2018年7月23日(月)
『影牢 ~刻命館 真章~』発売から20年。ほんのりと嗜虐心を駆り立てるトラップ悪ションとは!?【周年連載】
あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として“周年連載”を展開中です。
第81回でお祝いするのは、1998年7月23日にテクモ(現コーエーテクモゲームス)から発売されたPlayStation専用ソフト『影牢 ~刻命館 真章~』です。
本作がどのような内容なのかをわかりやすく簡単に説明すると、“駆除剤を設置して家屋に浸入してくる病害虫を退治する”というようなゲームです。
正確には、家屋に浸入してくるのが罪もない人間や主人公を狙うハンターだったり、駆除剤の代わりに使用するのが侵入者を倒すさまざまなトラップだったりします。
「来る者拒まず、去る者逃さず、とっておきのトラップで獲物を捕まえて倒していくのDeath♪」といったノリで悪を楽しむ“トラップ悪ション”です。
▲みんな大好き、中世拷問器具の定番・アイアンメイデン(鉄の処女)も登場! その愛くるしい見た目で精神的に追い詰めるだけで、実際には使われなかったとも伝えられている(諸説アリ)、キュートで邪悪なマスコット的存在ですね。 |
箱庭型3Dステージで繰り広げられる人間狩り
まずは独創的なゲームシステムから振り返っていきましょう。
ゲームの舞台は王城や遺跡といった箱庭空間で、床や壁、天井にトラップを満載した複数の小部屋が細い通路でつながっています。プレイヤーはヒロイン・ミレニアを操作して、さまざまなトラップを仕掛けていきます。
基本的には侵入者を全員撃退するとステージクリア、ミレニアのHPが尽きるとゲームオーバーというシンプルなルールです。
シリーズ1作目の『刻命館』と比較すると、レベルの概念やアイテムを省いてRPG色を薄めたことで、“侵入者をトラップで撃退する”という作品本来の魅力が際立っていました。
▲ポイントを稼いでトラップを作成。壁、天井、床と3つのカテゴリに分かれていて、エンディングを迎えると追加される強力な隠しトラップなども用意されていました。 |
▲トラップから引火した火薬箱が爆発! 部屋に備え付けられたトラップをいかに連携させるかが本作の大きな魅力です。 |
▲ゲーム進行自体はリアルタイムで進むのですが、トラップ設置のためマップ画面に切り替えている間は時間が止まるという、遊びやすさを重視した設計が好印象でした。 |
▲ステージクリア時には侵入者の死因が一覧表示されます。 |
トラップはわりときわどいラインナップとなっていました。殺害現場にはベッタリと血の跡が残される演出もなかなかにきわどく、プレイヤーの心をちくりと刺激します。
アナタにぴったりのトラップがきっと見つかる!
“ソリッド・シチュエーション・ホラー”の先駆的映画『SAW』を笑いながら鑑賞できるような人はさておき、刃物や鈍器で人間を刻んだりすり潰したりという行為は少なからず嫌悪感を催すもの。発売当時は怖いもの見たさでプレイして後悔した人もいたようです。
▲トラップを駆使して連鎖的にダメージを与えるとコンボボーナスが発生。ゲーム性の高さは折り紙付きです。 |
残虐な描写がある一方で、カビンやタライ、シリーズ続編の『蒼魔灯』では“バナナノカワ”や三角木馬の“デルタホース”など、ユーモラスな罠も存在。イケないことをしているにもかかわらず、コント番組のように、なんとなく笑えてくる一面もあります。当時のコマーシャルもそのような作りになっていたかと。
以下では、ゲーム中に登場するトラップの一部を紹介。クリア後に使えるようになる隠しトラップは、どれも強力でこれを使ったコンボはかなりおもしろかった覚えがあります。
ちなみに、被験者にミレニアさんが混じっているのは気のせい(撮影の都合)です。侵入者だけでなく、仕掛ける側もうっかりすると等しくトラップの餌食となってしまうところが本作のおもしろいところでもあります。
ギロチン
部屋の天井に設置されていて、一定距離まで接近すると巨大な刃が落下。あらかじめ場所を確認しておかないと、うっかり下を歩いてしまうことも……。
ボルトロック
巨岩で押し潰しつつ、獲物を感電させるというおまけつき。ゴロゴロ転がる岩が、怖さをさらに演出します。
回転ノコギリ
見た目にも痛々しい高速回転ノコギリ。部屋の隅っこに設置されていることが多く、当てるには技術が求められました。
吊り天井
入口の扉が閉まっているため、狙って利用するには難易度が高いトラップ。扉に背を向けつつスプリング系のトラップで放り込もうとして、ミレニアもろとも潰されてしまった人も多いのでは?
