無敵超人ザンボット3

◆メディア:TV ◆放映年月日:1977年10月~1978年5月
◆話数:全23話 ◆監督:富野喜幸(現:富野由悠季)
◆キャラクターデザイン:安彦良和 ◆メカニカルデザイン:平山良二
あらすじ

 駿河湾に面したとある街。網もとの息子である神勝平は、地元の不良、香月真吾が率いる香月組とケンカの毎日に明け暮れていた。そんななか、勝平は謎のロボット─メカブースト・ドミラ─に襲われてしまう。何とか逃げ延びた勝平は、かねてより先祖の遺産の発掘作業を行っていた家族と合流。先祖が遺した宇宙船ビアルⅠ世の発進に立ち会う。勝平の先祖は、キラー・ザ・ブッチャー率いる宇宙海賊ガイゾックに母星を滅ぼされ、江戸時代に地球にやってきた宇宙人・ビアル星人だったのだ。そして、勝平は来るべきガイゾックとの戦いに備え、知らず知らずのうちに睡眠学習を施された戦士であった……。
 ビアルⅠ世とともに発見されたロボットのザンボエースでドミラを撃破した勝平。ときを同じくして神家の親戚である神江家はビアルⅡ世を、神北家はビアルⅢ世を発掘する。神ファミリーは3隻の宇宙船が合体したキングビアルで、ガイゾックの侵略から地球を守る戦いを開始する。勝平もまたザンボエースと、神江宇宙太のザンブル、神北恵子のザンベースの3つのメカによる巨大合体ロボット、ザンボット3でガイゾックの脅威に立ち向かっていく。

キャラクター

 この作品を語るうえで欠かせない要素として、前述の焼けだされた人々による神ファミリーへの迫害、そしてほとんど全滅してしまう神ファミリーの結末とともに、必ずあげられるのが「人間爆弾」にまつわるエピソードである。第17話「星が輝く時」では、勝平の友人である浜本が、人間爆弾に改造されて死を遂げる。ラストシーンにおいて、彼は「最後くらいかっこよくさせてくれ」と言って、同じく人間爆弾に改造された人たちとともに勝平たちを巻き込まない安全な場所へ向かう。だが、その途中彼は死の恐怖に耐えかねて、父と母の名を叫びながら逃げようとする……。あまりにも生の人間を描いた、悲痛なシーンである。この作品は基本的にはスーパーロボットものに分類されるのだが、リアルといえばこれ以上のリアルはないだろう。ちなみに、ガイゾックの人間爆弾による悲劇はこれだけでなく、勝平のガールフレンドのアキも人間爆弾の犠牲になっており、そのショックははかりしれなく大きかった。

用語1

●神ファミリー

 かつてガイゾックに故郷を滅ぼされたビアル星人の末裔。駿河湾付近に在住する勝平の神家(本家)のほか、東京の神江家、信州の神北家をまとめて「神ファミリー」と呼ぶ。神家は勝平の祖母である梅江以下、父である源五郎、母の花江、兄の一太郎がいる。神江家は宇宙太の父大太、母のすみ江、弟の和行、妹のきいろがおり、神北家は恵子の祖父にして神ファミリーのリーダー的存在である兵左衛門、父の久作、母の由美子、妹の公子がいる。
 ビアル星人は母星を滅ぼされたあと、恒星間航行能力を持つキングビアルを建造して、江戸時代の地球へと落ち延び定住を決めた。その際、子孫に向けてガイゾック襲来を予期する古文書と、ザンボット3を遺したのである。


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ストーリー

 この作品のストーリーには壮絶な展開が用意されている。大人がアニメを見ることが普通になっている現在の目で見てもなお、ここまでハードなストーリーはほとんど絶無に近いのではないだろうか。また、巨大合体ロボットが戦うことで、当然起きうる被害と、それにより発生する民衆の憎悪……。最終回における、「地球人に守る価値はあるのか」というコンピュータードールの言葉は、それまで迫害されてきた神ファミリーの戦いを見続けた視聴者の胸に突き刺さるものであった。このように、従来の作品ではあえて「見て見ぬふり」をされていた、負の側面をも正面から扱ったことにより、この作品はロボットアニメ史に残る作品となったのである。
 日本サンライズ(現:サンライズ)初のオリジナル作品として製作されたこの作品。監督は後に『機動戦士ガンダム』を手がけることになる富野喜幸(現:富野由悠季)氏である。すでに『ガンダム』につながるリアリズムの萌芽が見られるという意味では、リアルロボットアニメの先駆けともいうべき作品であろう。

メカ

 3機のメカによる巨大合体ロボットのザンボット3。当時すでに、5機合体の『超電磁ロボ コン・バトラーV』をはじめとし、合体ロボットはさほど珍しい存在ではなかった。だが、勝平が乗るザンバードは、小型ロボットであるザンボエースに変形可能であった。このように、分離メカが変形可能であるという合体ロボットは、ザンボット3が初である。また、ロボットものの代表格である『マジンガーZ』の向こうを張るべく企画されたこの作品では、『マジンガーZ』が西洋甲冑をモチーフとしてデザインされたものに対し、日本の甲冑をデザインに取り入れている。この流れは後番組である『無敵鋼人ダイターン3』や『機動戦士ガンダム』をはじめ、以後の諸作品に大きな影響を与えた。さらに、ザンボエースは、主役級のロボットとしては初めて携行型の銃器を使用したことでも名高い。このようなことからも、この作品がロボットものにとって1つの大きな転換点となったことは、疑うべくもないだろう。

用語2

●ガイゾック

 キラー・ザ・ブッチャーが率いる宇宙海賊。超大型戦闘要塞バンドックを本拠とする。メカブーストと呼ばれるロボット兵器を用いて、地球への侵攻を開始した。ブッチャーの命を受けて動く部下として、武器士官バレター、作戦士官ギッザー、メカブーストの製作を担当するズブターほか、多数の兵士がいる。
 なお、ブッチャーは無用の殺戮を好む残忍な性格の持ち主で、遊びがてらに人々を殺害していた。そんな彼の正体は、ガイゾックの神ことコンピュータードール第8号によって拾われた、とある星で原始的な生活を営んでいた蛮族であり、その身体は改造されてサイボーグと化している。