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2019年1月31日(木)

『ネルケと伝説の錬金術士たち』発売記念特集! 第3回は細井P&菊地Pのインタビューをお届け【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 『アトリエ』シリーズ20周年記念作品として、1月31日にPS4/PS Vita/Nintendo Switchでコーエーテクモゲームスから発売された『ネルケと伝説の錬金術士たち ~新たな大地のアトリエ~』。本作は街の担当管理官となった主人公のネルケが、シリーズの歴代キャラクターたちの力を借りて街づくりを行いながら“グランツヴァイトの賢者”が残した賢者の遺物を見つけるべく奮闘する“街づくり×RPG”となっています。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

 ついに発売を迎えた第3回の特集では、本作の総合プロデューサー・細井順三氏と、開発プロデューサー・菊地啓介氏の両氏のインタビューを公開。完成を迎えた『ネルケと伝説の錬金術士たち』の魅力を存分に語っていただきました。最後にプレイのちょっとしたコツもお聞きしましたので、両氏の言葉を読み解いて、“新たな大地”での街づくりを達成させましょう(インタビューは2018年12月19日に実施)。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』
▲細井総合プロデューサー(左)と菊地開発プロデューサー(右)

プレイヤーが試行錯誤する元祖的な遊びを提供

――ついに発売を迎えますが、あらためて完成までを振り返ってみていかがですか?

菊地啓介氏(以下、菊地):最終的に今までの『アトリエ』シリーズとは違う手触りのゲームでありながら、手ごたえ、ボリュームともに、かなり熱中して遊べるゲームに仕上がったと思います。また、テストプレイをしてみてわかったのですが、私と細井、それとディレクターの片岡(宏氏)のプレイを比べてみただけでも、遊び方がまったく違っていたんです。

 なので、人によって遊び方の変わるゲームになったなと思っています。私はキャラクターとの友好度や住民の支持率を気にしながらじっくりやるタイプですが、細井はけっこう勝負に出るプレイスタイルなんですよ(笑)。

細井順三氏(以下、細井):私は吉池(真一氏。『アトリエ』シリーズで企画やディレクターを担当)とテストプレイをしたのですが、彼のプレイはすごく細かいんです。例えば錬金コストが最大18の錬金術士ならば、18のコスト枠が1余った場合は全部埋めるために、必要コストの小さい小麦粉を作るようにするんです。

――なるべく損をしたくないというプレイですね。なんとなくわかります(笑)。たしかにこの手のゲームは、プレイヤーの性格が遊び方にダイレクトに反映されそうです。

細井:逆に私は欲しいものさえ調合できればいいやって考えで、調合依頼を出してその結果をもらうみたいなプレイですね。だから、やりくりが大変なんですよ(笑)。そんな感じに人によってプレイの仕方がまったく違うので、ユーザーさんごとに楽しさの体験の仕方も変わると思います。

――限られたなかでのコスト管理が楽しい、どこかなつかしい感じのゲームデザインですよね。

細井:我々も最近の『アトリエ』シリーズは物語性が強くなり、RPG寄りになってきて、プレイヤーが選ぶという選択肢が狭まってきていると感じていました。だから本作は『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』にあった、プレイヤーが試行錯誤する元祖的な遊びに近づけられたと思います。

――本作は20周年記念作品ということで、シミュレーション色の強い作品になりましたが、実際に遊んでみると最近の『アトリエ』シリーズらしさもしっかり感じられますね。

菊地:じつは“材料を集めて、調合して、使う”というゲームサイクルを、登場するキャラクター全員でやっているだけで、『アトリエ』シリーズの根底にあるものは変わっていません。全員が活躍するためのゲームデザインとして、シミュレーション的な側面が強く出ているんです。

 ですので、根本的なおもしろさは変わってないと思います。もちろん、今の形になるまでは意見がぶつかることもありましたが、最終的にはまとまりました。20年間続けてきたタイトルにしかできないからこその記念作品で、ある意味この作品の開発は20年かかっていると思っているんです。そんなタイトルに相応しい、長く遊べるゲームになったなと感じています。

