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2019年4月29日(月)

『メトロ エクソダス』ロングレビュー。ロシア各地の様子やストーリーなどオススメ要素・魅力を紹介

文:伊藤誠之介

『メトロ エクソダス』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 スパイク・チュンソフトから発売中のPS4/Xbox One用ソフト『メトロ エクソダス』。そのレビューを掲載します。

 『メトロ』シリーズは、核戦争後のロシアを描くドミトリー・グルホフスキー氏の小説の世界観をもとに制作された、ストーリードリブンのアクションアドベンチャーシリーズ。シリーズ最新作である本作では、従来作の舞台であったモスクワを離れ、主人公アルチョムは安住の地を求めてロシア全土を旅します。

『メトロ エクソダス』

 ゴールデンウィークなどの長期休暇でプレイするのに最適な本作。その魅力を、実際のプレイをもとにして詳しくお伝えします。

核戦争後の崩壊したロシアを舞台にした、人気シリーズの最新作

 『メトロ エクソダス』は、核戦争後のロシアが舞台となったアクションアドベンチャーゲームです。『メトロ2033』『メトロ ラストライト』に続いて、本作がシリーズ3作目となっています。

 『メトロ』シリーズにおいて、核戦争により廃墟と化したモスクワの街で生き残った人々は、汚染された地上を避けて、“メトロ”と呼ばれる地下鉄のトンネル内に、独自の社会を築いて暮らしています。

 わずかに残された戦前のテクノロジーを回収するため、凍てついた地上を探索する際は、汚染から身を守るガスマスクを装着し、奇怪な生物やミュータントと命がけで戦う必要があるのです。

『メトロ エクソダス』
『メトロ エクソダス』

 『メトロ』シリーズの特徴は、ストーリーに重きを置いたシングルプレイが中心となっている点です。ロシアの作家ドミトリー・グルホフスキー氏の小説が原作で、独特のリアリティにあふれた緻密な世界観や、主人公アルチョムをはじめとするキャラクターたちの丁寧な人物描写を堪能できます。

 “エキジビション駅”で暮らしていた主人公のアルチョムは、さまざまな事件を経て、メトロの治安を守る“オーダー”に加入。その活躍により“メトロの救世主”と呼ばれるようになりました。しかし『メトロ エクソダス』の開始時には、オーダーを脱退しています。

 オーダーの司令官であるミラー大佐の娘で、優秀なスナイパーであるアンナと結婚したアルチョムは、地上に生存者がいると信じており、単身で地上に出ては、無線機で生存者からの信号を探しているという状況から、今回の物語がスタートします。

『メトロ エクソダス』
▲ミラー大佐は、1作目の『メトロ2033』から登場している人物。厳格なリーダーであるミラー大佐を尊敬するアルチョムは、義父でもある彼に対して心の距離を感じているようです……。
『メトロ エクソダス』
▲ミラー大佐の娘で、アルチョムの妻となったアンナ。『メトロ ラストライト』で最初にアルチョムと出会った際は、クールな態度で接していたアンナも、今では彼のことを深く愛しています。

 ちなみにこれまでのアルチョムの歩みは、過去2作のリマスター版がセットになったPS4/Xbox One用ソフト『メトロ リダックス』が発売されていますので、興味のある方はそちらもオススメです。

モスクワの地下を脱出して、ロシア各地を鉄道で巡る旅に出発!

 ある日、凍てつく地上を探索していたアルチョムとアンナは、蒸気機関車が線路を走っている光景を目撃します。人が住めないほど汚染されているはずの地上をなぜ機関車が走っているのか? そこには大きな秘密が……

『メトロ エクソダス』

 秘密を知ったことで生命を狙われたアルチョムとアンナは、運転士のイェルマークとともに蒸気機関車を奪って逃走します。追跡してきたオーダーの仲間たちも、真実を知ると彼らに味方して、全員でモスクワを脱出して新たな地へと向かうことに。

『メトロ エクソダス』

 先に紹介したように、これまでの『メトロ』シリーズは、モスクワの地下という閉鎖された環境が舞台となっていました。ところが本作は、そんなシリーズの根幹をひっくり返す大事件から、物語が始まります。これにはシリーズの熱心なファンほど驚くのではないでしょうか。

 そして本作では、“オーロラ号”と命名された蒸気機関車でロシアの大地を移動しながら、各地で探索を行うことになります。地域ごとに風景が異なるだけでなく、冬から春、そして夏へと季節も移り変わり、冒険する環境がどんどんと変化していくのも大きな魅力です。

『メトロ エクソダス』

 アルチョムたちの最初の目的地となるのは、“箱舟”と呼ばれる政府の地下避難施設のあるヤマンタウ山です。余談ですが、現実のヤマンタウ山はロシアの地下施設があると噂されている場所で、こうした現実とのリンクもまた、本作のディテールの奥深さだと言えるでしょう。

