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2018年9月25日(火)

『キャサリン・フルボディ』キーマンに聞く、新たに描かれる大人のアクションパズル・ADVの魅力【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 自分でも普段自覚したことがない恋愛観、ひいては人生観の発見にも繋がる、大人になりきれない大人たちの恋愛を描くストーリー。そして、やり応えのあるアクションパズルなどで熱狂的なファンを持つPS3/Xbox 360タイトル『キャサリン』が、新キャラクターをはじめとした多彩な新要素を追加した『キャサリン・フルボディ』としてPS4/PS Vitaで新生!

 ここでは、前作の『キャサリン』から引き続き本作『キャサリン・フルボディ』を手がける2人のキーマンへのインタビューを通じて、その魅力に迫っていく。

『キャサリン・フルボディ』
▲プロデューサーの橋野氏(左)とディレクターの後藤氏。

アトラスのゲームづくりの礎となった『キャサリン』

――まずは2011年に発売された前作の『キャサリン』を改めて振り返って、よかったと思う部分をお聞かせください。

橋野桂氏(以下、橋野):まず大前提として、当時アトラスにはPS3/Xbox 360での開発のノウハウがなかったので、自分たちでグラフィックエンジンを作ったりして環境を整えることから始めなければなりませんでした。当時はPS3/Xbox 360がもっとも据置機で性能の高いゲーム機でしたので、『キャサリン』の開発を通じて当時最先端の開発環境が整い、その後の作品の足がかりとなりました。

 また、当時は『ペルソナ3』『ペルソナ4』がご好評をいただいており、社内的には「すぐに『ペルソナ』の続編を作ろう」という雰囲気もありました。ただ、自分のなかで“ちょっと変わったゲーム”も作っておかなければならない、という謎の使命感のようなものがあったんです。結果として『キャサリン』は遊んでくださったみなさんが記憶に留めてくださるタイトルになってくれたと思いますし、翻って『キャサリン』のようなゲームも作らせてくれるアトラスという会社にいてよかったなと思いました。

――『キャサリン』は海外でも人気のタイトルですが、これは最初から想定されていましたか?

橋野:橋野:まったく想定していませんでした。もともと『キャサリン』は、アトラスのコアなお客さんに向けて制作していたんです。ファミコン世代の方々に、夜にお酒でも飲みながら軽い気持ちでプレイしていただくという想定だったのですが、『キャサリン』で初めてアトラスのゲームに触れてくださった方もたくさんいらっしゃったようです。また女性がアトラスの他のタイトルよりも多い割合を占めていたのも驚いた点です。

――では、苦労された点はいかがですか?

橋野:もともと短い期間で作ろうと思っていたのですが、気づくと長期の開発になってしまって……。とくに苦労したのは難易度でしょうか。もともと難しく作りすぎてしまったということに加えて、私たちの想像以上に普段あまりゲームをプレイされない方々が遊んでくださったということもあって、アップデートによる難易度の最適化を図りました。『キャサリン』はクセの強いゲームでありながら、多くの方が記憶に留めてくださった作品だと思っているので、いつか作り直したいなと思っていました。

後藤健一氏(以下、後藤):自分はパズル部分の調整役として途中からプロジェクトに参加しました。最初に触ったときから難しいと感じていて、開発中はノーマルだった難易度をそのままハードにスライドさせたりもしたのですが、自分も開発していくなかでゲームに慣れてしまい、最終的な難易度調整を練り込めないまま発売してしまいました。そこは今でも反省しています。

橋野:難易度調整に関する問題については、我々が普段RPG以外のゲームをあまり作っていなかったというのもあるかもしれません。RPGは遊ばれる方がキャラクターのレベルを上げることでゲームバランスを調整できますので。

『キャサリン・フルボディ』のキーワードは“多様性”

――では改めて、2011年に発売された『キャサリン』の新作を今作ろうと思ったきっかけをお聞かせください。

橋野:「携帯機でプレイできるようになれば、喜んでくださる方はたくさんいらっしゃるんじゃないか」という思いは何年も前から持っていました。実際「次の展開はありますか?」というご意見もいただいていたんです。また、「スタジオ・ゼロ」を設立したことも大きなきっかけです。現在、「こういうRPGもあっていいよね」という想いで新規のファンタジーRPGを作っていますが、もうひとつ「こういうゲームもあっていいよね」という作品として『キャサリン・フルボディ』を作ることにしました。

――アトラスのファン層も幅が広くなってきていると思いますが、新しいアトラスのファンに触ってもらいたいという想いも大きいですか?