細井:『アトリエ』シリーズらしさについては、開発スタッフのなかでもいろいろな考えがありますが、私としては初期の『アトリエ』シリーズにあったコスト管理も魅力の1つだと思っています。

 近年、そこがどんどん緩和されている状況にあって、ガストブランドが25周年で、『アトリエ』シリーズが20周年という節目に、『アトリエ』シリーズとしてもう一回、そういった元祖的なシステムの楽しさを経験してもらうのもありかなと考えました。

 本作は調合システムが簡略化されていると思われている方がいらっしゃると思います。たしかに簡略化されている部分はありますが、じつはここも試行錯誤するおもしろさは変わっていなくて、その調合に至るまでも、錬金術士たちとの役割分担をはじめとして、さまざまな試行錯誤をするおもしろさがあるはずなんです。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』
▲錬金術士に何をいくつ調合させるか、限られたコスト(画面右上の数字)内での思考錯誤が、本作調合のおもしろさなのです!

――材料をどうやって集めるとか、誰に調合をまかせるとかですね。

細井:そうです。そこにキャラクターゲームとして友好度を高めるという要素も加わり、今までのRPG的なラインとは違う、新しい方向性が出せたのではと思っています。

ブラッシュアップで満足度をアップ!

――今回はブラッシュアップを理由に一度発売が延期されましたが、それを決断した一番の理由とは何だったのですか?

菊地:東京ゲームショウ2018でのアンケートや、ユーザーのみなさんからのご意見、社内モニターなどの結果です。ゲームとしての利便性、ストーリーの盛り上がり、シミュレーションゲームとしての継続性など、さまざまなことを検討した結果、最終的にみなさんに満足してもらうものにしようと思っての判断です。

 何かが不足していたのではなく、全体的に20周年にふさわしいものを提供したかったというのが一番の理由です。お待たせしてしまったみなさん、本当に申しわけありません。

細井:最初は手堅く作り過ぎてしまいました。我々はこれでいいと思っていても、ゼネラルプロデューサーの井上(忠信氏)は「これじゃダメだ」って言うんです。我々と井上の『アトリエ』シリーズに対するイメージが違うんですよね。それをまとめるのも大変でしたが、昔の『アトリエ』シリーズのおもしろさを担保しようというのが根底にあったので、その方向へ改修を進めていきました。

――具体的にどのような変化があったのか教えてください。

菊地:改修ポイントは大きく2つありまして、1つは『アトリエ』シリーズらしさという部分の補強。もう1つはゲーム中盤以降も飽きさせないための改修です。シミュレーションゲームはユーザーさんごとにそれぞれの小目標を作ってもらわないといけないので、例えば突然急な依頼が発生するとか、同じ作業をしているなかでもドラマが生まれるように調整した部分が多いです。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』
▲突発的な依頼は“急報”という形で発生します。制限ターン内の解決を目指しましょう!

――最終的には土屋(暁氏。『サージュ・コンチェルト』のディレクター)さんも参加されたとのことですが、どのような作業を行ったのですか?

菊地:ストーリー、イベント方面の監修と制作ですね。ここはかなり手を入れました。

細井:一方でシリーズ監修の吉池には、『アトリエ』シリーズとしてのゲームバランスやゲームとしてのおもしろさを監修してもらいました。彼が『マリーのアトリエ』を作ったとき、本人はシミュレーションゲームとして作っていたつもりでした。

 でもユーザーさんには、どちらかといえばシミュレーションゲームとアドベンチャーゲームが混ざったゲームという認識だったと思うんです。その手触り感の違いはなんだろうというところを踏まえたうえで、難易度調整、レベルデザインなどを含め、『アトリエ』シリーズらしいゲーム性を追及していきました。

――ブラッシュアップ期間を設けた結果、満足のいくものになりましたでしょうか?

