクター/アートディレクター 藤岡要さん
――本作を作るうえで一番残さなければいけない要素は何でしたか?
辻本:1つの意見に対し、すごくいろいろと分析していったので、“残す”、“残さない”というのはその都度決めていました。
藤岡:マルチでコミュニケーションをとれるアクションゲームは、他にはないジャンル。『モンスターハンター』は早くからその要素を取り入れていたので、そこを崩さないように考えていきました。
徳田:素材を集めて装備を作るという要素は、海外では受けにくいと言われていました。私たちはそうではないと考えていて、そこに至るまでの難しい部分、分かりにくい部分を削ぎ落して、根本的な部分はより進化させていくべきだと思っていたので、そこについてのジャッジを1つ1つ重ねていきました。
――まだ本作をプレイしていない人へ向けてのアピールをお願いします。
辻本:作ったものを皆さんにどうやって理解していただいて、興味をもって、さわっていただけるかが一番大事だと思っています。もし開発の思いに興味を持っていただけたら非常にうれしいです。
藤岡:イベントや大会などは今後も開催していくので、それを見てやってみようと思ってもらえるとうれしいです。今のタイミングで始めてもフォローできるような配信をしているので、興味を持っている人がいるのであれば、これを機に遊んでもらえるとうれしいです。
徳田:ゲームをプレイしている人、コミュニティのメンバーが他のユーザーをサポートする意識をすごく持っているので、下位のクエストでも救難信号を上げたら、結構な確率で入ってきてくれます。今からでも全然遅くはなく、一緒にプレイする人がいるので、プレイしていただけたらと思います。
辻本:もちろん、自分たちも助けに行くので!
(一同笑)
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