橋野:『ペルソナ5』はPS4でRPGを遊びたいという方に評価していただけたタイトルだと思っておりまして、この作品ではじめてアトラスの作品を遊んだというご感想も多くいただきました。『ペルソナ5』でアトラスを知ってくださったお客さんや、『キャサリン』というゲームの名前だけ知っている、という方は、この機会にぜひ『キャサリン・フルボディ』を遊んでいただきたいですね。

――サブタイトルの“フルボディ”はワイン用語からの命名と思われますが、このタイトルの意図はなんでしょうか?

橋野:ご想像のとおりです。ちょっと大人でセクシーな感じを出そうと思って、この名前にしました(笑)。私はお酒が飲めないのですが“フルボディ”という言葉は知っていたので、この名前にしました。

――『キャサリン・フルボディ』では橋野さんはプロデューサー、後藤さんはディレクターとしてクレジットされていますが、具体的にどのような立場で作品に携わられているのでしょうか?

橋野:私は主にコンセプト全体の監修をしています。実際にゲームをプレイしてお客さんの目線で感想をスタッフに伝えたりもしています。

後藤:自分は現場でスタッフの意見をまとめています。新旧メンバーの意志の統一などもしています。

――新たに楽曲アレンジのクリエイターとして“IZENE(アイゼン)”が名を連ねていますね。

後藤:“IZENE”はアーケードのリズムゲームなどを制作されてらっしゃる方々を中心としたサウンドチームですが、今回の『キャサリン・フルボディ』はお客さんにテンポよく楽しくプレイしていただきたかったので、世界観に合うのではないかと思い、お話させていただきました。

――具体的にはどういった部分を“IZENE”が手掛けられているのでしょうか。

後藤:新曲はすべて手がけてもらっています。また既存曲のアレンジも“IZENE”にお願いしています。

橋野:クラシックの得意な方やギターサウンドが得意な方など、メンバーのみなさんが本領を発揮していただける楽曲をそれぞれ手掛けていただいています。

――前作『キャサリン』を製作したときに掲げたテーマと、『キャサリン・フルボディ』におけるテーマの更新点をお聞かせください。

橋野:アトラスの『真・女神転生』シリーズは、一部のタイトルを除き、基本的にはロウ・カオス・ニュートラルという3つのルートがあります。しかし、このゲームが伝えたいことは、「これらのルートのうち、これが正解だ」、ということではなくて、「ゲームをプレイされるみなさん一人ひとりが自由に感じ、行動していただくことに価値がある」、ということだと思っています。「自由に行動していただいて構いません、そして自由に行動した結果の責任を背負ってくださいね」というのがテーマであり、価値観は多様でいいということを伝えていると自分の中では思っています。

 私は『真・女神転生』シリーズをそう解釈し、その思想に共感してアトラスに入社したのですが、『キャサリン』も同じテーマで制作しています。「恋愛のような身近な部分で多様性を表現したらおもしろいのではないか?」と考えたのが『キャサリン』でした。ただ、前作『キャサリン』を発売してから7年が経ち、恋愛や人の生き方もさらに多様化してきました。ですから『キャサリン・フルボディ』で描く恋愛も、もっと多様でいいのではないかと思い、今の時代にふさわしいアップデートを行いました。

第3の“キャサリン”が物語に新たな波乱を巻き起こす!

――『キャサリン・フルボディ』の製作にあたり、いちばん大きいのはリンという新キャラクターの追加ですね。

橋野:前作は浮気をするか、腐れ縁といっしょにいるか、という二元論になっていました。そこにリンを追加することで、もっとみなさんに悩んでいただきたかったんです。

『キャサリン・フルボディ』

――公開されている情報から推測するに、かなりプレイヤーの価値観を揺さぶるキャラクターになりそうですね。

後藤:そうですね。ただ設定などはすんなり決まったキャラクターです。

橋野:リンを追加することで、ふたりのキャサリンのなかにもこれまでにない新たな価値観や考えが生まれますしね。「とにかく自分を束縛する恋人のキャサリン(英字表記はKatherine。以下、Kキャサリン)」と「自分にグイグイ迫ってくる浮気相手のキャサリン(英字表記はCatherine。以下、Cキャサリン)」との狭間で揺さぶられるだけでは、プレイしている人もつらくなってくるかなと思ったんです。自分の話を聞いてくれる癒やしの存在もあっていいのかなと。