菊地:そうですね、想定以上のものに仕上がっていると思います。イベントを含め、超もりだくさんな内容を詰め込みましたので、きっと満足していただけると思います。

細井:ブラッシュアップの目標自体は意思疎通して共有できていたので、早く仕上がりましたし、それがダイレクトにゲームの出来に反映できたと思います。

クリアを目指すだけならば難しくない!?

――本作で新しい方向性を打ち出すために、とくに苦労した部分はありますか?

細井:苦労したのはバランスや難易度を含めた、総合的なさじ加減ですね。本当にさじ加減というのがすごく難しくて、調整に時間がかかってしまいました。

――本作でも周回プレイが可能のようですが、そういったプレイが前提のバランスになっているのでしょうか?

細井:遊び方は2つありまして、物語をクリアしたあとも継続してプレイが可能です。物語がひと区切りついたら、期限を気にせずに延々と遊べるようになります。また、いくつか周回プレイに引き継げる要素もあり、2周目を遊ぶこともできます。

 無期限プレイについては最初悩みましたが、今の『アトリエ』シリーズでも支持されている要素なので、残そうということになりました。

――バランス的には1周目のプレイでもあまりキツイ印象は受けませんでした。

細井:クリアするだけならば厳しくありませんが、例えば1周目からトゥルーエンドを目指そうとすると、少しキツいですね。私は住民に気をつかい、要望を聞いて回る堅実なプレイをしていたのですが、最終的には慌てつつギリギリ達成できた感じです。

――トゥルーエンドにたどり着くには、単に課題をクリアするだけではダメなのですね。

細井:はい。ゲームには課題をクリアすることで進むストーリーラインと、“研究”をすることで進むストーリーラインの2つがあるんです。トゥルーエンドを目指すには、その両方をクリアする必要があります。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』
▲メインに進行に欠かせない“研究”は、『アトリエ』シリーズを代表するアイテムが登場します。マリーとエリーはおなじみの“生きてる”シリーズを調合することに!

 そのためには、最初からそれを見据えた街づくりが求められるので、初プレイでは少々キツイかもしれません。ただ、普通に課題をクリアしていくだけならば、それほど大変ではありません。

菊地:課題を進めるだけならば、初プレイでもクリアできるようにしています。やはり、多くのキャラクターが出てくる以上は“ごっこ遊び”的な楽しさを味わいたいじゃないですか。このキャラクターとこのキャラクターを隣り合わせにしたいとか、パーティを好きなキャラクターでまとめたいとかね。

 あまりバランスを厳しくして“このキャラクターは絶対にここに置かないとダメ”という形にしてしまうと、キャラクターゲームとして成立しなくなってしまいます。だから、正解が1つしかないような難しさにはしないように心がけました。

中立的な世界観と膨大なイベントの理由

――ネルケたちオリジナルキャラクター以外は、本来の世界からやってきているようですが、その世界観の構築でこだわったポイントはありますか?

細井:まずは全員で一丸となって協力して何かを達成するストーリーがあって、そこから今の世界観を構築していった形です。本作の世界は中立的に作ろうということがあり、物語でも伝説の錬金術士たちが異世界から来た謎には深く触れません。全員が元の世界に帰るための手段を探すことをストーリーに盛り込むと、ものすごくシリアスな展開になってしまいますから。

 また、そこがメインになると、例えば『アーランド』シリーズのキャラクターなど、同じ世界から来たシリーズキャラクターで固まってしまうので、全員で協力して何かをしている場合ではなくなってしまいます。だからそこは『アトリエ』シリーズらしく、ふんわりさせておこうと(笑)。

――たしかに異世界に来たことに対してあまり危機感がなくて、わりと平然と「あ、そうなんだ」と状況を受け入れていますよね(笑)。そうしたなかでハゲルやパメラなど、シリーズをまたいで登場するキャラクターはメタ的な会話があったりしておもしろかったです。

細井:ファンの方はそこも楽しんでいただけますし、初めて『アトリエ』シリーズを遊ばれる方も元の世界の事情がまったくかかわってこないので、わかりやすくなっています。

――“訪問”で発生するキャラクターイベントの物量に驚かされましたが、これらの選出や内容の実作業は、どのような形で行われたのですか?

