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2018年8月29日(水)

『ANUBIS ZOE : M∀RS』の裏側に迫るM∀RS開発通信。電撃PS特別出張版をお届け!【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 コナミとCygamesの2社がタッグを組み、リメイクに迫るほどの大胆なリマスタリングが施された『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS(ANUBIS ZOE : M∀RS)』が9月6日、ついに発売されます。

 オリジナルのゲームバランスはそのままに、4KやVRへの対応、新たなボーナスコンテンツも収録された本作は、初めて遊ぶ人はもちろん、当時遊んだプレイヤーもまた新鮮な気持ちで遊ぶことができる1本になっています。先日からは、最新体験版である“ORANGE CASE”が配信中! 4KはもちろんVRにも対応しているので、是非プレイしてみてください。

 今回はTwitterのZ.O.E公式アカウントにて連載している“M∀RS開発通信”の 電撃PS特別出張版をお届け! 開発資料に加え、開発陣によるこだわりのコメントが詰まった本記事を読めば『ANUBIS ZOE : M∀RS』をさらに遊び尽くせるはず!

『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS』

M∀RS開発通信 電撃PS特別出張版

 こんにちは、M∀RS開発チームです。今回はこれまでTwitterで公開してきた“M∀RS開発通信”の中から、特にリマスタリングでこだわったポイントに関する内容について、お伝えしきれていなかった部分を中心に解説していきます!

メカモデルI・オービタルフレーム

 『ANUBIS ZOE : M∀RS』のリマスター方針は、“原作PS2版の完全再現”と、“最新技術で最高の体験に昇華”の両立でした。その点から、シャープさとスピードを構成する重要な要素・オービタルフレームのポリゴンとモーションに改変を加えない事は、早い段階で決まっていました。

 同時にそれは、4KやVRに求められる“精細さ”と“情報量”をそれ以外の部分でいかに表現するか、というチャレンジの始まりでもありました。フォーカスとなるのはもちろん、主人公機であるジェフティでした。

メカモデルI・オービタルフレーム

 我々が最初に行ったのは“リメイクの文法でジェフティの情報量を模索する”という実験です。まず、設定画から読み取れる、三次曲面で構成された微妙なフォルムを探るため、スカルプトツールを使用して原作のポリゴンモデルをベースにシェイプを検証しました。次に、設定画稿、CG、イラスト、監修記録といった資料と、当時発表された立体造形物の形状・ディテールを照らし合わせ、ジェフティが本来持っていた情報を復元統合しました。最後に、不足部分のディテールについては、新規で設定画を起こしました。

 これらの準備を行った後、約1か月かけて4K解像度でピクセルを感じさせないテクスチャサイズを求めつつ、シェイプ形状・影・欠損ディテールを補完する為のテクスチャをリライト。“原作が意図したであろう、本来描かれていたはずのジェフティ“は誕生しました。このジェフティのリファインで得られたノウハウを元に、他の全てのオービタルフレームはリファインされています。

メカモデルI・オービタルフレーム メカモデルI・オービタルフレーム
メカモデルI・オービタルフレーム メカモデルI・オービタルフレーム
メカモデルI・オービタルフレーム メカモデルI・オービタルフレーム
メカモデルI・オービタルフレーム メカモデルI・オービタルフレーム
メカモデルI・オービタルフレーム メカモデルI・オービタルフレーム
メカモデルI・オービタルフレーム メカモデルI・オービタルフレーム

メカモデルII・採氷LEV

 採氷LEVは、お客様が最初に触れる機体であり、ジェフティの機動性の高さを体感して頂く為の大事な“オンボロ”です。加えて、開発としてはこの機体に『ANUBIS ZOE : M∀RS』のリマスター姿勢を体現させたいと考え、ジェフティよりも大胆なアプローチでリファインを行いました。

 まず、原作のゲームモデルを下敷きにして、新たにリメイク想定での設定画を描き起こしました。元々この機体に用意された設定画は少なかったこともありましたので、ゲームモデルのテクスチャに引かれた線を手掛かりにしてパーツ構成を再構築。現代の重機的な文法に倣った部品を配し、マテリアルについても検討しました。企業所有の民生機ならではのデカール表現をロゴデザインから行い、本当にリメイクできると思えるだけの情報量を用意しました。

メカモデルII・採氷LEV メカモデルII・採氷LEV
メカモデルII・採氷LEV メカモデルII・採氷LEV
メカモデルII・採氷LEV メカモデルII・採氷LEV

 この設定画を元にテクスチャのリファインを開始。デカールにも“オンボロ”らしさを表現する経年表現を加え、『ANUBIS ZOE : M∀RS』全編を通して最も大胆なリファインを行った採氷LEVは完成しました。

VRモデルI・コックピット

 VRモードの主役・コックピットモデルは数少ない新作モデルです。原作のアニメパート用に用意された詳細な設定画が存在しましたので、これをベースに制作しました。設定の無いパーツの隙間や裏側は新規で設定を起こしています。VRならではの設定として、ADAパネルをはじめとした空間HUDを表示するための機器を前方に配置しています。

VRモデルⅠ・コックピット VRモデルⅠ・コックピット
VRモデルⅠ・コックピット VRモデルⅠ・コックピット
VRモデルⅠ・コックピット VRモデルⅠ・コックピット
VRモデルⅠ・コックピット

VRモデルII・ディンゴボディ

 VRコックピットでもうひとつの重要なモデルはもちろんディンゴです。非常に特徴的な質感とフォルムを持ったスーツでしたので、現実感を損なわない範囲での素材感、縫製に関する追加ディテールを新規設定しました。対して、採氷スーツは旧式な、使い込まれた潜水服をイメージモチーフとしています。

