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2018年12月13日(木)

『ペルソナQ2』プロデューサー&ディレクター“ここだけの話”インタビュー!【PQ2連載】

文:電撃オンライン

 一月半にわたってお送りした『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス(PQ2)』の連載もいよいよ最終回。今回はプロデューサー金田氏とディレクター藍原氏へのスペシャルインタビューをお届けします。発売後だから話せる“ここだけの話”が盛りだくさん!(インタビュー内、敬称略)

『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス』

プロデューサー 金田大輔(かなだ・だいすけ)氏

『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス』

■過去に携わった主な作品
・『ペルソナQ』:ディレクター
・『ペルソナ5』:ダンジョンパートリーダー
・『世界樹の迷宮IV』:ディレクター
・『カドゥケウスNEW BLOOD』『ホスピタル』:ディレクター

■記憶に残る『ペルソナ』シリーズの名場面
 『ペルソナ4(P4)』の終盤、×××をテレビに落とすかどうかを選択するシーンです。『ペルソナ』シリーズは人の心の闇のような部分を作品のなかで描いていますが、だからといってあまり鬱々とした展開に染まるわけでもなく、それも自分なんだから受け入れて頑張っていこうよ、みたいなメッセージが込められていると思います。『P4』のメンバーはそこがすごくわかりやすかったぶん、このシーンにおけるキャラクターの葛藤が選択肢からも伝わってきて印象的でした。選択肢から行動を選択するのは、今となっては当たり前のシステムですが、それがシチュエーションや内容次第で、ものすごく重くて悩ましいものに変わっていくということを再認識しました。

ディレクター 藍原裕太(あいはら・ゆうた)氏

『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス』

■過去に携わった主な作品
・『ペルソナ5』:コープ設計
・『ペルソナQ』:ダンジョン&クエスト設計
・『世界樹の迷宮IV』:イベント作成

■記憶に残る『ペルソナ』シリーズの名場面
 『ペルソナ5(P5)』における三島のコープです。誰しもスーパースターに憧れる時期って少なからずあると思いますが、スーパースターの人たちも表には見えない裏で努力をしているはずなんですよね。でも子供の頃ってそんなところはまったく知らずに「あの人はすごいな、俺もああなりたいな」なんて憧れて、でもそうなれない劣等感もあって。その思いを三島担当のシナリオライターに伝えて、あのシナリオが仕上がりました。あまりにも僕が熱く語っていたからか、三島のコープシナリオのなかに僕の名前が付けられたキャラクターが出てきます。シナリオライターには、僕がロンゲでチャラチャラしているいじめっ子に見えていたんでしょうか(笑)。

『P5』の開発が終わり、『ペルソナQ2』の企画が動き出した

『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス』

――まずは、本作の企画の立ち上げの経緯からお聞かせください。

金田:前作『ペルソナQ(PQ1)』を制作していたときから、『1』だけでは終わらない、シリーズとして新たな柱のひとつになっていくタイトルを目指していました。その後『P5』が発売されて、おかげさまでご好評をいただけたこともあり、ならば怪盗団が参加する『ペルソナQ』を作るべきだろうという話になったんです。

――本格的に動き始めたのは、『P5』が終わってからだったのですね。

金田:そうです。ただ、私はその頃、別のタイトルも担当していて、ディレクターはできない状況だったんです。そんなとき、藍原から「自分にやらせてほしい」という申し出を受けました。

藍原:僕は『世界樹の迷宮IV』でダンジョンRPGを作り、そのあと『PQ1』や『P5』の開発に携わってきましたので「今の自分ならディレクターが務まるのではないか」と自意識過剰に立候補しました。言ってしまったことをちょっと後悔した辛い時期もありましたけれど(笑)。

金田:企画書を作っていた段階で大枠は決めていましたので、それを藍原に伝えて。今回はプロデューサーとして携わろうと決めました。

――最初に決めた大枠のとおりに完成したのでしょうか?