菊地:いろいろなパターンがあります。例えば各作品をプレイし直して、おもしろいイベントをピックアップしたりとか、開発スタッフから「これは絶対に入れたい」というイベントを提案してもらったりですね。

 エピソードの抽出方法も、ユーザーさんが望むもの、好物が同じキャラクターで集めてみるとか、そういったカテゴリー別にエピソードを作りました。それを組み合わせていったら、最終的にものすごいボリュームになっちゃいましたね(笑)。

細井:キャラクター同士の組み合わせの楽しさという部分では、シナリオライターも苦労しつつも楽しんでいたようです。我々もこのキャラクターはこのキャラクターと組み合わせられるんだという驚きも含めて、とにかく楽しいというか、新鮮でしたね。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』
▲イベントはその数なんと500以上! 知っている原作の数が多いほど、ニヤニヤが止まりませんよ。

菊地:とくにシリーズを多くプレイしている人は、「あ、そうだよね」って思うシーンが多く出てくると思います。なにせ私たちがプレイしてもそうでしたので(笑)。

――キャラクターやアイテムのイメージはそれぞれの原作で完成されているわけですが、このミックスした世界観に持ってくるにあたって、気を付けた部分はありますか?

細井:全体的な方針としては“普通にしよう”でした。一見消極的な理由に聞こえますが、やはりここまでは許せるとか、ここを変えたらダメみたいな指針が、人によって違うんですよ。だから全員の総合的なイメージを崩さない程度に普通にしようと(笑)。

 あまりこだわって何かの作品に寄ると、別の作品から離れる可能性もあるので、とにかく最大公約数を取り、違和感のない作りにしようと心がけました。

菊地:ちょっとグレーの部分は残しておいて、みなさんが想像する幅を広げていれば、あとは思い出補正で楽しんでいただけるだろうという(笑)。

細井:とくにアイテムは『アトリエ』シリーズでも作品ごとに変化しているんですよ。フラムの性能1つにしてもさまざまなんです。よって、基本的には違和感のない方向で調整しています。もちろん、方向性は同じで、例えば攻撃アイテムが回復アイテムに変わるということはありません。

――そこはわかったうえで、あえてという感じなんすね。

細井:もちろん、我々も個別にいろいろな思い入れはありますが、あまり細かくやると押しつけになってしまいますし、遊んで違和感がなければいいと思っています。シリーズごとの違いまで取り込むと、複雑になってどうしてもストレスを感じてしまうんです。ストレスはない方が絶対にいいので、原作特有の細かい設定はあえてグレーにしています。

キャラクターとの再会で昔の自分を思い出す!?

――多くの歴代キャラクターが登場しますが、個人的に注目するキャラクターをおしえてください。

菊地:『ザールブルグ』シリーズのキャラクターですかね。私がユーザーとしてプレイしていたときの思い出補正があるので、そういった意味ではリリーやエリーかな。『ネルケと伝説の錬金術士たち』のプレイでも、彼女たちを重宝していました。

 あとプレイしてかわいいと思ったのがヴィオラートです。もちろん注目してほしいのは全員なんですけど、あくまで個人的な意見としてね(笑)。

細井:『ザールブルグ』シリーズのマリー、エリー、リリーの3人は3Dモデル化が初めてなので、そこは見どころだと思います。注目して欲しいという点では、キャラクター個人よりもゲームそのものですね。どちらかと言うと、私はいわゆる箱推しなんですよ。歴代キャラクターが集まって、何かをやるというシチュエーション自体が楽しい派なので。

菊地:特撮やアニメーションなど歴史の長いコンテンツでは、劇場版などで“全員集合!”的な話がありますよね。しっかり全員に見せ場があって、好きなキャラクターのエピソードが出てきてうれしいとか、そういう感覚をゲームでも味わいたいなと思ったところから、今回の企画は始まっているんです。

