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2019年4月13日(土)

理系兄弟が作る環境科学ゲーム『Plantan』の開発に秘められた熱い思いとこだわりを聞く【TOKYO SANDBOX】

文:キャナ☆メン

 4月6日・7日に、都内のベルサール秋葉原で開催されていたインディーゲーム展示会“TOKYO SANDBOX”。会場に出展されていたゲームの中から、ライターの気になるタイトルをピックアップしてレポートをお届けしています。今回は、研究者の兄弟が開発する『Plantan』を紹介!

『Plantan』

『Plantan』とは

 『Plantan』は、環境科学系放置アクションゲームと銘打たれたスマホ用ゲームで、iOS/Android向けに基本無料ゲームとして近日リリースされる予定です。

『Plantan』

 開発は、工学博士の兄・ものり氏と大学生の弟さんの2人がメインとなって、4名ほどで行っているとのこと。とある惑星で“宇宙一燃費の悪いゲーム機”を拾った女の子を主人公に、気象が刻々と変化する星に自然エネルギーの発電所を建て、ゲーム機の電力を充電して、このゲーム機で遊べる4種のゲームに挑んでいきます。

『Plantan』
▲ゲーム機に充電を行うとゲームがプレイ可能。しかし、非常に燃費が悪くてすぐ電池切れを起こします。目安としては、最初のゲームなら25%ほどの充電が必要とのこと。

 ゲーム機に充電を行うパートは放置ゲームとしてデザインされ、ゲーム機で遊べる4種のゲームについては、それぞれ異なる内容のアクションゲームとなっているのが特徴です。

 ストーリーはゲーム機で遊べるアクションゲームを攻略することで進み、時短のための課金要素を利用せずとも、概ね1週間ほどでクリアできる想定とのことでした。

プレイヤーの想像力を大切にした物語と世界観の表現

 ものり氏によると、ストーリーの表現は他のゲーム開発者の助言を得ながら試行錯誤を重ね、「(プレイヤーに自分たちの考えた)エンディングを押しつけたくない」という考えで、プレイヤーの想像力もまた物語の重要なピースとなるように、ゲーム全体にヒントをちりばめて想像の余地を作ることを心がけたそうです。

 例えば、ゲーム機の中にいるドラゴンが口にする言葉や、発電所研究開発画面の上部に表示されるメッセージ、あるいはゲーム機内に表示されるバナーやアイコンなど、何気ないものに、世界観や物語の背景につながるヒントがあるといいます。

『Plantan』
▲発電所研究開発画面。上部には主人公の健康状態などが表示されますが、ここの文章にも重要なヒントがあるかも?
『Plantan』
▲ゲーム機の中にいるドラゴンをタップするとしゃべります。数回タップしただけでは無作為な言葉を発しているように見えるのですが、これをつなげることができれば……?
『Plantan』
▲画面上部のオリジナル広告バナーや下部のゲームを示すアイコンにまで、意味が隠されているとのこと。なお、バナーをタップすると本物の広告が表示されるそうです。

 ちなみに、本作では“白=生きているもの”、“黒=死んでいるもの”というイメージで色が区別されており、そうしたところからも、物語の秘密につながるものが見えてくるそう。なお、主人公の女の子は白と黒、両方の色で表現されているのですが、その意味とは……?

 また、かわいらしいビジュアルが特徴的な本作ですが、ストーリーは『火の鳥』や『風の谷のナウシカ』に影響を受けているとのことで、物語の裏には少し暗めテーマも内包しているのだとか。

『Plantan』

 ただし、押しつけたくないというのは、そうした想像する行為についても同様で、ゲームにちりばめられた“物語のカケラ”とも言えるようなディテールに、気付かれずとも構わないとのこと。まずはゲームを楽しんでもらうことが、第一であるそうです。

 それでも、ものり氏の話を伺いながらゲームに触れたり画面を見せてもらったりしていると、本作の物語や世界観の裏側を覗くことができた時、きっと心を動かされるものがあるのだろうなと感じました。作り込まれた世界観に漂う“はかなさ”のようなものが、心をそっと刺激してくる作品です。

気象の変動が発電効率に影響を与えるユニークな環境科学システム

 物語や世界観に続いて伺ったのが、“宇宙一燃費の悪いゲーム機”に充電を行う放置ゲームパートのために作られた、こだわりの環境科学システムに関する話です。

 発電所を設置できる環境画面は、研究者である兄弟のスキルを活用した正確なシミュレータによって、気温、気圧、風速が変動し、天候が変わっていくといいます。

『Plantan』
▲画面下部、充電アイコンの上に表示されている数字が気温、気圧、風速。昼夜の概念については、現実の時間とリンクしています。

 それにより、たとえば気圧が下がれば雨が降るといった具合に自然環境がリアルに表現され、太陽発電や風力発電といった自然エネルギーから電力を得る発電所の発電効率に影響を及ぼします。また、水力発電なら水辺、風力発電なら高地に建てる方が発電効率がいいなど、地形も関係してくるそうです。

 そのため、天気を予測して適切な発電所を設置すれば、ただ放置するよりも早く電力がたまる仕組み。画面に表示された気象データや天気予報(外れることもある)、あるいは主人公の格好をよく観察することで、天気は予測しやすくなるといいます。

『Plantan』
▲天気予報は雨。ならば川沿いの太陽光発電所は水力発電所に変えてしまったほうが、より発電効率がよくなりそう、と予測できます。

 なお、発電所にはレベルが存在して、レベルの低い発電所は発電効率も耐久度も低いとのこと。耐久度は時間とともに減っていき、ゼロになると発電所が壊れてしまうそうです。

『Plantan』

 気象の変動を本格的に取り入れたゲームシステムは、あまり他のゲームで見ることのないユニークな遊びではないでしょうか。放置系のパートなので、試遊の範囲で実際に沿った体験をすることは難しかったですが、説明を聞いているだけでもかなりワクワクしました。

次なるゲーム作品の話も

 ものり氏にさらなる話を伺ったところ、次のゲームに関する構想も既にあって、コンピュータ内の仮想バイオームで独自に進化して生態系を築き上げる“人工生命”をテーマにした作品を考えているそうです。どうやら弟さんが現在、人工生命を研究しているのだとか。

 人工生命をテーマにしたゲームは既に存在しますが、まだまだ未開拓なジャンルなので、もし開発をスタートするのであれば、どんなゲームを作り上げるのか楽しみなところです。

 しかし、現在は『Plantan』のリリースが間近! 話を伺い、兄弟でチャレンジする初のゲーム開発でありながら、ディテールまで丁寧に考え抜いて作られているタイトルと感じたので、興味を持った人はぜひダウンロードを。

『Plantan』 『Plantan』

(C)Morphon

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