電気イス
序盤から登場する処刑トラップの定番。連続で使うと割れてしまうことも……。
斬殺換気扇
天井に設置されている回転ノコギリで、フードプロセッサーのように獲物をみじん切り。真下にはトラップを設置できないため、獲物を打ち上げるのに苦労します。
オオタライ
往年のコント番組のような屈辱の一撃がさく裂。我を忘れた被害者がミレニアに突進してくるため、見た目からは想像もつかない性能を誇っています。
アルデバラン
隠しトラップのひとつで、前作の館の主がつけていた仮面が頭上から落下するというもの。視界を奪い、ゆっくりと前進し続けるうえにシュールな見た目が笑いを誘います。
マジックバブル
隠しトラップのひとつ。床からじんわりと湧き出る巨大なバブルが被害者を包み込む。トラップに向けてじわじわと押しつけることや、これを使った強力なコンボが可能です。
スエゾー
隠しトラップのひとつ。『モンスターファーム』でおなじみのマスコットキャラでカワイらしいのですが、ダメージは凶悪そのもの! 頭上でキャッチされても跳ね返ってヒットすることも……。
悲劇的な世界観に注目
ここからはネタバレを含む世界観&ストーリーにふれていきます。未プレイの方でこれから遊ぶという方はご注意を。
まず押さえておきたいのが、作中の世界で人間を支配している“刻人”の存在です。青白い顔をした彼らは無限の寿命を持つ不死の存在で、永劫の時を経て得た知識を人間に与えて導いてきた種になります。
しかし、彼らがその寿命を維持するためには人間の魂が不可欠で、ときおり“神隠し”として人間狩りが行われてきたという背景があります。
▲育ての親であるヨカルに命ぜられるまま、館に侵入してくる人間の魂を刈り取るミレニア。 |
プレイヤーが操作するミレニアは、人々を死に至らしめるトラップを操る能力を与えられた“人間の少女”です。ゲームを進めていくと徐々に生い立ちが明かされ、幼いころ“刻人”に誘拐されたことや、実の兄が“刻人”に抵抗する組織を率いていることなどが語られていきます。
▲刻人からの解放を求めるレジスタンスのリーダー・キース。やや分かりにくいのですが、彼との戦闘で重傷を負うことがストーリー分岐条件の1つでした。 |
ミレニアの悲劇は、育ての刻人に命じられるまま1人の村人を殺めたことをきっかけに幕を開けます。
人間を惨殺する館の魔物として命を狙われる一方、刻人からも強すぎる力を危ぶまれて、ついにはただ生き延びるためだけに侵入者を狩り続けるはめに……。
侵入者の事情もさまざまで、家族や相棒の復讐を誓う者や抵抗組織の傭兵、はてはお宝や賞金に目が眩んだゴロツキ、“刻人”から放たれる刺客などなど。ただし、ミレニアを守るものは誰一人現れません。本人の意思とは関係なく猟奇的に罪を重ね続けて、厭(いと)われ、狙われる。ここまで救いがないヒロインも珍しいですよね。
▲人間からも、刻人からも命を狙われるミレニアの運命は? |
本作には4種類のエンディングが用意されていて、数名のキーパーソンの生死でストーリーが分岐します。“刻人”に命じられるまま人間を狩り続けるのか、はたまた、兄の手を取って人間としての生を取り戻すのか? どのような結末を迎えるかは、ぜひとも皆さんの目で確かめてみてください。
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データ
- ▼『影牢 ~刻命館 真章~』
- ■メーカー:テクモ
- ■対応機種:PS
- ■ジャンル:ACT
- ■発売日:1998年7月23日
- ■希望小売価格:5,800円(税別)
- ▼『影牢 ~刻命館 真章~』(ゲームアーカイブス)
- ■メーカー:コーエーテクモゲームス
- ■対応機種:PS3/PS Vita/PSP(ダウンロード専用)
- ■ジャンル:ACT
- ■発売日:2008年12月24日
- ■希望小売価格:617円(税込)