 『アトリエ』シリーズは2~3作のサイクルで世界観やシステムが変わってきているので、かつて遊んでいたキャラクターを自分でまた使えるというのは、やっぱりうれしいですよ。

――オールスターが登場する作品は、常にクライマックスな感覚がいいですよね。

細井:個人的に掛け合いが楽しかったのは、『マナケミア』シリーズのヴェインとかロゼとかですね。私がガストに所属して初めてかかわった作品のキャラクターたちが出てくるのは、いろいろと感慨深かったです。ウルリカの思い込みが激しくて、ちょっと煩わしい感じも含めてね(笑)。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』
▲ロゼとウルリカは、異世界に来ても相変わらず。そんな関係も微笑ましいです(笑)。

――そういう意味では、自分のリアル思い出と重ねながらプレイする方も多そうですね。

細井:あの当時はこのムービーを作るのに苦労したな……とか、当時の自分を思い出してなつかしくなりましたね。逆に『アーランド』シリーズのロロナとかは、しょっちゅう会っているからそうでもなかった感じですが(笑)。

こだわったオリジナルボイスとサウンド

――思い出の喚起という意味では、キャラクターの声優さんがほぼオリジナルという部分も大きいと思います。

細井:そこはもうマストとしてありました。ほぼオリジナルの方ででそろえられたのは、本当によかったです。

菊地:ただ、とにかくスケジュールが大変でしたね。今はお忙しい方ばかりで、いろいろな方にご尽力いただきました。初期の作品はもう20年も前なので声の感じを心配していたのですが、そこはさすがにプロでしっかり演じていただけたと思います。

――あとはサウンドも『アトリエ』シリーズを支える重要な柱だと思います。今回こういったお祭り作品にするにあたり、楽曲を手掛けられた柳川(和樹氏)さんや阿知波(大輔氏)さんに何か要望は出されましたか?

菊地:20周年の記念タイトルとして、当時を思い出せる曲と、最新『アトリエ』シリーズとしての顔となる曲があればいいという全体方針があり、詳細はおまかせしました。柳川さん、阿知波さんともに、ずっと『アトリエ』シリーズの曲を作ってきたわけですから、そこに対する信頼感はありました。

細井:お2人とも私たちより『アトリエ』歴は長くて作品に精通しているので、「がんばって作ってください!」とお願いしました。また、ゲーム中でアトリエごとに曲が変わるなどのこだわりの部分は、サウンドディレクターが、しっかりやってくれました。

⇒『ネルケと伝説の錬金術士たち』サウンドトラック発売記念インタビューの記事はコチラ

序盤のプレイで役立つヒントを伝授!

――序盤で役立つプレイのコツなどあればぜひ教えてください。

菊地:自分のプレイを振り返って思うのは、しっかり“研究”を進めておいたほうがいいということですね。そうしないと中盤で詰まるというか困る可能性があります。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』
▲課題のなかには“研究”を進めないとクリアできないものも。

 あと、ゲーム中は住民の支持率が下がる場合もありますが、支持率は下がっても住民の人数の増え方などに影響してくるだけで、街を追放されるといったことはありませんし、序盤はほぼ意識しなくても問題ありません。

細井:私からはただ1つ。赤字を恐れないことです(笑)。序盤は赤字でも、“まちの声”をクリアすればすぐ黒字になるので、施設はガンガン建てていって大丈夫です。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』
▲“まちの声”はさまざまな依頼があります。なかでも領主からの依頼は報酬が多いので、積極的に達成を狙いましょう!

