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2019年2月28日(木)

PS4版『ワークワーク』発売記念! テーマ曲を歌う打首獄門同好会さんにインタビュー(前編)【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 フリューの『カリギュラ』シリーズでプロデューサーを務める山中拓也氏が、ゲーム業界で名だたる名作を手掛けてきたクリエイターたちを招集。ダメバイトのポチ夫を主人公に、ドタバタ劇ながらも時にはしんみりする物語、そしてゲーマーの心をくすぐるゲーム内容で人気を博したRPG『WORK×WORK(ワークワーク)』のPS4版が、満を持して本日2月28日に発売されました。

『WORK×WORK(ワークワーク)』

 キャラクターデザイン、物語、音楽とあらゆる面で唯一無二な個性が光る本作ですが、そのなかでも強烈なインパクトを放っているのが、生活密着型ラウドロックバンドとして大人気の“打首獄門同好会”さんが手掛けたテーマ曲の『はたらきたくない』です。

 働くをテーマにしたゲーム内容とは真逆な曲名でありながら、聴く人の共感を呼ぶ歌詞と、まさに型破りな楽曲が生まれたいきさつなどを、打首獄門同好会のギター&ボーカル・大澤(敦史)会長と、『ワークワーク』のプロデューサー・山中拓也さんにお聞きします(インタビューは2018年12月4日に実施)。

『WORK×WORK(ワークワーク)』
▲打首獄門同好会の大澤会長。マスコットのウミウシちゃんとの愉快なツーショット♪

迷うことなく即決だった今回のオファー

――まずは打首獄門同好会(以下打首)さんが、『ワークワーク』のテーマ曲を手掛けることになったいきさつを教えてください。

大澤:自分たちから持ち掛けたのではなく、完全にフリューさんからお話があったんです。「ゲームのテーマソングを作ってくれないか」と、けっこう唐突に、前触れもなくね(笑)。それで「マジか!」となって、初期の資料をいただきました。

 そのときはゲーム画面など、そんなにそろっていなかったんですが、制作陣の顔ぶれを見てまた「マジか!!」となりまして。「このゲームもこのゲームも、俺やったよ!」と(笑)。だから事務所に「こんな話が来たんですけど、やりましょうよ」とすぐに伝えました。

●●『ワークワーク』制作スタッフ陣●●
【グラフィック】今川伸浩さん:代表作は『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』『MOTHER3』『ファンタジーライフ』など。
【シナリオ】井上信行さん:代表作は『半熟英雄』『ライブ・ア・ライブ』『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』など。
【サウンド】増子津可燦さん:代表作は『女神転生』シリーズ、『マジカルバケーション』シリーズ、『ダンジョンエクスプローラー』など。
【企画・開発】山根敬洋さん(熱中日和):代表作は『ファンタジーライフ』『かまいたちの夜2』『ホームランド』など。

――けっこうノリノリでお仕事を受けた感じなんですね。

大澤:そうですね(笑)。「ついに自分にもゲームの仕事が来たかー!」と、最初から完全に乗り気でした。

――フリューさんはなぜ打首さん側にお声がけをしたのですか?

山中:変なゲームを作ろうと思っていたので、テーマ曲もまじめに作るより、本当に世の中を驚かせるというか、ほかにはない曲を作らなければと考えていました。それで、打首さんならばいい意味で“変な曲”を作ってくださるだろうな、というのが一番の理由ですね(笑)。

 打首さんの曲をいろいろ聴かせていただいて、ネットユーザーさんとの相性がすごくよく、確実にバズるような発想とユニークさを持っていると感じていました。だから『ワークワーク』が受け取ってもらいたいと考えていた温度感に、すごくマッチしているなと思ったんです。

――打首さんの楽曲コンセプトが、『ワークワーク』の雰囲気に近いと?

山中:そうですね。思っていたよりもふざけていただきましたが、大体こっちの方向性だなと。

――それで完成したのが『はたらきたくない』という楽曲ですが、こちらはもともと打首さん側で考えられていた曲を、ゲームに合いそうだからと持ってきたのでしょうか?