金田:特徴としたい部分を最初に決めて、基本的にはそれを守ってもらえているのですが、最終的にはだいぶ変わっちゃいましたね(笑)。ただ、制作していくうえではもっと良いアイデアが出ることはわかっていましたから。ディレクターを任せる以上、藍原にしっかりとジャッジしてもらいました。

――最初に金田さんから渡された大枠や決まりごとのなかで、印象的なものをお聞かせください。

藍原:ストーリー部分でいうと“ホラー禁止”というのがありました。

金田:前作のおばけ屋敷が、遊ぶ方によっては恐すぎてプレイに支障が出てしまっていました。当時は本物のオバケ屋敷へ取材に行って、その成果がいかんなく発揮されていたのですが……やり過ぎたと反省しました。

――確かに、赤ん坊のF.O.Eや市松人形が飛び出すギミックは怖かったです……。

金田:そうした雰囲気に加えて謎解きの難易度が高めだったこともあり、辛い迷宮になってしまったかなと思っています。今回はホラーはありませんのでご安心ください。

藍原:謎解きに関して、F.O.Eの歩数を計算するパズルのようなものは減らしたいという話も受けました。今回もいろいろなF.O.Eが出現しますが、パズルのような要素は減らし難度を下げています。全体的に遊びやすくなっていると思います。

前作『ペルソナQ』との違いや、今作ならではの新システムについて

――前作との違いや強化点、改善点について、もう少しお聞かせください。

藍原:いちばん最初に考えたのは『PQ2』を『PQ1』の正統な続編として、あらゆる面でパワーアップさせようということです。それはキャラクターやペルソナの数だけではなくて、遊びの部分にも及びます。

 たとえば、システム的な部分では『ペルソナ』シリーズのRPGとして“らしさ”を大事にしようと考えていました。前作の評価や感想などをチェックし、ユーザーのみなさんが遊びやすいかたちにするには何を残して伸ばし、何を直さなければならないのかをじっくり選びました。

――それは、たとえばどんな部分でしょうか?

藍原:バトルシステムでいうと、弱点を突くと必ずダウン状態になって、敵全体をダウンさせれば総攻撃ができるという部分ですとか。前作は弱点を突いてブースト状態になったあと一定確率で総攻撃が発生したのですが、そこがやや遊びにくいという声がありました。今作は『P5』をはじめとするナンバリングタイトルの遊び心地を踏襲しつつ、爽快感のあるバトルに落とし込めたと思っています。

――他に印象に残った前作の評価や感想はありますか?

藍原:一部のスキルが強すぎる、という声が多かったですね。これに関しても、各スキルの役割を吟味した上で、しっかりと再調整しています。

――スキルというと、メンバーを守る“ラインガード”などが追加されたことで、パーティ編成で考える場面が増えましたね。

藍原:ダンジョンRPGとしての楽しい遊びを研究しました。ただ単に弱点を突いて倒すバトルだけではなく、5人のパーティメンバーにそれぞれ役割を持たせて、さらにカスタマイズするためにサブペルソナを育成させていく、という作りになっています。

――実際にプレイしてみて、序盤における竜司の“頼れるタンクぶり”に感動すら覚えました。

藍原:タンクとしては、春もオススメですよ。彼女は一定確率で敵からの攻撃を無効化する“アックスガード”というスキルを習得するんですが、サブペルソナ等で“ラインガード”を追加すると、スキルのシナジーで打たれ強さがグンとアップします。

金田:スキルの使い方を覚えると、かなり戦いやすくなっていきます。この点は、『ペルソナ』らしくもあり、『世界樹』らしくもあるところだと思っています。

――『ペルソナ』らしさといえば、UI周りも『P5』に近い直感的な操作になっていますよね。

藍原:『P5』で設計したダイレクトコマンドというシステムを取り入れ、『世界樹』をベースにしつつも『P5』ユーザーがすんなり入れて、かつ気持ちよく遊べるUIを目指しました。バトル以外のUIも、かなり動かしていますが、視認性も操作性も捨てず、デザインから世界観も感じられるペルソナらしいUIに仕上がっています。これはUIデザイナーとUIプログラマーが頑張ってくれた部分ですね。

――続けて、『PQ2』からの新システムについてお聞かせください。まずは“特別上映”についてお願いします。

藍原:前作の“校内散策”がとても評判が良かったのですが、そこにもう少し遊びの要素を加えたいというところからはじまっています。そこで、ストーリーをしっかり描きつつ、ダンジョン内での遊びもきちんと用意するというかたちに落とし込みました。

 “特別上映”のチケットを入手してダンジョンに行くと、ふだん攻略しているダンジョンとはちょっと違う構造になっています。行動範囲が制限されたり、F.O.Eが増えていたりなどです。

――“特別上映”でキャラクターの掘り下げをしようという狙いもあったのでしょうか?