地域ごとの変化に富んだオープンワールドを思いのままに探索できる

 上でも紹介したように、『メトロ エクソダス』では物語の進行に沿って、冒険の舞台となる地域が移り変わっていきます。雪が溶け残る春のヴォルガ川流域、核戦争で水が干上がって砂漠化した夏のカスピ海沿岸など、そのロケーションや環境、棲息する生物などが大きく変化します。

 また時間経過によって昼夜や天候が変わり、ときには嵐がやってきます。そんな地域ごとに異なる環境に対応しながら、その土地を探索して新たな敵や困難に立ち向かうのが、本作の醍醐味となっているのです。

ヴォルガ川

『メトロ エクソダス』
『メトロ エクソダス』

 核戦争の前は港だったヴォルガ川流域のこの地には、巨大なクレーンや鉄道の車両基地が存在しています。このエリアはあちこちが水没しているため、探索の際にはボートで水上を移動することも必要になります。

カスピ海

『メトロ エクソダス』
『メトロ エクソダス』

 カスピ海沿岸は砂漠地帯が広がっているため、ここでは水の確保が重要。しかし、現在でも石油が採掘できるこの地の利権を独占しようと、“バロン”と呼ばれる人物が悪党たちを率いて支配しているようです。 

 本作では、特定のエリアや汚染物質の含まれた嵐に襲われた時以外、屋外でも基本的にガスマスクは不要です。地域ごとに雰囲気の異なる美しい風景を、フィルターの時間制限などもなくじっくりと楽しむことができるのは、過去作と比べても非常に爽快な気分を味わえます。

 ただし、屋外が安全というわけでは決してありません。奇怪な生物やミュータントがその土地ごとに棲息しており、不意を突いてアルチョムに襲いかかってきます。さらには、徒党を組んで活動している悪党なども存在しており、彼らに見つかると厄介なことになります。

『メトロ エクソダス』
▲各地に棲息している人型のミュータント。建物に潜んでいるだけでなく、砂漠を歩いていると砂の中からいきなり飛び出してくることも。
『メトロ エクソダス』
▲“シュリンプ”と呼ばれているエビのような水棲生物。水中から突然、ボートに乗り込んできて襲いかかってくるので驚きます。

 各エリアはかなりの広さがあり、オープンワールド的な探索が可能になっています。ストーリーを進めるクエストの目標地点や、装備のクラフトや時間経過に役立つセーフハウスなどは、クリップボードのマップに位置がマークされるので、いつでも確認できます。

『メトロ エクソダス』
▲クリップボードのマップを参照している間も、時間が止まるわけではないので、敵に襲われたりしないように注意が必要です。
『メトロ エクソダス』
▲屋外を徒歩で移動すると時間がかかるため、カスピ海では自動車を運転して、砂漠を安全に素早く移動することができます。

 また、ストーリーを先に進めるための目標とは別に、他のキャラクターから依頼を受けるという、サブクエスト的な目標も存在しています。こちらの目標の達成は、トロフィーや実績の獲得にかかわる他、ゲームの展開にも何か影響があるかもしれませんが……。

『メトロ エクソダス』
▲ヴォルガ川で母親とともにカルト教団に捕らえられていた少女・ナスティアを救出すると、彼女が持っていたぬいぐるみのクマを取り戻してくるように頼まれます。
『メトロ エクソダス』
『メトロ エクソダス』
▲ぬいぐるみの“テディ”を発見。ところがそこには、大きな翼を持つ“デーモン”が待ち受けていました! 

 本作では、屋外での自由な探索が多くなっていますが、過去作のような地下での探索も、もちろん存在しています。地下での探索では過去作同様に、ガスマスクを装着してライトで周囲を照らしつつ、限られた時間と視界のなかで探索を行うという、緊迫した展開を味わうことができます。

『メトロ エクソダス』
▲地下の汚染された区域では、ガスマスクを装着しないとすぐに死亡してしまいます。さらに、手持ちのフィルターの数によって探索時間が制限されるため、スリル満点です。
『メトロ エクソダス』
▲暗い地下ではライトを使用しないと、周囲を確認することができません。ライトのバッテリーが切れた際には、こちらも過去作でおなじみの、手回し式の充電器で充電する必要があります。

 本作では、屋外と地下の探索が適度なバランスで配置されている他、悪党のたむろするアジトにステルスで潜入するといった局面も用意されています。そのため、ストーリーに応じて変化に富んだゲームプレイを、飽きることなく楽しめると感じました。

サバイバル感あふれる戦闘を、その場で可能なアイテム作成で乗り切ろう

 『メトロ』シリーズといえば、サバイバル感のあふれる戦闘も特徴となっています。核戦争後の世界では、武器の弾薬や治療キットの数が限られており、戦闘を行うにも残りの数をつねに意識する必要があります。

 また、正面から敵と撃ち合うとすぐにダメージを負って死亡してしまうため、ステルスなどを駆使してあえて敵と戦わずにやり過ごすといった具合に、戦い方にも工夫が必要となります。こうした工夫は苦労も多い反面、自分なりの試行錯誤が楽しめるという魅力にもなっているのです。

 ちなみに、難易度は5段階から選択できますが、シリーズおなじみの最高難易度“レンジャー・ハードコア”も、もちろん用意されています。シリーズファンや高難易度でのプレイが好きな人はぜひ!

