2019年1月3日(木)

『FFXIV』リターン・トゥ・イヴァリース最終章を最大限楽しむための振り返り&考察コラム2【電撃PS】

文:mag

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

 オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV(以下、FFXIV)』のアライアンスレイドシリーズ“リターン・トゥ・イヴァリース”が、1月8日のパッチ4.5でいよいよフィナーレ! というわけで複数回に分けてお送りしている“最大限楽しむための振り返りコラム”。第2回は、リマインドも兼ねてパッチ4.1のストーリーを振り返りつつ、いくつかの雑考を加える内容でお届けします。今回も密度高めでお送りしていきますので、どうぞお時間のあるときにお付き合いください。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

◆第1回:『FFXIV』でのダルマスカをめぐる情勢
◆第3回:絶海の孤島、リドルアナ大灯台へ

■第2回おしながき■

イヴァリースへの導き――新たな物語の幕開け
 閑話1:おとぎ話“ゾディアックブレイブストーリー”について

オーラン・デュライの“真実”を証明するために
 閑話2:『FFT』における占星術士オーラン・デュライ

※本企画の解説・考察は、ゲーム内の情報や世界設定本“Encyclopaedia Eorzea ~The World of FINAL FANTASY XIV~ Volume II”などを参考に筆者が独自に行ったものです。

■イヴァリースへの導き――新たな物語の幕開け

 “リターン・トゥ・イヴァリース”の物語は、光の戦士がクガネの街で2人の女性と出会ったことから動き出します。女性のうち1人はミコッテ族の芸能記者リナ・ミュリラー、そしてもう1人は、“アルマ”。アルマ・ルクセンテール。のっけから『ファイナルファンタジータクティクス(以下、FFT)』の超重要人物アルマ・ベオルブと同じ名前&似た容姿を持つ人物と遭遇し、テンションが上がった方も多かったのではないでしょうか。それではさっそく、パッチ4.1“英雄の帰還”で実装された物語を振り返っていきましょう。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

 帝国製の劇場艇プリマビスタで各地を渡って興行を行う人気劇団“マジェスティック”の一員であるアルマは、行方不明の父を探してほしいと冒険者に依頼します。アルマの父とは、劇団の主宰を務めるジェノミス・レクセンテール氏のこと。彼はガレマール帝国では誰もが知るおとぎ話をモチーフとしたミュージカル劇“ゾディアックブレイブストーリー”を大成功させた才人であるものの、気骨あるがゆえに帝国現政権の批判を堂々と劇に盛り込んでいったため、その奏功を疎んじた当局から経済面をはじめとするさまざまな迫害を受け、石もて追われるように東方・クガネの地へと逃げ延びてきたのでした。そんなジェノミスは、成功を収めたゾディアックブレイブストーリーの続編を作ろうと“イヴァリース”の伝説について調べを進め、ダルマスカの地こそがイヴァリース伝説の眠る場所であるという結論に至った様子。そして幾度目かの発掘旅行へと赴き……消息が途絶えたということです。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)
▲アルマに冒険者を紹介したのはシド。彼とジェノミスは古い友人であるとのこと。
『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)
▲アルマの兄、ラムザ。プライドが高く、最初は冒険者の手を借りることに強い抵抗があったようです。『FFT』主人公ラムザと同名ながら性格はキツめ。開発としては“あえてひと目で別人とわかるようにしている”という話もありました。
『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)
▲劇団の面々は最初こそ冒険者に対して不信感を露わにしていましたが、クエストの進行に応じてじょじょに打ち解けてくれます。彼らのセリフはどれも期間限定なので、劇場艇に足を運ぶたびに話しかけてみてほしいところ。

◆閑話1:おとぎ話“ゾディアックブレイブストーリー”について

 さて、話を続ける前に、劇団マジェスティックのミュージカル“ゾディアックブレイブストーリー”についておさらいしておきましょう。劇場艇プリマビスタに居候中の異邦の劇作家氏の言葉を借りると……。

全編5幕からなる戯曲で、前半3幕は教会の命令で、暗躍するディリータが、オヴェリアとの出会いにより改心し、彼女を真の女王にしようと誓うところまで描かれた。 後半2幕は獅子戦争が終結へと向かう中、その戦功を武器に、遂にオヴェリアとの婚姻を手に入れる。だが、その恋は悲劇で終わるというラストだな。 周りに嘘をつくことで己が目的を隠すディリータが、その真意を神に打ち明ける一方、オヴェリアはその嘘に翻弄され、決別を神に誓うというアンサンブルが実に最高だったねぇ。