菊地:逆に施設をガンガン建てずに保守的なプレイをしていると、途中で急に課題がツラくなるときが来ます。赤字だとあせるのはわかりますが、序盤はそこまで気にしなくて大丈夫です。

細井:赤字のペナルティはそんなに高くありませんし、赤字が続いたらまちの声を見て、魔物討伐の依頼を重点的にこなせば、すぐに黒字化できると思います。たしかに赤字と聞くとあせりがちですが、このゲームはそこまでシビアではありませんので(笑)。たぶん、数字を意識し始めるのは中盤以降だと思います。

菊地:最初は決まっているものを建てていく感じですから。きっと、資金繰りが厳しいと感じる方は、真面目なプレイをしている人だと思います。

――例えば無理にアトリエを大きくしなくても、小さいアトリエを複数建ててもいいわけですね。

細井:そうですね。あとはいつ効率化を図るかですね。中盤以降、改築や移動を意識し始めると、『テトリス』みたいなゲームになるんです。建設可能なエリア内を隙間が生まれないように、綺麗に施設で埋め始めるという(笑)。

――アトリエだけを集めたり、畑だけを集めたり、好きな錬金術士だけ並べたりとか、その内容はユーザーによって違いそうですね。

菊地:一番の効率プレイって、じつはそれかもしれません。同じ施設を同じ区画に建てて、さらにその区画内にできた隙間にその業種の効率アップ用の施設を建てることで、効率が上がります。

細井:私の場合、最初は1マスの隙間も許さない緻密なプレイで進めていたのですが、そのうちだんだん適当になり、途中から自分の妄想プレイになるんです。離れ小島みたいなエリアにポツンと1人誰か置いて、問題があるから隔離されているんだとか(笑)。そんな感じで遊ぶと、このゲームはすごくストーリー性があるんです。

 楽しみ方としては、昔の『マリーのアトリエ』なんですよね。当時、『マリー』はセリフ数も膨大ではなく、説明も多くはなかった、よく吉池も言っていますが、結果として語りきらないほうが想像の余地が存在できると思うんですよね。

――たしかに今のゲームは親切すぎる感じはありますね。

細井:語りきらないほうがユーザーさんの選択肢の幅が広がる可能性もあると思ったので、そういう意味で本作では、イベントの発生に特殊な条件を設けていません。

 例えば、同じ区域にこのキャラクターとこのキャラクターがいるとイベントが発生するという条件を付けると、全員がその条件達成のために同じ配置にするじゃないですか。それだけは嫌だったので、街づくりでキャラクターにまかせる仕事や、建築する位置などは、ユーザーさん毎に自由に決めて欲しいですね。

――次に戦闘ですが、パーティ編成ではアタッカーとサポーターの配分も悩みどころです。

細井:私たちのなかでもプレイスタイルによって違っていて、井上はアタッカーをそろえたほうが強いと言っていて、私はサポーターで固めたほうが強いと思っています。ただし、そのサポーターもスキルがアタッカー系か回復系かでかなり違うので、調査によって随時変えていくという感じですね。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』
▲サポーターはオートで戦うので、どんなスキルが使えるのか確認して編成しましょう!

菊地:開発チーム的にはこれが最強という組み合わせはあるらしいのですが、かなり特殊なプレイが必要になるだろうし、一概にどれがベストかはわかりませんね。

細井:アタッカーの一番のメリットは、戦闘中にアイテムを使えることなんですよ。でも1回の調査につき、1アイテム1回ずつしか使えないため、それも含めてどう捉えるかで、強さの感覚はまったく異なると思います。

 それと、サポーターはドライブが4つたまっていれば、ターンを気にせずに行動に割り込めるのが強みです。よって、ドライブさえためれば任意で瞬間的な火力を出せるのですが、アタッカーはターン制限があるので、瞬時の爆発力が出ないのも特徴です。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』
▲アタッカーの強みはアイテムの使用。この使い方しだいで格上の相手を倒せることも!?