――リンのルートを追加したというよりも全体のストーリーが変化しているのでしょうか。

橋野:そうですね。リンを含めた3人は並列の存在になっており、どれかが真ルートといったような区別はありません。

――初めて遊ぶプレイヤーがいきなりリン狙いでプレイを進めても問題ないでしょうか。

橋野:はい。ただ、プレイ中の選択次第で予想外の結末になるかもしれませんが(笑)。

後藤:分岐となる選択はわかりやすくしているので色々試してみて欲しいと思います。ちなみにステージの途中に登場する質問などもすべて新規のものになっているので、前作をプレイした人も新鮮に楽しめると思います。

――イベントに関しては前作の『キャサリン』に比べてどの程度増えているのでしょうか?

後藤:今までのルートもリンが加わることで変化しているため、1.5倍から約2倍になっています。

――公開されているグラフィックを見ると新たな修羅場シーンなども追加されていますね。

橋野:前回も過激なシーンがありましたが、今回は三つ巴だったものが言ってみれば“四つ巴”なってさらに大変なことになります。楽しい修羅場が待っているので楽しみに待っていただければと思います(笑)。

『キャサリン・フルボディ』

――ちなみに過去作ではふたりのキャサリンのどちらが人気でしたか?

橋野:どちらでしょうね。浮気相手となる金髪のCキャサリンのほうがキャラクターとして目立っていましたが、プレイした方はもともと付き合っていたKキャサリンを選ぶことが多かったみたいです。ゲームであっても浮気をしない真面目な方が多いようですね(笑)。

後藤:Kキャサリンは新たに過去のなりそめが描かれるため、さらに魅力的に映るのではないかと思います。一方でCキャサリンもセクシーなイベントが増えていますので、2人の新たな一面にご期待いただければと思います。

『キャサリン・フルボディ』
『キャサリン・フルボディ』

――サブキャラクターたちにも追加のストーリーはありますか?

後藤:はい。リンとの関係を中心にエピソードが変化しています。ちょっとした新キャラクターも登場しますので、こちらもぜひご期待ください。

――ゴールデン遊戯劇場も今回は“SPECIAL”となっていますが、石田☆ルゥの髪型や衣装が激しく変わっていますね(笑)。

橋野:これは私が発注したわけではなく、副島(成記氏)が上げてきたデザインです。アフロをふたつに割るってものすごい発想ですよね(笑)。

『キャサリン・フルボディ』

アクションパズルも大幅パワーアップでますます朝まで眠れない?

――アクションパズルについてお聞かせください。スタンダードとアレンジの2種類があるとのことですが、アレンジを追加した意図は?

後藤:アクションパートに関しては難しいというご意見がある一方で、好きとおっしゃってくださる方も多数いらっしゃったので、そういった方に向けて新しいアプローチがほしいなと思い、ギミックを追加したモードを入れました。単純にスタンダードの上位版というわけではなく、スタンダードとは別の思考を必要とするステージ構成になっています。

――新たに初心者向けのセーフティモードも追加されていますね。

後藤:セーフティモードに関しては開発内でも議論を重ねましたが、最終的には誰でもゲームオーバーにならずにクリアできるものを用意しようということになりました。また、オートプレイモードを使えば自動で最短ルートを登ってくれるので、難しいと感じたところだけをスキップすることもできます。

『キャサリン・フルボディ』

橋野:プレイするみなさんが最初からアクションパズル部分をスキップしたいと考えてらっしゃるわけではないと思いますので、サポートしてほしいと感じる部分をサポートするような仕様にさせていただきました。

――逆に高難度のパズルもあるのでしょうか?

後藤:難易度ハードのアレンジモードはパズル好きの人でも歯ごたえを感じるものになっています。

『キャサリン・フルボディ』

橋野:はじめてプレイする方は、まずはスタンダードをプレイしていただき、そのあとアレンジに挑戦していただければと思っています。

――詰将棋的な遊びを楽しめるラプンツェルや、条件を満たすとプレイできるランダム要素が高めのバベルは本作にも搭載されていますか?