『メトロ エクソダス』
▲敵に気づかれないように忍び寄り、一撃で倒すことが可能。空き缶を投げて、相手の注意を自分とは別の方向に向けることもできます。
『メトロ エクソダス』
▲人型のミュータントはヘッドショットだと一撃で倒すことができるため、弾薬の節約にもなります。敵と離れた距離で戦うためにも、銃のカスタマイズでスコープを取り付けることは重要です。
『メトロ エクソダス』
▲火炎ビンを使えば、複数の敵をまとめて焼き殺すこともできます。ただし、うっかり自分も炎に触れると、ダメージを受けてしまうので要注意。

 過去作では銃弾を通貨としてアイテムを売買する、モスクワの地下ならではの独特な経済システムが存在していました。ところがモスクワの外に出た『メトロ エクソダス』では、アイテムをクラフトするための資源や、銃やスーツを改造するためのパーツを、探索で入手する形になっています。

『メトロ エクソダス』
▲ロッカーの中や倒れている死体を調べると、金属部品や化学薬品といった資源、さらには銃弾などを入手できます。ただし入手できる数は限られているので、治療キットや銃弾の使いどころは考える必要があります。

 アルチョムが背負っているバックパックは、簡易的な作業台として使用することができます。そのため、探索で入手した資源を使ってその場で治療キットを作成したり、戦闘の状況に応じて銃のパーツを即座に組み替えたりといったことが可能になっているのです。

『メトロ エクソダス』
『メトロ エクソダス』

 バックパックを使って屋外でアイテム作成ができるのは非常に便利ですが、銃弾の作成やスーツの改造は、オーロラ号やセーフハウスに設置された本格的な作業台でしか実行できません。

『メトロ エクソダス』

 特に銃弾は敵と派手に打ち合うとすぐ足りなくなってしまうので、残弾数を確認しながら節約して戦うことが、本作でも変わらず重要になっています。

主人公と一緒に旅する仲間たちの、心の変化に要注目

 オープンワールド的な屋外の探索や、アイテムのクラフトを活用した戦闘など、『メトロ エクソダス』では過去作からゲームシステムがやや変化していますが、『メトロ』シリーズの変わらない魅力と言えば、なんといっても重厚なストーリーと丁寧な人物描写です。

 モスクワの地を遠く離れて鉄道で旅する主人公アルチョムにとって、妻のアンナやその父であるミラー大佐、そして彼を英雄として信頼するオーダーの仲間たちの存在は、非常に心強いものとなっています。

『メトロ エクソダス』

 探索の合間にオーダーの仲間たちのところに近寄ると、彼らはアルチョムに対して気軽に話しかけてくれます。会話からはその人物の性格や個性を感じ取れるだけでなく、この旅を通して個々の人物の心境が変化していく様子を知ることもできるのです。

 また、旅の途中で出会ってオーロラ号の一員となる人物が現れる一方で、プレイヤーの選択によっては最後まで旅を続けられない人物もいたりと、サブキャラたちの人間模様も、メインストーリーの展開と並んで興味深いものがあります。

『メトロ エクソダス』
▲オーダーの兵士ステパンは、ヴォルガ川で出会ってオーロラ号の一員となった少女ナスティアと、その母であるカティアのことが気になっている様子。アルチョムが2人のそばを通りかかると、ステパンと一緒にギターを演奏するように勧められることも。
『メトロ エクソダス』
▲技術者のクレストは、ヴォルガ川で勢力を伸ばしているカルト教団と敵対し、1人でクレーンに隠れて暮らしていましたが、オーロラ号を修理できる人物を探していた一行と出会い、ともに旅することになりました。

 アルチョムのそばにいる人物の中でもっとも大きな存在となっているのは、妻のアンナとその父でもある司令官のミラー大佐です。

 特にミラー大佐は、これまでと変わらない威厳のある態度を取り続けているものの、その内面では、これまで自分が信じていた核戦争後のロシアの実態が、実は大きく違ったものであることを知り、戸惑いや苦悩を感じているようです。