大澤:いえ、ゼロから作りましたね。山中さんからいただいたメールのなかに、どんな曲を作ってほしいのか、というヒント程度にいくつか例があったんです。そのなかに「例えばはたらきたくないというテーマ曲」と書いてあって、内心「この人正気かな? これ、ワークワークだよな?」と(笑)。

一同:(笑)

『WORK×WORK(ワークワーク)』

大澤:働くゲームですという説明のあとに、はたらきたくないというテーマ曲をお願いしますと書いてあって、「大丈夫かな?」と(笑)。だから内心は大丈夫じゃないだろうなと思って、コンセプト曲をいくつか並行して作っておいたんですよ。はたらきたくないという曲と、僕はバイトなんだけどいろいろ大変になってきたぞ、というテーマで書いた曲ですね。

 それですごく簡単なデモテープを作って、最初の会議で山中さんたちに聴いていただいたんですよ。そのとき「こんな曲を作りましたが違うと思うんですけど、はたらきたくないという曲も作ってみました」と出してみたら……「これだ!」となって、「え、マジで!?」と。だから『はたらきたくない』というテーマ曲は、フリューさんの意志です(笑)。

――なるほど(笑)。ちなみに歌詞ですが、月曜の朝に誰もが思う気持ちが盛り込まれていますよね。そのあたりはすんなりと出てきた感じですか?

大澤:そうですね。はたらきたくないというテーマでいいならば、作りやすくて仕方がないです。その気持ち、すごくわかるよと(笑)。

――作品に寄り添ったタイアップ曲ですが、いつものように大澤さんの気持ちを楽曲に反映できたと?

大澤:はたらきたくないという気持ちは、これまでの人生かけていくらでもありますからね。自分はその引き出しを開けるだけでした(笑)。あとは主人公であるポチ夫君の身になって、自分の気持ちを当てはめていくだけだったので、とりあえず山中さんにはポチ夫君の情報をくださいと。

――となると、曲を作られる段階では、今川(伸浩氏)さんのイラストはまだなかったのでしょうか?

山中:いえ、イラスト自体はお見せしていたのですが、実際にこの子たちがどういう会話をして、どういう展開になるのかという情報はまだありませんでした。でも、最初にいただいたデモテープの時点で、今の「はたらきたくない」という曲の原型は出来上がっていたので、打首さんもこっちでやりたいんだろうなと僕は感じていました。「選んでください」とは言っていたけど、こっち推しなんだろうなと(笑)。

大澤:デモテープをお聞かせしたときは、メンバー全員は「こっち(はたらきたくない)のほうが好きだけど、きっともう1つの曲になるんだろうな」と思いながら、一応聞かせますよとお伝えしたんです。まあ、普通は「はたらきたくない」はないだろうなと。そうしたらこの曲を選ぶもんだから、「この人たちはいったい……。ゲーム業界、俺が思っていたものとちょっと違う……」と(笑)。

山中:普通のゲーム業界の人ならば、もう1つの曲を選ぶと思うんですけどね(笑)。

――そこはもう『ワークワーク』チームだからこそですね(笑)。ちなみに、フリューさんから設定をいただいたのちは、そちらに寄せるような調整はあったのでしょうか?

大澤:そうですね。なるべく映像ありきで曲を作るという意味では、まずはゲーム内のポチ夫君の情報が必要でした。MVでのポチ夫君とゲーム内のポチ夫君の整合性がないと、あとで「あれ? なんかゲームを遊んでから見直すと違うよな……」となっちゃいますし。そこは避けたかったので、一応根掘り葉掘り聞きました。ただ、聞けば聞くほどポチ夫君が気の毒で(笑)。

――歌詞もそうですが、MVの映像内にある書き文字での状況説明もかなりヒドイですからね。給料がヒトデ2個とか(笑)。

大澤:あれは切ないですよね。

――完成した楽曲の聴きどころはどんな部分でしょうか?