――戦闘はオートが主体になるとは思いますが、セミオートならスキルの指示もできるので、意外に考えることは多いですよね。

細井:セミオートやマニュアルは、サポーターのドライブ4つで発動できる技の割り込みができますから、バーストも含めて、いつ割り込むかはとても重要です。あと、簡単な戦闘システムだと思われるかもしれませんが、じつは最後のほうはかなり難しいですよ(笑)。最近の『アトリエ』シリーズと比べても引けをとらない手強さだと思います。

――休日も“調査”を優先するのか、“訪問”して住民との友好度を優先するか悩みますよね。

細井:そのあたりはゲームとして難しいのではなく、何を中心に置くかで変わってくるんです。日銭を稼ぐか、未来の自分に投資するかみたいな。そこは昔の『アトリエ』シリーズの時間の使い方と同じ感覚ですので、プレイスタイルによって違うと思います。

 あと、今回のゲームのキモは“研究”なんですよ。“研究”によってレシピも開放されていきますし、素材も入手できるので、次にすることの準備のために“研究”を行っておくことも大事です。

――ちなみに、錬金術士からもらえるレシピには、何か条件はあるのですか?

細井:錬金術士たちの加入時と、それぞれの錬金術士の友好度が一定になった時の2パターンで入手することができます。

――サブキャラクターの登場タイミングがプレイごとに変わるのですが、こちらはランダムですか?

菊地:メインストーリーに絡むキャラクターの登場タイミングは決まっていますが、それ以外のキャラクターが登場するタイミングは、基本的にその時点でメインストーリーに登場している錬金術士のシリーズタイトルからのランダムとなっています。好きなキャラクターがなかなか登場しないこともありますが、そこはリアルラックに賭けてほしいです(笑)。

――“調査”で行える採取ですが、1人で採取する演出と、全員で採取する演出ではどれくらい採取量が変わりますか?

菊地:調査中の採取演出は、あくまで演出ですね。よって、採取した素材の数は1人でも多人数でも同様の数になります。

『ネルケと伝説の錬金術士たち』

――キャラクターごとの販売や採取の適性設定は、どのような形で成長していくのでしょうか? また、キャラクターごとの適性にある緑のマークの意味を教えてください。

菊地:適性はレベルに応じた成長や、友好度を条件としたスキルの取得などで変化します。緑色のマークはキャラクターが得意とする(成長しやすい)能力ですね。

DLCから続編まで気になる今後の展開は?

――発売後のDLC展開はどのようなものを予定されていますか?

菊地:イラストで描かれた各キャラクターのコスチュームをいくつか用意しています。たとえば『アーランド』シリーズのキャラクターならば和服シリーズというように、シリーズごとに変わるようになっています。

――少し気が早いかもしれませんが、発売後は『ネルケと伝説の錬金術士たち』のシリーズ化希望の声も挙がると思いますが、そちらについてはいかがですか?

菊地:5年か10年後、新しいキャラクターがたくさん登場したら……でしょうかね(笑)。それが街づくりというジャンルのゲームになるかどうかはわかりませんが、全員で集まって何かする作品を作れたらいいなと考えています。今回の制作はかなり大変でしたが、『伝説の錬金術士たち』シリーズというくくりで、何かしらで続けられたらと思います。

――では最後に発売を待っていたファンにメッセージをお願いします。

菊地:まずはお待たせしてしまい申しわけありませんでした。ですが、『アトリエ』シリーズの20周年を飾るにふさわしいゲームになったと思います。かなり中毒性の高いゲームになっていますので、ぜひ手に取っていただいて、シリーズの20周年をみなさんと一緒にお祝いできればいいなと思います。

細井:20周年にふさわしいタイトルにしたいという思いもあり、ブラッシュアップ期間をいただいたのですが、そのおかげで、昔の『アトリエ』シリーズのファンの方だけでなく、今の『アトリエ』シリーズのファンの方にも楽しんでいただける作品になったと思います。

 シミュレーションゲームは地味に見えがちですが、遊んでみたら絶対におもしろい作品になっていますので、『アトリエ』シリーズファンのみなさんも、まだ『アトリエ』シリ―ズをプレイしたことがないという方も、ぜひ遊んでいただければと思います。よろしくお願いします。

(C)2019 コーエーテクモゲームス All rights reserved. ※画面はPS4で開発中のものです。

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