2018年12月12日(水)
あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として“周年連載”を展開中です。
第88回でお祝いするのは11月6日に15周年を迎えたソニー・インタラクティブエンタテインメントの3Dアクションホラーアドベンチャー『SIREN』です。
本作は昭和78年の日本の寒村を舞台に、神話、土着的、民俗的なモチーフをゲームの題材とした“ジャパニーズホラー”となっています。ゲームは“屍人(しびと)”という不死身の化物であふれかえった“羽生蛇(はにゅうだ)村”からの脱出を目的に、何人ものプレイアブルキャラクター(主人公たち)を操ってサバイバルをすることになります。
以下ではライターのBENが、“ジャパニーズホラー”として大きな影響を与えた『SIREN』の魅力を語っていきましょう。
パッケージの中央にぼんやりとたたずむのは、本作のキーマンの1人でもある盲目の少女・神代美耶子(かじろ みやこ)。周囲には物見櫓や“赤い水”が張られている棚田も確認でき、異質な世界が広がっているのがわかります。
本作の舞台は陸の孤島と呼べるほどの寒村“羽生蛇村”。木造の家屋が立ち並び、棚田や小川、道端の道祖神が散見され、日本人にとっては郷愁を感じたり、古きよき日常の風景を感じたりできる村です。ここまで書くと「牧歌的なフィールドをのびのびと探索するアクションアドベンチャーかな?」と思う人もいる……かもしれません。
もちろん、そうではありません! フィールドには霧がかかり、家屋などの建造物は荒廃し、流れる水は赤々とグロテスクで、羽生蛇村が異界に飲み込まれた場所であることがわかります。村の風景がなじみ深いものであるだけに、日常と非日常のギャップが大きく、フィールドの不気味さが引き立つのです。
▲須田恭也(すだ きょうや)などほぼすべての登場人物は、実在する俳優をもとに3Dポリゴンで再現されています。表情は生々しく表現され、あたかも実写映画の映像を見ている感覚におちいるかと。 |
▲神代美耶子を生贄とした儀式から始まる本作の物語。その土地に根付いた信仰や祭礼からは不気味さを感じ、薄暗いフィールドとあわせて恐怖感をあおっています。 |
フィールドの不気味さに加えて恐怖を演出しているのは、羽生蛇村を徘徊する“屍人”の存在でしょう。屍人は本作の敵に該当する存在で、主人公を発見すると手にした鎌や銃を使って問答無用で襲ってきます。彼らはもともと羽生蛇村の村人で、前述の“赤い水”によって屍人へと変貌しています。
屍人の顔面は蒼白なうえに、目からは赤い涙を流していて、そのビジュアルはまさしく“人ならざるもの”。今回の記事のために改めてプレイしましたが、夢に出てきてしまうほど強烈なインパクトを残してくれます。
そして、真に恐ろしいのは彼らが不死身の存在であり、いくら倒しても一定時間後には復活してしまうこと。そんな不死者がフィールドを闊歩しているわけですから、おのずと慎重に進む以外にないのです。屍人の襲撃におびえながら学校や廃屋を探索したり、一寸先が見えない暗闇を歩き回ったりするのは息苦しさを覚えるほど。不死身の存在とはいえ、行動不能にさせた際には生き延びた実感を味わえるでしょう。
▲生前の行動を繰り返しており、家の周りをうろついたり、農作業をしたりと個体によって行動パターンが異なる屍人。ただ、プレイヤーを見つけると、襲い掛かってきます。 |
▲屍人にはさまざまなタイプが存在。画像は空中からプレイキャラを発見する“羽根屍人”で、他にも四足歩行の“犬屍人”や、屍人を指揮する“頭脳屍人”などがいます。 |
ちなみに本作の発売前後に放送されたTV-CMは「怖すぎる」という理由のもと、予定よりも早く放送中止に。屍人のビジュアルの恐ろしさはもちろん、その演出によりホラーファンならびに日本国民に恐怖を植え付けました。本作がいかに恐ろしかったのかを物語るエピソードと言えます。
本作のプレイキャラは全員普通の人間で、屍人に対して無力。プレイキャラによっては武器を持っていない人もおり、逃げることしかできない局面もしばしばあります。脅威から逃れて羽生蛇村を脱出するには、屍人を行動不能にして進むだけでは難しいです。
そんなプレイキャラ唯一の対抗手段となるのが“視界ジャック(幻視)”という、本作独自のシステムです。これは屍人の視覚を、自分が見ているかのように感知できる能力で、とあることがきっかけで、この能力を身に付けます。視界ジャックは主に、屍人がどこにいるのか、進行ルート上に屍人がどれくらいいるのか、どんなタイプの屍人なのかという、屍人の行動パターンを把握するために使います。屍人の行動を読み切り、安全なルートが判別できたら行動を移していくことに。