後藤:はい。とくにラプンツェルは前作で遊べた全ステージに加え、アレンジモードのステージを同じ数だけ用意しました。やりごたえがあると思います。

――単純に考えてもステージ数が倍に増えたということですね。作業も大変だったのでは?

後藤:そうですね(苦笑)。ただ、ラプンツェルを好きだとおっしゃってくださる方もたくさんいらっしゃるので、そういった方によろんでいただきたいと思い、実装することを決めました。

――対戦モードも、単にリニューアルされただけでなく、追加要素が多数ありますが、こちらは要望が多かったのでしょうか?

後藤:はい。対戦は海外のお客さんが中心となって盛り上げてくださっていて、国内外でも対戦会が行われています。

橋野:この盛り上がりはまったく予想していなかったので驚きました。

後藤:実際に対戦モードを深くプレイしていただいた方がたくさんいらっしゃったので、ネット対戦をはじめとした追加要素の希望や、問題点はかなり洗い出されていました。そういった点を解消する仕様に調整し、細かいルールを設定して新たな対戦モードを追加しました。前作はクリア後しか対戦が出来ない仕様でしたが、今回は最初から遊べるようになっています。また、アクションパートに関してはシェア配信もできるので、自分のプレイを見てもらったり、上手な人のプレイを研究することもできます。

橋野:余談ですが、EVOの大会(米国で毎年開催されている格闘ゲームを中心としたゲーム大会“Evolution Championship Series”)を開発スタッフたちと観に行ったとき、『キャサリン』のゲーム画面が地味なことがとても気になったんです。なので今回は、キャラクターの勝利ポーズなどを追加しています。また、『キャサリン』はコントローラーによる精密な操作をあまり必要としないため、ルールさえ覚えればすぐに対戦ができるのが特徴的なところかなと思っています。もちろん、世界大会に出られている方たちのプレイは、私たちも真似できないほどのプレイなのですが。

限定版の充実ぶりはまさに“ダイナマイト・フルボディ”!

――限定版の見どころを教えてください。Cキャサリンの“理想の声”は、DLCで追加される9種類を含めて全11種類と、かなり手間や費用などもかかったと思いますが、それでも実装しようと思った理由をお聞かせください。

橋野:私が後藤に提案したのですが、こんなに用意するとは思っていませんでした。3~4人ぐらいだと思ったら、まさか11人とは、ちょっと想像を超えていました(笑)。

後藤:ボイスはデモシーンだけでなく全編変わるため、とにかく音響監督さんが大変そうでした(笑)。なお、演じてくださった声優さんについては随時発表していきますので、ご注目いただけると幸いです。

――Nero Glassに関してはいかがでしょうか。

橋野:アニメーションやアクションパート以外はすべて寝巻き姿になります。ちなみに男性キャラクターも適用されます(笑)。

『キャサリン・フルボディ』

――サウンドトラックも前作+新作+声優座談会の豪華仕様ですね。

後藤:前作も限定版の特典でサウンドトラックCDを付けたのですが、出荷数が少なかったのでレアなものになってしまいました。そのため、今回は完全版となるしっかりしたものを作り、みなさんに届けようと思ったんです。

――先着購入特典の『ペルソナ5』のジョーカーはどのようなものになるのでしょうか?

後藤:バベルや対戦モードではキャラクターを変更できるのですが、そのキャラクターとしてジョーカーが選べるようになります。また、普段は“ショウ君”の実況だったものが“怪盗団メンバー”の実況に変わります。

橋野:P-STUDIOのメンバーに作ってもらった、ちょっとしたイベントシーンもあるので、楽しみにしてください(笑)。

『キャサリン・フルボディ』

――前作プレイ済みのファンも期待する『キャサリン・フルボディ』ですが、主に未プレイの方に向けて、本作の注目ポイントをお聞かせ願えますでしょうか。

橋野:本作をプレイすることで自分の深層心理や新しい一面を知ることができると思います。ただ、恋人や家族の前でプレイするとケンカになる可能性が高いので、気をつけてください(笑)。

後藤:世の中にはこんな変わったゲームがあるのだということをぜひ体験してほしいと思います。ほかにはないゲームなので、きっと楽しんでいただけると思います。

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