藍原:そうですね。本編で描くストーリーには、展開やボリュームなどの制限があるためなかなか全員に活躍する場所を与えるのは難しいことなのですが、“特別上映”で補完するかたちですべてのキャラクターをフィーチャーできたかなと感じています。

――同じく新システムの“協力技”についても、同じような狙いで作られたのでしょうか。

藍原:協力技も、1キャラクターにつき最低1つは割り当てています。せっかく複数のシリーズのキャラクターが集まっているのですから、期待するであろう組み合わせや、意外な組み合わせなども織り交ぜた内容となっています。

金田:協力技は開発のかなり後半になって入れたんです。見た目も派手ですし、クロスオーバー感も出せるので「今ならまだギリギリ間に合う」という時期に入れてもらった記憶があります。

――確かに、賑やかな演出が多いですね。

金田:悪ノリもたくさんありました。クマの女装なんて、あそこしか出ませんからね。

藍原:金田さんがやりたいって言ったんでしょう(笑)。

金田:協力技の最初の案出しは私がやったんですけど、そのときにかっこいい技だけじゃなくておもしろい系も欲しいと思い、女装した熊田は出してほしいとデザイナーにお願いしました。

“自分らしさ”をテーマとした深みのあるストーリー

『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス』

――世界観やストーリーについてお聞かせください。まず、今回、映画を題材にした理由とは?

金田:いちばん最初に、今回はパーティに参加するキャラクターがとても多いですから、時を遡っていく物語はどうだろうと考えたんです。アカシックレコード的なものに関わっていくようなイメージでした。そこで、多くの情報が集まりつつ、かつゲームの仕組みの関係でアジトというかロビーにもなれる場所はどこだろうと、デザインチームにアイデアを募集しました。

藍原:そのなかで出てきた案の1つが、映画館のロビーやスクリーンの前でした。

金田:前作との差別化という点でも、それはおもしろいのではないかということになりました。映画のなかに入るようになったのは、藍原がシナリオライターと内容を詰めていく過程で決まっていったように記憶しています。

――今回の物語のテーマや、語りたかったことについてお聞かせください。

藍原:今回の物語では“周囲からの圧力”という題材を扱っています。力を持った人が言っているから合わせようという“権力の圧力”、みんなが言っているから合わせておこうという“数の圧力”、そしてちょっとこれは特殊なんですけど「君はこうだ」とか「本来はこう」とか「プロならこう」といった決めつけから入る“属性の圧力”を取り上げました。

――第3シアターまでで描かれる部分ですね。

藍原:語りたかったことは、もしそんな圧力に押し流されて、悩んだり、自分自身を見失いそうになってしまったら、自分の気持ちを殺してしまう前に、あなた自身に手を差し伸べてくれる人を見つけてほしい。そして“自分らしさを大切にする”こと。これが、今回のテーマですね。

――各映画のモチーフはどうやって決められたのしょうか?

藍原:周囲からの圧力を題材にすると決まったとき、それと同時に映画も選定していきました。「権力を描くならヒーロー映画なんじゃないか」みたいな感じですね。

――他にも候補はあったのでしょうか?