 とのこと。イヴァリースファンには言わずもがなですが、このお話は『FFT』で語られる物語の流れをモチーフとしたもの。平民から畏国王にまで成り上がったディリータを主役とした救世の物語がガレマール帝国の誰もが知る“おとぎ話”として伝わっており、ジェノミスはそれを元に脚本を書いたということですね。その“おとぎ話”の内容はおおよそ以下のとおり。

 アトカーシャ王朝末期、王が世継ぎを失ったことにより、当時最も有力だった“白獅子公”と“黒獅子公”という2大貴族が後継者の座をめぐって戦争を起こした。その戦い――“獅子戦争”は国を二分するほどの大きなものとなり、長期の戦禍によってイヴァリースの地はまさに焦土となりかける。そんな世に彗星のごとく現れたのが英傑ディリータ。彼は平民の出ながら目覚ましい戦果をあげ、11人の仲間とともに神の作りたもうた遺物“聖石”を集めて、ついには戦乱を終わらせ、世を平和へと導いた。

 そんなディリータと仲間たちは“新生ゾディアックブレイブ”と呼ばれていました。なぜ“新生”かというと、彼ら以外にも過去にゾディアックブレイブと呼ばれた者たちがいたから。異邦の劇作家氏によると“聖アジョラ”“占星術師メレンカンプ”“暗殺者アシュレイ”など最低8組が存在していたそうです。

 ちなみに、聖アジョラは『FFT』のイヴァリースで広く信じられていた宗教“グレバドス教”の創始者にして救世主と呼ばれた謎多き人物。占星術師メレンカンプは、2000年に発売された名作『ベイグラントストーリー』で語られる伝説の中に登場する偉大な魔術師で、踊り子の女性。魔を操る術を最初に広めた人物とされます。暗殺者アシュレイは同じく『ベイグラントストーリー』の主人公。

『ベイグラントストーリー』
▲画像の人物がアシュレイ・ライオット。重犯罪者処理班(リスクブレイカー)として活躍する人物でしたが……。

 このようにリターン・トゥ・イヴァリースには、開発からのサービスとして『FFT』や『ファイナルファンタジーXII』、『ベイグラントストーリー』に出てきた要素と似た事例・似た単語が多々見られます。が、もともと『FFT』と『ベイグラントストーリー』の世界は別物であるというお話ですし、もちろん、リターン・トゥ・イヴァリースで展開されているのはあくまでも『FFXIV』世界でのイヴァリース伝承なので、ここでは彼らについて深く語ることは避けておきましょう(ちょっと書き出してみたらものすごい文字量になってしまいそうでしたので……)。

 閑話休題。ディリータを主役としたおとぎ話は物的証拠の不足により史実として認められてはいないのですが、ジェノミスは“聖石”の存在を重要視し、この獅子戦争にまつわる物語が歴史上の事実だったと主張しています。そして、「真の英雄はディリータではない」とも。なぜ彼がそう述べたのか……それでは続きを見ていきましょう。

■オーラン・デュライの“真実”を証明するために

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

 消息を絶ったジェノミスを追って、冒険者はリナ・ミュリラーやラムザとともにダルマスカ王国の都……廃墟となったラバナスタへ。道中でイヴァリース伝承の“ルカヴィ”に似た異形の化け物に襲われますが、これらが何者で、どのようにして顕現したか……その詳細は現状謎のままです。そして一行は野盗や妖異を蹴散らしながらガラムサイズ水路を地下に下り、ついにイヴァリースの“王都ルザリア”を発見。人馬王ロフォカレ、冷血剣アルガスを退け、ジェノミスを救助します。

 しかし安心したのも束の間、盗賊のバッガモナン一味がジェノミスを急襲。結果として、冷血剣アルガスが落とした金牛宮の聖石ドゥマと、ジェノミスが持っていた古代イヴァリース語の解読書が奪われてしまいます。その後、疲労困憊のジェノミスを連れて劇場艇プリマビスタに戻って来た冒険者たちは、ジェノミスたちからいくつか重大な事実を知らされることになりました。その事実とは……。