大澤:一応、起承転結になっているところですかね。曲の途中でポチ夫君がだいぶ疲れて、グッタリして落ち込むんだけど、王子とのかかわりを思い出しながら、ちょっと気が晴れていくという展開なんです。最初のサビと最後のサビは、その気持ちの違いをサウンド的にも表現してみたんですよ。そこが一応、音楽家としてのこだわりですかね(笑)。

 あ、ここのコード進行がこっちからこっちになって、メロディ進行が……と言う部分が、ミュージシャンとしては「俺、ちょっといい仕事しているんじゃない?」「ちゃんと表現できたんじゃない?」って(笑)。

『WORK×WORK(ワークワーク)』
▲ある意味ポチ夫の運命を変えた、オレ様王子・18(本名はエルリック・ファン・デル・ワールス・バル・ビル・ブル・ベル・ボース第18王子。略して18、もしくはエルリック王子)との出会い。

――たしかに最初の歌詞には「はたらきたくない」ありながら、後半は「でもはたらいたよね」という部分が、グッとくるというか。

大澤:そうですね。MVを公開してから「これ、泣けました」というコメントをいただきまして。「このコメントをくれた方、全員今すぐ休んで!」って(笑)。

一同:(笑)

大澤:「これで泣ける人は休んで! 有給取って遊びに行って!」 と(笑)。

――はたらいていてホメられることはなかなかないので、後半のホメられているニュアンスの歌詞は、ちょっとうれしかったです(笑)。ちなみに、MVのコンテは大澤さんが切られたとか?

大澤:これもフリューさんの要望にありまして、以前『布団の中から出たくない』というMVを作ったのですが、そのチームでやってほしいという指名がありまして。

――それでナガサカシゲルさん(アニメ制作担当)が引き続き担当されているわけなんですね。

大澤:ええ。ただ「このチームでと言われたけども……、俺とアナタですよね?」と(笑)。「布団の中から出たくない」を作ったときは、るるてあさんという作家さんが、キャラクターの原画を担当してくれていました。そのときは楽曲とこんな曲が作りたいとるるてあさんにお伝えして、ナガサカさんを含めて事実上3人で制作していたんですが、「あの人がいないから、今回は2人ですね……」と(笑)。

――もはやチームではなくコンビですよね(笑)。ちなみに、るるてあさんがTwitterで「1コマ1コマ描くのが大変だった」とつぶやかれていましたが、やはり原画は大変なのでしょうか?

大澤:「けっこうな数になりますけど描いていただけますか?」とお聞きしたら「やりますやります」と。だからまず自分がシュールな線画のコウペンちゃん(コウテイペンギンのマスコット)を描いて、それをナガサカさんに動かしてもらいました。そして、るるてあさんに清書をしてもらって、最後にまたナガサカさんに渡して動かしていただくのですが、ナガサカさんが一番泣いて仕事をするという(笑)。今回も自分がポチ夫君をシュールに描いて、「ここでグッタリしています。こんな風に進みます」と、ナガサカさんに渡して「お願いします」と、描き起こしてもらいました(笑)。

――そんなかなり大変そうなMV作りですが、『はたらきたくない』に関しては、キャラクターデザインの今川さんはかかわられていないんですよね?

山中:こちらのMVは全部ナガサカさんが手掛けられています。だから『布団の中から出たくない』のときよりも、しんどかったはずですよ(笑)。

一同:(笑)。

大澤:コウペンちゃんはるるてあさんが描かれていましたので(笑)。

――ゲームの雰囲気そのままなのはスゴイと思いました。

山中:そうですよね。

大澤:ポチ夫君が寝ているイラストを送ってきたら、「ちょっと手足が長い」「口元をもうちょい影に」「部屋はもうちょっとこんな感じ」とか、いろいろ注文をしたのでかなり苦労されたと思います。

『WORK×WORK(ワークワーク)』

――実際、ゲーム中ではくたびれたポチ夫の姿は見られないので、あんなにバイトは大変なんだと(笑)。

大澤:ゲームを遊んでから見ると、ちょっと気分が変わりますよね。

――MVの絵コンテを切られるときは、書き文字的な要素も入る想定で構成を考えられているのでしょうか?

大澤:そうですね。今回はかなりコンテに沿って、わりと忠実にできたイメージです。作りながらアイデアが付け足された部分ももちろんありますが、最初からあんな感じでしたね。

自分の意志を反映しやすい今のMVの作り方

――打首さんの楽曲はMVが曲にものすごくマッチしている、日本でも指折りのアーティストだと思います。あの手法は大澤さんが草案を考えられて作られているのでしょうか?