 そうした面もあって本作のミラー大佐は、アルチョムと並ぶもう1人の主人公と呼べるだけの存在感がある人物として描かれています。

『メトロ エクソダス』
『メトロ エクソダス』
▲アルチョムに対しても強い口調で命令するミラー大佐ですが、2人きりの会話では、義理の息子である彼を頼りにしている心境が垣間見えます。
『メトロ エクソダス』
『メトロ エクソダス』
▲この旅の最初の目的地であったヤマンタウ山に到着し、ミラー大佐は“箱舟”の軍人たちと対面します。ここで何が起こったのかは、ぜひ体験してほしいのですが、ここでの出来事もまた、軍人としての生き方を貫いてきたミラー大佐の内面に大きな影響を与えます。

 一方で、アルチョムの妻であるアンナは、過去作での強面なスナイパーの彼女を記憶している人ならビックリするほど、アルチョムに対するラブラブっぷりを披露してくれます(笑)。その様子は重厚な世界観の本作において、貴重な萌えポイントになっているほどです。

 そんな彼女にも、物語の後半にはドラマチックな展開が待ち受けているのですが……それについてはぜひ、みなさん自身で確かめてみてください。

『メトロ エクソダス』
『メトロ エクソダス』
▲普段は以前と変わらぬ兵士の姿でキリッとした表情を見せているアンナですが、オーロラ号の客室で2人きりになると、アルチョムにひざ枕されながら「まるで新婚旅行みたい」と話しかけてくるなど、すっかりメロメロな様子。

 オーロラ号の乗員だけでなく、旅の各地で出会う人々の暮らしぶりも興味深いものがあります。過去作でも、地下鉄のトンネル内で生活する人々の様子が緻密に描かれていましたが、本作でもその地域ごとにユニークな設定が用意されており、世界の奥行きを感じさせてくれます。

 核戦争後の世界で暮らす人々のなかには、人として許されない行動を取っている者も少なくありません。ですが、彼らも決して単純な悪ではなく、崩壊した世界を生き抜くための彼らなりの事情が存在しています。もちろん、その上で凶悪だと言わざるを得ない輩もいるのですが。

 そうした人々との出会いを通して、アルチョムたちが自分の進む道を考えて、自分自身で選び取っていくことが、本作の重要なテーマとなっているのです。

『メトロ エクソダス』
『メトロ エクソダス』
▲ヴォルガ川流域には、かつての科学文明を否定したカルト教団が勢力を伸ばして、生存者たちを取り込んでいます。その教えのために失われる命もありますが、一方では核戦争後の世界で人々の心を支えるという側面もあるのです。
『メトロ エクソダス』
▲カスピ海沿岸の砂漠でアルチョムたちに味方するギウルは、住民たちを奴隷として支配するバロンに対して、たった1人で戦いを挑んでいる女性。怒りに燃える彼女の内面には、核戦争後の変貌した世界によって人生が一変した悲しみが渦巻いています。

 この『メトロ エクソダス』は、地下のトンネルを中心に緊迫した展開が続く過去作とは物語のトーンがやや異なっているものの、ゲームプレイを通して核戦争後の世界の空気感や、登場人物たちの思いがしみじみと伝わってくる感覚は、本作でも健在です。

 ロシア各地を巡るアルチョムの旅路は、手強い敵やアイテムのリソース管理に悩まされたりと、決してラクなものではありません。でもだからこそ、舞台が移り変わって美しい景色や季節が変化するのに新鮮な気分を感じるなど、心に強く印象が残るタイプのゲームになっています。

 過去の『メトロ』シリーズをプレイしている人であれば、アルチョムやミラー大佐といったおなじみのキャラクターたちが新たな舞台でどのような運命に直面するのか、ぜひ知りたくなる作品だと思います。

 また、過去の『メトロ』シリーズから舞台が大きく変化しているだけに、本作から遊び始めた人でも問題なく楽しめる内容となっています。長期休暇でゲームを遊ぶ時間が取れるこの季節に、ぜひじっくりと遊んでみてください! 

『メトロ エクソダス』
『メトロ エクソダス』
▲変化に富んだ美しい風景を堪能できる本作だけに、フォトモードが完備されています。さまざまなフィルター効果を駆使することで、まるで古い映画の一場面のような、味わいのあるスクリーンショットも撮影できます。

(C) 2019 and published by Koch Media GmbH, Austria. Deep Silver is a division of Koch Media. Deep Silver and their respective logos are trademarks of Koch Media GmbH. Developed by 4A Games. 4A Games Limited and their respective logo are trademarks of 4A Games Limited. Inspired by the internationally best-selling novel METRO 2035 by Dmitry Glukhovsky. All other trademarks, logos and copyrights are property of their respective owners. All rights reserved. Licensed to and published in Japan by Spike Chunsoft Co., Ltd.

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