VRモデルII・ディンゴボディ VRモデルII・ディンゴボディ

VRモデルIII・HUD

 VRモードで目にするHUD表現は、一見原作のものと同じものに見えますが、立体視に対応する為、実は全てが新規で制作しなおされたものになっています。その際、原作でのいわゆる“メタ”表現だったHUDを、VRコックピットでの実用性を感じられるよう意識して構成・再配置をしています。

VRモデルIII・HUD
VRモデルIII・HUD

 そして最も重要なHUDとして、我々が“子ジェフティ”と呼ぶジェフティモデルを右側に配置し、ジェフティとの相対位置を示すリングレーダーや、ライフ等のステータス系表示を集約。“ひょっとしたらディンゴが見ていたかもしれない”HUD表現を行いました。

VRモデルIII・HUD

背景モデルI・人工物

 背景モデルはテクスチャのリライトと質感の追加、二つのアプローチでリファインしています。まずテクスチャのリライトですが、背景は設定画が存在せず、原作の背景が唯一の手がかりですから、施設内を概観し、元テクスチャで引かれた線から建築的な整合性を解釈してリファインしました。

背景モデルI・人工物

 中でもアイキャッチの強いネフティスの格納庫や、ダイモスステーションのハッチなどは、「画でポリゴンを割る!」と意気込んでディテールアップしています。そして質感の追加については、新たにリフレクション(背景の映りこみ)表現とラフネス表現を新たなシェーダーを追加する事で、ライトや電光表示が映りこむ様子や、近づいて見た時のざらつき等を表現しています。

背景モデルI・人工物 背景モデルI・人工物

背景モデルII・自然物

 物語のスタートを飾るカリストの氷壁は、人工物でも実装したリフレクション表現の適用は当然として、なんとか氷の質感を表現したいと技術検討を重ねたステージです。“スケール感を損なう様なスペキュラー表現だけは避けたい”と試行錯誤の末にたどり着いたコロンブスの卵的な解決方法……それは“リフレクション表現の為に使用しているマスクを、人工物の時と反転した形で適用する”。このアイディアと専用の映りこみモデルの組合せで、氷の中を透過・散乱した様な、独特の透過光を表現出来ました。

背景モデルII・自然物

背景モデルIII・天球

 屋外ステージで必ず目にする“空”。原作では、この空を“ホリゾント”という、いわゆるカキワリの板で表現していました。カメラの移動に合わせて板に書かれた画をずらすこの手法はポリゴン数を抑えつつ疑似的に天球を表現する素晴らしいものでしたが、VRモードの立体視で見ると、空が平面であることがばれてしまいました。

 そこで『ANUBIS ZOE : M∀RS』では、これらを全て新規の天球に置換しています。その際、夕日の眩しさを表現するためにHDRテクスチャを使用したり、カリストでは天頂に木星を配するなどの、演出面の強化も行いました。

背景モデルIII・天球

エフェクトI・光学表現

 ダッシュレーザーや流動ラインなど、美しく光を放つ表現は、『ANUBIS』で最も印象的なエフェクトです。この表現を次世代の輝きにアップグレードする事は、開発スタートしてすぐに決定した目標でした。そもそも、原作でのこの表現自体“ポストエフェクト”という、現世代のエフェクト表現に先んじて採用された先見性の高い表現でしたので、我々が行うべきは、これに当世のレンズシミュレーションを加える事でした。

エフェクトI・光学表現

 アナモルフィックレンズフレアや色収差、ビネットといった表現を、“暗いステージはしっとり、明るいステージはカラッと”とカメラの絞りなどを意識してさりげなく付加しています。クライマックス近くではすこしだけ強めて終末観を表現したりもしています。

エフェクトII・爆発

 ANUBISの爆発表現は、ロボットアニメを模して開発された本作品の重要な表現です。特に“ステージ毎に異なったカラーで表現される爆炎”は、原作の完全再現を目指す上で大きなハードルでした。中でも、中盤の要塞都市の爆発は、いくらソースコードを洗っても“普通にやったらその色になるはずがない”というものでしたが、ある日、その解決は意外な形で成されます。

 とあるシェーダーで、想定しない発色になる不具合を見つけたエンジニアが、ひょっとしたら、とその不具合の発生原因と同じ表現を爆発のプログラムに適用したところ、ついに“あの爆発”に。PS2独特の色情報の処理方式を逆手に取った表現を、シェーダー上で再現できた瞬間でした。

エフェクトII・爆発

コックピットデモ

 コックピット内のモニター越しにアニメキャラクターが会話するコックピットデモは、HD版で行われたリファインの後を継ぐ形で、こちらも大胆にリファインを施しています。差分や動画が膨大なディンゴを筆頭に、表情・動画も含めてすべてのグラフィックに対して徹底的に手を入れました。

 その方法はメカモデルと同レベル。まず設定画を元にディテールやフォルムを書き直し、陰影を加えて情報量を増しています。一部シーンではライトカラーを変えたり、レンズ効果やノイズ表現を加えるなど、演出の強化も行っています。

コックピットデモ
コックピットデモ
コックピットデモ

 開発の裏側に迫る“M∀RS開発通信 電撃PS特別出張版”はいかがでしたでしょうか。今回紹介できたのは膨大なリマスタリング作業のほんの一部ですが、「こんなところまで手を加えているの!?」という部分もあり、『ANUBIS ZOE : M∀RS』がただのHDリマスター作品に留まらないというのが伝わってきますね。

 最後に、8月28日発売の電撃PlayStation Vol.667でも『ANUBIS ZOE : M∀RS』を紹介していますので、ぜひそちらもチェックしてみてください! はいだらーーー!!

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(C)Konami Digital Entertainment

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.667』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2018年8月28日
■定価:880円+税
 
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