大澤:全部がそうではないのですが、それこそマンガベース、アニメベースのMVならば、けっこう自分でも手を出せるんです。逆に自分が撮られる側の映像になると、どんな映像になっているのかわからないじゃないですか。それと比べると、だいぶ自分の意志を反映しやすいですね。こんな風にミュージシャン視点で映像を作るケースは、あまりないと思います。

 このやり方だと視点や考え方が変わってくるんです。例えばAメロとBメロの変わり目をストーリーの変わり目にしよう、ここはリズムに合わせよう、拍頭にしようとかね。映像関係の仕事の方も、そういう思考で作ることはないと思います。作品のニュアンスが変わってくることがあるので。

――比較的アーティストさんをメインに映すことが多いMVですが、打首さんのMVはドラマ的な演出が入ってきます。やはり自分が表現したいものを歌だけでなく、映像でも表現したいからでしょうか?

大澤:そうですね。歌のテーマがそもそも歌の中に組み込まれていますが、映像でもそのまま見せたほうがいいかなと。

――そういったストーリー性を出すという意味では、今回のようにもともとキャラクターがある作品とのタイアップは、やりやすかったですか?

大澤:正直、昔はそんなに想定していた作り方ではなかったのです。それこそ『布団の中から出たくない』で初めて映像ありきで曲を作り、キャラクターありきで曲を作ってみて、「意外とこういうやり方はおもしろいな」と。そんななかで、今回の『ワークワーク』のお話をいただいて「ああ、あのパターンだ。これはやってみておもしろそうだな」と。

 実際にポチ夫君の話を聞くと、頭のなかで勝手にポチ夫君が行動し始めたんですよ。じゃあ曲はこういうテーマで、ポチ夫君はたぶんここでこうなるから、と考えていったわけですが、なかなかおもしろかったですね。

――となると、それ以前と『布団の中から出たくない』以降の曲作りは違うと?

大澤:そうですね。新しい手法を見出した感じです。映像ありきで曲を作るという手法は、それまでなかったので。

――それまでは曲が完成してから、この曲にどんな映像を付けようか、という流れが多かったと?

大澤:そのやり方が多かったですね。

――やはりYouTubeなどの映像配信が広まってきたことも影響があるのでしょうか?

大澤:正直なところ、岡崎体育さんの影響もあるんですよ。あの方がMVのあるあるをテーマに、映像ありきで曲を作ってバズッたんですね。で「こういうやり方もあるのか」と。あまりアーティストはこんなことは言わないと思いますが……「俺もやりたい」と思いまして(笑)。

一同:(笑)。

大澤:おもしろそうだな、俺もやりたいなと。それで自分なりに手法が体現しやい、コウペンちゃんを使って「布団の中から出たくない」というストーリー風のMVを作りました。そこから芽生えた感覚が、ちょうど『ワークワーク』にハマったという感じです。

――実際にMVが公開されてからの反響はいかがですか?

大澤:やっぱり共感してくれる人の多さに驚きましたね。本当にみんなはたらきたくないんだなと(笑)。「この曲いいね!」というよりも「このテーマがいいね!」なんですよ。「このテーマわかるわ~、だよね」という。もう共感というよりも支持なんです。

「はたらきたくない、そうだよね」という歌詞がありますが、でも明日もがんばるしかない、前向きな気持ちに転換しなくてはいけないわけです。そこまでを含めて、それだよねという支持になっています。わかってくれるというか。たぶん『ワークワーク』を知らずにポチ夫君に感情移入をしている人は、ものすごく多いと思いますね。

――フリューさん側も、ゲームの発売前にある意味共感という感情を持ってもらうのは、結果的によかったのでは?

山中:そうですね。これまでフリューが作ってきたMVやPVのなかでも、抜群に再生されています(2019年1月時点で100万回再生を突破)。僕らも『ワークワーク』のゲーム内容がわからないと、曲を理解できないにようにはしたくなかったんです。曲としてMVが流行ればいいんですよ、という雰囲気だったので、その反応はよかったですね。あまりに反応がよすぎて、『ワークワーク』が売れすぎるんじゃないかという錯覚に陥るくらいでした(笑)。

一同:(笑)。

<インタビュー後編へ続く>

『WORK×WORK(ワークワーク)』

(C) FURYU Corporation. ※画面はすべて開発中のものです。

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