●ジェノミス・レクセンテールは仮の名前。真の名はアラズラム・デュライ
●ジェノミスの目的は、当時の宗教界の手で禁書として封印された“デュライ白書”が真実を語っていると証明すること
●デュライ白書を記したのは、ジェノミスの祖先オーラン・デュライ
●デュライ白書には、多くの人に知られている平民王ディリータの影にもう1人の英雄“ラムザ・ベオルブ”という存在がおり、異端者として歴史から抹消されてしまった彼こそが、ルカヴィを倒して平和への道を切り拓いた真のゾディアックブレイブだと記されている
●オーランは、ラムザとともに冒険をし、のちに平民王ディリータに仕えたが、デュライ白書で真実を公表しようとした際に教会から異端審問にかけられ、即刻火刑に処されてしまった人物
●ジェノミスは、オーランの名誉を回復するために、まずは“イヴァリースが存在したこと”を世間に認めさせようとしている
●ジェノミスの2人の子どもたちには、“英雄ラムザ”とその妹“アルマ”の名がつけられている

 デュライ白書には、獅子戦争を通じてラムザとオーランが知った教会の欺瞞や不正、策謀が記してありました。だからこそ、真相の暴露を恐れた教会はオーランを処刑し、書を封印したのです。オーランの名誉を回復するということは、異端者ラムザの名誉を回復することにほかなりませんが、あいにくと解読書はうばわれたまま。ジェノミスとラムザは、これまでの情報をもとになんとか解読を再開しようと意気込みます。しかしその一方で、彼らの姿を見たアルマは“2人はイヴァリースに取り憑かれている”と不安を口にするのでした。

 ……おおよそここまでが、パッチ4.1“英雄の帰還”で語られた物語。『FFT』はそもそも、“デュライ白書”に記された真実の物語を、後世の歴史学者アラズラムが語ったという方式で作られた作品でした。プレイしたことのある方なら、エンディングに“ブレイブストーリー著者 アラズラム・デュライ”と出たときの驚きと感動は覚えているはず。

 つまるところリターン・トゥ・イヴァリースは、アラズラム(ジェノミス)が、デュライ白書を通じて真実を知り、それを語る……というエンディングの感動の再体験、あるいは“『FFT』という物語が生まれるまで”の体験をさせてくれるお話と見ることもできるかもしれません。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

“しかし、私は真実を知ることができた…
今こそ彼の名誉を回復しよう…
彼の生きざまを若い世代に伝えるためにも…”

◆閑話2:『FFT』における占星術士オーラン・デュライ

『ファイナルファンタジータクティクス』

 “デュライ白書”を執筆し火刑に処されたオーラン・デュライとは、いかなる人物だったのか? リターン・トゥ・イヴァリースでのオーランについては上記で触れた以上の情報は現状ありませんので、ここでは大元のモデルである『FFT』のオーランの来歴を軽く(?)振り返ってみましょう。

 先に語ったとおり、“獅子戦争”はイヴァリース国王の後継をめぐって、北天騎士団を擁する“白獅子”ラーグ公と南天騎士団を擁する“黒獅子”ゴルターナ公が争った戦いでした。

 北天騎士団を率いていたのは、武門の棟梁たるベオルブ家。『FFT』の主人公ラムザ・ベオルブの一族で、北天騎士団の団長は代々ベオルブ家の者が務めてきました。そして一方の南天騎士団を率いていたのが、“雷神シド”の異名を持つ剣聖シドルファス・オルランドゥ伯。彼はラムザの父である天騎士バルバネスと並んでイヴァリース最強と謳われた騎士で、数多の権謀術数渦巻く時代において、バルバネスに「友と呼べる人は彼だけだった」と言わしめた人物です。

 オーラン・デュライはそんなオルランドゥ伯の養子で、南天騎士団に所属する軍師として活躍していました。しかし彼は表向きの任務のほかに内偵としての役割も担っており、たびたび単独で調査に出かけることもあったようです。そしてオーランは任務中に命の危機を救われたことをきっかけとして、かねてから異端者として動向を調べていたラムザ・ベオルブと接点を持ち、ラムザと、“獅子戦争の裏でグレバドス教会の教皇一派が暗躍しており、自分たちはそれに気付いている”という事実を共有。ラムザに「きみは独りじゃない。自分も命を賭して戦う」と告げるのでした。

『ファイナルファンタジータクティクス』
▲オーランは、敵全員の行動を封じる“星天停止”という強力な技を使用。物語の語り手(子孫であるアラズラム)の誇張もあるのかもしれませんが、占星術士としてかなりの実力を持っていたものと思われます。
『ファイナルファンタジータクティクス』
▲グローグの丘での、ラムザとオーラン二度目の出会い。最初はお互い警戒しつつも、少ない言葉の応酬ののちに相手が自分と同じ方向を向いていると悟り「ともに戦う仲間だ」と言葉をかけるこのシーンは、セリフ回しの見事さも相まって、屈指の名場面として多くの人の記憶に残っているのではないでしょうか。