▲最大4体の屍人まで視界をショートカット登録できるので、4体以上屍人がいる場合は、進行に合わせて改めてジャックすることが重要。視界ジャック時は無防備で、その最中に屍人に発見されると敵の視界に自分が映ります……。 |
▲視界ジャックで上空からの映像が見えたら、羽根屍人がいるということ。屍人のタイプを判別する時にも役立ちます。 |
▲上記画像では視界の右側に社があります。視界ジャック中は、目印となる建物やキーとなるアイテムが映ることも。 |
戦闘を回避したり、謎解きをしたりと非常に便利な視界ジャックですが、もう1つのキモもおさえておきましょう。視界ジャックは“屍人と感覚を共有している”という点で、屍人と一体化してしまったかのような錯覚におちいります。ジャック中は屍人の声まで聞こえてくるので、自分の頭もモヤモヤ。その声のかすれ具合といい、不気味な笑い声といい、聞くにはたえないのですが、攻略のヒントになることもあります。
そんな屍人のなかで注目してほしいのは、廃校に出現する名越校長! どんなセリフを口にするのか、ぜひプレイして確認してください。
本作のプレイキャラは、羽生蛇村の異変に巻き込まれた人々。メインの主人公となるのは、高校生の須田恭也、民俗学者の竹内多聞(たけうち たもん)、村の救導師である牧野慶(まきの けい)の3人となります。ですが彼ら以外にも7人を操作し、物語を進めていきます。
また、各キャラクターで攻略を進めると、他のキャラのシナリオに影響&変化をおよぼすザッピングシステムが本作の特徴となっています。
▲羽生蛇村で同時発生した異変に巻き込まれた主要キャラクターで、竹内多聞。 |
▲シナリオは時系列順に整理されていて、どのキャラクターが誰のシナリオに影響を与えているのかがわかります。 |
各キャラクターのシナリオは条件を達成することでクリアとなります。ただし、シナリオ中に特別なアイテムを入手したり、特定の場所で石碑を倒したりすることで、他のキャラクターのシナリオが解放されることも。場合によっては、他のシナリオの終了条件が増えて、さらに別のシナリオに派生していきます。
そうすることでキャラクターごとの境遇や顛末を知ることができ、群像劇として物語が完成していく点が秀逸です。
▲猟師の志村晃であれば、つるはしを入手してからカギを壊すことで、2つ目の終了条件をクリアできます。それにより別のキャラのシナリオが解放され、さらに物語が進んでいくのですが……中には、悲劇的な結末を迎えるキャラクターも。 |
フィールドを探索中に集められるアーカイブには、本作の謎を明かすヒントが散りばめられています。入手可能なアーカイブの数は、全部で100個。すべてにヒントが隠されているわけではないのですが、屍人になった人物の生前の様子や、プレイキャラの人となりなど、物語に深みを与える内容を楽しめるのです。
物語冒頭に須田を襲った駐在巡査の屍人の名前は、アーカイブにて判明します。石田徹雄という名前で、利き酒はお手の物だったとか。そんな屍人の情報までまるわかりなので、ぜひともアーカイブを集めてみてください。
こちらは、竹内にひそかに想いを寄せる大学生の安野依子(あんの よりこ)。竹内の調査に同行したことで異変に巻き込まれてしまいます。彼女のアーカイブを読むと、かなり美化された竹内と思われる落書きを見られます。
シリーズタイトルとしてPlayStation2『SIREN2』、PlayStation3『SIREN:New Translation』がリリースされています。『SIREN2』は廃墟となった島“夜見島(やみじま)”を舞台に、屍人や闇人たちの脅威から生き抜くことに。主人公である一樹守は、人気俳優となった斎藤工さんが演じています。『2』はゲームアーカイブスで配信されてされていないため、PS2の本体とソフトを用意する必要がありますが、興味がある人には強くオススメします。
▲画像は『SIREN:New Translation』のもの。 |
『SIREN:New Translation』はシリーズ3作目で、『1』と同じく羽生蛇村が舞台となります。サブタイトルの“新約”というようにシリーズの続編というよりも、再構築されているのが印象的。ストーリーが一本化されていて、わかりやすくプレイできるようになっています。プラットフォームがPS3なので、強化されたグラフィックのジャパニーズホラーを存分に楽しめます! なお、こちらはダウンロード版が配信されています。
シリーズ始動から15周年を機に、これまでのタイトルを一挙にプレイしてみてはいかがでしょうか?
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