藍原:ホラーがありました。

金田:ホラーはダメ(笑)。まわりの人間がゾンビになってしまうような話は、周囲からの圧力にはハマりそうでしたけど。

――前作は初期のメンバーを『ペルソナ3(P3)』組にするか『P4』組にするかを選べましたが、今作は『P5』組で固定になっています。この仕様にされた意図をお聞かせください。

金田:前作はシリーズ第1作目ということもあり、どちらのルートを選んでも成り立つようにストーリーを構成していましたし、2つの視点で楽しめることをゲームの魅力の1つにもしていました。ですが、どの主人公であろうとも同じ展開を起こしていこうとすると、汎用性のあるストーリーにしなければならないんです。

――パーティが選べても違う物語になるわけではない、ということですね。

金田:そうです。そして今回、3通りの物語の見せ方をするために前作の汎用性の幅を広げるべきかと考えたときに、いいかたちになる印象がもてなかったんです。全部が中途半端になってしまいそうで、それだと誰も幸せにならないんじゃないかという感覚がありました。

 そこで、今作は『P5』発売後の作品ということもありましたので、ジョーカーを主人公に立てた話にして、その物語のなかで『P3』『P4』のメンバーが集ってくるかたちにしようと考えたんです。そうすることで、他のキャラクターたちとの出会いや絆の高まりを描いた、完成度の高い物語に仕上がるのではないかとも思いました。

――今回の物語を語るうえで欠かせない、オリジナルキャラクターたちについてお聞かせください。

金田:発売前はどうしてもP3P女性主人公など、シリーズメンバーの話題が先行しがちで、ひかり、ナギ、ドーの新キャラクターがなかなか目立たないという悩ましさがありました(苦笑)。

藍原:ひかり、ナギ、ドーのデザインはどれも難産でした。とくにひかりは「色のない、自分を主張しない性格のキャラクター」だというのをデザイナーに伝えたところ「それを描くと、ただのNPCになってしまう」と言われてしまいまして(苦笑)。デザインと一緒にシナリオも進めて、お互いにアイデアを出しながらキャラクターを最終的なものに仕上げています。

金田:本編を進めていくと新キャラクターたちにもいろいろな味が出てきますので、ぜひプレイを通して彼らのことも知ってもらえたらと思います。

これからプレイするユーザーやシリーズファンへ向けての一言

――これから『PQ2』をプレイしようとしている読者に向けて、プレイのアドバイスなどはありますか?

藍原:では、僕から。今回はペルソナの合体がやりやすいように“今持っているペルソナをロックして、消滅させることなく合体できる”機能を実装しています。お気に入りのキャラクターたちでパーティを編成しやすくなっているはずです。

――序盤におすすめのペルソナやスキルをお聞かせください。

藍原:弱点を狙っていくのが基本戦術になりますので、なるべくいろんな属性のスキルを持ったペルソナを作っていくのがいいと思います。ただし、それだけではなくて、今作はブースト状態になるとパワーアップする物理スキルを追加したのですが、それがとても強力になっています。

金田:驚くほど威力が上がります。別の技になっているんじゃないかと思うくらい(笑)。

藍原:パワーアップの物理スキルでは再度弱点を突くことはできませんが、サクサク敵を倒せます。新しい遊び方として、戦術の幅が広がっているので、ぜひ使っていただければと思います。

金田:ブースト状態になるためには弱点を突いたりする必要がありますが、物語が進むと“バトンタッチ”というサポートスキルでブースト状態を他のキャラに渡せるようになりますので、それも活用してみてください。

――最後に、プロデューサーである金田さんから、電撃オンライン読者に向けて一言お願いいたします。

金田:『ペルソナQ2』には、それぞれのメンバーが、それぞれの世界から集まってきています。『P5』でいえば、明智が仲間になったあたりに起きた1つのエピソードです。『P5』をプレイされた方でもアニメでご覧になった方でも、『PQ2』をプレイしていただくことで『P5』のキャラクターの印象が少し変わるかもしれません。

 そして『P3』や『P4』のキャラクターたちが絡んできて新たな会話が展開されるというのもこのタイトルならではの魅力です。『P3』、『P4』、『P5』、これらの1つでも触れたことがある方なら、もう一度彼らに会いたいという気持ちで手に取っていただければと思います。ハードルが高く見えるところもあるかもしれませんが、難易度はいつでも変えられますし、オプションで地図描きを簡単にできる機能も入っています。ぜひ手軽な気持ちでプレイしていただければと思います。

『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス』

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データ

▼『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス 公式コンプリートガイド』
■発行:株式会社KADOKAWA
■仕様:A5判/352ページ(オールカラー)
■発売日:2018年12月21日
■価格:本体2,100円+税
 
■『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス 公式コンプリートガイド』の購入はこちら
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