 さて、獅子戦争の裏で第三勢力としてグレバドス教会が暗躍していると書きましたが、そもそも彼らがどういう意図で動いていたのかをものすごくざっくりと説明すると……。

 教皇一派は、獅子戦争の傍らで各地の反乱分子を煽ってラーグ公・ゴルターナ公の両軍を消耗させ、正面衝突による短期決戦を誘発させます。さらに、決戦時の混乱に乗じて両軍の指導者とその周囲の要人を暗殺。混迷を極めるその状況下では両軍は和平への道を歩むしかなくなり、そんなときに教皇らが聖石を持つ“伝説のゾディアックブレイブ”として戦の仲介者となることで、民衆からの支持を一挙に獲得し、世を動かす実権を握る……。

 というのが教皇らの当初の目論見でした。これを実現するために、教会は影でじつにいろいろなことをしでかしてきたのですが……この計画は、主要人物の暗殺こそ為されたものの、主人公ラムザや、聖石によって降臨した悪魔(ルカヴィ)たち、そして教皇一派から南天騎士団に送り込まれたディリータなどなど登場人物それぞれの独自の行動によって、当初の筋書とは異なる形に進んでいくのでした。このあたりで、各自がどういう立場でどう行動したかを紐解いていくとものすごくおもしろいのですが……あまりに長くなりすぎるので、ここでは割愛いたします。興味のある方はぜひ『FFT』本編をプレイしてみてください!

 ……両軍決戦の最中、オーランは疑心暗鬼に陥った主君ゴルターナ公から謀反の嫌疑をかけられ幽閉された義父(シド)を助けるべく、ラムザと協力。見事シドを救い出します。その際、シドはラムザ一行に加わることを決め、オーランもそれに同道すると申し出ますが、シドは彼に王位継承者の1人“王女オヴェリア”の護衛を厳命。オーランはそれに従ったのでした。

 そこからの彼の動向については語られる機会が少なくあいまいな部分が多いのですが、ディリータの策によってゴルターナ公暗殺の犯人が義父シドだとされたこと、そして真犯人がディリータであると知っていることから、オーランはディリータ率いる南天騎士団に捕まり、投獄されてしまった様子。怪我を負いつつも脱獄した彼は王女オヴェリアのもとへたどり着き、義父が潔白であることを訴えます。それだけ告げて、オーランは一度は己の命を諦めるのですが……「北天騎士団も教皇も倒して畏国を平定し、オヴェリアの国をつくる」と語るディリータに強引に諭され、結果的に彼に仕えることを選んだものと思われます。

 そのあとは、リターン・トゥ・イヴァリースで語られたエピソードとほぼ同じ。オーランはディリータの覇業を手伝う傍らで真実を記した“デュライ白書”を書き上げ、それを発表した直後に、異端者として生涯を終えることになりました。彼の人物像としては、正義感こそ強いもののやや刹那的というか、たびたび「“これが正しい”と言うことさえできるのなら自分の命もいらない」という行動に出るタイプだったように思えます。デュライ白書の発表もある種その正義感の発露であり、そのせいで寿命を縮め汚名を着せられる結果となってしまったわけですが……見方を変えれば「友のため、己の身を顧みず信義に基づいた行動を貫くのが、オーラン・デュライである」と言うこともできるかもしれません。かつてラムザに宣言したとおりに命を賭けて、最後まで自分なりのやり方で戦ったオーラン。ジェノミスたち子孫は、あるいはデュライ白書を通してオーランの一直線な正義感に感じ入った結果、彼の汚名を晴らすべく熱意を注いでいるのかも……なんて考えるのもまた一興でしょうか。


 といったところで今回はここまで。次回はパッチ4.3“月下の華”で実装された物語と、聖石やリドルアナ大灯台について迫っていきたいと思います!

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)
▲ブレイブストーリーにおけるラムザとディリータの関係性は、クエストが進んだあとも劇場艇の隅にある“球”に話しかけることで見られます。『FFT』をプレイ済みの方にも興味深い情報が満載なのでぜひご一読を。

⇒第1回:『FFXIV』でのダルマスカをめぐる情勢
⇒第3回:絶海の孤島、リドルアナ大灯台へ

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